腎不全看護　第3版

第3版の序

　今回出版する第3版は，2003年発行の初版および2005年発行の2版と，基本的にその内容に大きな変更はありません．しかし，腎不全看護とは，慢性腎臓病とその治療全般に対する領域を焦点にするものです．このことは，2007年の第10回日本腎不全看護学会学術集会総会で水附裕子理事長が所信表明の中で「日本腎不全看護学会」の目標であることを強調しています．従って，現在実施している「透析療法指導看護師」認定の内容にも，この目標が反映される重要性が示唆されました．そこで今回は，こうした学会の考えを基盤にし，変化する慢性腎臓病とその治療における社会状況や政策，疾病や治療の知識・技術および看護知識・技術に関して，一層幅広いものとして改訂しました．しかし，この本は「透析療法指導看護師」認定のための学習本であることに変わりはありません．
　具体的には，第1部は慢性腎臓病と看護総論として，病態の基礎知識と腎不全医療の現状と課題，慢性腎臓病看護総論と各期〔CKDステージ〕における看護について述べています．また，第2部には透析療法とセルフマネジメントとして，セルフマネジメントの項では，保存期と透析治療，移植におけるセルフマネジメントに関する詳しい定義や具体的な考え方とその看護について事例を用いて説明しています．さらに血液関連技術について，体外循環を受ける患者のフィジカルアセスメント，透析関連技術（血液・腹膜透析）からアクセスの管理，緊急時の対応などについて述べています．第3部は，慢性腎不全のある方の理解と支援として，多くの理論（看護現象を説明する理論）・モデルを紹介し，かつ，それらの理論を実際の看護実践の中でどのように活用するものか，事例を用いたり，「臨床への応用」という覧を設け詳しく概説しています．この版での特徴は，この第2部と第3部にあります．すなわち，前版より多くの看護現象を説明する理論やモデル（または中・小範囲理論）を取り上げ説明し，さらに事例を用いて理論とモデルの活用の仕方を実際に示しております．この事例では，EBN（evidence-based nursing）の追究の先鋒である看護診断を導入しています．最後の第4部では，透析の看護マネジメントとして，透析療法における管理者としての役割や管理・経営に関する能力を育成する上で重要な知識について説明しています．
　本書は，初版から日本腎不全看護学会が軸となって作成しています．学会会員が認定試験のために使用することが第一の目的でありますが，同時に，慢性腎臓病や治療にかかわる看護師一人ひとりに，変化・発展するこの領域における治療や看護に対する正しい知識・技術を学習する1つの拠り所として使っていただけることを願っています．

　2009年6月
　編者代表　江川　隆子

第1部　慢性腎臓病と看護総論
　第I章　病態の基礎的知識
　第II章　腎不全医療の現状と課題
　第III章　慢性腎臓病看護総論
　第IV章　保存期（CKDステージ1～4）看護概論
　第V章　透析（CKDステージ5）看護概論
　第VI章　腎移植看護概論

第2部　透析療法とセルフマネジメント
　第I章　セルフマネジメント
　第II章　血液透析関連技術
　第III章　腹膜透析療法における看護技術

第3部　慢性腎不全のある人を理解・支援するための看護理論・看護モデル
　第I章　看護の基本姿勢の理解
　第II章　人間の成長発達の理解
　第III章　人間の心理行動の理解
　第IV章　病気の過程にある人の理解
　第V章　看護援助，支援への活用

第4部　透析看護マネジメント
　第I章　マネジメント
　第II章　透析療法におけるマネジメント
　第III章　医療事故とセーフティマネジメント
　第IV章　透析看護における感染予防
　第V章　透析関連法規
　第VI章　社会資源と地域連携
　第VII章　透析医療と経済

索引