画像所見のよみ方と鑑別診断
胆・膵

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見開き左側の頁に呈示したUS、CT、胆管膵管造影等の画像所見を足がかりに、鑑別に至るプロセスを右側の頁で解説。胆・膵領域で用いられる各種画像や病理写真等を併せて掲載し、診断に必要な所見の把握と疾患の知識を教授する。245症例・1,200枚を超える多彩な写真を収載。編集者グループの熱意が結実した他に類を見ない1冊。
編集 山雄 健次 / 須山 正文 / 真口 宏介
発行 2006年08月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-00071-0
定価 16,500円 (本体15,000円+税)
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  • 目次
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胆嚢
 胆嚢病変の所見からみた診断へのアプローチ
 胆嚢病変の所見へのアプローチ
 診断のポイント(隆起性病変,壁肥厚性病変)
 画像検査の選択
胆管
 胆管病変の所見からみた診断へのアプローチ
 胆管病変の所見へのアプローチ
 診断のポイント(狭窄性病変,透亮・陰影欠損病変,拡張性病変)
 画像検査の選択

 膵病変の所見からみた診断へのアプローチ
 膵疾患の所見へのアプローチ
 診断のポイント(充実性病変,嚢胞性病変,充実と嚢胞の混在)
 画像検査の選択
診断名索引
索引(和文・欧文)

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消化器疾患に携わるすべての医療者必読の名著
書評者: 竜 崇正 (千葉県がんセンター)
 診断を体系づけるのが非常に困難な胆・膵疾患診断に待望の書が出版された。現在最も油ののっている消化器内科医である山雄健次,須山正文,真口宏介三氏の編集によるものである。三氏とも切れ味鋭い論理的な診断を展開している臨床医である。ただ多くの検査を投入して診断を進めるのではなく,必要最小限の診断法を組み合わせていつも患者の身になって親切丁寧に診断を進めていく臨床医である。各種診断法から得られた画像はどのような病理所見によって描かれたのかを常に検証している「画像診断プロ」とも言える存在である。本書はそのような「画像診断プロ」が熱く議論を戦わす場である「日本消化器画像診断研究会」で発表された貴重な症例が満載されている。疾患ごとに診断のポイントを整理してまとめてあるので,読者にとっては非常に参考になると思われる。

 病理所見との徹底的対比の中から得られた診断体系を呈示しているので,病変の形と性状から画像の特徴を整理し,それを根拠に選択すべき検査法を呈示している。

 まず病変が限局性かびまん性かで分類する。胆嚢病変では,限局性病変が隆起しているのか,壁肥厚しているのか,隆起性であれば有茎か亜有茎か広基か無茎かを診断し,その隆起病変が可動性か,表面の性状はどうか,に注目して分類している。

 胆管病変では,狭窄所見と陰影欠損像,拡張胆管壁の性状をみる。そして狭窄の形がV字かU字か片側性か多発かをみる。陰影欠損像や透亮像では,これに表面の性状を加味して分類がされている。

 膵病変では,限局性病変が,充実性か嚢胞性か充実性と嚢胞性の混在かをみる。そして充実性では辺縁の性状が整か不整かをみる。嚢胞では形が類円形か凹凸か,また単胞か多胞かをみる。これに主膵管の狭窄像や拡張像,内部透亮像に注目して分類されている。

 これらの形状分類に,超音波画像でのエコーレベル,CTでの血流評価や,MRIの所見などから確定診断がえられる。そしてそこに病理組織所見が対比されているので,読者は「なるほどこの病理所見だからこのような画像になるのだ」と納得することができる。診断に迷ったときは原点に戻って,画像をじっくりよく眺め,病変の形と性状から病理所見を頭に描きながら診断を進める大事さを教えてくれる。

 さらにうれしいことには,40数種の重要な疾患の説明をコンパクトにまとめたColumnである。近年変遷する疾患概念を整理してあるので,例えばIPMNとMCNの違いもこのColumnを読むとよく理解できる。その目でもう一度症例をじっくり振り返ると,さらに疾患がよく頭に入るような心憎い構成である。

 本書を手にとると,一例一例の積み重ねがどんなに大事かが理解できるであろう。消化器疾患に携わるすべての人に読んでいただきたい名著として推薦する。

画像と病理の対比を中心に疾患の理解を深める名著
書評者: 竹原 靖明 (相和会 横浜総合健診センター長)
 「作品はどんなに高邁な思想や理論に基づくものであっても,それが対者に何らかの感動を与えるものでなければ名作とはいえない。名著とはその内容が充実していると同時に読者に納得と感動を与える『何か』がなければならない。その『何か』とは卓越した知識,経験のうえに,読者にその内容を理解させようとする誠意と情熱ではなかろうか」。本書を手にし,類書にない新しい企画を目にしたとき,編・著者らの熱意が伝わり,老躯も疲労も忘れて,深更の空が白むまで読み耽った。そしてこれは正に「名著」であり,この領域を志す新進の若き臨床医への力強いメッセージとも思えた。

 本書の最大の特徴は,画像と病理(マクロ)の対比を中心に,その疾患の把握と診断に関わる要点を「コラム」として簡潔にまとめ,それを適所に配して,種々の疑問や難解な事柄を氷解させている点にある。

 その内容を具体的に列挙すると,

1)250例に及ぶ多数の貴重な症例が開陳されている。

 1985年に発足し45回を数える消化器画像診断研究会で熱い討論を経て練り上げられた症例が中心であり,一例一例に高い教育的価値がある。

2)常に画像とマクロが並列で対比され,画像が何を反映しているか,画像に描出された所見とマクロ所見との関係が明示されている。

 画像はすべて病変をマクロ的に表現したものであり,マクロ所見と画像所見の関係を正確に把握することは形態診断の真髄であり,外科的治療にとってもきわめて重要な情報である。これだけ多数の症例を蒐集し対比させることは至難の業であり,四星霜にわたる編・著者たちの並々ならぬ労苦と熱意が感じられる。

3)新しい診断論理が展開され,簡潔にして理論的に各種検査の個々の症例に対する有用性が示されている。

 疾患単位に各所見をまとめ診断に導く従来の診断論理に捉われず,各所見単位に検査順位や診断経路を考える新しい方式が提示されている。この方式は論理的にはごく自然であり,簡明で理解しやすい。また,これは無駄を排除するクリニカルパスの理念にも通じるものである。

4)各疾患の理解と診療に欠くことのできない要点を「コラム」として簡潔にまとめ,適所に配置している。

 この「コラム」には疾患概念(分類やその変遷の経緯も含む),臨床像,病理(マクロ所見),診断(鑑別診断も含む),治療,予後など疾患ごとに必要なもののみを取り上げ,きわめて簡潔かつ明快にまとめており,理解するうえで大変有用である。
   
等々である。

 本書を通読して改めて感じたことは,編・著者たちの画像診断に寄せる執念にも似た情熱と,次世代に伝承しようとする熱意が全編に漲っている点である。新進の若者を視野の中心に据え,多くの障害を克服して,信念を貫き,あるべき姿と歩むべき道を示した本書は,初心者にはもちろんベテランにも有為の「名作」であり,「労作」である。

 願わくは,本書が起爆剤となり,本邦の消化器画像診断がさらに飛躍されることを期待して止まない。

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