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総合診療・感染症科マニュアル

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研修施設としての評価も名高い亀田総合病院のスタッフの総力を結集してまとめ上げた1冊。研修医にとって必要最低限のスキルや情報を箇条書きでまとめ、ポケットに収まるサイズに凝縮。診療の合間に、気になったことをぱっと見てすぐ使える簡便さも兼ね備えている。総合診療科を中心に各科で伝承されてきた診断に至るまでの考え方・捉え方と、積み重ねられてきた経験が融合し、まさに“知恵”と“技”をこの1冊に収載した。研修医に必携のサバイバルガイドとして、手元に置けば大きな武器になるだろう。
監修 八重樫 牧人 / 岩田 健太郎
編集 亀田総合病院
発行 2011年08月判型:三五変頁:464
ISBN 978-4-260-00661-3
定価 2,750円 (本体2,500円+税)
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 全人的に診ることができる総合医や総合内科医や家庭医といったプライマリケア医が多いと,予後改善・コスト削減・医療システムが公正になるなどの効果があるため,英国では全医師の約40%,米国では全医師の約32%がプライマリケア医である.一方で,日本ではプライマリケア医の数はまだまだ少ない.今後高齢化がさらに進み,マルチプロブレムの患者さんが多くなることが予想される.プライマリケア医が主治医となり,必要に応じて臓器専門医と協力する医療体制を構築する必要がある.

 ただ,インターネットの普及により,患者さん自身によって様々な情報が入手できる情報化社会における現代医療において,診療の質を落としたのでは患者さんからの支持は得られない.そこで,エビデンスに基づいた「米国標準」の医療を病棟と外来の両方で屋根瓦式に行い,日々の診療・教育回診・ディスカッションを通じて質の高い優れたジェネラリストを輩出しているのが当科―総合診療科―である.将来ジェネラリストになる医師も,内科系の専門医になる医師も,予防医学も含めた患者さんの全体像をみてコモンな問題に対応できる主治医能力を持った医師となれるように研修している.一方で,エビデンスに基づいた米国標準の医療だけでは日本の現状にそぐわない面もある.日本の文化・日本人の気質・日本の医療体制・日本で使用できる医療資源や薬剤などを考慮して米国標準を踏まえた上で,目の前の患者さんに最大限有益な診療を行うことが重要である.私はこれを「米国標準+α」と呼んでいる.緊急疾患を除外することができ,コモンな疾患に対して「米国標準+α」の診断・治療を行うことができれば,患者さんによい意味での「違い」をもたらし,国民の期待に応えることができる「質」の高いジェネラリストになると私は確信している.

 「米国標準+α」を実践するための参考書としてPocket MedicineやWashington Manualとその訳本を用いてきたが,物足りなさをやや感じるところがあった.例えば,日本では肺炎球菌の約80%がマクロライド耐性であることをもし知らなければ,米国のガイドラインどおりに外来で市中肺炎をアジスロマイシン単剤で加療しようとすると失敗する可能性が高いなど,「米国標準+α」を日本で実践するために知らなければならない知識は数多く存在し,前述の参考書では不十分である.そこに本書の存在意義があると考える.理想論やおとぎ話でなく,日本で現実に到達可能な例として,米国標準の医療を理解した上で,日本で最良のものを求めて実際に診療する上でのエッセンスを本書に詰め込んでいる.もちろん,そのような本書の作成はわれわれのみではできなかった.院内の関係各科に協力を仰ぎながら,様々な方々の御尽力でようやくここに完成した.

 本書の作成にあたっては,本書の制作はもちろん,科の発展に関しても,常に皆が働きやすいよう環境を用意してくれた総合診療科創立者・前任部長の西野洋先生,そして,病院から支持が得られるように常に支えとなってくれた夏目隆史先生に,まずは心より御礼申し上げたい.また,プレッシャーがかかるなか指導医として活躍してくれた佐藤暁幸先生・山藤栄一郎先生・田口智博先生・井本一也先生,回診や診療のレベルアップに貢献してくれる細川直登先生・北薗英隆先生をはじめ感染症部門の先生方やGremillion先生,キャリアの大切な時期の中で当科後期研修を選んで来てくれた歴代の後期研修医達,活気と驚きをプラスしてくれる歴代の初期研修医達,はるばる全国から見学に来てくれた医学生達,チームとして協力してくれる看護師・コメディカルの皆様,素晴らしい原稿を書いてくれた上に初稿から月日が経過し労力を割いて大幅な原稿の改訂をしていただいた各執筆者の先生方にも感謝したい.そして,どんなときでも私を常に支え続けてくれた家族にも深く感謝する.

 “皆様ひとりひとりの貢献なしでは当科は今のような素晴らしい科になりえなかったし,このマニュアルが世に出ることはありえませんでした.ありがとうございます!”

 最後に,当科は西野洋先生が立ち上げ,岩田健太郎先生が来て診療面・教育面でレベルアップし,数多くの医学生・初期研修医・後期研修医をこれまで教育してきた.岩田先生が教えてくれたことのエッセンスを含む本書が,日本全国の「患者さんの全体像を助けたい」と思うジェネラリスト・マインドを持った医師の役に立てば幸いである.

 2011年8月
 監修を代表して
 八重樫 牧人

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患者ケアの目標設定
病歴聴取
身体所見
アセスメント,プロブレムリスト
屋根瓦式・チーム医療
入院オーダー・経過記録・サマリー
インフォームドコンセント,advanced directive,DNAR
検査判断の原則
一般外来診療の原則
救急外来の原則
在宅診療の原則
集中治療の原則
高齢者医療の原則
疼痛緩和の原則
感染症
  急性咽頭炎/市中肺炎/誤嚥性肺炎/
  院内肺炎,人工呼吸器関連肺炎,医療機関関連肺炎/女性の尿路感染症/
  (成人)男性の尿路感染症/下痢(外来における急性下痢症)/
  偽膜性腸炎(入院患者における感染性下痢症)/蜂窩織炎/
  ライン感染(血管内留置カテーテル関連血流感染)/感染性心内膜炎/
  市中細菌性髄膜炎(大人)/ツツガムシ病/疥癬/
  抗インフルエンザウイルス薬の使用方法(ポジション・ステートメント)/
  グラム染色/感染防御の方法/抗菌薬使用時の腎機能モニター/不明熱/
  性感染症/鼠径部リンパ節腫脹/尿道炎,頸管炎/腟炎/骨盤内炎症性疾患/
  精巣上体炎/結核/HIV感染症
呼吸器
  血液ガス・酸塩基平衡障害/代謝性アシドーシス/代謝性アルカローシス/
  呼吸性アシドーシス/呼吸性アルカローシス/胸部X線写真/呼吸機能検査/
  喘息/慢性閉塞性肺疾患/胸水/肺塞栓症,深部静脈血栓症/
  閉塞性睡眠時無呼吸症/間質性肺疾患
循環器
  高血圧/心不全/急性冠症候群/
 不整脈総論
 不整脈各論
  心房細動(慢性および発作性)/心房粗動/発作性上室性頻拍
神経
 脳血管障害
  一過性脳虚血発作/脳卒中/急性期脳梗塞/脳出血/くも膜下出血/
  痙攣,痙攣重積/めまい
消化器
  上部消化管出血/下部消化管出血/胃十二指腸潰瘍/腹痛/嘔吐と吐き気/
  下痢/急性胆嚢炎/急性胆管炎/急性膵炎/腹水/イレウス/
  ビリルビンやALP,GGTP上昇を主とする“胆汁うっ滞型”の症例では/
  AST,ALTの上昇した患者では/慢性肝疾患全般の生活指導と管理/
  アルコール性肝炎/C型肝炎/B型肝炎
腎・水・電解質
 腎臓
  血尿/蛋白尿/浮腫/ネフローゼ症候群/急性腎障害/
  慢性腎臓病/腎疾患の食事療法
 水・電解質
  輸液の基本/水・電解質の診断と加療
内分泌疾患(糖尿病を含む)
 糖尿病
 甲状腺疾患
  甲状腺中毒症/グレーブス病(バセドウ病)/亜急性甲状腺炎/
  甲状腺クリーゼ/甲状腺機能低下症
 副腎疾患
  クッシング症候群/原発性アルドステロン症/副腎不全/
  褐色細胞腫/副腎偶発腫
 脂質異常症
血液
  汎血球減少/貧血/鉄欠乏性貧血/巨赤芽球性貧血/溶血性貧血/
  再生不良性貧血/多血症/出血傾向/血小板減少症/血小板増加症/
  凝固異常/好中球減少時の発熱
リウマチ・膠原病
  “関節痛?”へのアプローチ
 関節の診察の仕方
  肩の関節の診かた/肘の診かた/手の診かた/腰背部の診かた/
  股関節の診かた/膝関節の診かた
 一般外来での関節痛
  結晶性関節炎/細菌性関節炎/付記:リウマチ性疾患の血液検査/
  リウマチ性多発筋痛症/関節リウマチ
皮膚
  接触皮膚炎/蕁麻疹/ウイルス性発疹症/その他の中毒疹/薬疹/
  結節性紅斑/水疱性疾患/膠原病/スウィート病,ベーチェット病/
  細菌感染症/血管炎/サルコイドーシス/
  自然界の危険な生物(マムシ,ヤマカガシ,ハチ,ムカデ,クラゲなど)/
  アナフィラキシー
 皮膚科で手元におきたい資料
精神
  せん妄/認知症および周辺症状/うつ病/アルコール離脱症状/不眠
ヘルスメンテナンス(健康増進と予防)
EBM
女性の健康
  女性の腹痛/妊婦,授乳婦に投与安全とされている薬剤/月経異常/月経困難症/
  月経前症候群/性器出血/帯下/更年期障害/
  過活動性膀胱,骨盤臓器脱(性器脱)/避妊法/スクリーニング・ヘルスメンテナンス
男性の健康
  前立腺肥大症/勃起障害

欧文索引
和文索引

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コンパクトな中に内容の詰まった心強いマニュアル
書評者: 川島 篤志 (市立福知山市民病院総合内科医長)
 「総合診療・感染症科,えっ? こんな科あるの?」

 日本の医療界ではありえる発言かもしれない。ただ,外来などでの診断アプローチや,医療を行ううえでの“総合診療”的なマインド,“感染症”(発熱)診療は,常に臨床医のまわりにあるべきものである。亀田総合病院と環境は異なると思うが,地方都市でみられるような医療崩壊の解決策には総合診療が大きな鍵になることを,医療行政や病院幹部などを含め多くの人が気付き始めている。

 地域基幹病院での総合内科医(Hospitalist)として勤務を続ける自分自身は,総合内科の一つの軸(もしくはSub-specialty)として,感染症診療は必須だと思っており,今回まさにドンピシャの本が出たものだと思い,読み始めた。

 「序」を読み始めた途端,いきなりワクワクしてきた。「米国標準+α」という表現に加えて,「日本で実践するために知らなければいけない」ことに本の存在意義をおいている監修の八重樫先生の気持ちが伝わってくる。

 目次を見ると,各臓器別の疾患論に入る前の項目に圧倒される。「患者ケアの目標設定」や「屋根瓦式・チーム医療」などでは,普段言いにくいこと・気付きにくいことが,岩田・八重樫節で熱く語られている。さまざまな場や状況で患者さんを診ることが求められるジェネラリストにとっては必読の,外来診療/在宅診療や高齢者医療・疼痛緩和などの原則論が続く。

 終盤の「ヘルスメンテナンス(健康増進と予防)」「女性/男性の健康」などの項目を,“亀田”のもう1つの顔である家庭医療の先生方らがまとめあげられていることも特筆すべき事項である。病院勤務医が忘れてしまう可能性のある項目が,もれなく記載されている。この序盤・終盤で全ページの1/3弱を占めているが,ここは全臨床医に伝えたいメッセージが満載である。

 疾患の部分に関しては,どの部分を厚く,どの部分を薄くするか,悩まれたのではないかと思う。主要臓器疾患を外すわけにはいかないが,深すぎては紙面が足らない。必須な部分を厳選し,アルゴリズムや図表を整理,工夫してまとめている。また総合診療の軸に成り得る感染症診療やリウマチ・膠原病(“極上の亀田ブランド”?)が厚く(写真も多彩),しかも「米国標準+α」を基に記載されているのが心強い。また入院診療で必ず遭遇する皮膚・精神の分野もコンパクトに記載されており,診療の幅が膨らみそうである。

 概念的なことは,Clinical pearlsのような箇条書きであり理解しやすい。「オッカムのカミソリ」には大笑いしたのでぜひ探して欲しい(自分の人生を振り返ってみて,ようやく真実に気付いた)。

 欠点も少し挙げておくと,実践的なマニュアル本は各個人でさらにつくりあげていくものだが,メモを書き足すスペースが少ない印象がある。ただ,逆にこれだけの内容が詰まったマニュアルを持ち歩けるサイズにしていることは執筆者や監修者に敬意を表したい。

 多数のマニュアル所持者の存在は,「患者さんの全体像を助けたい」と思うジェネラル・マインド(序より抜粋)をめざす医師が多数いることを意味している。純粋医学的項目はもちろんだが,マニュアルの序盤・終盤から,『こう書いてあるのですが…』と若手から示される状況は指導医にとって,ある意味脅威(驚異)かもしれない。総合診療を志す医師だけでなく,臓器別専門医を含めてすべての医療従事者に必携・必読の本になることを期待している。
サイズからは想像もつかない,マニュアルを超えた内容
書評者: 青木 眞 (サクラ精機(株)学術顧問/感染症コンサルタント)
 優れた研修病院には,それぞれが置かれた地域や患者層にマッチした独自の診療文化・スタイルともいうべきものがあり,これが国際標準化機構(International Organization for Standardization: ISO)などでは評価できない形でその施設の診療の質を大いに高めている。

 そしてこれらの施設には,長年,培われた有形・無形の診療上の知恵が集約され,それを何とか霧散させず次世代に語り継ぎたいという熱意による診療マニュアルが必ず存在する。古典的なものとしてはワシントン大学のワシントンマニュアル,聖路加国際病院の内科レジデントマニュアルなどが挙げられ,“母校”沖縄県立中部病院にも同様のものがある。最近勃興が著しい新しい研修病院にも,歴代,屋根瓦方式で養われた研修医・レジデントたちにより練り上げられた秘伝のマニュアルがあり,その形はA4の紙に印刷されたものをホッチキスで留めただけのものから,院内ネット上のフォルダにまとめられたパワーポイント形式のものまで,その形態は色々であるが,若々しい診療上の熱意と良心が結晶化している。ここには「良き医師として患者を助けたい・役に立ちたい」という強烈なベクトルが充溢しており,同時に,その施設がいかに粗野な野戦病院であっても言語化できない「温もり」「優しさ」がにじんでいる。「自分の体調・気分・能力に左右されずに良質な診療を毎日提供したい」という臨床医であれば誰もが自然に持つ本質的な願いによる産物である。

 さて前置きが長くなったが,ここで『ザ・亀マニュ』(正式名『総合診療・感染症科マニュアル』)の登場である。監修はいつもお世話になっている八重樫牧人先生と岩田健太郎先生。そして編集はなんと亀田総合病院である。タイトルからして以前から「感染症教育は優れた総合診療教育の一環としてのみ可能」という監修者らの主張が具現化したものともいえるが,本書の特徴を「感染症を総合診療に組み込んだマニュアル」と表現しては的外れとなる。それほど,本書は極めて小柄でありながら大きな構造物を内在させている。まずマニュアルが陥りやすい近視眼的な料理本cookbookで終わっていない。日常臨床で必須となる多くの「原則」が本書前半のかなりの部分を占めており,その原則を医師はその経験の多寡を問わず生涯忘れてはならない。その意味では本書はマニュアルではなく手のひらにのる成書である。

 感動するたびに書評用に付けた付箋が数十枚となったが,残念ながら紙面の関係で「女性の健康」といったヘルスメンテナンスからEBMまで視野に収めた本書をすべて紹介することはかなわない。極めて優れた点のほんの一部を紹介する。

検査判断の原則:検査結果で診療行為がどのように変わるかを考えよう。
一般外来診療の原則:患者は医師に直接クレームを付けることは少ない。苦情の投書に目を通し,コメディカルに寄せられる患者の言葉に敏感になるようにする。
在宅診療の原則:終末期に起きる変化は“本人は苦しくない”ということをご家族に説明し,家族の不安をできるだけ取る。

 本書は,小さな宝石箱のようなマニュアルである。このマニュアルを読んで心が温かくならない医師は,役職が院長でも教授でも医師を辞めたほうがよい。研修委員長は「大人買い」の予算を準備されるようお勧めする。
医師としての規範を伝えてくれるマニュアル
書評者: 大曲 貴夫 (国立国際医療研究センター感染症内科/国際疾病センター)
 自分自身の研修医時代を思い出してみる。

 私が研修医のころ,先輩から教わった「研修医1~3年目までの研修目標」というものがあった。1年目は,まずは体で仕事を覚えること。2年目は,そんな1年目を指導するために,教育すべき内容が自分の中で言語化されていること。3年目は,そうやって身につけた日々の診療の内容を成書や文献で裏付けていくこと。そんな1~2年目の医師には,日々の診療を進めていくための行動と指導の指針が必要である。この数年で身につけることがその後の医師としての人生の中で自身の医療現場での行動規範となることを考えれば,何を指針とするかは極めて重大事だといえる。

 亀田総合病院の総合診療・感染症科は,私もよく知る岩田健太郎先生・細川直登先生・八重樫牧人先生が耕された部門である。そのメンバーが今回,総合診療・感染症科マニュアルを出された。このマニュアルはその「指針」たりえるものといえる。

 まずサイズが良い。ポケットに入り場所をとらない。小さいからポケットから出すときに引っ掛からない。また,アルゴリズムも良い。忙しい現場の中で,一覧性が高くしかもシンプルでよく練られたアルゴリズムほど役に立つものはない。このマニュアルにはそのアルゴリズムが多く収載されている。さらに,図が良い。診察主義など,文章ではなかなかにイメージが湧きにくいものについてはやはり図や写真が欲しい。

 しかし何よりも私が気に入り,なおかつ感嘆した部分は,冒頭の患者ケアの目標設定から原則に至るまでの,いわば診療の作法の部分である。医師として身につけるべき素養は多い。各分野の知識・手技の練習など,挙げれば事欠かない。しかし最も重要なのは,医療者としての作法であり,態度であり,判断の指針ではなかろうか。従来の医療現場での教育ではこれらの点が重要であることは経験的に知られていても,系統的に教育されることはあまりない。心ある上級医が,自分が自然成長的に身につけたことを後進に伝えていく程度である。本マニュアルではその部分が見事に言語化されている。読めば,その内容が実践に裏打ちされているであろうことが読み取れる。亀田総合病院の総合診療・感染症科にはこれだけの診療文化・教育文化が根付いていることの証である。このような現場を既に作り上げている亀田の先生方を心から賞賛したい。医師教育にあたる者にとって,この部分は必読ではなかろうか。

 あえて注文を言えば,各論はProblem basedに整理する,もしくは索引を付けるなどしてあればもっと良かった。患者の問題点をいかに的確に抽出しそれを解決していくのかが私たちに求められていることだが,だからこそ現場思考のProblem basedな問題整理は必要だと思うのである。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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