図解 腰痛学級 第5版

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腰痛は生涯で誰もが一度は悩まされる症状のひとつであり、わが国での有訴者率はきわめて高い。運動器症候群(ロコモ:運動器障害による要介護状態)を防ぐためにも、腰痛の発症原因を正しく知ることや発症予防に積極的に取り組むことが重視されている。「人はなぜ腰を病むのか」「腰痛の予防と治療のポイントは何か」を患者に説明する際の勘所を、長年腰痛診療に携わり様々な患者と接してきた著者が説く。
川上 俊文
発行 2011年06月判型:B5頁:328
ISBN 978-4-260-01237-9
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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自序


 この世に生を受けて,早かれ遅かれ,いつか腰のいたみを経験することはほとんどすべての人であろうかとも思われる。
 それは,年をとるにつれて徐々に腰の痛みを訴えたりするばかりでなく,若いときに突然起こってくることもしばしばである。
 ときにはすごく痛くて身動きも出来なかったり,ときにはそれほど大したこともなくなんとか我慢できる程度のものであったり,千差万別である。
 医学的にいえばその原因は複雑多岐にわたり,腰痛を訴えて受診された患者さんは,医師の説明を聴いても十分理解できないことが多いのではないかと考えられる。
 また,どのような治療を受け,日常どのような生活をなすべきか,実際には困惑される患者さんも多いのではないかとも心配される。
 教室で脊椎疾患に多年にわたり情熱をかけて研究と診療を担当された川上博士が,このたび患者さんを直接相手にした本を出そうと思いつかれたのも,このような事情からであろうかと推察される。
 腰痛学校を開きたいという多年の念願をもって,腰痛に悩まれる多くの方々のために本書を出版された川上博士に心から敬意を表するとともに,本書が多くの患者さんがたのためにこの上ない親切な伴侶となることであろうと,信じて疑わない。

 1986年5月
 鳥取大学教授 前山 巌


自序

 初版の序
 「ほんのささいなことで身動きが出来ないほどの腰痛がよく起こる」
 「中腰の姿勢になると腰が痛くてつらい」
 「同じ姿勢を長く続けられない。座っていて立とうとするときがつらい」
 「朝起床のとき,しばらく起き上がれないほど腰が痛い」
 「お尻のあたりから股にかけて,ひどくなると,ふくらはぎから足の指にかけても,痛んだり,しびれる」
 「自転車や乳母車を押すとどこまでも歩けるが,これなしでは,足が持ち上がらなくなったり,痛んだりして歩行を中止しなくてはならない」
 もし,あなたにこのような腰の痛みがあれば,この本はきっと役にたつでしょう。
 この腰の痛み,すなわち腰痛はかぜと同じくらいにごくありふれた病気の一つです。実際に人類の80%以上は一生に一度や二度は腰が痛くなるといわれています。肉体労働者はもちろん,主婦や事務職の人も同じくらい腰痛に悩まされています。年齢的には10代から起こりはじめ,働き盛りの40代で最も多くなり,その後は少しずつ減少するようです。
 もちろんその大半は医療の助けなしで自然に治るものと思われます。しかし,なかには慢性化して,日常の生活に支障を来たしたり,働くことに制限を受けたり,楽しいスポーツができない人もいるのです。そして私ども整形外科の外来には,腰痛に悩まされている人が大変多く来られます。
 私はこれまで多くのこうした患者さんを診てきましたが,経験を重ねるにしたがって,慢性の腰痛や繰り返し起きる腰痛,さらには手術を必要とするような腰痛でさえ,その大半が患者さん自身が自己管理を正しく行えば克服できると思うようになりました。さらにまた,患者さん自身の努力がないと,いくら医師が努力しても決して克服できないと思うようになりました。
 そのため,私は腰痛の正しい知識と対処の仕方を知っていただくため,毎週1回患者さんを集めて講義をしてきました。欧米では,このような試みはlow back schoolという名前で,ずっと以前から行われていました。
 この本は,この患者さんへの講習会の経験をもとに,腰の痛みについて基本的なことがらを知っていただき,その知識に基づいて患者さん自身が自分にあった腰痛の自己管理法を考え,実行できる手助けになればと思い書きました。
 本書は全部で10の課(章)で構成しました。
 第1課は,腰痛の発生から,慢性化にいたる経過,その治療の仕方など腰痛自己管理の総論的なことがらを述べています。必ず読んで下さい。
 第2課は,腰痛の原因疾患についてそれぞれ解説しました。主治医に病名を聞いて,この課を参考にしてあなたの病気を正しく理解して下さい。
 第3課は,腰痛や神経痛を起こす基本的な原因と,なぜ自分自身で努力しなくてはならないかを,より科学的に理解していただくために,解剖,生体力学,加齢による変化などについて説明します。原則的なことです。
 第4課では,病院や医院で行われているいろいろな治療について,具体的に解説しました。たくさんの治療法がありますが,それぞれの治療法は手順や目的が多少とも異なり,また,長所,短所があります。医師はもちろんこれを理解して治療法の選択をするわけですが,患者さんもその意図するところを十分理解することが大切と思います。
 第5課以下第8課までは,自己管理の具体的方法です。特に,慢性腰痛の患者さんは痛みの気付きをよくし(第5課),姿勢によるストレスの軽減を習慣化(第7課)することが大切と思われます。また,人によってはストレスに対抗する体力を養うための運動訓練(第8課)が適していることもあります。この間にも必ず腰痛は出現するでしょう。その場合は第6課,そして第8課のアクティブレストが参考になると思われます。
 第9課では,腰の痛みも含め,痛みという感覚がどのようなメカニズムで生じるのかを,生理的な側面と心理的な側面から説明します。
 第10課では,患者さんの症状や徴候をもとに,考えられる病名や病態を推理し,その治療方針を“こんな時はどうする”というふうにまとめてみました。
 以上が本書の主な内容ですが,さらに巻末に腰痛自己管理テストを用意しました。ポイントの整理に利用していただければ幸いです。
 1986年2月
 著者

 改訂第2版にあたって(1992年10月)
 さて,実は今年で私,医師免許取得後20年を経ることができました。卒後まもなくより脊椎外科の虜になり,一時期は女房に笑われるほど脊柱管狭窄症にとりつかれ,ふり返ると実に多くのことを学んできたように思います。先達である教授,多くの研究者から,ある時は勇気を,ある時は光を与えられて,さらに事実による数々の示唆を患者さんから与えられてきました。本書もそうした多くの患者さんの力添えで完成したと思っています。なかでも第4課のモデルにもなっていただいた長谷川千恵美(旧姓神庭)さんに特にお礼を言いたいと思います。最近は医学は科学であると同時に,またはそれ以上に経験であり,倫理であるように思われてきました。日進月歩の医学の成果を少しでも多くの患者さんと共有できれば幸せです。

 改訂第3版にあたって(1998年2月)
 大学の研究生活を離れてからあっという間に10年以上の年月が経ちました。当時最先端だと自負していても,今では若いお医者さんに置いてきぼりをくわないかなどと,ときに心配もしています。この意味で今回は鳥取大学整形外科学教室の森尾泰夫博士に貴重な資料を快くお譲りいただき感謝しています。また,第一線病院にあって,いやな顔一つせずイラストなど協力してくれる荒川恵子看護婦にお礼を述べさせていただきます。

 改訂第4版にあたって(2004年4月)
 初版を出版以来十数年が経ち,執筆をはじめた頃から数えれば20年は過ぎています。今更ながらにご協力をいただいた皆様に感謝します。ことに私の不躾な出版企画に真摯に目を通していただいた医学書院編集部の横田公博様に感謝いたします。また今回,当院リハ部主任の城音寺正興君が教えてくれた,ローカル筋について紹介できたことが,今後のさらなる腰痛自己管理の研究の糸口になると信じています。

 改訂第5版にあたって(2011年3月)
 ここ10数年の間に腰痛治療において,その根本ともいえる概念の変化がありました。それは伝統的な治療法を科学的に信頼できる方法で検証し直し,それに基づく治療が,ガイドラインとして発表されてきたことによります。いわゆるEBMによる治療指針です。また,急性腰痛(疼痛)と慢性腰痛(疼痛)が,明らかに病態として異なるものだという概念の確立ともいえるでしょう。
 私は,菊地臣一先生により和訳監修された,米国の『成人急性腰痛:その診断と治療(1995)』,ついで『英国急性腰痛管理クリニカルガイドライン(2002)』『慢性非特異的腰痛管理─ヨーロピアンガイドライン(2008)』に出合って,雷に打たれたような衝撃を受けました。その衝撃を受け止め自分の中で消化していく中で,人々が享受すべき医療が,実は国々の保健行政により,著しく異なることに気づかされました。
 この本の初版は1986年。思い起こせば,私は腰部脊柱管狭窄症に関する学位論文を提出し,「手術治療の対象にならない慢性腰痛の患者さんにどのように向き合えばよいのだろうか」と煩悶していました。38歳の頃です。その頃から慢性腰痛患者さんには,自己管理(運動療法)が欠かせない治療法の一つであると思っていました。私は初版の原稿を送り届けると,大学での研究を離れ,腰痛患者を第一線で診る道に進みましたが,その頃漠然としていた自己管理の要点が,多くの研究者の手により近年明らかにされてきました。私はその果樹を頂き,私自身は第一線の臨床家として反芻してきたつもりです。
 第5版は,第4版までの編集スタイルとかなり違い,ほとんど1から作りなおすつもりで書き上げました。忙しい日常の合間に執筆したので不勉強で,十分とは言えませんが,幸い医学書院のご理解をいただき,他国のガイドラインに対する私の賛意も疑問も言葉にできましたし,私の腰痛治療の概念も本書を書きながらかなり整理することができました。私を支えてくれた同僚諸氏,特に当院リハビリスタッフ,医学書院 菅陽子さんに感謝いたします。

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概論
第1課 腰痛とは何か
 A.腰痛の疫学
 B.患者さんの訴え
 C.痛みの部位
 D.痛みの強度
 E.腰痛の予後
 F.わが国の現状と『英国急性腰痛管理クリニカルガイドライン』の相違点
 G.腰痛治療の留意点
 H.腰痛の診断名
第2課 腰のしくみ
 A.腰の安定性を保つしくみ
 B.脊柱の神経保護システム
 C.加齢による退行性変化(変性)
第3課 痛みとは何か
 A.痛みの認識
 B.組織の損傷部位で起きること
 C.痛みの伝導経路で起きること
 D.痛みの悪循環
 E.疼痛の分類から考えられる除痛法
 F.急性疼痛と慢性疼痛
 G.腰痛と関節痛の比較
第4課 腰痛の発生と進行
 A.「第一の腰痛」の発生
 B.「第二の腰痛」の発生
 C.悪循環の腰痛
第5課 腰痛の病期ごとの治療方針・生活指導
 A.治療初期
 B.回復前期
 C.回復後期
 D.維持期
 E.超治癒期

各論
第6課 腰痛の検査(補助診断)・患者さんへの説明
 A.腰痛診療で用いる医学的用語
 B.腰椎のX線検査
 C.腰椎のCT像
 D.腰椎のMR像
 E.骨シンチグラフィー
 F.電気生理学的検査(筋電図)
 G.腰痛診断のための血液・尿検査
第7課 腰痛診療-疾患編
 ぎっくり腰(腰椎捻挫)
 坐骨・大腿神経痛,帯状疱疹による神経痛
 腰椎椎間板ヘルニア
 中心性腰椎椎間板ヘルニア
 腰部脊柱管狭窄症
 骨粗鬆症
 仙腸関節性腰痛
 変形性脊椎症,強直性脊椎骨増殖症
 腰椎椎間板症
 腰椎椎間関節症
 腰椎不安定症
 腰椎変性すべり症
 腰椎分離症または分離すべり症
 成長期椎体終板障害またはショイエルマン病
 特発性側彎症
 脊髄係留症候群,低位脊髄円錐,緊張性終糸
 筋筋膜性腰痛,筋緊張・筋疲労性腰痛
 不良姿勢
 腰椎骨折,脱臼,横突起骨折
 腰椎変性側彎症
 脊髄腫瘍(馬尾腫瘍)
 脊椎腫瘍
 化膿性脊椎炎,腸腰筋膿瘍
 結核性脊椎炎(脊椎カリエス)
 血清反応陰性脊椎関節症
 強直性脊椎炎
 リウマチ性多発筋痛症
 多発性筋炎,皮膚筋炎
 線維筋痛症
 腰椎以外の病変がもとで起こる腰痛
 慢性腰痛症
第8課 プライマリ・ケア
 A.急性腰痛のプライマリ・ケア
 B.慢性腰痛のプライマリ・ケア
 C.慢性腰痛の主な治療法
第9課 鎮痛療法
 A.薬物療法
 B.注射ブロック療法
 C.物理療法
 D.コルセット
 E.外来治療と入院
 F.手術療法
第10課 腰によい姿勢と悪い姿勢
 A.よい姿勢の基本(大原則)
 B.立位時に気をつけること
 C.中腰や運搬・持ち上げ作業時の注意
 D.椅子や床での座り姿勢,車両運転時の注意
 E.就寝時の注意
 F.姿勢を換えるとき
 G.職場での生活習慣
 H.そのほか日常の生活習慣
第11課 腰痛体操
 A.運動訓練の6大原則と2つの付則
 B.腰椎を安定させる訓練
 C.ストレッチング(ストレッチ訓練)
 D.協調訓練と姿勢調整運動
 E.総合運動・総合訓練
 F.腰痛体操の行い方

 索引

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患者さんが知りたい,医師が知りたい「腰痛の “?” の答え」がここにある
書評者: 山下 敏彦 (札幌医大教授・整形外科学)
 本書の初版が発刊されたのは1986年である。筆者は初版以降,改訂のたびに本書を買い替えており,もう20年以上も愛読していることになる。当時まだ研修医だった筆者にとって,図が多くコンパクトに腰痛を解説した本書は,非常に魅力的だった。初版から4版は,各項目が基本的に見開き2ページ(左が図,右に解説文)にまとまっており,日常の腰痛診療で疑問に思うこと,より詳しく知りたいことに明解に答えてくれた。筆者の患者への説明(ムンテラ)は,ほとんど本書の内容を基にしていた。したがって,川上俊文先生は,筆者にとっての腰痛診療の先生であるといっても過言ではない。

 今回の改訂で,本書は思い切ったバージョン・アップを遂げている。筆者が気に入っていた見開き2ページの形式が廃止されたのはやや残念だが,図と写真が多用されている特長は変わらないし,2色刷りで読みやすく工夫されている。そして,何より内容がより広範かつ多角的なものとなりボリュームも大幅にアップしている。もはや,これまでの一般向けの解説書というイメージはなく,腰痛に関する立派な「成書」であるといってよい。疼痛の神経学的・薬理学的メカニズムから脊柱のカイネティクスまで,最新の知見が取り入れられており,川上先生のup-to-dateな文献・情報の収集力,分析力には感服する。しかし,初版以来貫かれてきた,語りかけるような平易な記述は健在である。布団の硬さからタバコや性生活の可否に至るまで,外来で患者から訊かれて答えに窮するような質問も,Q&A形式にして随所にまとめて掲載されている。このような,どの教科書を捲っても書いていないことこそ,実は患者や一般臨床医が知りたいことなのである。

 本書のもう一つの特長は,川上先生ご自身が実際に行われた臨床研究のデータや,さらには先生ご自身が経験された数度の腰痛体験が随所に提示されていることである。すなわち,本書は実際の臨床で先生が獲得されたエビデンスに基づく「生きた」知見・情報に満ちており,従来の紋切り型の記述や定説の復唱にとどまる教科書の対極にあるものだといえる。エビデンスといえば,欧米の腰痛ガイドラインが思い浮かぶが,先生はそれらをそのまま受け入れるのではなく,ご自身の臨床経験に照らし合わせ,日本の現状により適合した治療体系を提唱しておられる。

 このたびの,装いも内容もグレードアップした『図解 腰痛学級 第5版』は,まさに川上先生の腰痛診療・研究の集大成といえるものである。本書は,一見すると患者・一般向け実用書ともとれるが,実際には,医師が患者に腰痛を説明するため,いやむしろ医師自身が腰痛を理解するための本である。もちろん腰痛治療にかかわるコメディカル・スタッフにとっても大いに役立つだろう。本書は,これから腰痛を勉強しようとしている研修医には「入門書」として,日常の腰痛診療で壁にぶつかった専門医には「手引書」として,そしてすべての人にとって面白く読める腰痛の「読み物」として,迷わず推薦できる一冊である。
最先端の研究成果と経験を統合した著者の集大成
書評者: 菊地 臣一 (福島医大理事長兼学長・整形外科学)
 疾患概念の劇的な変化という観点からすれば,「腰痛」は代表的な一つに挙げられるであろう。と同時に,医療の評価基準も,近年革命的といえるほど変わってしまった。

 捉え方の変化の代表的な点として,まず,急性腰痛の単なる遷延化が慢性腰痛ではないということが明らかになった。そして,関与因子として心理・社会的因子が,われわれが従来認識していた以上に早期から深く関与していることもわかってきた。

 次に,非特異的腰痛はできるだけ医療の対象化にしないことの重要性への認識,すなわち自己管理の推奨である。最後に,患者自身が治療の選択,実施の遂行に積極的に参加することが治療成績や満足度を考える上でも大切である点がわかってきたことである。

 一方,治療成績評価基準の変化に目を転ずれば,まず,「医師側からのみの評価」から「患者の視点の導入」の転換が挙げられる。つまり,患者のQOLや満足度の重視である。そして,患者の価値観の尊重である。これにより,同じ病態でも個人により治療の選択肢は異なってくる。治療方針の選択を医師と患者が分担することにより「共闘」という信頼関係が成立する。

 次に,医療提供側と患者との信頼関係の存在が治療成績や満足度に好影響を与えるという事実が立証された。EBM(evidence-based medicine)が明らかにしたものは,皮肉にも,NBM(narrative-based medicine)の重要性なのである。

 最後に,良いか悪いかは別にして,「信頼の医療」から「契約の医療」への移行がある。ここでは,医療提供側から患者への教育・指導,あるいは啓発活動は欠かせない。残念ながら,最新の文献では,医療提供側が提供している説明文書のほとんどは,一般の人は理解が困難であるという報告がされている。

 このような時代背景から本書をひもといてみる。

 まず,本書は1986年に第1版が発刊されている。以来,版を重ね,本書は第5版である。その間,四半世紀,本書は腰痛の研究の進展とともに歩んできたといえる。最新版である本書は,質,量ともに充実した内容と構成を有している。この第5版の特徴は,最先端の研究成果と自分の経験を統合した著者の集大成の著書であるといえる。すなわち,EBMというscienceと著者のNBMというartの統合である。

 第二に,最近重視されつつあるself-medicationの概念が盛り込まれていることが特徴的である。つまり,「受け身の医療」から,患者も参加する「攻めの医療」の導入である。

 第三に,わが国の医療体制や医療保険の実態を踏まえて,わが国における腰痛のプライマリケアの在り方を提唱している点がある。

 本書は,専門書としても十分通用する。豊富で明快な図は,Macnabの名著『腰痛』のそれをほうふつとさせる。平易な文章は,腰痛に悩んでいる一般の人でも十分理解可能である。この内容,量でこの値段は安い。一般の人のみならず医療従事者にもお薦めである。

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