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CRCのための臨床試験スキルアップノート

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CRCをはじめとする創薬育薬スタッフ向けに、治験チーム内の連携・調整やチーム間トラブルへの対処、より良いインフォームドコンセントの行い方、被験者保護への貢献、IRBのあり方、資料の作り方など日常の臨床試験(治験)の業務上でつまずきやすい問題に対する回答やヒントを満載した1冊。治験チーム内での自身のあり方の再確認、ならびに知識、技能、態度の修得に最適。
編集 中野 重行 / 中原 綾子
編集協力 石橋 寿子 / 榎本 有希子 / 笠井 宏委
発行 2010年10月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-00859-4
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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 医薬品は患者の治療において,有効かつ安全であることが求められます。したがって,より有効かつ安全な薬物治療を志向することが,創薬育薬医療に携わる者の社会的使命になります。創薬育薬医療チームのなかでCRC(clinical research coordinator;臨床研究コーディネーター)は,主として薬物や医療機器などの有効性と安全性に関する信頼できるエビデンスを作るためのキーパーソンとなる臨床研究支援スタッフです。
 CRCが創薬育薬医療チームのなかで役割を果たすためには,「創造性とコミュニケーション能力」が必要になります。「創造性とコミュニケーション能力」に優れた人材の育成には,創薬育薬医療スタッフが一堂に会して交じり合って学習する機会,たとえば,参加体験型学習である本来の意味での「ワークショップ」などが役立ちます。そこで,2008年2月以降約3年間にわたり,厚生労働科学研究費の補助を得た,日本臨床薬理学会主催の参加体験型の「CRCのためのワークショップ」と「認定CRCのためのワークショップ」を,北海道から沖縄までの全国各地で開催しています。
 また,創薬育薬医療チームのスタッフの育成を目指した大学院のコースとして,働きながら学ぶ社会人を対象にした国際医療福祉大学大学院の「創薬育薬医療分野」のコースがあります。また,国際医療福祉大学大学院では,公開講座として2004年以来毎年,「乃木坂スクール」を開催してきました。この「乃木坂スクール」で開講されている「CRCのためのコース」のコーディネーターを筆者が務めるようになってからの2007年前期と後期に開催された内容から,いくつかのテーマを選択して,読み物としてまとめました。
 本書のタイトルを『CRCのための臨床試験スキルアップノート』と題して,A.総論-CRCの役割と業務の現状,B.創薬育薬医療スタッフの連携,C.創薬育薬医療チーム内のコミュニケーションとトラブル予防策,D.被験者保護とIRBのありかた,E.臨床試験のインフォームドコンセントの5つのカテゴリーに分類し,スクールの講師を務めていただいた方々の講演内容を骨格にして,読みやすくまとめ直していただいています。
 創薬育薬医療に携わる「創薬育薬医療チーム」のスタッフの方々の日々の活動に,または今後の知識,技能,態度の習得に少しでも役立つならば,編集者と編集協力者の喜びとするところです。最後になりましたが,本書の編纂に当たっては,医学書院編集部の北條立人氏の努力に負うところ大であり,ここに謝意を表します。

 2010年8月
 中野重行

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 オーバービュー
A 総論-CRCの役割と業務の現状
 1.CRCの役割とスキルの向上
 2.治験依頼者との接点業務の現状と改善点-治験依頼者の立場から
 3.治験依頼者との接点業務の現状と改善点-CRCの立場から
 4.品質保証業務の現状と改善点-監査担当者/CRCの立場から
 5.GCP調査の立場とCRCの視点-GCP調査の立場から
 6.GCP調査の立場とCRCの視点-CRCの立場から
B 創薬育薬医療スタッフの連携
 1.創薬育薬医療チーム内の調整-市中肺炎を例にして
 2.創薬育薬医療チーム内の調整-検査部門を中心にして
 3.わかりやすい資料の作り方-薬剤師CRCの立場から
 4.わかりやすい資料の作り方-看護師CRCの立場から
 5.CRC業務に必要なツール作成の実際
C 創薬育薬医療チーム内のコミュニケーションとトラブル予防策
 1.医療機関と治験依頼者間のトラブル
 2.医療機関と被験者間のトラブル
 3.医療機関のスタッフ間のトラブル-医療機関所属CRCの立場から
 4.医療機関のスタッフ間のトラブル-SMO所属CRCの立場から
 5.事例から学ぶトラブル予防策
D 被験者保護とIRBのありかた
 1.一般市民からみた治験と被験者保護
 2.法的立場からみた被験者保護をめぐる「Q&A」
 3.被験者保護と模擬IRBによる学習
E 臨床試験のインフォームドコンセント
 1.同意説明文書を考える
 2.創薬育薬医療スタッフに必要な被験者保護の知識

 付録:参加体験型ワークショップの記録
 索引

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CRCの誕生から現在に至る活動の集大成の書
書評者: 井部 俊子 (聖路加看護大学長)
 本書は,国際医療福祉大学大学院の公開講座として2007年に開講された「CRCのためのコース」の講師陣により執筆されたものであり,2010年現在,CRCが実施している臨床試験の水準を示すものである。

 本書を読みながら,評者は「新GCP普及定着総合研究最終報告書」(主任研究者 中野重行,平成9年度厚生科学研究)を思い起こした。

 厚生省(当時)は,新しいGCP(Good Clinical Practice)に基づく治験が円滑に実施されていることを支援する目的で,GCP適正運用モデル事業とともに,1997年度厚生科学研究として「新GCP普及定着総合研究班」を設置した。この研究班は6つの作業班と統括班から構成され,評者は「治験支援スタッフ養成策検討作業班」の班長を務めた。報告書では,「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(省令GCP)における「治験協力者」を専任スタッフとして「治験コーディネーター(Clinical Research Coordinator : CRC)とすることを提案し,その役割,配置,費用および人材養成などについて報告している。報告では「CRCとは,医薬品の臨床試験実施過程において,とりわけ被験者と治験との調整を行い,治験の倫理性,科学性を保証するための活動を行う」とし,64項目の業務を,(1)事務管理,(2)患者ケア,(3)医療スタッフへの説明,(4)患者データの収集と管理に大別している。

 その後,10年余りが経過し,多くの優れたCRCの活躍に伴って「治験」から「臨床試験」へと大きく飛躍した。こうした活動の集大成が本書である。CRCをはじめとした創薬育薬医療スタッフを対象として,チーム内の連携やトラブルへの対処,より良いインフォームドコンセントの実施,被験者保護への貢献,治験審査委員会(IRB)のあり方,資料の作り方,などCRC実践家としての経験知がふんだんに収載されベストプラクティスを促している。

 評者が作業班長として記述した「新GCPにもとづく治験の実施は,一方で,わが国の医療におけるインフォームドコンセントのあり方,医療機関の定員制の問題や組織の柔軟性,さらに治験責任者医師等の研究倫理などの問題を浮き彫りにし,それらの問題解決が必要なことが認識された」ことの改善にCRCの誕生と育成が大きな影響を与えていると考えると,本書の出版は実に感慨深いものがある。
CRCとしての現場での経験が詰まった書
書評者: 古川 裕之 (山口大医学部附属病院薬剤部長)
 本書を初めて手にして,白い帯に書かれた「“創造性”と“コミュニケーション能力”に優れたスタッフになるために」というフレーズが目に留まった。“創造性”と“コミュニケーション能力”は,被験者,治験担当医師,院内関連部署のスタッフ,そして,立場の異なる製薬会社やCRO(開発業務受託機関)の開発担当者の間に立って仕事をしているCRCにとって,特に重要な要件と思っているからである。

 一体どんな人たちが書いているのだろうかと思い,早速,執筆者一覧を眺めてみた。なんと,全執筆者22人のうち19人がCRCである。彼女たちの仕事中の様子が目に浮かんできた。そういえば,AさんとBさんとは,2010年10月に別府で開催された「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」の懇親会で話したことを思い出す。

 つまり,本書は,CRCとして実際に現場で仕事をしている人たちが書いた本なのである。彼女たちの経験が一杯詰まっているのなら,これは期待できる。

 内容を見てみる。(1)創薬育薬医療チームの連携,(2)チーム内の良好なコミュニケーションとトラブル予防策,(3)被験者保護とIRBのあり方,(4)臨床試験における適切なインフォームドコンセントの方法,(5)わかりやすい関連資料の作成法などについて,実例を示しながらわかりやすく書かれている。日常の仕事で直面する疑問へのヒントが満載である。目を引いたのは,本文のレイアウトである。各項目のポイントがオレンジ地で目立つように書かれている。このおかげで,文字ばかりのページでも,読んでみようという気になる。

 それにしても,執筆者のほとんどを占めているCRCの皆さんが,わずか10年あまりでこのような書籍をまとめあげるだけの実力をつけていることを,仲間の一人として,とても嬉しく感じている。

 結論をいうと,本書は,『CRCテキストブック』(第2版,医学書院,2007年)で基礎を学び,そして,実際にCRCとして活躍し始めた人が,自分の仕事のレベルアップをめざして実践的スキルを向上させることを目的にまとめられたもの,という位置付けになる。その意味で,自己学習用としてだけでなく,SMO(治験施設支援機関)の社内教育用のテキストとしても活用できると思う。

 また,本書は“CRCのために”書かれたものではあるが,創薬育薬医療チームの一員である製薬会社やCROの開発担当者などCRC以外の方にとっても有用であることは,もちろん言うまでもない。

 日本各地で仕事をされているCRCの皆さんの進化を,楽しみにしている。

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