ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK2
辞めちゃう前に、CBT。
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対人援助職のストレスこそが問題だ。本書では、無能な管理職にイライラ(怒り)。モラルハラスメントでしくしく(悲しみ)。パーソナリティ障害の人に巻き込まれグルグル(当惑)、そんな事例を取り上げて認知行動療法による解決方法を指南していく。「もうヤダ・・・辞めちゃいたい」と思っているあなたにこそ読んでもらいたい1冊。[BOOK1](同時発売)とはまた違った認知行動療法の技法を身に付けられる。
著 | 伊藤 絵美 |
---|---|
発行 | 2011年02月判型:A5頁:240 |
ISBN | 978-4-260-01246-1 |
定価 | 2,420円 (本体2,200円+税) |
更新情報
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
BOOK2へようこそ
またお会いできましたね。
BOOK2では、ケアする人たちにとってストレスフルなお悩み事例を取り上げて、BOOK1とはさらに違った認知行動療法の技法を使って解決していきます。
ストーリーを読み進めると、自然に認知行動療法の新しい技法と使い方が理解できます。「こんなとき自分だったらどうするかな」を考えながら読んでみてください。
BOOK2で解説する認知行動療法の新たな理論・技法・ツールは、以下です。
「モードワーク(スキーマ療法)」 「リラクセーション法」
「心理教育」 「読書療法」 「再帰属法(円グラフ法)」
「バランスシート」 「コンサルテーション」 「構造化」
「当事者研究」 「サポートネットワーク」
またお会いできましたね。
BOOK2では、ケアする人たちにとってストレスフルなお悩み事例を取り上げて、BOOK1とはさらに違った認知行動療法の技法を使って解決していきます。
ストーリーを読み進めると、自然に認知行動療法の新しい技法と使い方が理解できます。「こんなとき自分だったらどうするかな」を考えながら読んでみてください。
BOOK2で解説する認知行動療法の新たな理論・技法・ツールは、以下です。
「モードワーク(スキーマ療法)」 「リラクセーション法」
「心理教育」 「読書療法」 「再帰属法(円グラフ法)」
「バランスシート」 「コンサルテーション」 「構造化」
「当事者研究」 「サポートネットワーク」
目次
開く
BOOK2へようこそ
第1章 無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん
1 自分が参ってしまいそうなほどの怒り
2 「マナブストレス」を自己観察&アセスメントする
3 アセスメントを通じてカオルコさんが気づいたこと
4 目標を設定する
5 新たなスキーマを作る
6 サポート資源を増やす
7 コーピングレパートリーを増やす
8 カオルコさんが見つけた、現実的な落としどころ
第2章 キレる医師のいる職場に恐怖を感じるサチコさん
1 笑顔で語りながら涙を流すクライアント
2 リラクセーション法:過剰な不安緊張に対するコーピング
3 アセスメントを通じて、「自分は悪くない」ことを発見する
4 心理教育と読書療法
5 再帰属法(円グラフ法)
6 バランスシートの作成
7 2年後のサチコさん
8 環境要因が大きい場合、認知行動療法でどこまで太刀打ちできるか
第3章 精神的に不安定な看護学生とのかかわり方に悩む教員タマキさん
1 ふたを開けてしまった教員
2 タマキさんの対応の仕方をアセスメントする
3 「境界型パーソナリティ障害」「スキーマ」についての心理教育
4 構造化された枠組みのなかで相談に応じる
5 アセスメントを一緒に行い、「当事者研究」をする
6 当事者を専門家につなぐ
7 サポートネットワークを作る
8 この事例の読み方
第4章 BOOK2で紹介した理論・技法・ツール
第5章 さらに学びたい人へのガイド
索引
おわりに
第1章 無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん
1 自分が参ってしまいそうなほどの怒り
2 「マナブストレス」を自己観察&アセスメントする
3 アセスメントを通じてカオルコさんが気づいたこと
4 目標を設定する
5 新たなスキーマを作る
6 サポート資源を増やす
7 コーピングレパートリーを増やす
8 カオルコさんが見つけた、現実的な落としどころ
第2章 キレる医師のいる職場に恐怖を感じるサチコさん
1 笑顔で語りながら涙を流すクライアント
2 リラクセーション法:過剰な不安緊張に対するコーピング
3 アセスメントを通じて、「自分は悪くない」ことを発見する
4 心理教育と読書療法
5 再帰属法(円グラフ法)
6 バランスシートの作成
7 2年後のサチコさん
8 環境要因が大きい場合、認知行動療法でどこまで太刀打ちできるか
第3章 精神的に不安定な看護学生とのかかわり方に悩む教員タマキさん
1 ふたを開けてしまった教員
2 タマキさんの対応の仕方をアセスメントする
3 「境界型パーソナリティ障害」「スキーマ」についての心理教育
4 構造化された枠組みのなかで相談に応じる
5 アセスメントを一緒に行い、「当事者研究」をする
6 当事者を専門家につなぐ
7 サポートネットワークを作る
8 この事例の読み方
第4章 BOOK2で紹介した理論・技法・ツール
第5章 さらに学びたい人へのガイド
索引
おわりに
書評
開く
どのように事実を捉えたのか客観的に分析し,ストレスをセルフケアする (雑誌『看護管理』より)
書評者: 岡島 恵子 (聖隷淡路病院総看護部長)
◆自身のストレスに対処するために
最近のメンタルヘルスの重要性とその対応から,認知行動療法という言葉を聞くようになった方も多いと思います。しかしその内容に関しては,まだあまり知られていないのではないでしょうか。実は私も初めてこの言葉を聞いたとき,メンタル不調をきたした人のみが対象となる心理療法の1つだと思っていました(実際に認知行動療法は,診療報酬化されています)。しかしこの療法は,普段のストレスマネジメントにも効果があることを知り,興味をもちました。
認知行動療法とはその言葉通り,ストレスの問題を「認知」と「行動」の両側面から改善していこうという考え方・方法です。事実は事実として存在しますが,それをどう捉え(認知),どう対処するか(行動)を考えていきます。例えば,のどが渇いているときに,コップに水が半分入っているのを見て(事実),「半分しかない(しょんぼり……)」と認知するか,「半分もある(やったー!)」と認知するのかということです。このとき重要なのは,事実に対して「どのように認知するべきか」ではなく,自分は「なぜそのように事実を捉えたのか」について,客観的に見つめ,分析していくことです。どのように事実を捉えるかは無意識に行なわれていることが多く,その認知がはっきりしないままに,その後の思考や行動が縛られ,ストレスがたまり,心身ともに疲れてしまうことが多いからです。
◆バーンアウトを防ぐために
BOOK1には,療法の基本となる事柄が書かれています。ストレスが強くなると,そのことで頭がいっぱいになり,考え方も行動も同じことを繰り返してしまいがちです。それを打開するために基本モデルを使用して,認知,感情,身体反応,行動の4つに分けて客観的に考えていきます。本書では無意識下で行なっている認知のあり方が紹介されていますが,その事例が身近なものばかりなので,分析を読むだけでも,ストレスが少なくなるような気がしました。
生活をしていくうえで,ストレスをゼロにすることは不可能です。また対人援助職は,バーンアウトに陥りやすいことが以前から指摘されています。看護管理者はそのようなスタッフと面接する機会が多く,また共通言語が異なる(価値観が異なる)人たちと話す機会も多くあります。「自分は大丈夫!」と思っていても,気づかないうちにストレスは溜まっていることはよくありますが,なかなか周りの人は気づいてくれません。看護管理者である自分自身が,ストレスと上手く付き合っていくためには,セルフケアが重要となります。自己の認知やそれに続く行動を振り返るために,本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
(『看護管理』2012年1月号掲載)
悔しいくらいに的確な言葉で説明されてしまうCBTの本 (雑誌『精神看護』より)
書評者: 曽根原 令子 (成増厚生病院看護師・精神科認定看護師(うつ病領域))
「これからCBTに取り組もうと思う人にぴったりの本」「丸暗記、詰め込み、一切不要」「ハラハラドキドキしながら事例を読み進めれば、認知行動療法の技法がすべて理解できるようになっています」と、他の本よりも若干太い帯に書かれてある大胆な宣伝文句。これは購入するしかないでしょ、と思い手に取ったのは今年の1月のこと。
最初はパラパラと読んでいたのが、ぐ~っと引き込まれ、気がつけば小一時間で読みきっていた。最初の感想は、「悔しい!」だった。私自身も、精神科認定看護師(うつ病領域)として、同職である精神科看護師に対して「認知行動療法的看護のすすめ」と題して、認知行動療法的看護の普及啓蒙に向けて活動している。講義のときには頭をひねり、こうしたら伝わるだろうか、ここはもっとこういうふうにして……と試行錯誤を重ねていたのに、著者の伊藤絵美先生は認知行動療法のことを、いとも簡単に、的確な言葉を使って端的に説明しきってしまっている。悔しい気持ちは、自分のボキャブラリー能力の低さを見せつけられた気がしたからだ。
2006年3月の『精神看護』の特集は、「看護がはじめる“認知療法”」であった。それを読んだときも私は、「認知行動療法は、精神科看護そのものだ」と声を大にしていた。しかしそれをうまく伝える術を知らない私は、その特集の中の原田誠一先生(国立精神・神経センター武蔵病院:当時)の寄稿「看護の仕事に認知行動療法の視点を取り入れてみませんか?」の表題を、実はこっそりあちこちで使わせてもらっていた。
伊藤絵美先生は今回の本のなかで、看護者が患者へ認知行動療法をおこなう前に、看護者が自分自身のストレスの問題を、認知行動療法を使ってセルフケアしてみませんか、と勧めている。なぜなら患者さんに説得力をもってお勧めするには、看護者自身が「これはいい!」と実感し、使いこなせるようになっておく必要があるからだ。
この本には、ナースが主人公の等身大の「あるある」事例が多数織り込まれていて、認知行動療法の技法を使って解決されていく流れを読みとることができる。その事例が、たとえば、「無能な同僚に腹が立って仕方がないカオルコさん」「キレる医師のいる職場に恐怖を感じるサチコさん」「プリセプティとの相性が悪く悩む先輩看護師アヤカさん」など、あまりに「あるある」な内容であるために、想像が容易で、思わず引き込まれて読んでしまう。ボキャブラリーのない私は、またもや伊藤先生のうまい事例展開をアレンジして、こっそりと講義で使わせていただいた。すると、それまで伝えにくかった「認知」「自動思考」「スキーマ」が、「わかりやすい説明で理解しやすかった」と言われるまでになった。
洗足ストレスコーピング・サポートオフィスで使われているワークシートなどが付録として収録されており、コピーライトのクレジットを記載したままであれば許諾なしにすぐにでも利用してよいと書いてある。そんな配慮もうれしい本だ。
私は、看護者が仕事のうえでストレスをかかえてしまう要因は、自分の認知や自動思考に無頓着だからではないかという仮説を立てている。看護者自身が自分の認知、行動についても見つめ直すきっかけになるこの本を、ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思う。
(『精神看護』2011年11月号掲載)
自分のケアを後回しにして他人のケアはできない
書評者: 谷 紀子 (厚生中央病院医療安全管理室看護師長)
院内で医療安全管理者をしている私は,院内外問わず,会う人に自分の仕事を紹介するたび「ストレスが多くて大変そうですね」と同情の目を向けられることが多い。肝心の自分自身はというと,周囲に言われるほど大変なのか,正直よくわからなかった。
ところが最近,記念日でもないのにバッグや貴金属など,自分でも驚くような高額な買い物を立て続けにするようになった。「ひところ前に流行った映画のお買い物中毒のヒロインみたいだな」などとのん気に構えていたが,友人に「それって仕事が相当ストレスなんじゃない?」と指摘され,「もしかして自分が思っている以上にストレスなのかもしれない」とふと不安になった。ちょうどそんなときにこの本に出会った。
認知行動療法? ケアする人も楽になる? 認知行動療法という名前を聞いたことはあったが,どのような内容で,どのようなときに活用できるのかは全く知らなかった。本の帯には「切り抜け方を学べるから,次の危機にも対処できるんだ!」と書いてある。「危機って,そんな大げさな……」と思いながらも,題名にある「ケアする人も楽になる」に目を引かれた。
認知行動療法とは,自分のストレスの有様に気づき,そこで生じている認知(頭に浮かぶ考えやイメージ)と行動(外から見てわかる動作や振る舞い)をコーピング(意図的に対処)すること,とある。本の中には,なじみはあるがいまひとつピンとこなかったカタカナ語も一つずつ丁寧に解説されており,ほどよくゆとりが設けられたイラストと文章も読みやすい。授業のように一方的に教え込まれるのではなく,著者がそばに寄り添ってナビゲーターをしてくれながら読み進めているような,初心者の読み手が途中で嫌にならないよう配慮されている印象だ。
特に事例展開は,ナースという職業に焦点を絞って書かれたというだけあって,どれも身近で参考になる。例えば,「プリセプティとの相性が悪くて悩む先輩看護師アヤカさん」「無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん」,あるいは「精神的に不安定な看護学生とのかかわり方に悩む教員タマキさん」など。自分が同じシチュエーションになったことなどはないのに,なぜか「あるあるある」と思いながら読んでしまう。自分も同じ境遇だったらきっと同じように悩むだろうと思うから,どのように解決されるのかを知りたくてページをめくってしまう。
著者は「はじめに」の中で,「人をケアする職業の人(対人援助職)のストレスは,他の職種に比べて深刻になりやすい。ケアする側の人は,傷ついている当事者に最も近い存在であるからこそ,ケアする人自身も当事者になりうるということです」と述べている。考えてみると医療安全管理者になって,患者さん,ご家族からの苦情や,医療者の苦悩のシャワーを日々浴びている。うまく解決したときはたとえようもない爽快感と充実感が得られるが,反対にやり場のない悔しさと無力感が残る結果になることも多い。苦しいと感じることが仕事上当たり前だと思っていたが,この本を読んで,自分のストレスマネジメントにきちんと向き合ってこなかったことに気付く。またストレスをコントロールするという考え方も発見だった。ストレスへの対処法があるということだけでも心強い。そもそも自分のセルフケアを後回しにして他人のケアをしようという考え方が無理なのかもしれない。
次にストレス状況になったときは,少しこの本にあるツールを試してみよう,そして今からコーピングレパートリーを増やしておこうと思う。きっとそうすれば,今よりお金がかからなくなる可能性は大である。
認知行動療法の学びとストレスケアの一挙両得
書評者: 鈴木 啓子 (名桜大教授・精神看護学)
本書は「認知行動療法入門」とありますが,認知行動療法を患者さんに行うための本ではなく,ケアする人々(特に看護者)自身の心身のセルフケアに活用できるための解説書です。
手に取ると,イラストがかわいらしく,忙しい合間にも短時間でも読み切ることができる内容です。添付されている図表やシートも,使いやすそうです。自分で実際にトライするタイプの自己トレーニングマニュアルになっており,学生でも十分わかる内容になっています。
2冊組のうち,BOOK1では,認知行動療法の考え方と手法を具体的に紹介し,臨床で看護師が出くわすであろうストレス事例を取り上げて,その実際を学習することができます。この中で著者は認知行動療法の適応と限界,実施に当たっての注意事項も丁寧に述べており,読者が安全に使うということにも配慮してあります。どのようなストレス状況にも効く万能薬というものはどこにもないのですから,当然といえば当然ですが,きちんと記載されているところに好感が持てます。
また,BOOK2では,実際によくある事例のストーリーを読みながら,読者自身が「自分だったらどうするだろうか」と考えながら読むことのできる展開となっています。「無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん」「キレる医師のいる職場で恐怖を感じるサチコさん」「精神的に不安定な看護学生とのかかわり方に悩むタマキさん」といった事例において,相談者の相談の経緯,認知行動療法の導入,展開,その後がストーリーになっているので最後まで読まずにはいられません。つい感情移入してしまい,私も読みながら事例の相談者に共感し,「バカバカ」と罵りたくなってしまいましたが,振り返ってみると,自分自身の身の回りにも似たようなことがあることを感じます。
看護師は常識の通用しない相手にも正攻法で自分が頑張る,あるいは我慢することで問題を解決しようとする人が多いのではないでしょうか,と著者はやんわりと述べています。真面目だけれども,物事を柔軟に考えることができずに,ゆとりのない職場環境のもとで強いストレスを抱えて苦労しているということです。真面目と正攻法だけでは燃え尽きてしまいます。本書の中で,心身ともに健康な人とは,幅広く,多様な対処行動(大したことではなく,ちょっとしたこと)が取れ,ときには「迂回する」「放置する」「助けてもらう」といった柔軟な対処方法を用いることができる人だと記載されていたのが印象に残ります。
本書は,入門書ではありますが,認知行動療法の基本的な理論,技法,ツールについても事例を通してわかりやすく紹介され,さらに深く学びたい読者のために,専門書の紹介や研修会,学会なども紹介されています。学生支援や患者支援にも使える可能性を感じさせてくれる本です。最後に,「あの学生はどうしようもない!」「あの教員(看護師)は困る!」「こんな職場で働いていられない!」など毎日腹立たしいことでストレス多くお過ごしの読者の方がおられましたら,是非,ご一読をお勧めします。読むだけでも,気持ちが楽になりますよ。
書評者: 岡島 恵子 (聖隷淡路病院総看護部長)
◆自身のストレスに対処するために
最近のメンタルヘルスの重要性とその対応から,認知行動療法という言葉を聞くようになった方も多いと思います。しかしその内容に関しては,まだあまり知られていないのではないでしょうか。実は私も初めてこの言葉を聞いたとき,メンタル不調をきたした人のみが対象となる心理療法の1つだと思っていました(実際に認知行動療法は,診療報酬化されています)。しかしこの療法は,普段のストレスマネジメントにも効果があることを知り,興味をもちました。
認知行動療法とはその言葉通り,ストレスの問題を「認知」と「行動」の両側面から改善していこうという考え方・方法です。事実は事実として存在しますが,それをどう捉え(認知),どう対処するか(行動)を考えていきます。例えば,のどが渇いているときに,コップに水が半分入っているのを見て(事実),「半分しかない(しょんぼり……)」と認知するか,「半分もある(やったー!)」と認知するのかということです。このとき重要なのは,事実に対して「どのように認知するべきか」ではなく,自分は「なぜそのように事実を捉えたのか」について,客観的に見つめ,分析していくことです。どのように事実を捉えるかは無意識に行なわれていることが多く,その認知がはっきりしないままに,その後の思考や行動が縛られ,ストレスがたまり,心身ともに疲れてしまうことが多いからです。
◆バーンアウトを防ぐために
BOOK1には,療法の基本となる事柄が書かれています。ストレスが強くなると,そのことで頭がいっぱいになり,考え方も行動も同じことを繰り返してしまいがちです。それを打開するために基本モデルを使用して,認知,感情,身体反応,行動の4つに分けて客観的に考えていきます。本書では無意識下で行なっている認知のあり方が紹介されていますが,その事例が身近なものばかりなので,分析を読むだけでも,ストレスが少なくなるような気がしました。
生活をしていくうえで,ストレスをゼロにすることは不可能です。また対人援助職は,バーンアウトに陥りやすいことが以前から指摘されています。看護管理者はそのようなスタッフと面接する機会が多く,また共通言語が異なる(価値観が異なる)人たちと話す機会も多くあります。「自分は大丈夫!」と思っていても,気づかないうちにストレスは溜まっていることはよくありますが,なかなか周りの人は気づいてくれません。看護管理者である自分自身が,ストレスと上手く付き合っていくためには,セルフケアが重要となります。自己の認知やそれに続く行動を振り返るために,本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
(『看護管理』2012年1月号掲載)
悔しいくらいに的確な言葉で説明されてしまうCBTの本 (雑誌『精神看護』より)
書評者: 曽根原 令子 (成増厚生病院看護師・精神科認定看護師(うつ病領域))
「これからCBTに取り組もうと思う人にぴったりの本」「丸暗記、詰め込み、一切不要」「ハラハラドキドキしながら事例を読み進めれば、認知行動療法の技法がすべて理解できるようになっています」と、他の本よりも若干太い帯に書かれてある大胆な宣伝文句。これは購入するしかないでしょ、と思い手に取ったのは今年の1月のこと。
最初はパラパラと読んでいたのが、ぐ~っと引き込まれ、気がつけば小一時間で読みきっていた。最初の感想は、「悔しい!」だった。私自身も、精神科認定看護師(うつ病領域)として、同職である精神科看護師に対して「認知行動療法的看護のすすめ」と題して、認知行動療法的看護の普及啓蒙に向けて活動している。講義のときには頭をひねり、こうしたら伝わるだろうか、ここはもっとこういうふうにして……と試行錯誤を重ねていたのに、著者の伊藤絵美先生は認知行動療法のことを、いとも簡単に、的確な言葉を使って端的に説明しきってしまっている。悔しい気持ちは、自分のボキャブラリー能力の低さを見せつけられた気がしたからだ。
2006年3月の『精神看護』の特集は、「看護がはじめる“認知療法”」であった。それを読んだときも私は、「認知行動療法は、精神科看護そのものだ」と声を大にしていた。しかしそれをうまく伝える術を知らない私は、その特集の中の原田誠一先生(国立精神・神経センター武蔵病院:当時)の寄稿「看護の仕事に認知行動療法の視点を取り入れてみませんか?」の表題を、実はこっそりあちこちで使わせてもらっていた。
伊藤絵美先生は今回の本のなかで、看護者が患者へ認知行動療法をおこなう前に、看護者が自分自身のストレスの問題を、認知行動療法を使ってセルフケアしてみませんか、と勧めている。なぜなら患者さんに説得力をもってお勧めするには、看護者自身が「これはいい!」と実感し、使いこなせるようになっておく必要があるからだ。
この本には、ナースが主人公の等身大の「あるある」事例が多数織り込まれていて、認知行動療法の技法を使って解決されていく流れを読みとることができる。その事例が、たとえば、「無能な同僚に腹が立って仕方がないカオルコさん」「キレる医師のいる職場に恐怖を感じるサチコさん」「プリセプティとの相性が悪く悩む先輩看護師アヤカさん」など、あまりに「あるある」な内容であるために、想像が容易で、思わず引き込まれて読んでしまう。ボキャブラリーのない私は、またもや伊藤先生のうまい事例展開をアレンジして、こっそりと講義で使わせていただいた。すると、それまで伝えにくかった「認知」「自動思考」「スキーマ」が、「わかりやすい説明で理解しやすかった」と言われるまでになった。
洗足ストレスコーピング・サポートオフィスで使われているワークシートなどが付録として収録されており、コピーライトのクレジットを記載したままであれば許諾なしにすぐにでも利用してよいと書いてある。そんな配慮もうれしい本だ。
私は、看護者が仕事のうえでストレスをかかえてしまう要因は、自分の認知や自動思考に無頓着だからではないかという仮説を立てている。看護者自身が自分の認知、行動についても見つめ直すきっかけになるこの本を、ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思う。
(『精神看護』2011年11月号掲載)
自分のケアを後回しにして他人のケアはできない
書評者: 谷 紀子 (厚生中央病院医療安全管理室看護師長)
院内で医療安全管理者をしている私は,院内外問わず,会う人に自分の仕事を紹介するたび「ストレスが多くて大変そうですね」と同情の目を向けられることが多い。肝心の自分自身はというと,周囲に言われるほど大変なのか,正直よくわからなかった。
ところが最近,記念日でもないのにバッグや貴金属など,自分でも驚くような高額な買い物を立て続けにするようになった。「ひところ前に流行った映画のお買い物中毒のヒロインみたいだな」などとのん気に構えていたが,友人に「それって仕事が相当ストレスなんじゃない?」と指摘され,「もしかして自分が思っている以上にストレスなのかもしれない」とふと不安になった。ちょうどそんなときにこの本に出会った。
認知行動療法? ケアする人も楽になる? 認知行動療法という名前を聞いたことはあったが,どのような内容で,どのようなときに活用できるのかは全く知らなかった。本の帯には「切り抜け方を学べるから,次の危機にも対処できるんだ!」と書いてある。「危機って,そんな大げさな……」と思いながらも,題名にある「ケアする人も楽になる」に目を引かれた。
認知行動療法とは,自分のストレスの有様に気づき,そこで生じている認知(頭に浮かぶ考えやイメージ)と行動(外から見てわかる動作や振る舞い)をコーピング(意図的に対処)すること,とある。本の中には,なじみはあるがいまひとつピンとこなかったカタカナ語も一つずつ丁寧に解説されており,ほどよくゆとりが設けられたイラストと文章も読みやすい。授業のように一方的に教え込まれるのではなく,著者がそばに寄り添ってナビゲーターをしてくれながら読み進めているような,初心者の読み手が途中で嫌にならないよう配慮されている印象だ。
特に事例展開は,ナースという職業に焦点を絞って書かれたというだけあって,どれも身近で参考になる。例えば,「プリセプティとの相性が悪くて悩む先輩看護師アヤカさん」「無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん」,あるいは「精神的に不安定な看護学生とのかかわり方に悩む教員タマキさん」など。自分が同じシチュエーションになったことなどはないのに,なぜか「あるあるある」と思いながら読んでしまう。自分も同じ境遇だったらきっと同じように悩むだろうと思うから,どのように解決されるのかを知りたくてページをめくってしまう。
著者は「はじめに」の中で,「人をケアする職業の人(対人援助職)のストレスは,他の職種に比べて深刻になりやすい。ケアする側の人は,傷ついている当事者に最も近い存在であるからこそ,ケアする人自身も当事者になりうるということです」と述べている。考えてみると医療安全管理者になって,患者さん,ご家族からの苦情や,医療者の苦悩のシャワーを日々浴びている。うまく解決したときはたとえようもない爽快感と充実感が得られるが,反対にやり場のない悔しさと無力感が残る結果になることも多い。苦しいと感じることが仕事上当たり前だと思っていたが,この本を読んで,自分のストレスマネジメントにきちんと向き合ってこなかったことに気付く。またストレスをコントロールするという考え方も発見だった。ストレスへの対処法があるということだけでも心強い。そもそも自分のセルフケアを後回しにして他人のケアをしようという考え方が無理なのかもしれない。
次にストレス状況になったときは,少しこの本にあるツールを試してみよう,そして今からコーピングレパートリーを増やしておこうと思う。きっとそうすれば,今よりお金がかからなくなる可能性は大である。
認知行動療法の学びとストレスケアの一挙両得
書評者: 鈴木 啓子 (名桜大教授・精神看護学)
本書は「認知行動療法入門」とありますが,認知行動療法を患者さんに行うための本ではなく,ケアする人々(特に看護者)自身の心身のセルフケアに活用できるための解説書です。
手に取ると,イラストがかわいらしく,忙しい合間にも短時間でも読み切ることができる内容です。添付されている図表やシートも,使いやすそうです。自分で実際にトライするタイプの自己トレーニングマニュアルになっており,学生でも十分わかる内容になっています。
2冊組のうち,BOOK1では,認知行動療法の考え方と手法を具体的に紹介し,臨床で看護師が出くわすであろうストレス事例を取り上げて,その実際を学習することができます。この中で著者は認知行動療法の適応と限界,実施に当たっての注意事項も丁寧に述べており,読者が安全に使うということにも配慮してあります。どのようなストレス状況にも効く万能薬というものはどこにもないのですから,当然といえば当然ですが,きちんと記載されているところに好感が持てます。
また,BOOK2では,実際によくある事例のストーリーを読みながら,読者自身が「自分だったらどうするだろうか」と考えながら読むことのできる展開となっています。「無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん」「キレる医師のいる職場で恐怖を感じるサチコさん」「精神的に不安定な看護学生とのかかわり方に悩むタマキさん」といった事例において,相談者の相談の経緯,認知行動療法の導入,展開,その後がストーリーになっているので最後まで読まずにはいられません。つい感情移入してしまい,私も読みながら事例の相談者に共感し,「バカバカ」と罵りたくなってしまいましたが,振り返ってみると,自分自身の身の回りにも似たようなことがあることを感じます。
看護師は常識の通用しない相手にも正攻法で自分が頑張る,あるいは我慢することで問題を解決しようとする人が多いのではないでしょうか,と著者はやんわりと述べています。真面目だけれども,物事を柔軟に考えることができずに,ゆとりのない職場環境のもとで強いストレスを抱えて苦労しているということです。真面目と正攻法だけでは燃え尽きてしまいます。本書の中で,心身ともに健康な人とは,幅広く,多様な対処行動(大したことではなく,ちょっとしたこと)が取れ,ときには「迂回する」「放置する」「助けてもらう」といった柔軟な対処方法を用いることができる人だと記載されていたのが印象に残ります。
本書は,入門書ではありますが,認知行動療法の基本的な理論,技法,ツールについても事例を通してわかりやすく紹介され,さらに深く学びたい読者のために,専門書の紹介や研修会,学会なども紹介されています。学生支援や患者支援にも使える可能性を感じさせてくれる本です。最後に,「あの学生はどうしようもない!」「あの教員(看護師)は困る!」「こんな職場で働いていられない!」など毎日腹立たしいことでストレス多くお過ごしの読者の方がおられましたら,是非,ご一読をお勧めします。読むだけでも,気持ちが楽になりますよ。
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