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神経内科ハンドブック 第4版
鑑別診断と治療

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「これ1冊で神経内科臨床がわかる」好評の書籍、8年ぶりの改訂。神経内科専門医をめざす研修医、若手臨床医必読の神経学的診察法や症候の診かたについては従来どおり懇切丁寧に解説。加えて、脳血管障害や変性疾患をはじめとした各種神経疾患の診断・治療や検査法について最新の知見を盛り込んだことで、前版の読みやすさ、理解しやすさはそのままに、情報量をボリュームアップした。
編集 水野 美邦
発行 2010年03月判型:A5頁:1312
ISBN 978-4-260-00874-7
定価 14,850円 (本体13,500円+税)
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第4版の序

 『神経内科ハンドブック』の初版発行は,1987(昭和62)年であった.本書をまとめようと考えた動機は,アメリカでのレジデント研修の生々しい印象を忘れる前に残しておきたいということであった.編者がレジデント研修を行ったのはシカゴのノースウェスタン大学で,昭和44(1969)年から48(1973)年であった.初版発行まで14年もかかってしまったことになる.レジデント研修の印象は今でも強く脳裏に焼きついている.朝早くから毎日教育担当のアテンディングと一緒にカンファランス,回診,午後はアンギオやミエロなどの神経放射線検査と充実した毎日だった.一定期間ベッドをもったあとは,ベッドを離れ,脳波,筋電図,病理,神経放射線などの研修が,それぞれ指導者について行われ,小児神経や放射線のローテーションもあり,大変メリハリのある研修内容だった.驚いたことは,アテンディングやチーフレジデントの知識の豊富さで,回診やカンファランスでは,本や文献に書いてあることが,淀みなく出てくる.自分も何か知らなくて馬鹿にされないよう一生懸命本や文献をあさり読んだ.
 この4年間のレジデント研修で学んだベッドサイドでの患者さんの診断・鑑別診断,治療へのアプローチの仕方を記録に残しておきたいというのが最初の動機であった.帰国して赴任したのは,自治医科大学神経内科だが,その頃の主任教授は吉田充男先生であった.不幸にして今は亡き人になられてしまったが,豪放,自由闊達を尊ばれた方で,病棟の運営を自由に任せていただけた.そこでできるだけアメリカの卒後教育の形態を取り入れた研修プログラムを作成した.もちろん教育スタッフの数などで,アメリカの通りにはいかなかったが,曲がりなりにもそのような形態をとっていた.そこで初版は自治医科大学の神経内科のスタッフと一緒に作成した.本のボリュームから,何から何まで書くことはできないので,鑑別診断と治療を中心にした.またまれな疾患や事項についても,何か少しは記載がある本を目指した.そのために索引もかなり充実させた.
 幸い初版から好評をいただいたが,診断や治療の進歩は著しく,1993(平成5)年最初の改訂を行った.この頃は,順天堂大学に赴任していたので,一部の項目を順天堂大学神経内科のスタッフに分担していただいた.第2版では,局所診断の章を追加して,かなり厚くなった.
 第2版の発行からすでに9年近く経って2002年,第3版の発行にこぎつけた.順天堂大学に赴任して10年以上経過していたこともあり,分担執筆者はかなり順天堂大学のスタッフにお願いした.初版から執筆していただいた一部の先生には大変申し訳ない思いであるが,ご了解いただけるとありがたく思う.
 さてこのたび第4版をお届けする.最近の学問の進歩の速さに対応するには,このような本は5年に1回くらいの改訂が望まれるが,実際は8年経ってしまった.今回は,かなり順天堂関係の方々,それも神経内科のみではなく,関連の神経放射線,脳外科の方々にも分担執筆をお願いしている.今回の改訂は,主任教授を退任したあとに当たったので,できるだけ分担の方々の原稿も読ませていただいた.いずれも熱のこもった達筆である.ベッドサイドでの研修の本として役立てていただければ幸いである.なお,今回の改訂にあたって第3版から第4版への主な変更点は次の通りである.
 3章「症候から鑑別診断へ」に「3.睡眠障害」,「16.排尿・排便障害,性機能障害」を新設した.5章「診断と治療」では,第3版の「5.炎症性疾患」の項を,自己免疫性疾患の研究が進歩していることもあるので,「7.自己免疫性疾患」として新設し,その他の炎症性疾患として「6.感染性疾患」と分けた.「15.神経筋接合部疾患」の項目も第3版の「13.筋疾患」の項目から分けた.6章「基本的治療法・手技」には患者への社会的サポートのため「4.公的支援制度」を新設した.そのほかにも,第3版の3章「7.視力および視野障害」と5章「10.変性疾患」の「B.視神経・網膜疾患」を,第4版では3章「8.視力および視野障害」に,第3版の3章「16.髄液圧異常」を,第4版では5章「4.髄液動態異常」にそれぞれ統合・移動した.
 本書の完成までには,医学書院の方々特に小南哲司氏に多大なご尽力をいただいた.ここに謹んで感謝の意を表する次第である.

 2010年1月
 水野美邦

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1章 神経学的診察法
 1 精神状態の診かた
 2 失語,失行,失認の診かた
 3 脳神経の診かた
 4 運動機能の診かた
 5 反射の診かた
 6 感覚系の診かた
 7 自律神経系の診かた
 8 髄膜症候の診かた
 9 血管系の診かた
2章 局所診断
3章 症候から鑑別診断へ
 1 意識障害
 2 知的機能障害と認知症
 3 睡眠障害
 4 てんかん
 5 頭痛
 6 めまい
 7 失神
 8 視力および視野障害
 9 眼球運動障害と瞳孔異常
 10 構音障害と嚥下障害
 11 歩行障害
 12 筋力低下および筋萎縮
 13 不随意運動
 14 運動失調
 15 感覚障害,しびれ,神経痛
 16 排尿・排便障害,性機能障害
 17 急性横断性脊髄障害
4章 神経学的検査法
 1 脳脊髄液の検査
 2 神経放射線学的検査
 3 生理学的検査
 4 神経眼科・神経耳科学的検査
 5 神経病理学的検査
 6 自律神経機能検査
5章 診断と治療
 1 脳脊髄血管障害
 2 脳腫瘍,脊髄腫瘍
 3 頭部外傷,脊髄外傷
 4 髄液動態異常
 5 先天性疾患
 6 感染性疾患
 7 自己免疫性疾患
 8 脱髄性疾患
 9 中毒性疾患
 10 代謝性疾患
 11 内科疾患に伴う神経系障害
 12 変性疾患
 13 脊椎疾患
 14 末梢神経障害
 15 神経筋接合部疾患
 16 筋疾患
6章 基本的治療法・手技
 1 救急蘇生
 2 基本的手技
 3 放射線治療
 4 公的支援制度

   付録
   索引

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ベッドサイドでも使いやすい実践的な教科書
書評者: 高橋 良輔 (京大大学院教授・臨床神経学)
 神経内科ハンドブックの初版は1987年4月に発行された。ちょうど私は卒後5年目で神経内科専門医(当時は認定医)試験受験の直前であった。コンパクトでありながら,読みやすい文章で多くの情報が無駄なく偏りなく取り上げられており,短時日で読みとおしてしまった。試験に役立ったのは言うまでもないが,それよりもベッドサイドでこれほど実践的な教科書はこれまでなかったのではないかという強い印象を受けた。

 最も目を瞠ったのは,編集者の水野美邦先生ご自身が執筆され,第4版でもそのエッセンスは変わっていない神経学的診察法と局所診断の項目であった。臨床に有用な神経解剖・神経生理の記載が充実しているだけでなく,初心者にやさしく語りかけるようなアドバイスも書き込まれている。

 例えば局所診断の章の最初に掲げられている「経験者は複雑な症候の患者を見ても,すぐどの辺りに障害があるか見当がつくが,初心者は末梢から順に考えていくとよい」という金言は,後に水野先生の病棟回診を見学する機会を得て,難しい症例に関しては水野先生ご自身がその通り実践されているのを目の当たりにすることができた。

 初版の序文に書かれている「卒業後比較的年月が浅く,熱意に燃えて臨床研修を行っている方々に読んでいただきたい」という意図は十分達せられ,多くの読者の支持を得て版を重ね,このたびの第4版発行に至った。第4版から新規に追加された点を列挙してみると,3章「症候から鑑別診断へ」に,「3.睡眠障害」「16.排尿排便障害・性機能障害」を追加,5章「診断と治療」の「5.炎症性疾患」を「6.感染症疾患」「7.自己免疫性疾患」に分割,「15.神経筋接合部疾患」を「13.筋疾患」から独立させてある。また6章「基本的治療法・手技」に,「4.公的支援制度」を新しく設けてあり,わが国の神経内科医が患者の助けになる上で必要な基本事項はすべて盛り込まれていると言ってよい。

 全般的な特徴を述べてみると,順天堂大学脳神経内科のスタッフを中心にさまざまな領域の専門家が執筆者に名を連ねており,どの各論にも最新の知見に基づいた充実した記載が心がけられている。神経学の基本的診察から症候学,病理・電気生理学・分子病態,治療などあらゆる事項を網羅する教科書は類書がない。また索引が充実しているため辞書的に用いることが容易で,日々の臨床で生じた疑問をすぐに解決できる。

 さらに進んだ知識を得るために足掛かりとなる,参考文献情報もアップデートされており豊富である。日常診療に用いる場合,目の前の患者の症候学から鑑別診断を本書で調べ,詳細な検査を追加し,また,診断がついた後は本書に従い治療を行うことも可能なほど詳細な記載がある。

 MerrittやAdamsの教科書に匹敵するほどの充実した内容がありながら,それがコンパクトな記載でハンドブックの形態に収められているのも,ベッドサイドで使いやすいように,との配慮であろう。ただ,版を重ねるにつれ,持ち運ぶには少々重くなっているので,私はオフィスと自宅に一冊ずつ置いて,いつでも参照できるようにしている。すでにわが国の標準的な教科書の地位を確立した本書であるが,これからも多くの若者が本書によって優れた神経内科医に育ってくれることを願う。
ベッドサイドですぐに役立つ
書評者: 栗原 照幸 (東邦大名誉教授/神経内科 津田沼)
 水野美邦先生は,1969年から4年間Chicago,Northwestern大学で神経内科レジデントを体験され,帰朝後それを一冊の本にまとめておきたいという希望から『神経内科ハンドブック 第1版』として1987年に出版された。版を重ねて第4版となり,34名の執筆者によって,最近の知見を盛り込んで2010年3月に出版された。アメリカの神経内科レジデント教育では,成人の神経内科のほか,一定期間ずつ小児神経内科,脳神経外科,精神科,神経放射線,脳波・筋電図,神経病理のローテーションが組まれ,all roundな臨床能力を能率よく3年間で体得できるようプログラムが組まれている。

 神経系はその解剖学的な複雑さから,とっつきにくいと考えられるが,問診をして,発症の仕方(突発性,急性,亜急性,慢性進行性,寛解・増悪の繰り返し等)や病気の経過,家族歴の有無,仕事や環境との関連性などよく話を聞いて,次に神経診察を取り落としなくすると,(1)主に問診からどのような病態か(血管障害,炎症,代謝・中毒,腫瘍,変性,脱髄),(2)神経診察所見から神経系の疾患部位を8割がた,明らかにすることができる。問診と診察所見から最も考えられる診断を思いついた後に,多くの鑑別診断も思い浮かべて,神経学的検査法の助けも含めて,最終診断に至るが,この本の副題にもなっている鑑別診断の重要性を編者はよく強調している。図や写真も多く,まとめの表も理解しやすい。重要な参考文献が読書を深めるために十分すぎるほど記載され,最新情報が盛り込まれている。

 今回出版された第4版では,神経学的診察法,局所診断,症候から鑑別診断へ,神経学的検査法,診断と治療,基本的治療法・手技(救急蘇生法,中心静脈カテーテル,栄養,嚥下障害や褥瘡予防)のほか,医療費の助成制度や,身体障害者手帳,介護保険制度の手続きに至るまで,患者の助けになる内容を盛り込み,ベッドサイドですぐに役立つ素晴らしい構成であるので,医学生,神経内科の後期研修医をはじめ,臨床に携わる神経内科医にも推薦したい。

 第5版が将来出版されるときには,さらに完璧なものとするために,神経内科疾患の問診の仕方の章をぜひ加えてほしいと考える。神経内科疾患の診断には,神経学的診察を見落としなくすることが大切であるが,それ以上にまず話をよく聞くことが重要である。年齢,性別,職業〔会社員と書くだけでなく実際に行っている仕事を具体的に聞き出すとよい―一日中コンピュータを見ている仕事(VDT業務)も最近多くなり,目の疲労,頭痛,肩こり,腰痛などが起こりやすい〕,病気の発症の仕方,経過,今まで使われた薬とその効果,抗うつ薬によるパーキンソニズムなどの副作用。

 既往歴では,糖尿病,高血圧,高脂血症,手術歴,輸血歴,薬物アレルギー,入院歴。家族歴では,家族構成,本人と同様な症状を呈する家族がいないかなど。筋疾患や変性疾患,片頭痛などでは家族歴のあることが多いので,遺伝形式にも注意するとよい。よく話を聞いてラポールが付いてくると,神経診察をする際もよい協力が得られる。

 神経内科の教科書には,問診についての章がないものが多く,これは診断学の教科書に任せるという傾向もあるが,第4版は,1,300ページにわたる教科書なので,大切な問診については5ページほどを割いてもよいかと思われる。

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