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不整脈診療レジデントマニュアル

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本書を見れば、不整脈の病態、診断、治療の流れなど全体像がつかめ救急対応ができる。また薬剤の適応・具体的な使い方などの知識が得られ、非薬物療法の適応・概要はもちろん、その前後の患者管理などにも役立つ。若き循環器医、そしてコメディカルスタッフにとっても、持っていると何かと安心な1冊。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 小林 義典 / 新田 隆
発行 2012年03月判型:B6変頁:432
ISBN 978-4-260-01225-6
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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  • 序文
  • 目次
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はじめに

 不整脈は循環器疾患の一領域ですが,臨床現場で遭遇する頻度が高く,循環器診療を専門とする医師のみならず,日常の外来,病棟診療で各種不整脈の診断や治療方針の決定を迫られることが経験されます.しかし,不整脈はその種類,発生背景,メカニズム,治療法など非常に多岐にわたるため,診断,治療を含めた診療方針の組み立てが困難です.したがって不整脈は一般診療医にとってなじみにくい分野であり,系統立てて学ぶことが難しいと感じている医師が少なからず見受けられます.このような背景から,不整脈診療の全体についてわかりやすく,しかも短時間で読解できる書物が待ち望まれていました.
 本書は不整脈全般を学ぼうとしている循環器専門医から,一般診療医,研修医を含めた医師や,一定以上の経験を積んだ看護師,検査技師,医療工学技士,CDRを対象として書かれた診療マニュアル本であります.その内容は,不整脈の基礎知識から始まり,診断法,薬物治療,非薬物治療を含めた治療法総論,不整脈各論で構成されており,不整脈を種類ごとに,基本知識のみならずその診断・治療法に関して詳細に,かつ系統立てて学ぶことができます.また,できるだけ医療現場のニーズに合う内容になるように工夫されています.すなわち,臨床現場で必要な情報を迅速に提供できるように,図表やフローチャートを多く掲載するように心掛けました.付録には不整脈診療に関する新医療機器や診療ガイドラインを紹介しています.さらに,本書は2012年度から開始される不整脈専門医の研修カリキュラムに沿った内容となっており,不整脈分野の研修あるいは専門医試験に向けて準備をする際に活用することができます.
 本書は筆者が3年前まで所属していた日本医科大学付属病院心臓血管外科の新田隆教授とともに企画,編集しました.基礎系,内科系分野は筆者が,手術治療およびデバイス治療分野は新田先生が担当しました.2009年からは筆者が東海大学に異動したこともあり,日本医科大学の内科系と外科系,および東海大学内科系の不整脈診療の経験豊富な後輩たちに項目別の執筆をお願いしました.執筆を快く引き受けてくれた先生方に感謝するとともに,本書の企画から尽力していただいた医学書院の安藤恵氏,また編集,制作を担当していただいた大橋尚彦氏,田中晟喜氏に厚く御礼申し上げます.

 2012年1月
 小林義典

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 はじめに
 略語一覧
 アルゴリズム,鑑別診断,診断基準などの一覧
 ガイドラインの一覧
 各種分類,図表の一覧

1章 不整脈の基礎知識
 1.心臓刺激伝導系の解剖と生理
 2.イオンチャネル,活動電位と不整脈
 3.不整脈の分類
 4.各種不整脈のメカニズム
2章 不整脈診断へのアプローチ
 1.不整脈の症状
 2.不整脈診断に必要な各種検査法
  A.12誘導心電図でどこまでわかるか
  B.ホルター心電図記録および診断のコツ
  C.イベントレコーダー検査
  D.運動負荷試験
  E.心室内遅延電位,T波オルタナンス,T波バリアビリティ,
    ハートレートタービュランス
  F.head-up tilt試験,その他の自律神経機能検査
  G.心臓超音波検査
  H.心臓電気生理学的検査
  I.遺伝子疾患の診断
3章 不整脈の薬物治療
 1.抗不整脈薬の分類(Vaughan-Williams分類,Sicilian-Gambit分類)
 2.心房細動に対する抗不整脈薬治療
 3.その他の上室不整脈に対する抗不整脈薬治療
 4.心室不整脈に対する抗不整脈薬治療
 5.心不全,低心機能例に対する抗不整脈薬治療
 6.各種不整脈に対するアップストリーム治療
4章 不整脈の非薬物治療
 1.体外式電気的除細動(AEDを含む)
 2.一時的体外式ペースメーカ治療
 3.恒久的ペースメーカ治療
 4.ICDの適応と植え込みの実際
 5.CRT,CRT-D
 6.カテーテルアブレーション
  A.総論:カテーテルアブレーションの原理・方法・適応不整脈など
  B.上室不整脈
  C.心室不整脈
 7.不整脈の外科治療
  A.心房細動:テイラーメイド治療について
  B.心室頻拍
 8.心臓リハビリテーション
5章 不整脈の診断と治療
 1.洞不全症候群
 2.房室ブロック
 3.神経調節性失神,頸動脈洞症候群など
 4.期外収縮
 5.上室頻拍(心房頻拍を含む)
 6.WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群など
 7.心房粗動
 8.心房細動
 9.心室頻拍
 10.心室細動
 11.QT延長症候群
 12.Brugada症候群
 13.非Brugada型特発性心室細動(早期再分極症候群,QT短縮症候群)

付録
 1.近年の植込み型デバイス治療の進歩と新しい機能
 2.カテーテルアブレーションにおける最新周辺機器
 3.各種不整脈診療のガイドライン

 和文索引
 欧文索引

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もれなく,かつコンパクトに不整脈診療を詰め込んだ本
書評者: 村川 裕二 (帝京大溝口病院内科科長/第四内科教授)
 先日,博多で学会があった。書籍販売のコーナーをひとめぐりした。自分が書いた本が目立たないレジ近くの奥に1冊ポツンと置かれているようなら一大事。「これは評判がいい」とつぶやきながら自腹を切って買うつもりでいた。しかし,幸いなことに,人目に触れる「しかるべき場所」に置かれていた。

 安堵〈あんど〉しながらふと見渡すと,旧知の小林,新田両先生の編集した『不整脈診療レジデントマニュアル』という本が積まれている。ポケットに入るサイズ。その手軽さに引かれて,うっかり買ってしまった。

 そして10日ほどたった。

 書評を書けと同じ本が送られて来た。

 前もって言ってくれたら,よかったのに……。

 この本はマニュアルではあるが,同時に小さな「臨床不整脈学全般のテキスト」である。日本医大の不整脈一派と,その縁のある東海大学八王子の諸氏が執筆している。

 本をたくさん売るためには読者母集団が広範であることが望ましい。編者は不整脈の診療にかかわる医師以外のスタッフも念頭に置いていると,「はじめに」に書いた。中身をのぞいて「ほんまかいな」と思ったのだが,もう一度「はじめに」を見直すと,“一定以上の経験を積んだ”看護師,検査技師,うんぬんと書いてあった。さすがに,本書のレベルは専門的治療に携わるスタッフでないとこなせない。私なら,多く売るために誰でも簡単に読み通せるかのごとき誤解は恐れないのだが,正直に“多少は読者を選ぶ”と告げている。

 心電図による心室期外収縮のフォーカスやWPW症候群の副伝導路の部位の推定,ペーシングによる心室頻拍の興奮旋回路の判断など不整脈診療で必要なことは網羅されている。図や表の量が本のサイズとバランスが取れていて良い。

 各章で文献の数に差がある。こうしたコンパクトな本にたくさん文献を並べるのは格好が悪い。

 類書はあるかと問われれば,「ない」と答える。疎漏なく,かつコンパクトに不整脈診療を詰め込んだ本はなかった。

 使えるかと問われれば,「私は使える」と答える。最近,物忘れが激しく,当然知っているべきことも溶けて忘れてしまう。本書は知りたいことにアクセスすることが簡単だ。

 冒頭に略語一覧があるくらいでは驚かないが,「アルゴリズム,鑑別診断,診断基準などの一覧」,「ガイドラインの一覧」,「各種分類,図表の一覧」が載っている。このリストにより本書はタダの小さい本ではなく,本当のマニュアルになった。「入り口がなくて建物に入りにくい」本なら多い。この本は「入り口を作って客を招く」ことを知っている。これは,“ささやかな”工夫ではない。本質的に価値を高めるサービスだ。

 外科治療と心臓リハビリテーションの項は楽しんで読んだ。

 不整脈診療に携わるなら重宝するはずの本だ。

 ただし,2冊手元にあっても,2倍役に立つわけではない。

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