緑内障

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40歳以上の日本人の5%強に発症する緑内障。その発症に関与する部位の構造と機能の解説から,各種検査法,疾患ごとの診断と管理,そして薬物療法,手術療法,レーザー治療等,治療法を網羅すると同時に,近年急速に解明されてきた遺伝子や免疫の問題など,基礎研究の進歩を解説した緑内障教科書の決定版。
監修 北澤 克明
編集 白土 城照 / 新家 眞 / 山本 哲也
発行 2004年02月判型:B5頁:504
ISBN 978-4-260-13777-5
定価 22,000円 (本体20,000円+税)

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緑内障の定義と分類
Basic Science
 構造と機能
 基礎研究の進歩
Clinical Science
 検査法
 診断と管理
 薬物療法
 手術療法
索引

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緑内障の診療,研究に携わるすべての眼科医に
書評者: 布田 龍佑 (NTT西日本九州病院・眼科)
◆ガイドラインに沿った初めての緑内障の教科書

 本書は2004年2月に刊行された500頁に及ぶ最新の緑内障に関する成書である。序にあるごとくこの成書には現在のわが国を代表する緑内障の基礎,臨床の研究者による監修,編集に加え,第一級の専門医,研究者の力が結集されている。

 本書の特徴は以下の2点に要約できる。
1)2003年秋の日本緑内障学会により作成された緑内障診療ガイドラインに則って執筆された,最初の緑内障の教科書である。
2)緑内障の基礎的研究,検査法,診断および治療法についての最新の情報が,その歴史的背景と併せて記載されている。

 緑内障診療ガイドラインに則った記載は本書の各所にみられる。たとえば病型については,原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障は一連の疾患スペクトルに包括されるとして,「原発開放隅角緑内障(広義)」とされている。また先天緑内障もその発生機序を考慮し,発達緑内障に置き換えられている。その他の章においても緑内障診療ガイドラインを十分意識して記載されている。

◆基礎,臨床ともに充実した内容

 基礎研究の章では線維柱帯,毛様体,視神経乳頭などの構造と機能に関しては,これまでの知見に加え,新しいテクニックを駆使して得られた結果が付け加えられている。さらにアポトーシス,分子遺伝,眼血流,免疫などに関して,現在進行中の研究の最新情報が,豊富な文献とともに載せられている。臨床研究の章では眼圧,隅角,視神経乳頭,視野検査のこれまでの歴史と現状,さらには今後の遠望が述べられている。近年その進歩がめざましい視神経乳頭部の画像解析法や血流評価の実際も紹介され,今後の臨床応用への普及が期待される。視野検査では時代の流れにより動的量的視野測定法の記載が減少している反面,静的自動視野測定については,最新の機器,測定法,評価法が詳細に述べられている。

 従来の各論に相当する診断と管理の章では,緑内障各病型の臨床像,診断,治療が,緑内障診療ガイドラインに則って述べられている。治療に並行して管理の重要性が強調されている点は注目に値する。薬物治療に関しては,ピロカルピンの時代から最近の薬,さらには将来の使用が予想される薬まで網羅されている。また血流増加,視神経保護作用についても言及されている。手術療法に関しては,総論にあるごとくいまだ理想の手術方法はない。近年画期的な進歩も多くはないが,現在広く用いられている術式の解説はわかりやすく,新しく手術を学ぶ眼科医にとっては,よき指導書となるはずである。

 以上のことから本書は緑内障を初めて勉強する眼科医にも,さらに深く知りたい眼科医にも,最新の基礎研究を志す眼科医にも対応できる教科書といえる。緑内障の診療,研究に携わる眼科医であれば,ぜひ手元において参考としていただきたい1冊である。

臨床にも研究にも役立つ! 緑内障に関する世界の趨勢がわかる
書評者: 岩田 和雄 (新潟大名誉教授)
 最近,緑内障診療に関するガイドラインが日本緑内障学会より発表された。スタッフの知恵を結集した結果である。ただこのガイドラインは骨子のみを正確に表現したもので,実地に当たっては,血が通い十分に肉付けされた記述が望まれる。本書は,その要望に完全に応えるものとして登場したと見てよい。スタッフがオーバーラップしているので,当然の帰結とも言えよう。

◆緑内障のエキスパートたちが各専門分野について執筆

 本書は日本緑内障学会北澤理事長のもとで,31名が分担執筆している。いずれも緑内障の研究,診療のエキスパートであり,それぞれが専攻分野を担当しているので迫力がある。とかく分担執筆の場合は一貫性がなく,記述もbusiness―likeで,参考に本を開いてみる程度のものが多いが,本書は対象が緑内障一本槍なのでまとまりがよく,各エキスパートが,自身の研究成果やら経験を熱心に語りかけている様が読みとれ,本書の魅力ともなっている。ただ学問や経験は各執筆者それぞれの成長とともに,より深く,より広くなってくるものゆえ,余裕をもって読む必要もあろう。

 本書はまず緑内障の定義と分類からはじまる。ガイドラインどおりだ。高頻度を占める正常眼圧緑内障を緑内障と認め,広義の原発開放隅角緑内障に分類しているのは賛成だ。また眼圧非依存因子の存在を単に推定に留めているのもよい。

 本文は,Basic ScienceとClinical Scienceに分けられ,前者に5分の1,後者に5分の4の頁数を割いている。妥当な分け方だ。留意したいのは,従来の原発先天緑内障の表現がなくなったことだ。Hoskinsに倣ったもので,小児期の緑内障を房水流出路の発達異常によるものと,他の眼疾患に続発するものとに分け,前者を発達緑内障Developmental Glaucomaと呼び,早発型と遅発型に分類している。この方が現実的で判りよいことは確かだ。ガイドラインではそのことが明確に記載されているが,本書には早発型の項目は大きく取り上げられているものの,遅発型の項目がない。実態が不明確なことによるものであろう。

 原発閉塞隅角緑内障の定義や分類に国際的な問題があるようであるが,それは別として,相対的瞳孔ブロックにより急性発作が起こるとの説明は頷きがたく,絶対瞳孔ブロックという表現を用いるべきではないであろうか。またレーザー虹彩切開術は瞳孔ブロックを解除する手術とされているが,理論的には瞳孔ブロックによる隅角ブロックを解除するとすべきではなかろうか。瞳孔ブロックが解除されることにはならないからだ。

◆新しい「緑内障文化」の発展に期待

 本書は約500頁より成るが,総体的にみて,各項目ごとに国際眼科雑誌を中心にした文献が2003年まで網羅され,より詳しく知りたい場合に便利で,現在の世界の緑内障に関する趨勢を知るのに最適である。参考書と教科書の中間的位置を占め,初心者にとっても,ベテランにとっても良き友となることであろう。臨床に,研究に役立てていただきたい。

 緑内障の診療に関する近年の進歩は眼を見張るばかりで,これは“緑内障文明の革命的進歩”と言えよう。反面“緑内障文化”の方はvon Graefe以来あまり進展がなく,いささか淋しい。本書をベースに新しい文化の発展に期待をかけよう。

 余計なことだが,本書の装丁はやや魅力に欠ける。もっと明るく近代的色調にならぬものか。手にとってみたくなるように。

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