口蓋裂の言語臨床 第3版

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わが国の口唇裂・口蓋裂の治療体制は近年著しい拡がりを遂げ、チーム医療が確立しつつある。本書はまず言語聴覚士がその中で必要な知識や技術を解説した。さらに口蓋裂は長期のケアを要する疾患であることから、子どもの成長、合併する疾患によって携わるそれぞれの療育施設や学校の言語聴覚士・教師・臨床心理士などにも有用な言語臨床の知識を幅広く盛り込んだ。すべての口唇裂・口蓋裂の方が等しく十分なケアが受けられることを願い本書をお勧めする。
編集 岡崎 恵子 / 加藤 正子 / 北野 市子
発行 2011年03月判型:B5頁:216
ISBN 978-4-260-01239-3
定価 5,500円 (本体5,000円+税)

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第3版のはしがき

 1987年に『口蓋裂の言語臨床』の初版を,2005年に第2版を出版しましたが,この間,口唇裂,口蓋裂の医療面は,手術法の新たな開発や選択の変化があり,歯科領域,なかでも歯科矯正治療に新たな展開がみられています.一方,口蓋裂の言語臨床の領域においても,医療面の進歩への対応や,発達障害を併せもつ口蓋裂児・者への対応が必要になってきました.特に,言語臨床の領域では,2007年に日本コミュニケーション障害学会口蓋裂言語委員会による『口蓋裂言語検査』が出版され,口蓋裂言語に共通した評価を行う基盤ができました.
 こうした事情から,今回,版を改め,『口蓋裂の言語臨床』改訂第3版を出版することにしました.執筆者にも口蓋裂の言語臨床に携わっている新進の言語聴覚士を加え,本書の内容に大幅な改訂を加えました.

 本書の構成は,以下の通りです.
 第1章 口蓋裂治療における言語臨床家の役割
 第2章 口蓋裂の言語臨床に必要な基礎知識
 第3章 口蓋裂言語
 第4章 口蓋裂言語の評価
 第5章 口蓋裂言語と治療
 第6章 乳児期の言語臨床
 第7章 幼児期の言語臨床
 第8章 学童期の言語臨床
 第9章 思春期(中学生,高校生)・成人期の言語臨床
 第10章 口蓋裂に他の問題を併せもつ症例
     1 知的障害
     2 発達障害
        A 広汎性発達障害
        B 注意欠陥/多動性障害
        C 発達性読み書き障害
     3 難聴
     4 吃音
     5 症候群症例
 第11章 口蓋裂の言語臨床における今後の課題

 わが国において,この10数年の間に,口唇裂口蓋裂の治療はチーム医療で行うという共通認識が確立してきました.最近の調査によると,口唇裂・口蓋裂チームを標榜する医療機関は300を超え,20年前には50余のチームであったことからみると,その変貌には著しいものがあります.したがって,言語聴覚士にとって,現時点で得られる知識や技術を駆使し,チームの中で活躍することが重要となっています.一方,口蓋裂は,長期のケアを要する疾患であることから,医療機関の中でのケアにとどまらず,子どもの成長に伴って,また,合併する疾患によって,療育施設や学校で言語聴覚士や教師,臨床心理士など多くの方々が口蓋裂の言語臨床に携わっています.
 すべての口唇裂・口蓋裂の方々が等しく,十分なケアが受けられるように,現段階での医療面の治療や言語臨床の内容を本書に盛り込みました.言語聴覚士だけではなく,口唇裂・口蓋裂の臨床に携わる医師や歯科医師,臨床心理士や教師の方々,また,将来,その仕事に携わる学生の方々に本書をお読みいただき,活用していただければ,編者として大きな喜びです.
 本書の執筆に当たっては,昭和大学唇裂口蓋裂診療班に所属する各科の先生方のご指導,ご協力を頂きました.特に,形成外科の大久保文雄教授には,医療面についてのご教示や図の作成など多大なご指導を賜り,また,矯正歯科の佐藤友紀先生にも多くのご教示を頂きました.上智大学理工学部荒井隆行教授,千葉県こども病院形成外科宇田川晃一部長,あいがせ矯正歯科鮎瀬節子先生,ひらかわ矯正歯科平川崇先生,その他,関連する領域の先生方から資料の提供やご教示をいただきました.また,言語臨床に携わっている言語聴覚士の方々から多くのご示唆を頂戴しました.これら諸先生に感謝申し上げます.
 さらに,口唇裂・口蓋裂の患者の方々やそのご家族の皆様にも感謝申し上げたいと存じます.私どもは,日々の患者の皆様やご家族とのかかわりの中で,たくさんのことを学び,そのことが本書の根幹を成していると考えております.
 最後に,本書の出版にご尽力いただきました医学書院医学書籍編集部の中根冬貴氏,制作部の板橋俊雄氏に感謝申し上げます.

 平成23年初春
 編者 岡崎恵子・加藤正子・北野市子

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第1章 口蓋裂治療における言語臨床家の役割
 1 チームアプローチによる口蓋裂の治療
 2 口蓋裂治療における言語臨床家の役割
第2章 口蓋裂の言語臨床に必要な基礎知識
 1 発声発語器官の概略
 2 発生
 3 口唇裂・口蓋裂のタイプ
 4 口唇裂・口蓋裂の発生頻度
 5 合併症
 6 鼻咽腔閉鎖機能
 7 手術
 8 耳鼻科領域の問題
 9 歯科領域の問題
 10 心理・社会的問題
 11 社会資源の活用
第3章 口蓋裂言語
 1 口蓋裂言語とは
 2 言語発達
 3 構音発達
 4 声の問題
 5 構音障害
第4章 口蓋裂言語の評価
 1 基本事項
 2 口腔・顔面の形態と機能の評価
 3 鼻咽腔閉鎖機能の評価
 4 言語の評価
 5 耳鼻科領域に関する評価
 6 心理・社会面の評価
第5章 口蓋裂言語と治療
 1 医学的治療
 2 言語治療
第6章 乳児期の言語臨床
 1 評価
 2 治療
第7章 幼児期の言語臨床
 1 評価
 2 治療
第8章 学童期の言語臨床
 1 評価
 2 治療
第9章 思春期(中学生,高校生)・成人期の言語臨床
 1 評価
 2 治療
第10章 口蓋裂に他の問題を併せもつ症例
 1 知的障害
 2 発達障害
 3 難聴
 4 吃音
 5 症候群症例
第11章 口蓋裂の言語臨床における今後の課題
 1 チームアプローチの充実
 2 医学的技術の展開と言語臨床との整合性
 3 医学的分野での新たな責務
 4 言語評価
 5 言語治療
 6 国際化への対応
 7 言語臨床分野での研究および長期データの集積と後継者の育成

付録1:日本語の音
付録2:口蓋裂に関する書籍・雑誌
索引

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口蓋裂の言語臨床における必読の書,待望の改訂版
書評者: 高戸 毅 (東大大学院教授・口腔外科学)
 『口蓋裂の言語臨床 第3版』出版にあたり,心からお慶び申し上げます。斯界における日本有数の執筆陣によって,1987年に本書の初版が,そして2005年には第2版が出版され,初版の出版から既に30年近くの歳月が過ぎましたが,この長きにわたって本書は口唇口蓋裂の治療に携わる多くの医療関係者に読み続けられており,口蓋裂の言語臨床における必読の書となっております。

 口唇口蓋裂治療では,患者の成長発育段階に応じて,医師・歯科医師・言語聴覚士など,多分野の専門家から構成されるチームが集学的な治療を行う必要がありますが,本書は,まさにその観点から執筆・編集されており,口蓋裂の言語臨床に関わる上で必要な評価と治療について,乳児期から成人期まで年代別に説明しています。一方,近年の科学技術は日進月歩で目を見張るものがありますが,それは口唇口蓋裂の治療に関しても同様で,第2版の出版後わずか6年の間にも新たな手術法が開発され,また,歯科矯正治療を中心に歯科分野でも新たな展開がありました。口蓋裂の言語臨床の領域でも,2007年に『口蓋裂言語検査』が出版され,2010年に『新版構音検査』で音声表記が一部改訂されるなど,大きな変化・進展がありました。これらに対応するために今回の第3版でも第2版と同様に適切な改訂が行われました。

 まず,手術法や歯科領域における最新の知見が述べられている点は,手術や歯科治療の実態に触れる機会が少ない機関で口蓋裂の言語臨床に携わっている方々にとって非常に有用であると思います。また,鼻咽腔閉鎖機能の評価は咽頭弁形成術の必要性の有無を判断するために非常に重要ですが,正確な評価を行うためには経験が必要です。そのため,臨床経験の浅い方にとって,鼻咽腔閉鎖機能の正確な評価を行うことは決して容易なことではありませんが,今回の改訂では,鼻咽腔閉鎖機能の評価についてより詳しく,より実践的な記述がされているため,評価を行う際に大変参考になるでしょう。さらに「知的障害」と「発達障害」を併せ持つ症例についても加筆されており,広く言語聴覚士の手助けとなるだけでなく,医師や歯科医師にとっても参考になると思われます。

 こうしたことから,第3版の出版はまさに臨床現場で待ち望まれたものであったといえるでしょう。今後も医学の進歩と時代の変化に合わせて適宜改訂が行われることと思いますが,本書は常に「口蓋裂の言語臨床におけるバイブル」として光り輝き続けるものと確信します。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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