中途採用看護師をいかす!伸ばす!育てる!
あなたの施設は経験者を採用しても定着しないってことありませんか?
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経験者であっても、施設特有のやり方についていけなかったり、職場の雰囲気に慣れなかったり、実は多くのサポートと教育が必要。個人の力量だけを頼りにしていては、いくら経験者を採用しても定着してくれない。本書では、看護管理者や教育担当者がどんなことを心がけ、どんな工夫をすればいいのか、また受け入れ側の看護師にはどんな行動や認識が必要なのかを簡潔に説明している。さらに、よくある疑問や課題をとりあげ、わかりやすく回答。看護師が定着する施設に生まれ変われる1冊。
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- 序文
- 目次
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序文
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はじめに
「教育」から「知のマネジメント」へ
これが,2008年4月から活動を開始したNKN(Nursing Knowledge Network)の出発点でした。
急速に変化する社会や医療において,これまで経験したことのない問題や課題に直面することは,そう珍しいことではなくなってきました。しかし,それに対応するための人材育成は,知識伝達型の研修で得た知識を臨床現場で応用するという,「学習」と「仕事」を分けた形での教育が大半を占めています。
だからでしょうか,「考え方ではなくて,もっと自分たちの施設にあった具体的な方法を知りたい」,「せっかくの研修なのに,職員が参加してくれない,参加しても意欲的でない」,「どうやったら部署で活用できる研修が企画できるのだろうか」といった問題や課題に教育担当者は疲弊しています。
私たちは,教育を受けたらそれを臨床で応用するのは個人の力という,施設内研修の限界を感じてきました。仕事上の問題解決に直結するような研修を企画することだけが重要なのではなく,業務を遂行するプロセスのなかで,価値の異なる多様な経験や知をもつ看護職や他職種と議論しながら,繰り返し押し寄せる問題を解決していく。これこそが,人材育成であり,継続教育なのではないかと考えています。しかし,これは,看護管理者がただ看護職員を見守ることでは成立しません。「指導する」,「研修会に参加する」,「プロジェクトに参加する」,その先に「目ざすもの」がみえていなければ,モチベーションを高め,成果を出すことなど不可能です。
この考えが顕著に現場で現れていたのが,中途採用看護師教育でした。看護管理者も教育担当者も受け入れ部署の看護師もみな手探りで,中途採用看護師でさえもどのようにふるまってよいのか不安を感じ,お互いに混乱している様がみえました。
私たちは,看護実践現場での人材育成における具体的な指導方法・教育的なかかわりこそが本質であるとの考えに基づいた拙書「プリセプターシップを変える 新人看護師への学習サポート」を基盤に,中途採用看護師の経験や力および知を借りて組織を活性化させていくことを想定し,本書を書き進めました。
特に,直接,中途採用看護師に教育・指導という形でかかわる受け入れ側の看護師の不安や問題意識に少しでも解決の糸口がみえることを目ざして,さまざまな個性と異なる経歴や知識および技術をもつ中途採用看護師の教育に直面し,ふと感じる疑問やよく遭遇する場面を想定し,解説の形で具体的かつ簡潔な構成を心がけました。
前半の1章から5章までは,特に看護管理者に向けて,「共に働く人を育てる」ための人材育成および組織化について解説しています。6章以降は,部署における中途採用看護師の指導者,教育担当者の方が遭遇する場面やご意見をFAQ(よくある質問)の形で解説しました。
全体を通じて,「学習の支援」を「どのように」行うのか,なるべく現場での日常的な実践におけるイメージが描けるように,可能なかぎり平易な表現で身近に感じていただけるような工夫を凝らしたつもりです。
読者のみなさまには,無理なく可能なところから実践に活用していただき,「中途採用看護師の教育」に今よりも少しだけ穏やかな気持ちでとりくんでいただけたなら,私たちにとってこんな嬉しいことはありません。
2008年9月
渋谷美香・北浦暁子
「教育」から「知のマネジメント」へ
これが,2008年4月から活動を開始したNKN(Nursing Knowledge Network)の出発点でした。
急速に変化する社会や医療において,これまで経験したことのない問題や課題に直面することは,そう珍しいことではなくなってきました。しかし,それに対応するための人材育成は,知識伝達型の研修で得た知識を臨床現場で応用するという,「学習」と「仕事」を分けた形での教育が大半を占めています。
だからでしょうか,「考え方ではなくて,もっと自分たちの施設にあった具体的な方法を知りたい」,「せっかくの研修なのに,職員が参加してくれない,参加しても意欲的でない」,「どうやったら部署で活用できる研修が企画できるのだろうか」といった問題や課題に教育担当者は疲弊しています。
私たちは,教育を受けたらそれを臨床で応用するのは個人の力という,施設内研修の限界を感じてきました。仕事上の問題解決に直結するような研修を企画することだけが重要なのではなく,業務を遂行するプロセスのなかで,価値の異なる多様な経験や知をもつ看護職や他職種と議論しながら,繰り返し押し寄せる問題を解決していく。これこそが,人材育成であり,継続教育なのではないかと考えています。しかし,これは,看護管理者がただ看護職員を見守ることでは成立しません。「指導する」,「研修会に参加する」,「プロジェクトに参加する」,その先に「目ざすもの」がみえていなければ,モチベーションを高め,成果を出すことなど不可能です。
この考えが顕著に現場で現れていたのが,中途採用看護師教育でした。看護管理者も教育担当者も受け入れ部署の看護師もみな手探りで,中途採用看護師でさえもどのようにふるまってよいのか不安を感じ,お互いに混乱している様がみえました。
私たちは,看護実践現場での人材育成における具体的な指導方法・教育的なかかわりこそが本質であるとの考えに基づいた拙書「プリセプターシップを変える 新人看護師への学習サポート」を基盤に,中途採用看護師の経験や力および知を借りて組織を活性化させていくことを想定し,本書を書き進めました。
特に,直接,中途採用看護師に教育・指導という形でかかわる受け入れ側の看護師の不安や問題意識に少しでも解決の糸口がみえることを目ざして,さまざまな個性と異なる経歴や知識および技術をもつ中途採用看護師の教育に直面し,ふと感じる疑問やよく遭遇する場面を想定し,解説の形で具体的かつ簡潔な構成を心がけました。
前半の1章から5章までは,特に看護管理者に向けて,「共に働く人を育てる」ための人材育成および組織化について解説しています。6章以降は,部署における中途採用看護師の指導者,教育担当者の方が遭遇する場面やご意見をFAQ(よくある質問)の形で解説しました。
全体を通じて,「学習の支援」を「どのように」行うのか,なるべく現場での日常的な実践におけるイメージが描けるように,可能なかぎり平易な表現で身近に感じていただけるような工夫を凝らしたつもりです。
読者のみなさまには,無理なく可能なところから実践に活用していただき,「中途採用看護師の教育」に今よりも少しだけ穏やかな気持ちでとりくんでいただけたなら,私たちにとってこんな嬉しいことはありません。
2008年9月
渋谷美香・北浦暁子
目次
開く
1 中途採用看護師の育成と定着のために
「即戦力の確保」から「共に働く人を育てる」へ
経験年数や年齢は指導を難しくするのか
人が育つ組織づくりをいかにして実現するか
2 中途採用看護師をいかす!伸ばす!育てる!
今のやり方で中途採用看護師を伸ばせるのか
すぐに使えるスキル獲得だけが現場の教育なのか
学習する組織
学習を支える環境を整備する
学習プロセスと学習行動を理解する
オトナの学びの特徴を知る
知識共有としての学習
教育成果を臨床で発揮するのは個人の責任か
看護師育成のコアとなる考え方=スポンサーシップ
中途採用看護師の指導において必要な基本機能
部署の「育てる」意識を浸透させ,行動に起こす
「教えなきゃ」という意気込みや不安から脱却する
3 中途採用看護師と共に教育をデザインする
中途採用看護師の教育を個別にデザインする
教育のデザインに必要な要素
中途採用看護師にどうなってもらいたいのか=教育の目的を明確にする
この部署のあるべき看護の姿を描く=教育内容の抽出
目ざすものをすりあわせた「納得のいく」目標設定
看護の現状を客観的に指摘してくれる貴重な存在
施設側の要望もきちんと伝えて、実現可能な目標設定へ
中途採用看護師を伸ばすためのプログラム評価
ホントに使える客観的評価にするために
中途採用看護師と教育をデザインするポイント
1人の教育担当者が指導を丸抱えしない
研修会以外の「能力開発の場」を提案する
4 中途採用看護師を迎えるための準備
中途採用看護師が入職後,気持ちよく働けるための準備
採用面接時に本人の思い・考えをしっかりと把握する
中途採用看護師に対する施設側の期待を明確にする
中途採用看護師の思いと施設の思いの折り合いをつける
中途採用看護師の情報をどこまで共有するか
迎え入れる気持ちをメールや手紙で表現する
組織文化に対する適切な予備情報を提供する
受け入れ側の看護師に組織のビジョンをていねいに説明する
指導者の自信を生みだす管理者のメッセージ
迎え入れるムードを高めるための具体策を講じる
新しい考えや,やり方を受け入れる寛容さ
5 学び続ける人材が育つ組織をつくる
継続教育に必要な戦略的マネジメントの視点
対立を乗り越えすべての看護師を巻き込む
既成概念にとらわれず施設のこれからを分析する
6 中途採用看護師の受け入れの土台づくり
効果的な教育には承認による安心感が必要
中途採用看護師との信頼関係をつくるために
1. 中途採用看護師に対して
基本的信頼関係はすべての指導の基盤になる
具体的な承認の行動が確かなサポートとなる
2. 受け入れ側の看護師に対して
ビジョンに基づく具体的行動に理解と協力を得る
受け入れ側の看護師の心にビジョンを響かせ浸透させる
サポートの方法は受け入れ側の看護師全員で決める!
中堅看護師の影響力を新しい組織文化づくりにいかす
看護管理者や教育担当者がどう行動すべきか自らの態度で示す
7 中途採用看護師の不安と焦りに目を向ける
理想と現実のギャップによるショックを緩和する
不安と焦りをもつ中途採用看護師を支えるために
1. 中途採用看護師に対して
中途採用看護師の能力を現場で正確に見極める
環境変化による実践力の低下を考慮し対応する
2. 受け入れ側の看護師に対して
期待を押しつけることのデメリットを知らせる
否定ではない客観的評価の大切さを分かちあう
ネガティブな態度のメンバーこそキーパーソン
「どうサポートするか」を共に考える
8 職場適応は大丈夫!次に何を目ざすのか
自ら判断し行動する=学習する人材を育てるために
中途採用看護師の豊かな個性をいかすには
1. 中途採用看護師に対して
指導のポイントは欠点修正でなく全体バランス
中途採用看護師のやる気を引き出すかかわり方
2. 受け入れ側の看護師に対して
看護管理者の行動でスポンサーシップを定着させる
受け入れ側の看護師のやる気を引き出すかかわり方
望ましい具体的な行動を強化する場を意図して設定する
おわりに
「即戦力の確保」から「共に働く人を育てる」へ
経験年数や年齢は指導を難しくするのか
人が育つ組織づくりをいかにして実現するか
2 中途採用看護師をいかす!伸ばす!育てる!
今のやり方で中途採用看護師を伸ばせるのか
すぐに使えるスキル獲得だけが現場の教育なのか
学習する組織
学習を支える環境を整備する
学習プロセスと学習行動を理解する
オトナの学びの特徴を知る
知識共有としての学習
教育成果を臨床で発揮するのは個人の責任か
看護師育成のコアとなる考え方=スポンサーシップ
中途採用看護師の指導において必要な基本機能
部署の「育てる」意識を浸透させ,行動に起こす
「教えなきゃ」という意気込みや不安から脱却する
3 中途採用看護師と共に教育をデザインする
中途採用看護師の教育を個別にデザインする
教育のデザインに必要な要素
中途採用看護師にどうなってもらいたいのか=教育の目的を明確にする
この部署のあるべき看護の姿を描く=教育内容の抽出
目ざすものをすりあわせた「納得のいく」目標設定
看護の現状を客観的に指摘してくれる貴重な存在
施設側の要望もきちんと伝えて、実現可能な目標設定へ
中途採用看護師を伸ばすためのプログラム評価
ホントに使える客観的評価にするために
中途採用看護師と教育をデザインするポイント
1人の教育担当者が指導を丸抱えしない
研修会以外の「能力開発の場」を提案する
4 中途採用看護師を迎えるための準備
中途採用看護師が入職後,気持ちよく働けるための準備
採用面接時に本人の思い・考えをしっかりと把握する
中途採用看護師に対する施設側の期待を明確にする
中途採用看護師の思いと施設の思いの折り合いをつける
中途採用看護師の情報をどこまで共有するか
迎え入れる気持ちをメールや手紙で表現する
組織文化に対する適切な予備情報を提供する
受け入れ側の看護師に組織のビジョンをていねいに説明する
指導者の自信を生みだす管理者のメッセージ
迎え入れるムードを高めるための具体策を講じる
新しい考えや,やり方を受け入れる寛容さ
5 学び続ける人材が育つ組織をつくる
継続教育に必要な戦略的マネジメントの視点
対立を乗り越えすべての看護師を巻き込む
既成概念にとらわれず施設のこれからを分析する
6 中途採用看護師の受け入れの土台づくり
効果的な教育には承認による安心感が必要
中途採用看護師との信頼関係をつくるために
1. 中途採用看護師に対して
基本的信頼関係はすべての指導の基盤になる
具体的な承認の行動が確かなサポートとなる
2. 受け入れ側の看護師に対して
ビジョンに基づく具体的行動に理解と協力を得る
受け入れ側の看護師の心にビジョンを響かせ浸透させる
サポートの方法は受け入れ側の看護師全員で決める!
中堅看護師の影響力を新しい組織文化づくりにいかす
看護管理者や教育担当者がどう行動すべきか自らの態度で示す
7 中途採用看護師の不安と焦りに目を向ける
理想と現実のギャップによるショックを緩和する
不安と焦りをもつ中途採用看護師を支えるために
1. 中途採用看護師に対して
中途採用看護師の能力を現場で正確に見極める
環境変化による実践力の低下を考慮し対応する
2. 受け入れ側の看護師に対して
期待を押しつけることのデメリットを知らせる
否定ではない客観的評価の大切さを分かちあう
ネガティブな態度のメンバーこそキーパーソン
「どうサポートするか」を共に考える
8 職場適応は大丈夫!次に何を目ざすのか
自ら判断し行動する=学習する人材を育てるために
中途採用看護師の豊かな個性をいかすには
1. 中途採用看護師に対して
指導のポイントは欠点修正でなく全体バランス
中途採用看護師のやる気を引き出すかかわり方
2. 受け入れ側の看護師に対して
看護管理者の行動でスポンサーシップを定着させる
受け入れ側の看護師のやる気を引き出すかかわり方
望ましい具体的な行動を強化する場を意図して設定する
おわりに
書評
開く
中途採用者へのかかわりを見直す
書評者: 勝原 裕美子 (聖隷浜松病院副院長・総看護部長)
看護の仕事を続けたいと思っていても,諸事情でそれがかなわぬ人たちがいる。看護の仕事に戻りたいと思っていても,二の足を踏む人たちがいる。
そういう人たちが,看護の仕事に復帰できるように現場では諸策がとられている。しかし,正面切って議論されることは少なかった。「中途」採用者に対してのかかわりそのものが,これまで中途半端だったのだと思う。
その中途半端さに目を向け,看護管理者の姿勢を正そうとするのが,本書のスタンスである。看護管理者や現場の教育担当者の立場からすれば,新人を育てるのが大変であり,現場になじみ業務になじむための教育システムを作り上げなければと思うわけだが,中途採用者教育に関しては同様の時間やエネルギーはかけられない。中途採用者に対して大切にすべき育成の視点は何なのか。それがわからないから,放っておいても大丈夫でしょうという論理を通そうとしてきた管理者も多かったはずだ。あるいは,中途採用者への気配りや教育を重視してこなかった管理者もいるかもしれない。
しかし,採用するからには育てる責任がある。本書では,何に目を向けるべきなのかが,非常に丁寧にわかりやすく記されている。平易な文章ではあるが,理論的なフレーバーも随所に散りばめられており,事例も豊富なので説得力があって読みやすい。読み進めていると,これまでできていたつもりのことが,実はできていなかったのだと気付かされることもあり,その通りだとうなずくこともある。
大学や日本看護協会での教育経験のある二人の著者が,中途採用者応援団として本書を記したのは,現場での空回りを放っておけなかったからであろう。中途採用者は根付かないのではなく,根付かそうとしていなかったのではないか。そんな視点で本書を読めば,これまで以上に,中途採用者に対して新鮮なかかわりができそうな気がしてくる。
中途採用看護師の受け入れ体制整備の方策を丁寧に解説 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 洪 愛子 (日本看護協会認定部部長)
◆積極的な中途採用の広がり
2006(平成18)年の診療報酬改定で,急性期入院医療の看護体制を評価するため,入院基本料に「7対1」区分が導入されました。これがターニングポイントとなり,医療施設等の看護師不足感が大きくそして急速に広がりました。
それ以前,看護師が転職する際には,年齢制限の壁や交代勤務が可能かどうかという点で,まずは新卒看護師の採用が第一で,その採用状況次第で中途採用看護師にまで枠が拡大されるのが一般的でした。しかし現在は,新卒看護師と同様,中途採用看護師の求人も積極的になされており,雇用形態の多様化についても各地で導入への検討が進んでいます。
中途採用看護師のなかには,モチベーションを維持しあるいはさらに高めたいと考えて施設を移動する人や,子育てなどで離職した後に復職する人などがいて,それぞれの背景も多様です。病院側がこうした状況を理解した上で受け入れ体制を整備しなければ,新卒看護師にとっては万全な受け入れ準備であっても,中途採用看護師には十分とはいえないかもしれません。
◆すべての看護師が働き続けたいと思う環境に
本書は,中途採用看護師を病院に受け入れる場合の体制整備の方策を丁寧に解説しています。中途採用看護師のこれまでの勤務経験や培った看護観を尊重し,「中途採用看護師のもつ基本的資質や能力を評価し個性を発揮できるよう支援するためのポイント」として,指導に必要な基本機能を,ガイドとしての機能,ケア提供者としての機能,コーチングの機能,ティーチングの機能,スポンサーとしての機能の5つに整理して,それぞれの内容を具体的に述べています。
また,中途採用看護師だからできる「客観的評価」の視点を尊重し,新しい考えややり方を受け入れる寛容をもち多様性を許容できる施設や部署こそが,自らを進化させていくことにつながるともいえます。管理者や教育担当者だけが受け入れ体制の整備に関わるのではなく,受け入れる側の看護師全員が方針に納得して意思決定できるまでしっかりと支援することが必要です。それにより,看護師自らが主体的に受け入れに関わり協力してもらえる土壌をつくることができます。
即戦力として短期目標を達成するために受け入れるのではなく,ともに働く仲間を確実に得るという長期的目標をめざすことこそ,中途採用看護師を活かし,定着させ,結果としてすべての看護職にとって働き続けたいと思える環境に近づけるのだといえます。
本書には,看護師の生涯教育に情熱を注ぎ,フットワークよくさまざまな現場の声に耳を傾け,状況をつぶさに知っている著者たちだから書けた知恵が集約されています。看護師確保と定着は医療現場では最重要課題であり,今後も格闘が続きますが,本書は医療施設に限らず,広い分野で中途採用看護師をいかす!伸ばす!育てる!ための手引きとして活用していただきたい一冊です。
(『看護管理』2009年2月号掲載)
書評者: 勝原 裕美子 (聖隷浜松病院副院長・総看護部長)
看護の仕事を続けたいと思っていても,諸事情でそれがかなわぬ人たちがいる。看護の仕事に戻りたいと思っていても,二の足を踏む人たちがいる。
そういう人たちが,看護の仕事に復帰できるように現場では諸策がとられている。しかし,正面切って議論されることは少なかった。「中途」採用者に対してのかかわりそのものが,これまで中途半端だったのだと思う。
その中途半端さに目を向け,看護管理者の姿勢を正そうとするのが,本書のスタンスである。看護管理者や現場の教育担当者の立場からすれば,新人を育てるのが大変であり,現場になじみ業務になじむための教育システムを作り上げなければと思うわけだが,中途採用者教育に関しては同様の時間やエネルギーはかけられない。中途採用者に対して大切にすべき育成の視点は何なのか。それがわからないから,放っておいても大丈夫でしょうという論理を通そうとしてきた管理者も多かったはずだ。あるいは,中途採用者への気配りや教育を重視してこなかった管理者もいるかもしれない。
しかし,採用するからには育てる責任がある。本書では,何に目を向けるべきなのかが,非常に丁寧にわかりやすく記されている。平易な文章ではあるが,理論的なフレーバーも随所に散りばめられており,事例も豊富なので説得力があって読みやすい。読み進めていると,これまでできていたつもりのことが,実はできていなかったのだと気付かされることもあり,その通りだとうなずくこともある。
大学や日本看護協会での教育経験のある二人の著者が,中途採用者応援団として本書を記したのは,現場での空回りを放っておけなかったからであろう。中途採用者は根付かないのではなく,根付かそうとしていなかったのではないか。そんな視点で本書を読めば,これまで以上に,中途採用者に対して新鮮なかかわりができそうな気がしてくる。
中途採用看護師の受け入れ体制整備の方策を丁寧に解説 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 洪 愛子 (日本看護協会認定部部長)
◆積極的な中途採用の広がり
2006(平成18)年の診療報酬改定で,急性期入院医療の看護体制を評価するため,入院基本料に「7対1」区分が導入されました。これがターニングポイントとなり,医療施設等の看護師不足感が大きくそして急速に広がりました。
それ以前,看護師が転職する際には,年齢制限の壁や交代勤務が可能かどうかという点で,まずは新卒看護師の採用が第一で,その採用状況次第で中途採用看護師にまで枠が拡大されるのが一般的でした。しかし現在は,新卒看護師と同様,中途採用看護師の求人も積極的になされており,雇用形態の多様化についても各地で導入への検討が進んでいます。
中途採用看護師のなかには,モチベーションを維持しあるいはさらに高めたいと考えて施設を移動する人や,子育てなどで離職した後に復職する人などがいて,それぞれの背景も多様です。病院側がこうした状況を理解した上で受け入れ体制を整備しなければ,新卒看護師にとっては万全な受け入れ準備であっても,中途採用看護師には十分とはいえないかもしれません。
◆すべての看護師が働き続けたいと思う環境に
本書は,中途採用看護師を病院に受け入れる場合の体制整備の方策を丁寧に解説しています。中途採用看護師のこれまでの勤務経験や培った看護観を尊重し,「中途採用看護師のもつ基本的資質や能力を評価し個性を発揮できるよう支援するためのポイント」として,指導に必要な基本機能を,ガイドとしての機能,ケア提供者としての機能,コーチングの機能,ティーチングの機能,スポンサーとしての機能の5つに整理して,それぞれの内容を具体的に述べています。
また,中途採用看護師だからできる「客観的評価」の視点を尊重し,新しい考えややり方を受け入れる寛容をもち多様性を許容できる施設や部署こそが,自らを進化させていくことにつながるともいえます。管理者や教育担当者だけが受け入れ体制の整備に関わるのではなく,受け入れる側の看護師全員が方針に納得して意思決定できるまでしっかりと支援することが必要です。それにより,看護師自らが主体的に受け入れに関わり協力してもらえる土壌をつくることができます。
即戦力として短期目標を達成するために受け入れるのではなく,ともに働く仲間を確実に得るという長期的目標をめざすことこそ,中途採用看護師を活かし,定着させ,結果としてすべての看護職にとって働き続けたいと思える環境に近づけるのだといえます。
本書には,看護師の生涯教育に情熱を注ぎ,フットワークよくさまざまな現場の声に耳を傾け,状況をつぶさに知っている著者たちだから書けた知恵が集約されています。看護師確保と定着は医療現場では最重要課題であり,今後も格闘が続きますが,本書は医療施設に限らず,広い分野で中途採用看護師をいかす!伸ばす!育てる!ための手引きとして活用していただきたい一冊です。
(『看護管理』2009年2月号掲載)
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。