神経病理インデックス

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従来にない新しい神経病理学テキスト。新しい染色法、分子遺伝学の導入により、今までの病理所見の見方は大幅に修正されつつあり、分類上にも変化が起こっている。本書は神経病理を学ぶ人のために、読みやすく、ためになるテキストを意図し、豊富なマクロ、ミクロの画像をもとに病理所見を読むためのエッセンスを呈示する。
新井 信隆
発行 2005年09月判型:B5頁:244
ISBN 978-4-260-00061-1
定価 10,340円 (本体9,400円+税)
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  • 目次
  • 書評

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脳のマクロとミクロ
総論
 1. イントロダクション
 2. ブレインバンク
 3. 中枢神経系の解剖
 4. 染色法
 5. 神経細胞
 6. 神経突起
 7. 髄鞘
 8. アストロサイト
 9. オリゴデンドログリア
 10. 上衣細胞
 11. ミクログリア
 12. 脳神経系の発生
各論
 13. 脳形成異常
 14. 神経皮膚症候群
 15. 周産期脳障害・水頭症
 16. てんかんの外科病理
 17. 運動ニューロン疾患
 18. タウオパチー
 19. α-シヌクレイノパチー
 20. トリプレットリピート病
 21. その他の変性疾患
 22. 脱髄疾患
 23. ライソソーム異常症
 24. ペルオキシソーム異常症
 25. ミトコンドリア異常症
 26. 銅代謝異常・アミノ酸代謝異常・その他の代謝異常症
 27. 感染症・炎症性疾患
 28. プリオン病
 29. 中毒性疾患・栄養障害
 30. 脳血管障害・循環障害
 31. 頭部外傷
参考文献
和文索引
欧文索引

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神経病理学を学ぶための道標となる好著
書評者: 中野 今治 (自治医大教授・神経内科学)
 見知らぬ街,新しい地を行くときに必要なのは地図である。ただし,この地図は闇雲に全てを書き込み,詳しくさえあればよいというものではない。案内の地図には何を載せるかよりも何を載せないかが重要である。神経疾患症例の脳あるいはその標本を前にしたときに必要なのは指南書――いたずらに網羅的でなく,地図と同じく簡にして要を得た指南書である。

 書評子はかつて本書の著者と同じ研究所に在籍した関係で,著者の研究室の膨大な症例コレクションを承知している。本書の執筆に際し,その中からどれを捨てるかということが最も頭の痛い点であったとの著者のつぶやきを耳にしている。何を捨て何を載せるかが考え抜かれたのが本書と言える。

 このフィロソフィーは,随所にちりばめられたシェーマにも貫かれている。ここでは,事象の複雑さを知り抜いた者のみがなし得る簡明さを読みとることができる。その例として図8―20「アストロサイト内の主な蓄積物」(P79)を取り上げてみる。この図には,アストロサイトの蓄積物が6種類示されているが,特にわかりやすいのがともにリン酸化タウ蛋白が蓄積して形成される房状アストロサイト(tuft―shaped astrocytes)とアストロサイト斑(astrocytic plaques)の描写である。前者はリン酸化タウ蛋白が突起の基部に蓄積するために凝集して見え,後者はアストロサイトの胞体から離れた部位に蓄積するため粗に見えるということが,的確にされている。書評子はこのように考えたことはなく,この図と説明で蒙を啓かれた思いがする。本書は,神経病理学における知見を整理し,考え方を正しい方向に導く好著である。

 それのみではない。本書は分子遺伝学,分子生物学の最新の知見を取り入れた新しい疾患分類を取る。その代表例はタウオパチー,α―シヌクレイノパチー,トリプレットリピート病の章である。疾患分類は,その時点での疾患の理解の深さを反映している。神経疾患を本書のような切り口でとらえてみると,複雑な疾患群の輪郭が鮮明に見えてくる。ただし,このような斬新な分類も現時点での知見という制約を受けていることは否めない。例えば,アルツハイマー病はタウオパチーでありながら,蓄積物質から言えばβアミロイドパチー(?)でもある。ただし,このことは著者も夙に承知済み(P136メモ:神経変性疾患はオーバーラップ症候群)であり,本書の価値を些かも下げるものではない。

 著者の研究室の染色技術は高度であり,本書の写真もすばらしい出来映えである。欲を言えば,もう少し大きな写真であってほしかった。そうすれば,書評子のような眼の悪くなった者にもより見やすかったと思われる。本書は,厚さも重さも手頃であり,タイトルの如くインデックスとして鞄に潜ませるのに適している。われわれの世代を含めて神経病理学を学ぶ者,さらには神経病理学的知識の習得を望む臨床家にとって必携の書と思われる。

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