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パスでできる!がん診療の地域連携と患者サポート

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がん対策基本法が施行され、その推進基本計画において、がん診療連携拠点病院には、集学的治療および緩和ケアを提供する体制、5大がんの地域連携パスの整備が求められている。本書では、その5大がん+前立腺がんの地域連携について詳述し、緩和医療、ホスピスとの連携、さらには退院調整、患者中心のネットワーク作りまでをわかりやすく解説。拠点病院の医療者はもちろんのこと、連携先病院のスタッフ、かかりつけ医、そして医療行政に携わる人まで、関係者必読の書!
編集 岡田 晋吾 / 谷水 正人
発行 2009年12月判型:A4頁:160
ISBN 978-4-260-00883-9
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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 自分ががんになったら,読者のみなさんは自分が住んでいる地域で治療を受けますか?胃がんだったとしたら,どこの病院で手術をしますか? もう治療がないと言われたらホスピス病院に行きますか? 在宅医療を希望する場合にはどの先生に頼みますか?.この質問に自信を持ってすぐに答えられるあなたはとてもよい医療環境の地域に住んでいるか,地域のがん診療の中心で忙しく働いている方でしょう.でも多くの方々はすぐに答えが出せないと思います.医療者でもそうですから一般の患者や家族にとってはそう簡単に答えを導き出すことは不可能でしょう.
 日本のがん診療をめぐる環境も大きく変化しています.私が医師になった頃に比べてがんの告知率も上昇し,ほとんどの患者は自分ががんだと知っているだけでなくその進行度についての情報も得ており,QOLへの関心も高くなっています.また手術方法や抗がん剤もいろいろ開発され,多くの情報をネットや書籍で簡単に得ることができるようになっており,その選択について以前より悩むことが多くなってきています.また,がん患者を診ることのできる場としてもがん専門病院だけでなく,一般病院,在宅,ホスピス病院など選択肢が増えてきています.がん患者やその家族にとってはよいことだと思いますが,選択肢が増えたうえに患者や家族の多様な要求に答えなければいけなくなっている現状に医療者がうまく対応できなければ,日本のがん診療の質はよくならないということです.
 がん診療にたずさわるすべての医療者が目の前の患者に最良の医療を提供したいと思っていますが,きめ細やかにがん患者を診ていくためには地域がん診療ネットワークの構築が必要になっているのです.ただ多くの地域では取り組んでみたもののうまくいかないとか,思ったように進んでいないのが現状ではないでしょうか.
 本書では全国でがん診療に取り組まれている第一線の先生方に,それぞれの病院や地域での実践例について書いていただきました.きっと明日からのがん診療に生かせるアイデアが得られるものと思います.最近は手術の上手なスーパードクターがマスコミで取り上げられることが多いのですが,がん診療においては一人のスーパードクターではなく,外科医,腫瘍内科医,在宅医,看護師,薬剤師など,がん患者に関わるすべての医療者が目標を共有して患者にとって最良の医療を提供することが大切なのです.
 開業医となった私はもう手術の腕ではスーパードクターにはなれませんが,地域でスーパーチームを作れるように頑張りたいと思っています.
 みなさんも一緒に頑張っていきましょう!

 2009年11月
 岡田晋吾

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第1章 はじめに
第2章 がん診療における地域連携に必要な要件
第3章 がん診療の現状と地域連携-わが国のがん対策について
第4章 地域連携のためのネットワーク構築の類型化
 1 4疾患5事業のネットワーク構築
 2 がん診療のネットワーク構築
第5章 がん診療における地域連携パス
 1 概説
 2 胃がん
 3 大腸がん
 4 肺がん
 5 肝がん
 6 乳がん
 7 前立腺がん
第6章 緩和ケアと地域連携
第7章 がん診療における地域連携室の役割
第8章 がん患者の退院調整
第9章 ホスピス病院と地域医療機関との連携
第10章 がん診療におけるかかりつけ医の役割と連携
第11章 保険薬局の役割と課題

索引

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地域連携の具体的な進め方がわかる好著
書評者: 小西 敏郎 (NTT東日本関東病院副院長)
 2010年4月の診療報酬改定でがん診療においても,地域連携を行えば医療費が加算されるようになった。胃がん・大腸がん・肺がん,乳がん,肝臓がんのいわゆる5大がんに前立腺がんを加えた6種のがんが対象である。都道府県がん診療連携拠点病院や地域がん診療連携拠点病院では,地域連携の診療計画書(地域連携クリティカルパス,以下連携パス)を患者に渡せば,患者一人につき退院時の1回のみであるが750点を加算できる。また紹介を受けた診療所では,毎月1回300点を加算できることになった。

 しかし手続きの面倒さに比べて決して大きな額ではない。この程度の加算額では,拠点病院もクリニックも,経営上のメリットからがん診療連携を積極的に推進することにはならないだろう。また地域連携は東京や大阪のような大学病院が多数存在する地域では,医師同士に大学や医局のつながりがないので進めにくいのが実態である。いわゆる医師同士が顔の見えない関係では連携が困難である。また再発の可能性の高い進行がんの場合は紹介しにくい,受けにくい,といえる。

 がん患者の手術後も中核病院で術後にフォローするのでなく,地域の診療所でフォローすることがそれぞれの医療施設で大きなメリットがあるとともに,患者自身が地域連携を歓迎するようにならないとがん診療の地域連携は難しい。この難点を克服するツールが連携パスである。岡田晋吾・谷水正人氏編集の『パスでできる!がん診療の地域連携と患者サポート』が発刊後半年になるが,好評であるのは,5大がん+前立腺がんにおいて,連携パスを用いた地域連携について,図表・シェーマを多く用いて,わかりやすく具体的に紹介されているからと考える。

 岡田氏は,函館でクリニックを経営する立場で,複数の基幹病院と連携パスを用いてきめ細かい親切さで評判の良い地域連携を実際に進めている。また谷水氏はがん臨床研究事業「全国のがん診療連携拠点病院において活用が可能な地域連携クリティカルパスモデルの開発」の研究代表者であり,実際に四国がんセンターの統括診療部長としてがん患者の連携診療を連携パスにより進めている。

 本書は,なぜ,がん診療に地域連携が必要か,地域におけるネットワークの構築の紹介に始まり,今回医療費加算の認められた5大がん+前立腺がんについての地域連携の実際が具体的に紹介されている。またがん再発時や終末期の緩和医療・ホスピスとの連携も紹介されている。執筆者は医師だけではなく,看護師,地域連携室職員,そして保険薬局の立場からも地域連携の進め方が紹介されている。5大がん+前立腺がん,それぞれのがんでの実際にどのような連携パスをいかに作成し,どのような成果が得られているか,理解できる。そして東京・横浜・四国と都会と地方の連携の特徴が読み取れるので,全国の医療者にわかりやすく書かれている。これからがん診療の地域連携を進めようとしている医療者にとっては,必読の好著である。
それぞれの医療従事者が果たすべき役割を解説
書評者: 望月 英隆 (防衛医大病院長)
 この度,医学書院から岡田晋吾・谷水正人両氏の編集による,『パスでできる!がん診療の地域連携と患者サポート』が刊行された。

 がんの治療は,手術や抗がん化学療法のみで成り立つものではなく,手術前後の各種補助療法,病態・病勢把握のための定期的な検査や緩和医療等も含んでいる。ここで言う緩和医療とは,進行再発時におけるがん性疼痛への対処は無論のこと,診断が下された時点から求められる心理面でのケアから終末期医療までをも含む極めて広範囲の医療である。これらを一つの医療機関で不足なく行うことは至難の技である。また,近年は患者さんの価値観も多様化し,医療を受ける場所として,医療機関ではなく自宅を選択する方が増えている。このような新たな流れの中では,がん治療にかかわる医療機関が,がん患者さんごとに一貫した治療方針を共有し,それぞれのもつ機能に応じて連携を保つことが極めて重要である。国もがん治療については政策として,均てん化とともに,地域連携によるきめの細かい治療体制の整備を推し進めている。

 本書は,胃がん・大腸がん・肺がん・肝がん・乳がんのいわゆる「5大がん」に,前立腺がんを加えた6種類のがん治療に関する地域連携について,懇切丁寧にそのシステムの構築と運用等について,パスを中心的ツールとして用いたノウハウを解説している。「地域連携に必要な要件」や「ネットワーク構築の類型化」,「地域連携室の役割」といった項目では連携立ち上げの際に重要な要件が詳述されているし,「緩和ケアと地域連携」,「がん患者の退院調整」,「かかりつけ医の役割と連携」,「保険薬局の役割と課題」といった項目では,地域連携医療を行う上で不可欠な医師とコメディカルが果たすべき役割が,図説を多用してわかりやすく解説されている。

 編集の岡田氏は,長く函館を中心とした地域医療の第一線で活躍する中で,パスを有効に用いることによって基幹病院と診療所等との連携システムを立ち上げ,きめ細かで評判の良い地域医療連携を函館地区に構築しているこの道の第一人者である。一方,谷水氏は,がん政策医療ネットワークの四国ブロック基幹医療施設で,また愛媛県のがん診療連携拠点病院である四国がんセンターの統括診療部長としてがん診療を行う中で,地域連携の重要性を日々感じながら,その構築と整備に尽力しているその道のエキスパートである。また,各項目の執筆陣も実際に地域連携の中でがん診療を行っている方々ばかりで,経験に裏付けられた記述には極めて強い説得力がある。

 がん診療にかかわるすべての医療関係者必読の書であると思う。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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