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イラストレイテッド ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術

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最小の切開創、ガスも使わず、腹腔内も傷つけず、高価なディスポーザブル手術器具も用いない、患者さんに優しい、低侵襲、低コストの理想的な手術。前著『ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術』を継承し、誰でもできる手術をめざして、アトラス版を新たに刊行。精緻に詳細に丁寧に、テクニックのすべてをシンプルなイラストでビジュアルに展開。
木原 和徳
発行 2007年11月判型:A4頁:152
ISBN 978-4-260-00481-7
定価 15,400円 (本体14,000円+税)

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  • 序文
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はじめに
木原和徳

 私は,次のような条件を満たす泌尿器科手術の実現を夢見て,10年ほど前から教室員とともに開発工夫を進めてきました.
 「臓器を取り出す創のみで手術を完了する」
 「ガスを使わない」
 「腹腔内を無傷に保つ」
 「トロカーポートを用いない」
 「拡大視と立体視を併用する」
 「創の調節で状況に合った手術を行う」
 「全員で全操作をチェックする」
 「経済的である」
 「習得しやすい」
 そして「すべての開放手術の低侵襲化につながる」
 ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術と名付けた本手術は,幸い現実のものとなり,たくさんの泌尿器科医に受け入れていただけるようになり,現在,全国的な広がりをみせています.
 手術という「患者さんを傷つけて行う治療」は,低侵襲化という課題を本質的にもっていると思います.腹腔鏡手術の登場により,画期的な低侵襲法が具体的な形で提示されましたが,画期的であっただけに,必ずしも欠点のない十全な形で登場したわけではなく,改善が望まれる問題点を抱えながらの登場であったように思います.例えばガスによる加圧,腹腔内操作(後腹膜臓器に対する),高い手術コスト,立体視の欠如,臓器摘出創の低利用などが挙げられます.ロボット手術における立体視と多関節鉗子の導入は腹腔鏡手術の問題点の改善ととらえられます.「臓器を取り出す創」を最大限に利用するミニマム創 内視鏡下手術も,ガスとトロカーポートを使う腹腔鏡手術のもつ問題点を解消あるいは軽減する,もう1つの低侵襲化へのアプローチと考えています.
 現在の社会は手術に対して,「低侵襲」と「安全」という,相反する面をもつ2つの課題を両立させることを強く望んでいます.この望みを患者さんと医師の双方に有益な形で実現させることが,今,私たち外科系医師に求められている切実な問題であるように思われます.ミニマム創 内視鏡下手術は,「安全」に可能な限り力点をおきながら,腹腔鏡手術と同等の「低侵襲」を達成し,開放手術と同等の「根治性」と「経済性」をもたらすことを目標にしたものです.世界に目を向けると,低侵襲手術を受けられるのは富裕層のみと言っても過言ではなく,「経済性=低手術コスト」は,貧富の差で手術侵襲が左右される状況を作らないためのキーポイントとも言えるかと思います.
 1998年に本手術の第1例目を行い,2002年に拙著「ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術」(医学書院)を出版し,2003年に全国研究会「ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術研究会」を設立し,2006年には厚生労働省より先進医療の認定を受けることができました(認定名称:内視鏡下小切開泌尿器腫瘍手術).本手術では,泌尿器科腫瘍患者さんのほとんどが術後数日以内に退院できる状態になり,予防的抗菌薬も根治的腎摘除や副腎摘除などの清潔手術では不要となりました(前立腺全摘除などの準清潔手術では1回のみの使用).癌の根治性を妨げないことも9年以上を経過した統計で明らかにすることができました.本手術を新たに導入する施設は年々増加しており,当院に手術見学に来られた医師も多数にのぼります.症例を重ねるたびに,本手術が低侵襲で,安全で,経済的で,患者さんにとっても医師にとっても有益な手術法であることを実感しています.患者さん側からも,9割以上の方から「手術に満足している」というご返事をいただいており,同じく9割以上の方から「家族や友人が同じ病気になった場合には本手術を勧める」とのありがたいご回答をいただいています(無記名郵送調査).
 本書では,ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術をできるだけわかりやすく解説するために,その手順の詳細を漫画のように場面展開させて描くことを心がけました.私は本手術を行う際,まず目標とする各場面を頭の中に描いて,その目標場面を順序通りに作っていって,手術を完了させています.本書では,この目標としている場面を私の拙い絵を基にしてイラストレーターに描いてもらったもので,各目標場面ごとにミニマム創からの目印と操作法を解説しています.本手術についてこれまで受けた質問の中で,最も多かったものは「普通の医師にできる手術なのか」「腹腔鏡手術の経験のない医師にもできる手術なのか」というものでした.いつも「そうです.それがこの手術の目標の1つです」と答えてきました.このような質問を受ける理由の1つは,前書では手術の概念を伝えることに主眼をおき,具体的な操作法の記載が不十分であったためと思われました.私は,「名人芸の手術」もよいとは思いますが,「普通の医師が,安全に,確実に行える手術」のほうが,たくさんの患者さんに貢献できる,ある意味ではより優れた手術と言えるのではないかと考えています.「手術の教育」とよく言われますが,まず教育に適した,安全な,習得しやすい,調節のきく手術を作ることが大切ではないかと思っています.前書の出版の後,この目標に向けて教室員とともに,さらに工夫・改良を重ねてきました.現在では,「常に目印をおき,目印に従って各ステップを進めていけば,ミニマム創から安全,確実に完了できる」という状態にほぼ達したのではないかと感じています.副腎摘除や根治的腎摘除は,卒後5~6年目の医師が行える手術になっています.「目印に従って,決まったステップを進めていけば,合格点(85点以上)のミニマム創 内視鏡下泌尿器手術ができる.100点にするのは各人の研鑽」と若い教室員に話しています.各自の研鑽をこの本に書き足していけば,自分の手術書へと変わっていくものと思います.
 「根治的腎摘除」と「前立腺全摘除」がミニマム創 内視鏡下泌尿器手術の基本であり,この2手術を行うことができれば,泌尿器科の全臓器のミニマム創 内視鏡下手術を行うことができます.この2手術も本書を読んでいただければ,比較的容易に行えることがご理解いただけるものと思います.そのため,この2手術について詳述し,その応用として副腎摘除と膀胱全摘除を提示するという体裁にしました.また,本手術のもう1つの大きな目標は「すべての開放手術の低侵襲化」を達成することですが,ミニマム創 内視鏡下手術を部分改変した改変ミニマム創 内視鏡下手術を取り入れれば,この目標に比較的容易に到達できるものと考えています.つまり,「ミニマム創 内視鏡下根治的腎摘除と前立腺全摘除ができるようになり,さらに改変法を展開できるようになれば,泌尿器科のほぼすべての開放手術を低侵襲化できる」と言っても過言ではないと思います.実際に私たちは,ほぼすべての開放手術をミニマム創あるいは改変ミニマム創 内視鏡下手術で行っています.現在本邦では,これまで開放手術で行われてきた手術が,開放手術と低侵襲手術に二分されています.また,低侵襲手術を行っている個々の施設でも低侵襲手術と開放手術を患者さんによって使い分けているのが現状です.開放手術となった患者さんは侵襲の大きい手術を受け,両者の落差はきわめて大きいと言わざるを得ません.本手術では,患者さんの状態や疾患の状況に合わせて細かく創を調節できるため,患者さんを選別せずに個々に合わせた適切な低侵襲化が図れるものと考えています.
 低侵襲手術が叫ばれて久しい現在でも,泌尿器腫瘍手術(経尿道的手術を除く)のおよそ4分の3は従来の開放手術で行われていることが,2006年の全国調査(日本泌尿器科学会/ミニマム創内視鏡下泌尿器手術研究会合同調査)で明らかになりました.一方,「現在は低侵襲手術を行っていないが,今後はぜひ取り入れたい」と望んでいる施設はきわめて多数にのぼることも明らかになりました.このような状況の中で,本手術の先進医療認定は「ミニマム創」ではなく,「小切開」として認定されました.小切開の定義は「手が挿入できない切開」,また手より対象臓器が大きい場合には,「対象臓器程度の切開」となりました.したがって,「手の入らない小切開(準ミニマム創ととらえています)」という比較的越えやすいハードルを越えることで,たくさんの施設が低侵襲化への第一歩を「先進医療として」踏み出すことができるようになりました.しかし,これはあくまでも第一歩であり,次のステップとして臓器がようやく取り出せる「ミニマム創」に進むことで,本来の目標である洗練された低侵襲手術に到達するものと考えています.泌尿器科の全開放手術の低侵襲化に向けて,本手術を基本にしたアプローチがあることを本書でお伝えすることができればと願っています.
 本書は合格点の低侵襲手術を,泌尿器科領域で,できるだけ安全に,根治性と術後の良いQOLを保ちつつ,低コストで行う方法を示したものですが,これで満点というものでは決してありません.満点に向けてさらに改良が必要と考えています.読者諸賢の御批判をいただければ幸いです.
 2007年9月吉日

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はじめに
1 概念-ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術とは何か
 本手術によるすべての泌尿器科開放手術の低侵襲化
 開放手術および腹腔鏡手術との比較
 ミニマム創の位置
 改変ミニマム創 内視鏡下手術の概念
 内視鏡下小切開手術(先進医療認定)におけるステップアップ
 開放手術からの低侵襲化/洗練化
 ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術の目標と達成度
2 器具
3 根治的腎摘除-上部泌尿器臓器手術の基本
 根治的腎摘除の手順
 左根治的腎摘除の手順
 右根治的腎摘除の手順
4 副腎摘除-根治的腎摘除の応用
 右副腎摘除
 左副腎摘除
5 腎尿管全摘除,腎部分切除,巨大水腎摘除-根治的腎摘除の応用
 腎尿管全摘除
 腎部分切除
 巨大水腎の摘除
6 前立腺全摘除-下部泌尿器臓器手術の基本
 前立腺全摘除の手順
7 膀胱全摘除-前立腺全摘除の応用
 男性の膀胱全摘除
 尿路変向
 女性の膀胱全摘除
8 骨盤リンパ節郭清-前立腺全摘除の一部
 骨盤リンパ節郭清の手順
9 改変ミニマム創 内視鏡下手術-泌尿器科全開放手術の低侵襲化
文献
おわりに
索引

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ミニマム創が患者さんに届ける低コスト・安全・低侵襲
書評者: 筧 善行 (香川大学医学部泌尿器科教授)
 ミニマム創内視鏡下泌尿器手術は後腹膜を主戦場とする泌尿器外科医の発想の賜物と言える手術法である。解剖学的指標に乏しい後腹膜腔を,層構造を注意深く意識しつつ疎な結合組織を押し広げた先に広がる予想外に広い手術空間,そして薄黄色の脂肪組織に包まれた標的臓器を同定した時の安堵感,これらは泌尿器科医が等しく共有するものである。木原和徳先生の考案されたミニマム創内視鏡下泌尿器科手術は今,静かに,しかし確実に実践する術者や施行を希望する患者を増やしている。

 著者である木原先生は,この手術手技は根治的腎摘除術と前立腺全摘除術が二大基本手術操作で,この二つができれば泌尿器科のmajor surgeryはほとんどがミニマム創でアプローチ可能となると強調されている。私自身は前立腺全摘除術でしか施行経験がないが,おそらくその通りであろうということは理解できる。

 初めてミニマム創で根治的前立腺全摘除術を施行した時のきっかけは忘れてしまったが,現在ではわれわれの施設の前立腺全摘除術のおよそ80%が本法で施行されている。患者さんが術後何となく楽に離床されていく様子や,創部感染が少ないことなどを肌で感じたことが続けている理由のように思う。しかし,当初はこんな窮屈な気持ちで最後まで完遂できるのか,という不安が大きかった。木原先生の考案されたPLES鉤(R)は当時入手できておらず,ノットスライド(R)のみで開始したが,細径金属吸引管を2本使用することでほとんどの手技が容易にできることに気がついてからは,一気にストレスがなくなったように思われる。本書では,木原先生自身が試行錯誤された末に考案された工夫が随所にちりばめられ,初めてミニマム創手術をトライされる方にもできるだけストレスのないように懇切ていねいな図説がなされている。と同時に,ミニマム創手術だけではなく,通常の開放手術や体腔鏡手術にも共通する重要な解剖学的事項も解説されていて,一般的手術書としても大変参考になるものに仕上がっている。

 泌尿器科手術の多くは癌に対する手術である。癌の根治性に関する議論がなおざりにされてはならないのは言うまでもないが,外科的治療がますます低侵襲化する傾向は間違いない。他の外科系領域でも,ミニマム創手術と類似の発想・手法で「ミニラパ手術」「吊り上げ手術」「鍵穴手術」などといった名称で開発・研究が進行している。体腔鏡下手術もロボットの導入や立体視の可能な内視鏡の登場などで一層の進化を遂げつつある。今後,低侵襲手術がどのような方向へ進むのか,最終的に無創手術のような形態に一極化していくのか未だ予測はできない。また,ラパロとミニマム創の二股状態の,私のような優柔不断なものには,ロボット体腔鏡手術も大変魅力的であるのは偽らざるところである。しかし,現時点ではあまりに高価であるのも事実で,それに見合うほど患者さんにメリットがあるのか,と問われると誰も明確な証拠は示せないのが事実であろう。ミニマム創手術はちょっと「窮屈」という欠点はあるものの,「安い」「安全」「低侵襲」という長所を多くの患者さんに享受させてあげるため,本書が大いに活用されることを願ってやまない。
確かな経験に基づくヒントがイラストとともに詰まった一冊
書評者: 荒井 陽一 (東北大学大学院医学系研究科教授・泌尿器科学分野)
 1990年代,腹腔鏡手術が本格的に導入され,現在は体表手術を除くほとんどすべてが腹腔鏡下に施行可能な時代になった。腹腔鏡手術がなぜこれほどまでに普及,発展したのか? それは開放手術の欠点である侵襲性の問題に劇的な革命をもたらしたからである。そして,創の大きさは侵襲そのものなのだということが誰の目にも明らかとなった。一方,東京医科歯科大学の木原和徳教授は従来の開放手術を基本として,侵襲そのものである創を最小化させる新しい方向性を呈示してきた。今回刊行された本書はその長年の成果の集大成とも呼ぶべきものである。

 2002年に著者は『ミニマム創内視鏡下泌尿器手術』を刊行し,本術式の基本概念とその応用手技を明らかにされている。本術式の最大の特徴は開放手術にこの内視鏡を取り入れたことにある。予想される窮屈な操作野の欠点が,内視鏡と独自に考案した器具によって見事に補われている。モニターによる術野の共有は,手術の客観性と再現性を実現し,結果として著しい教育的効果をももたらした。本書『イラストレイテッド ミニマム創内視鏡下泌尿器手術』では,その後の膨大な症例蓄積をもとにさらに大きな飛躍を遂げている。泌尿器科の全手術を著者のコンセプトのもとで,一つの手術体系として完成の域にまで達せしめたものといえよう。

 本書の最大の特徴はそのタイトル通り,手術の説明に写真ではなくイラストを用いた点にある。しかもそのすべてが著者オリジナルのイラストである。これは大変なことである。手術が首尾よく完遂されるためには,解剖が理解され,そのイメージにしたがって術野が展開されることが必須である。だから優れた術者ほど頭の中に独自の術野イラストを描いているはずである。各自の頭の中に描いたイラストの精緻さが手術の成否を決めると言っても過言ではない。すべての操作がイラスト化されるとは,筆者の中ですべての手術が一定の体系化を遂げたことを意味する。勿論,このような精緻なイラストを可能にしたのが内視鏡の導入であることは言うまでもない。

 本書を一覧して,評者は長く座右の手術書としてきたJohn Blandy教授の“Operative Urology”[“Blandys Operative Urology”Blackwell Pub, 2008(3rd ed)]が思い浮かんだ。Blandy教授の手術書もすべて彼自身のイラストが用いられている。そのイラストは決して優雅なタッチで描かれているわけではない。しかし手術のツボを余すところなく伝えて今なお味わい深い。ご自分の手術イメージのすべてを本書にぶつけられた木原教授の熱意とエネルギーにあらためて敬意を表したい。

 2003年には木原教授の主導の下,ミニマム創内視鏡下泌尿器手術研究会が設立された。2006年には本術式は,先進医療の認定を受け,学会および社会の認知度は格段に高くなっている。本書には確かな経験に基づくヒントがイラストとともにぎっしり詰まっている。オープンサージャンだけでなく,ラパロスコピストもぜひ手にとって一読することをお勧めしたい。
安全な低侵襲手術にかける熱意が伝わってくる一冊
書評者: 並木 幹夫 (金沢大学大学院医学系研究科がん医科学専攻集学的治療学(泌尿器科学)教授)
 ミニマム創内視鏡下泌尿器手術は,木原和徳教授が考案された素晴らしい手術法である。この手術のコンセプトは“安全”で“根治性”に優れ,“低侵襲性”で,かつ“経済的”な手術である。泌尿器科領域で同じ低侵襲性を特長とする腹腔鏡下手術も急速に普及してきたが,経験の浅い泌尿器科医にとっては修得に時間を要する。特に難易度の高い腹腔鏡下前立腺全摘術は,厳しい施設認定があるため普及が遅れている。

 一方,ミニマム創内視鏡下泌尿器手術は従来の開放手術の経験を生かせるため,learning curveが腹腔鏡下手術より早いと予想される。また,緊急事態にも迅速に対応できるため安全性が高く,広汎な普及が期待されている。しかし,実際にこの手術を開始するには,使用する器具の購入,手術操作の学習・訓練など準備しなくてはならない事項は多い。ところが,そのためのいわゆるガイドブックやビデオ等は必ずしも多くない。こうした理由で,ミニマム創内視鏡下泌尿器手術に関心はあっても,実際に導入できていない泌尿器科医は多いと想像される。このような状況下で,今回上梓された木原和徳教授著『イラストレイテッド ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術』は初心者から経験を有する泌尿器科医まで,大変参考になる手術書である。

 はじめに第1章で,この手術の概念について,敢えて“メッセージ”という言葉で木原教授は次のように述べられている。

◆ガスを使わず,腹腔内は操作せず,立体視と拡大視を併用しながら,気持ちの余裕を持って(いつでも創を延長できる),お金をかけずに,先達の財産(開放手術操作)を継承した低侵襲手術である。

◆若い医師でも比較的容易にできる。

◆すべての開放手術の低侵襲化につながる。

 まさに患者にも,手術を行う医師にも木原教授の心遣いが感じられる言葉であり,巻頭から木原ワールドに引き込まれる。

 弘法筆を選ばずと言うが,初心者にとってはいかに便利な手術器具を使うかで,手術自体の難易度も変わってくる。次の手術器具の章では,ユニークな手術器具による,いわゆる手術のコツを伝授しておられる。

 さて,本題の手術手順の解説であるが,上部泌尿器手術の基本として根治的腎摘術,下部泌尿器手術の基本として前立腺全摘術に,それぞれ36頁と32頁が割かれており,この両手術ができればすべての泌尿器臓器のミニマム創内視鏡下手術が可能であると述べておられる。手技の説明は,解剖に忠実で臨場感のある詳細なイラストを駆使して理解を容易にしている。副腎摘除および腎尿管全摘術,腎部分切除術,それに膀胱全摘および骨盤リンパ節郭清は両手術のバリエーションとしてポイントを解説し,最後の章は改変ミニマム創内視鏡下手術として,巨大腎癌も巨大後腹膜腫瘍までも,同じ手法で低侵襲化できるということを証明しておられ,安全な低侵襲手術にかける熱意がひしひしと伝わってくる。
 世に優れた手術書は多いが,この『イラストレイテッド ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術』はまさに新しい時代の手術書として,多くの泌尿器科医が座右に置いて活用されることを強く推薦したい。

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