内科外来診療マニュアル

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臨床医の仕事の多くが外来診療であるにもかかわらず,臨床実習の場が病棟や救急外来に限られて外来診療の指導が受けられないという現実に着目して,書かれた書。問診と簡単な診療を中心に合格点をとれる外来のノウハウを記した本書は,臨床研修必須化の今,“良き臨床医”を目ざすすべての研修医,若手医師に携帯してほしい一冊。
編集 吉岡 成人
発行 2003年04月判型:B6変頁:344
ISBN 978-4-260-10282-7
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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  • 目次
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外来診療にあたって
日常臨床と臨床疫学
外来診療に慣れてきたら
第1章 主訴から診断へ
第2章 Common Disease への対応
第3章 健診異常者への対応
索引

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一般内科医も必携の外来診療マニュアルがさらに充実
書評者: 林田 憲明 (路加国際病院・内科部長)
 医学書院から『内科外来診療マニュアル(第3版)』が上梓された。本書は執筆者の1人である高尾信廣先生が中心となって書かれた『内科レジデントマニュアル(第1版,1984年)』を一般内科医をも対象としてまとめなおした外来診療版(第1版,1995年)の2度目の改訂である。

◆総論にみる著者らの心意気

 前回の第2版も充実した改訂と思われたが,今回はさらに工夫され医療の変化に対応した内容になっている。「第1章 主訴から診断」,「第2章 common diseaseへの対応」,「第3章 健診異常者への対応」の構成は変わらないが,冒頭に外来診療にあたって,「日常診療と臨床疫学」,「外来診療に慣れてきたら」,という項目がまとめられた。病院の“顔”としてのマナー・心構え,症状に対する心身両面の把握の重要性といった総論が述べられており,「臨床医学は不確実性のサイエンスであり,確率のアートである」というOslerの言葉が引用され,著者らの心意気が伝わってくる。

 1―3章の全体をみて気づくのは“side meno”が45項目から60項目に増えていることである。これは著者らの経験をまとめたエッセンスであり,これを読み通すだけでもかなりの常識家になれる。第1章では腰背部痛,けいれん,食欲不振といった教科書的になりやすい項目が除かれ,体重減少の項目が追加されたがページ数は増えておりさらに充実した。第2章では花粉症,不整脈,口腔内疾患,高尿酸血症,顔面神経麻痺,パニック障害,更年期障害,皮膚疾患が加えられ22項目となった。図・表については一般的でないもの,総論的なものは多少整理され,逆にアレルギー疾患治療薬の一覧表,原発性骨粗鬆症・パニック障害の診断基準など実用的なものが追加されている。第3章の健診異常者への対応については大幅にページ数が削減された。各検査値項目が血液検査,画像診断などにまとめられた。これは“健診の有用性と限界”の項でも述べられているように,一般的な健診が費用の割には有効な診断と治療に必ずしも結びつかないことがあるというEBMの結果を色濃く反映したものであろう。

 通読して私の個人的な感想を言えば,第2版で書かれていた“臨床疫学を診断・治療に生かす”という項を数行の用語解説を交えて簡潔にまとめ,日常臨床と臨床疫学の項に加えて補強してもよいのではないかと思った。しかしこのような細かな箇所は大きな問題ではなく,本書は明らかに時代を捕えた改訂であり,多くの読者を満足させるものであることには間違いない。

 片手間の,あるいはアルバイトのための外来診療が,今や初期研修の最適の場になろうとしている。多くの病名をつけてブルドーザーで整地するように血液・尿検査を行なう,めまいと聞けば十分に診察もせずに脳CTをオーダーする,かぜの処方に必ず抗生物質を加える,といった診療が横行する中で,すでにbeyond EBMとしてnarrative based medicineにも目を向けるべきだとする吉岡成人先生らの診療姿勢は,本書とともに益々その成熟度を増していくものと期待される。

 “我々は患者と共に学びを始め,患者と共に学びを続け,患者と共に学びを終える。”(Sir William Osler, 1849―1919)

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