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レジデントのための これだけは知っておきたい! 消化器外科

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将来、消化器外科医を目指そうという初期研修医、あるいは消化器外科医として実際に第一歩を踏み出した後期研修医を主たる読者対象に、消化器外科の魅力、やりがい、おもしろさを伝える書。手術の基本となる手技をどうやって磨くか、病棟業務、がん化学療法、さらには患者さんとのコミュニケーション、自分の適性、キャリアプランなどまで、多岐にわたる若手医師の疑問や不安に応える内容が満載。消化器外科は大変だけど、ゼッタイにおもしろい!
編集 山本 雅一
発行 2008年11月判型:B5頁:152
ISBN 978-4-260-00657-6
定価 3,960円 (本体3,600円+税)
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 多くの研修医が消化器外科に魅力を感じていても,消化器外科医になることをためらっている。確かに忙しい。一人前になるのに10年近くかかる。訴訟などの問題もある。しかし,それらを考慮しても有り余るほど,消化器外科は魅力に溢れている。
 学生時代に,中山恒明先生のご講演を聞く機会に恵まれた。内容は食道がん外科治療であったが,外科医のセンスが消化管再建術に生きているという内容に感激したことを覚えている。その後,中山先生が創設された東京女子医科大学消化器病センター外科で研修をすることとなった。センターには卒後6年の医療練士研修制度があり,家に帰れない日々が続いた。しかし,センター入局時の期待は一度も裏切られたことはなかった。
 消化器外科の魅力を言葉にすることは難しい。元消化器病センター所長の羽生富士夫先生は,千葉大学第2外科初代教授 瀬尾貞信教授の文章を紹介している。「およそ外科医たるもの,万巻の書を机上で読み,いかに高邁な理論を持ったとしても,眼前の患者の病苦を,メスを以って救えなければ,何の価値もない」。外科医としての生きがいやメスをもって患者を救えたときの感動を伝えている。また,前消化器病センター所長の高崎 健先生は「外科道を究める」との言葉を残された。いかに外科が深遠で興味深く,生涯をかけて探求するに足る分野であることを示された。
 この本は,消化器外科医を目指す研修医,あるいは消化器外科医として後期研修を開始した医師を対象として書かれている。教科書ではないので,先輩外科医からのメッセージとして気楽に読んでいただきたい。また,現在第一線で活躍されている消化器外科リーダーに,消化器外科について語って頂いた。これらの文章は消化器外科に対する熱い思いに溢れている。一流外科医の考えに接することで,何かを感じていただければ幸いである。
 最後に,この場を借りて,お忙しいなかコラムをお寄せいただいた先生方,ならびに刊行にあたってお世話になった医学書院の安藤 恵氏,福田 亘氏に深謝申し上げます。

 平成20年10月
 東京女子医科大学消化器病センター外科
 山本雅一

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I 消化器外科を専攻する
 1.消化器外科医の仕事とは
  Q 座右の銘がありますか?
 2.消化器外科医の適性
  Q 女性でも消化器外科医になれますか?
 3.消化器外科医の生活とプライベート
  Q プライベートを充実させるのにどのような工夫をしていますか?
 4.キャリアプラン
  Q 3年後,5年後,10年後,どのようにキャリアを積んでいけばよいですか?
 5.学会に入会しよう
  Q 学会発表のコツを教えてください。

II 消化器外科医が最初に修得すべき手技
 1.手術とは
  Q 指導医によって指導内容が異なることがあるのですか?
 2.手術器具の名前
  Q 電気メスといわゆるメスはどのように使い分けているのですか?
 3.糸・針の種類
  Q 絹糸を手術で使うのですか?
 4.メスの持ち方
  Q メスは手術中に皮膚を切る以外にどんなときに使用するのですか?
 5.結紮,離,切離,縫合
  Q1 結節縫合と連続縫合はどう違うのですか?
  Q2 切離・切除・切断,縫合・吻合は何が違うのですか?

III 病棟における患者管理 
 1.輸液
  Q ヘパリンロックはどんなときにするのですか?
 2-1.術後の疼痛管理
  Q 麻薬性鎮痛薬使用時の副作用と対策は?
 2-2.がん患者の疼痛管理
  Q1 WHOの第一段階の薬剤の具体的な使用方法は?
  Q2 MSコンチン®を1日60mg内服していた患者が経口摂取不可能に
    なった場合の代替法は?
 3.栄養管理
  Q1 栄養状態はどのように評価するのですか?
  Q2 術後の食事はいつ出すのですか?
  Q3 血糖コントロールはどのようにするのですか?
 4.抗菌薬の基本的な使い方・投与方法
  Q 術式によって薬を使い分けるのですか? また,投与期間は
    どのようにしたらよいですか?
 5.包帯交換と創処置
  Q1 スタンダードプリコーションとは何ですか?
  Q2 皮下の膿瘍はどうしてできるのですか?
 6.ドレーン管理
  Q ドレーンはいつ抜去すればよいですか?
 7.レスピレータの基本
 8.穿刺処置の基本(胸腔穿刺,腹腔穿刺)
  Q 気腹針を使った腹腔穿刺は安全ですか?
 9.医療記録について〔カルテ,指示書,病歴(サマリー),書面による
 診察依頼,手術所見,診療情報提供書など〕
  Q 書き間違いをしましたが,どのように修正したらよいのですか?

IV 初めての執刀医
 1.初めての執刀医
  Q 初めての執刀(幽門側胃切除)の時は術者が寿司をごちそうする習慣が
    あるって本当ですか?
 2.手術に入る前のエチケット
  Q 夜更かししたくないのに,ドキドキして眠れません。
 3.切除標本の取扱い
 4-1.基本手術-開腹・開胸
 4-2.基本手術-リンパ節郭清
 4-3.基本手術-腹腔鏡手術の基本
 4-4.基本手術-幽門側胃切除
 4-5.基本手術-結腸切除

V 消化器外科医が知っておくべき化学療法の基本
 1.消化器癌の化学療法の特徴とそのエビデンス
  Q1 薬のさじ加減は?
  Q2 化学療法は外科医がするものでしょうか?
 2.消化器癌術前・術後補助療法
  Q 進行癌は手術だけでは治らないのですか?

VI 自ら学ぶ
 1.自ら学ぶということ
 2.EBM・ガイドライン
  Q エビデンスレベルの高い論文の見分け方はありますか?
 3.論文検索
 4.大学院で学ぶ
  Q1 留学を考えているのですが,そのタイミングを教えて下さい。
  Q2 留学のメリット・デメリットを教えて下さい。

 索引

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外科医をめざすみなさんへ
書評者: 松股 孝 (八幡総合病院副院長)
 昭和54年秋,2年目の研修医時代に研究棟や大学院の若手先輩に十数回にわたって早朝講義をしてもらいました。Bさんが食道静脈瘤の内視鏡所見を講義してくれました。Oさんが胃透視の基本を講義してくれました。Iさんが胃の解剖を講義してくれました。Uさんが創傷治癒の講義をしてくれました。彼らにとっては講義の準備も大変だったようです。当時の文部教官には若手がよく勉強するようになったと言われました。研修医にとっても,今日・明日の臨床に直結する講義は,学生時代の講義と違って,その後10年間は役に立つ内容でした。

 そのような内容が,『レジデントのための これだけは知っておきたい! 消化器外科』に,わずか1日で読破できる量でコンパクトに纏められています。

 たとえば,「手術器具の名前」の項には,コンコルドエッジ剪刀のことが出ており,この剪刀を使いこなすことこそ消化器外科医として卓越した技術の1つといえると述べられています。肝門部胆管・空腸吻合術後の狭窄症例は,肝門部が石のように硬くなっており,その癒着剥離たるや至難の業ですが,この剪刀を使って見事な癒着剥離をやってのける羽生富士夫先生の手術を見学させていただいたとき,「どうして出血しないのですか?」と思わず質問してしまいました。すると「癒着剥離は,こちら側とあちら側の血管がちょうど途絶えるところがある。そこにこの剪刀を当てれば出血しない」と,思わずオーッという声を飲み込んでしまう回答でした。

 羽生先生に執刀いただいた病院に東京女子医大消化器病センターから赴任した外科医がいました。彼から教わった手術のノウハウは忘れてしまいましたが,前立ちしてくれた彼が手術場を出る時に「ありがとうございました」と言っていた謙虚な姿勢を忘れません。外科修練が人格の陶冶を第一にしてきたのは今も昔も変わりません。以後,彼の母教室である女子医大消化器外科の主任教授は高崎健先生へ,そして山本雅一先生の時代になりましたが,今でも消化器外科医の修練は,この教室の方法が一番良いのだと思っています。

 本書に消化器外科学会のリーダーから寄せられたコラムが,また読み応えがあります。外科手術において一層アートの面が強いゆえんであるという大坪毅人教授。メティエといわれる状況をさしているのでしょう。「ルノアールの心を,片時も去らなかったのは,アートという言葉の濫用によって黙殺されたメティエの価値の回復であった。彼の眼に見えていたものは,基本的な技術が,師匠から弟子,又師匠になった弟子から新しい弟子へと伝えられ,練磨されて行く驚くほど長い時の経過,無数の無名の個性の発明や工夫を摂取して生きて行く伝統の命の深さなのであった」と小林秀雄が述べています。

 初期研修医の皆さんや外科医として第1歩を踏み出した後期研修医の皆さんが,この本を手に取って読めば,帯にある―やっぱり外科が好き―な気持ちになること請け合いです。ぜひ一読をお薦めします。

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