新臨床栄養学 第2版

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新たな陣容で全面書き下ろした最新・最強の医家向け臨床栄養学テキストの決定版。病態に根ざした栄養の基礎から実践的栄養治療のノウハウまで、精緻な記載で多方面の読者に広くアピールする内容がさらに充実。
編集 馬場 忠雄 / 山城 雄一郎
編集協力 雨海 照祥 / 佐々木 雅也 / 宮田 剛 / 島田 和典
発行 2012年10月判型:B5頁:792
ISBN 978-4-260-01615-5
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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第2版 序

 岡田 正先生の初版「新臨床栄養学」に対する熱い思いを継承し,本書を授業などに使っていただいている読者の要望に応え,個別の項目を見直し,さらに,最新のトピックスを加え,今回,改訂を行うことになった.編集方針は,初版を受け継ぎ,医学としての栄養学,医師のための実践的臨床栄養学のテキストというコンセプトのもとに,最新の知見,データに基づく改訂を目指した.改訂編集には,編集協力者として,雨海照祥先生,佐々木雅也先生,宮田 剛先生,島田和典先生にご参画いただいた.
 医学部教育においては,生理学,生化学,内科学,外科学,小児科学,皮膚科学など各分野において,正常時から病態時における栄養代謝の基礎的事項から臨床面において幅広くカリキュラムに入っているが,断片的である.本書は,臨床栄養という横断面でまとめ,理解を深めるとともに,臨床の現場で実際に役立つ成書テキストとして編集した.
 生活習慣病といわれる高血圧,脂質異常症,糖尿病,痛風,癌などは,日常の食生活を中心とした,基本的な生活習慣が病態形成に深く関わっている.病態時においては,食事によるエネルギー補給は,疾病からの回復に必要なものである.とくに,術前術後の周術期や重篤な状態においては,高エネルギー補給を要することから,必要不可欠の栄養素を含む栄養剤の強制的な投与を行う.栄養剤の投与経路は経口的な投与ルートとして鼻腔チューブ栄養から,胃瘻,腸瘻など内視鏡を用いたルートが,経静脈的には高エネルギー投与に対応した中心静脈栄養が行われるようになった.
 一方,栄養剤についても経腸栄養剤の開発が進み,また,栄養学的知見を加えた組成比率,さらに腸粘膜の萎縮や腸内細菌を活用するものまで,各種のものが作成され,臨床応用されている.さらに,肝不全にみられる高アンモニア血症の改善や肝細胞機能の改善をねらって,分岐鎖アミノ酸を用いた病態時の栄養療法も開発されてきた.経静脈栄養については,高濃度化,またはグルコースとアミノ酸との混合,さらに脂肪乳剤など,輸液製剤の技術的な改良を加え,安定した栄養製剤が用いられている.
 栄養管理には,正常な体内における代謝を理解し,その上で病態時に適切な栄養法を選択し,栄養学的効果を迅速に評価することが求められる.疾病時の栄養管理については,病態に即した適切な栄養ルートの確保や栄養剤の選択,すなわち組成や量などの決定とその管理には,医師のみではなく,栄養士,薬剤師,看護師などの共同作業が必要である.Nutrition Support Team(NST)が臨床の現場では組織されており,患者の基本的なデータをもとに患者の病態に即した栄養管理と評価が行われる.臨床栄養に携わる職種は多岐にわたり,しかも構成員が一定水準の知識を持ち,それぞれの特色を生かして,初めて良質な栄養管理が可能となる.
 本書は,臨床栄養に携わる研修医や医師が身につけておくべき栄養学に関する基本的知識とスキルの“スタンダード”で構成されているが,栄養士を含むNSTの構成員にも基礎的な研究成果を通して臨床栄養とのつながりが明確に示されており,日常の臨床栄養の理論と実践に役立ち,座右の書になると信じている.

 2012年初秋
 編者代表 馬場忠雄

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I.総論
 1.医学栄養学の歴史
 2.医学部における臨床栄養教育の方向

II.基礎編
A.病態生化学
 1.エネルギー代謝
 2.水・電解質の代謝(脱水症)
 3.糖質代謝
 4.タンパク質・アミノ酸代謝
 5.脂質代謝
  a.脂質の種類と機能
  b.脂質の消化吸収と代謝調節
 6.脂溶性ビタミンの生理活性
 7.水溶性ビタミンの生理活性
 8.微量元素の代謝
 9.食物繊維からルミナコイドへ-食物繊維の新しい概念と生理作用
 10.過酸化脂質
B.病態生理学
 1.食欲の調節
 2.消化・吸収の調節機構
 3.妊娠・授乳と栄養
 4.乳幼児の成長・発育
 5.加齢と栄養
 6.創傷治癒と栄養
 7.栄養と免疫
 8.栄養とサイトカイン
 9.遺伝子発現と栄養
 10.侵襲と神経内分泌反応
 11.成長因子と栄養
 12.腸内細菌叢とプロバイオティクス
C.日本人の食事摂取基準(2010年版)
 日本人の食事摂取基準(2010年版)

III.臨床編
A.栄養アセスメント
 1.摂取量,成分
 2.身体構成成分
 3.生化学検査
 4.生理機能による評価
 5.間接熱量測定
 6.栄養スクリーニングとアウトカム指標
B.栄養法
 1.経口摂取(経口食)
 2.経腸栄養
 3.経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
 4.静脈栄養
  a.成人
  b.小児
 5.経腸栄養法と静脈栄養法のメリットとデメリット
 6.健康(栄養)補助食品
 7.在宅静脈・経腸栄養
C.疾患と栄養
 1.肥満
 2.メタボリックシンドローム
 3.脂質異常症
 4.動脈硬化症
 5.糖尿病
 6.高血圧
 7.アレルギー疾患
 8.骨粗鬆症
 9.神経性食欲不振症
 10.精神疾患
 11.神経疾患
 12.摂食・嚥下障害
 13.先天性代謝異常症
 14.食物アレルギー
 15.低出生体重児
 16.アルコール依存症
 17.貧血
 18.呼吸不全(慢性閉塞性肺疾患)
 19.心不全,心臓悪液質
 20.HIV感染症
 21.消化性潰瘍
 22.慢性下痢
  a.成人
  b.小児
 23.炎症性腸疾患
 24.短腸症候群
 25.腸管不全
 26.高尿酸血症
 27.膠原病
 28.脂肪肝
 29.肝炎(急性・慢性)
 30.肝硬変,肝癌
 31.肝移植
 32.胆汁うっ滞
 33.胆石症
 34.膵炎(急性・慢性)
 35.膵癌
 36.食道癌
 37.胃癌
 38.大腸癌
 39.慢性腎臓病(CKD)
 40.ネフローゼ症候群
 41.術前術後管理
 42.多臓器不全
D.トピックス
 1.高齢者におけるサルコペニアと栄養
 2.NST
 3.オーダーメイド栄養
 4.褥瘡
 5.小児の虐待
 6.悪液質,緩和医療
 7.エビデンスとガイドライン
 8.アスリートの栄養管理
 9.オートファジー

欧文索引
和文索引

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チーム医療の要となる医師の研修・教育への貢献が期待される新テキスト
書評者: 島本 和明 (札幌医大学長)
 栄養士,管理栄養士の先生方と学会や研究会で一緒になると,よく言われることは,医師は栄養学についてきちんと学んでいない,知らない,興味がない,そのような先生が多いという不満です。栄養学に関しては,我流で患者さんに接している医師が多く,栄養士の先生方が困ることもあるそうです。

 確かに,自分自身で考えても,栄養学について系統的に授業を受けたことはありませんでした。栄養学という独立した講座は本学になく,医学部の中でも栄養学講座を持っている大学は極めて少ないのが実情です。講座がある学校でも,栄養学部を併設している場合か,糖尿病など栄養に密接に関連する臨床教室が名前をつけているケースが多く見受けられます。一方で,高血圧や糖尿病,脂質異常症,動脈硬化,肥満などの分野では,国の健康日本21政策もあって,予防医学の概念が重視され,栄養学についても討論,研究,そして応用する下地ができつつあります。特に,特定健診・特定保健指導が開始されて5年たち,種々の医学分野で食事療法,栄養学の概念がより大きな存在となってきています。

 そのような中で,『新臨床栄養学』の第1版が岡田正先生の編集で2007年に刊行され,広く栄養学の学習,研修に役立ってきました。今回,馬場忠雄先生,山城雄一郎先生の編集の下,新しい執筆者を加えて第2版が出版されました。まず大きな特徴は,総論で,医学部における栄養学の重要性について,医学栄養学の歴史,医学部における臨床栄教育の方向の2項で,わが国の医学栄養学の現状と課題が整理されており,医学教育に当たるものは,まずこの総論だけでも読んでいただきたいところです。

 基礎編においては,病態生化学と病態生理学が遺伝子発現やサイトカインなど新しい情報も網羅して紹介されております。臨床編では,栄養アセスメント,栄養法,疾患と栄養がまとめられています。よく整理されており,大変わかりやすいです。特にトピックスにおいてサルコペニアやNST,エビデンスとガイドラインなど実地医療にも有益な新しい情報が紹介されています。NSTを擁することは総合病院では当然のようになってきている現在ですが,チーム医療の要となる医師の力量が期待され,問われているともいえます。NST担当医師の研修に,教育に本書が広く貢献することが期待されます。

 医学教育における栄養学の重要性を再認識し,大学における教育制度の改善の必要性を感じつつ読ませていただきました。一方,わが国においては特定健診・特定保健指導が開始されて5年を経過しました。特定保健指導の中枢は食事療法であり,栄養指導です。見直しを行い,改善して2013年度より第2期目の特定健診・特定保健指導がスタートします。このようなシステムを遂行する上でも有用な書物であると確信しています。
長年のライバルによる画期的な医家臨床栄養学テキストの今日的大改訂
書評者: 小越 章平 (高知医大名誉教授)
 このたび医学書院より,『新臨床栄養学』が6年ぶりに改訂になり刊行された。本書は馬場忠雄先生ならびに山城雄一郎先生が中心となり,それに若手というより現在,旬のベテラン4名が編集協力者として加わって全面改訂が行われ,第2版として刊行に至ったことに,まずはご同慶の至りと心よりお祝い申し上げる。

 初版は紹介するまでもなく,故岡田正先生の孤軍奮闘の力作であり,当時は少なかった医家向けのスタンダードを目指したテキストで,かなり画期的と言えるものであった。栄養学にとってのこの30年は,高カロリー輸液,そして経腸栄養は成分栄養法を中心として方法論はもとより,その臨床効果は「抗生物質に並ぶ20世紀最高の治療手段」といわれ,重症患者の管理には不可欠のものとなった時代である。今から振り返って,当初臨床栄養学の全般を網羅するこのような教科書を完成させたのは,全く岡田先生の情熱のほかの何ものでもないと感心させられる。

 私事であるが,はからずも岡田先生と評者は年齢も近く,同じ時期に米国留学(岡田先生はミネソタ大学,評者はペンシルベニア大学)を経て,帰国後の研究も「外科栄養」の仕事であった。やはりお互い意識せざるを得なかったであろう(その辺の事情は,以前に岡田先生の追悼文集にまとめて書いた「静脈・経腸栄養の発展を思い出すままに」[『岡田先生の思い出』ジェフコーポレーション刊,2011年]を参照していただきたい)。

 岡田先生と評者はよく対比され,当初より「西の岡田,東の小越」「静脈栄養の岡田,経腸栄養の小越」「外科代謝の岡田,JSPENの小越」などと時代の流れとともに呼ばれたようである。先生が本書の第1版を企画されたころは,まだ当時のそうしたライバル意識が残っていたためか,評者の「エレメンタル・ダイエット」関係,「栄養アセスメント」関係の仕事についての文献引用もわずかにとどまっていた。しかしその後はお互いの仕事をよく理解するに至り,学会での無二のライバルであり,親友となった。

 私事の話が多くなったが,今回の第2版の改訂は岡田先生が当時から,30余年後の今日のこの領域の発展を見越していたかのような,さらなる内容の充実を図り臨床栄養の理論と実践を学生,一般医家にも良く理解できるように,すべてを漏れなく取り上げている。

 改訂を受け持たれた馬場先生,山城先生はじめ,また編集協力者の先生たちの御努力に敬意と謝意を表したい。間違いなく理論だけでなく日々変化する実践的栄養管理テクニックのテキストとして多くの医家,学生,NSTに興味を持つコ・メディカルの方々に薦められる。そして日進月歩の変化に即した今後のきめの細かい改訂を希望するものである。

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