標準免疫学 第3版
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序文
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第3版 序
1796年,ジェンナーが人体に種痘を行って以来200年余りが過ぎ,免疫学は大きな進歩を遂げた.その間,からだの中に存在するさまざまな異物認識機構,排除機構の存在が明らかにされてきた.それと共に,われわれが異物(=非自己)を認識できるのは,実は,自己を認識する能力をもつためであり,免疫系は自己・非自己の認識能力により,からだのホメオスタシスを保つことが明らかになってきた.免疫系は,ホメオスタシスの維持のために,種々の細胞や分子を動員しながら,1つのシステムとして機能する.免疫系が非自己を排除する際には,多くの場合,同時に自己を傷つけないような仕組みが働き,自己を傷害することなく非自己のみを排除できる,システムを制御するためのいくつもの機構が内在するのである.一方,免疫の制御機構は巧妙であるものの,破綻することもある.アレルギーや自己免疫疾患などの免疫難病がそれである.残念なことに,これらの疾患に対しては,われわれは未だに根本的な解決法をもっていない.
このような背景の中で,免疫学を正しく理解することは重要である.しかし,免疫系には多くの分子や細胞が役者として働くことや,細胞が1か所に留まることなくからだ中を移動することから,初学者からは免疫学は複雑だとか,わかりにくい,という声もある.そこで,本書第3版では,特に,免疫学を初めて学ぶ学生に向けたわかりやすく読み通せる教科書を目指し,編集に小安重夫が加わり,同じく編集者の宮坂昌之,監修者の谷口克とともに大幅な改訂を行った.三部構成とし,第I編「免疫システムを理解する」では免疫学の全体像を俯瞰できるような総論を監修者,編集者が執筆し,第II編「免疫システムの基本メカニズム」では免疫の作用機構,制御機構について,第III編「免疫疾患のメカニズム」では免疫疾患について,それぞれ,各分野の専門家に具体的な各論を執筆していただいた.各章では,記述が詳細になりすぎないようにするとともに,始めにそれぞれの項目についての問題点を明示し,最後には要点を「まとめ」として示した.図は読者の理解しやすさを考え,カラーイラストを多用した.
本書が,免疫の作用機構,制御機構やその破綻について理解するだけでなく,生命現象の基本的原理の理解にも役立つことを念願するものである.
2013年春
谷口 克
宮坂昌之
小安重夫
1796年,ジェンナーが人体に種痘を行って以来200年余りが過ぎ,免疫学は大きな進歩を遂げた.その間,からだの中に存在するさまざまな異物認識機構,排除機構の存在が明らかにされてきた.それと共に,われわれが異物(=非自己)を認識できるのは,実は,自己を認識する能力をもつためであり,免疫系は自己・非自己の認識能力により,からだのホメオスタシスを保つことが明らかになってきた.免疫系は,ホメオスタシスの維持のために,種々の細胞や分子を動員しながら,1つのシステムとして機能する.免疫系が非自己を排除する際には,多くの場合,同時に自己を傷つけないような仕組みが働き,自己を傷害することなく非自己のみを排除できる,システムを制御するためのいくつもの機構が内在するのである.一方,免疫の制御機構は巧妙であるものの,破綻することもある.アレルギーや自己免疫疾患などの免疫難病がそれである.残念なことに,これらの疾患に対しては,われわれは未だに根本的な解決法をもっていない.
このような背景の中で,免疫学を正しく理解することは重要である.しかし,免疫系には多くの分子や細胞が役者として働くことや,細胞が1か所に留まることなくからだ中を移動することから,初学者からは免疫学は複雑だとか,わかりにくい,という声もある.そこで,本書第3版では,特に,免疫学を初めて学ぶ学生に向けたわかりやすく読み通せる教科書を目指し,編集に小安重夫が加わり,同じく編集者の宮坂昌之,監修者の谷口克とともに大幅な改訂を行った.三部構成とし,第I編「免疫システムを理解する」では免疫学の全体像を俯瞰できるような総論を監修者,編集者が執筆し,第II編「免疫システムの基本メカニズム」では免疫の作用機構,制御機構について,第III編「免疫疾患のメカニズム」では免疫疾患について,それぞれ,各分野の専門家に具体的な各論を執筆していただいた.各章では,記述が詳細になりすぎないようにするとともに,始めにそれぞれの項目についての問題点を明示し,最後には要点を「まとめ」として示した.図は読者の理解しやすさを考え,カラーイラストを多用した.
本書が,免疫の作用機構,制御機構やその破綻について理解するだけでなく,生命現象の基本的原理の理解にも役立つことを念願するものである.
2013年春
谷口 克
宮坂昌之
小安重夫
目次
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第I編 免疫システムを理解する
第1章 免疫システムの発見史
A 免疫学の第一歩:2度なし現象
B 抗体の発見
C MHCとT細胞の発見
D 自然免疫研究の流れ
E アレルギーの発見
F まとめ
第2章 免疫システムの成り立ち
A 免疫システムを構成する細胞社会
B 免疫系で使われるレセプターとそのシグナル
C まとめ
第3章 免疫システムは自己と非自己をどのように見分け,非自己反応を獲得するか
A 免疫における自己,それはMHC分子
B 免疫系の自己・非自己識別
C 自己免疫反応を制御する“安全弁”機構
D まとめ
第4章 免疫システムは異物に対してどのように反応するか
A 異物排除の基本ルール
B 感染初期防御
C 獲得免疫の起動
D まとめ
第II編 免疫システムの基本メカニズム
構成的メカニズム
第5章 認識のメカニズム
A 自然免疫による認識
B レクチンによる認識
C 補体
D NKレセプターによる認識
E 遺伝子再編成の機構
F BCR/抗体による認識
G MHCの構造と機能
H 抗原提示メカニズム
I TCRによる認識
第6章 分化のメカニズム
A 造血系
B T細胞
C B細胞
第7章 ホメオスタシス維持のメカニズム
A リンパ球トラフィキング
B サイトカイン,ケモカインによるホメオスタシス維持
C 免疫制御のメカニズム(制御性T細胞)
D 粘膜における免疫ホメオスタシス
第8章 外来性抗原に対する反応
A 自然免疫
B 自然免疫系と獲得免疫系を繋ぐ機能
C 獲得免疫(免疫担当細胞の機能)
D 免疫細胞の動態
誘導的メカニズム
第9章 外来性抗原排除のメカニズム
A 細菌感染に対する反応
B ウイルス感染に対する反応
C 寄生虫感染に対する反応
D 移植片に対する反応
E 生殖免疫
第10章 免疫記憶
A T細胞
B B細胞
第III編 免疫疾患のメカニズム
第11章 炎症のメカニズム
A 炎症とは
B 炎症の原因
C 急性炎症
D 慢性炎症
E 生体における炎症の重要性
F まとめ
第12章 アレルギー
A 気管支喘息
B アレルギー性鼻炎
C アトピー性皮膚炎
D 食物アレルギー
E まとめ
第13章 自己免疫
A 免疫力は諸刃の剣
B 自己免疫
C 膠原病
D 自己免疫疾患の遺伝因子
E 自己免疫疾患発症のメカニズム
F 自己免疫疾患
G 自己免疫疾患の治療薬
H 免疫学の進歩と治療への応用
I まとめ
第14章 腫瘍免疫
A 腫瘍免疫とは
B 腫瘍免疫研究と免疫療法開発の歴史
C がんの発生と免疫細胞のかかわり
D 抗腫瘍免疫応答ネットワーク
E がんの免疫療法
F 腫瘍免疫研究と免疫療法の開発
G まとめ
第15章 原発性免疫不全
A 原発性免疫不全症とは?
B 原発性免疫不全症の分類
C 複合免疫不全症
D 抗体産生不全症
E 免疫制御異常症
F 貪食細胞異常症
G 自然免疫不全症
H 自己炎症性疾患
I 補体欠損症
J 免疫不全を伴う症候群
K まとめ
第16章 後天性免疫不全(AIDS)
A HIV-1とAIDS
B AIDSの発生病理
C HIV-1のウイルス学的特性
D HIV-1感染症とAIDSの臨床像
E HIV-1感染症とAIDSに対する抗ウイルス薬
F HIV-1感染症とAIDSに対する多剤併用療法とその効果
G HIV-1感染症とAIDSの今後
H まとめ
付録1:ヒトのCD分類
付録2:原発性免疫不全症
和文索引
欧文索引
第1章 免疫システムの発見史
A 免疫学の第一歩:2度なし現象
B 抗体の発見
C MHCとT細胞の発見
D 自然免疫研究の流れ
E アレルギーの発見
F まとめ
第2章 免疫システムの成り立ち
A 免疫システムを構成する細胞社会
B 免疫系で使われるレセプターとそのシグナル
C まとめ
第3章 免疫システムは自己と非自己をどのように見分け,非自己反応を獲得するか
A 免疫における自己,それはMHC分子
B 免疫系の自己・非自己識別
C 自己免疫反応を制御する“安全弁”機構
D まとめ
第4章 免疫システムは異物に対してどのように反応するか
A 異物排除の基本ルール
B 感染初期防御
C 獲得免疫の起動
D まとめ
第II編 免疫システムの基本メカニズム
構成的メカニズム
第5章 認識のメカニズム
A 自然免疫による認識
B レクチンによる認識
C 補体
D NKレセプターによる認識
E 遺伝子再編成の機構
F BCR/抗体による認識
G MHCの構造と機能
H 抗原提示メカニズム
I TCRによる認識
第6章 分化のメカニズム
A 造血系
B T細胞
C B細胞
第7章 ホメオスタシス維持のメカニズム
A リンパ球トラフィキング
B サイトカイン,ケモカインによるホメオスタシス維持
C 免疫制御のメカニズム(制御性T細胞)
D 粘膜における免疫ホメオスタシス
第8章 外来性抗原に対する反応
A 自然免疫
B 自然免疫系と獲得免疫系を繋ぐ機能
C 獲得免疫(免疫担当細胞の機能)
D 免疫細胞の動態
誘導的メカニズム
第9章 外来性抗原排除のメカニズム
A 細菌感染に対する反応
B ウイルス感染に対する反応
C 寄生虫感染に対する反応
D 移植片に対する反応
E 生殖免疫
第10章 免疫記憶
A T細胞
B B細胞
第III編 免疫疾患のメカニズム
第11章 炎症のメカニズム
A 炎症とは
B 炎症の原因
C 急性炎症
D 慢性炎症
E 生体における炎症の重要性
F まとめ
第12章 アレルギー
A 気管支喘息
B アレルギー性鼻炎
C アトピー性皮膚炎
D 食物アレルギー
E まとめ
第13章 自己免疫
A 免疫力は諸刃の剣
B 自己免疫
C 膠原病
D 自己免疫疾患の遺伝因子
E 自己免疫疾患発症のメカニズム
F 自己免疫疾患
G 自己免疫疾患の治療薬
H 免疫学の進歩と治療への応用
I まとめ
第14章 腫瘍免疫
A 腫瘍免疫とは
B 腫瘍免疫研究と免疫療法開発の歴史
C がんの発生と免疫細胞のかかわり
D 抗腫瘍免疫応答ネットワーク
E がんの免疫療法
F 腫瘍免疫研究と免疫療法の開発
G まとめ
第15章 原発性免疫不全
A 原発性免疫不全症とは?
B 原発性免疫不全症の分類
C 複合免疫不全症
D 抗体産生不全症
E 免疫制御異常症
F 貪食細胞異常症
G 自然免疫不全症
H 自己炎症性疾患
I 補体欠損症
J 免疫不全を伴う症候群
K まとめ
第16章 後天性免疫不全(AIDS)
A HIV-1とAIDS
B AIDSの発生病理
C HIV-1のウイルス学的特性
D HIV-1感染症とAIDSの臨床像
E HIV-1感染症とAIDSに対する抗ウイルス薬
F HIV-1感染症とAIDSに対する多剤併用療法とその効果
G HIV-1感染症とAIDSの今後
H まとめ
付録1:ヒトのCD分類
付録2:原発性免疫不全症
和文索引
欧文索引