胃と腸用語事典

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“知ってるつもり”でも,意外にその言葉の由来や正確な意味をつかんでいないことが多い。本書は,『胃と腸』編集委員会がその総力をあげて,消化管形態学の分野で日常的に用いられる用語を拾い上げ,豊富な図や写真を駆使して明解に解説したイラストレイテッド・ディクショナリー。消化管疾患の診療に携わる医師・医学生必携の書。
監修 八尾 恒良
編集 『胃と腸』編集委員会
責任編集 牛尾 恭輔 / 池田 靖洋 / 下田 忠和 / 多田 正大 / 吉田 操
発行 2002年11月判型:B5頁:332
ISBN 978-4-260-10269-8
定価 6,600円 (本体6,000円+税)
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  • 目次
  • 書評

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○解剖
 食道の解剖用語/胃の解剖用語/他
○検査手技
 食道造影法/胃X線造影法/他
○画像所見
 〔食道〕
 intra-papillary capillary loop (IPCL)/Mallory-Weiss裂創/他
 〔胃〕
 Hampton’s line/Henning’s sign/他
 〔胃,腸〕
 アフタ/圧排,圧迫/他
 〔腸〕
 bamboo-joint sign/cobblestone appearance/他
 〔胆膵ほか〕
 omental cake/コメットエコー/他
○疾患
 〔食道〕
 Barrett(バレット)食道/pipe line varix/他
 〔胃〕
 A型胃炎/Cushing潰瘍/他
 〔腸〕
 backwash ileitis(BWI)/Brunner腺過形成/他
 〔胆膵〕
 groove pancreatitis/限局性膵管狭窄/他
 〔全消化管〕
 アミロイドーシス/カポジ肉腫/他
○病理
 adenoma-carcinoma sequence/Barrett(バレット)上皮/他
○分類
 逆流性食道炎の内視鏡分類/食道胃静脈瘤内視鏡所見記載基準/他
○治療手技
 内視鏡的止血法/ポリペクトミー/他
索引

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消化管疾患の診断・治療に携わるすべての人にとって必携の本
書評者: 上西 紀夫 (東大大学院教授・消化管外科/代謝栄養内分泌外科)
 世界に誇るわが国の消化管診断学をリードした先達の先生方が創立された「早期胃癌研究会」により,雑誌「胃と腸」が医学書院より発刊されたのは1966年であり,今年で第38巻を数えている。当初は,「胃と」であったが,1977年に「胃と腸」になり最近では「胃と」といった趣で,わが国における消化管疾患の変遷を表している。

 この長い歴史の中で,消化管形態学に関する様々な表現や用語が用いられ,それに基づいた診断や治療が大いに進歩してきたわけであるが,さらなる進歩のためには共通の言語でのディスカッションが必須である。特に画像診断をめぐっては,1つひとつの言葉や用語によって皆が同じイメージを頭に描くことがきわめて重要である。一方,画像診断における技術革新はめざましく,それに伴ってさまざまな用語や造語が氾濫気味に登場し,その言葉の基になった意味を理解せずに使われていることも少なくない。

◆消化管診断学の進歩の流れの中で価値ある1冊

 そこで今回,この伝統と歴史に輝く「胃と腸」の編集委員会により,消化管疾患の診断,治療に携わる医師のために本書が刊行されたことは,まさに時宜を得たものである。さらに,頁をめくって拾い読みしてみると画像診断の歴史を垣間見ることもでき,本書は単なる事典ではなく,すばらしい読物であることがわかる。そして,編者も述べているように,用語や造語を整理すると同時に,消えつつある歴史的な用語を記録しておくことにも重点を置いており,消化管診断学の進歩の流れの中で価値のある本となっている。また一方で,最近は横文字による表現も増えており,その表現が適切であるか否かの判断に迷うこともあるが,本書ではその出典を明らかにしていることがすばらしく,英文論文の執筆に際しても大変便利な事典となっている。

◆魂のこもった事典

 本書のもう1つの特徴として,第一線の病院や実地臨床で活躍されている先生方が数多く執筆されていることである。すなわち,「胃と腸」で育った,あるいは育てられた方々が執筆されており,厳選された画像とその解説の記述を読むと,執筆者の息吹がひしひしと伝わってくる。その意味では本書は魂のこもった事典であり,消化管疾患の診断・治療に携わるすべての人にとって必携の本である。手元に置いて活用されることをお勧めする。

用語の意味を視覚的にとらえ個性に富んだ名著
書評者: 峯 徹哉 (東海大教授・消化器内科学)
 “用語事典”を標榜する書は,数多く出版されていると思われるのだが,実際にはそれほど多くないようである。また使用している用語について各学会から出版されているのは,ほとんどが“用語集”という形のものである。本書はこれらの用語集とは異なり,ふんだんな個性と十分な内容に富んだものであり,名著と言っても過言ではない。

 医学書院から出版されている雑誌「胃と腸」において1992年の第27巻から1994年の第29巻にかけて“用語の使い方,使われ方”という連載が行なわれた。今回の用語事典は,消化器の形態用語をより具体的に図示し,用語の意味を視覚的に訴えることを目標としたこの連載企画の主旨をさらに発展させたものである。本書は,1966年第1巻から始まり,今日まで消化器画像診断の本道を綿々と貫いてきた「胃と腸」のある部分の集大成であるとも言える。

◆抜群の画像所見,むだなく,詳細な気配りの紙面構成

 本書は,(1)解剖,(2)検査手技,(3)画像所見,(4)疾患,(5)病理,(6)分類,(7)治療手技,の7つの項目からなっている。各々の項が食道,胃,十二指腸・小腸,大腸,肛門,膵・胆の順に書かれ,しかも,すぐその部位を開きやすいように,項目ごとに色刷りの索引が付いていて,簡単に開くことが可能である。

 語句から調べる場合は,本の最後に日本語と英語の索引が載せてある。解剖の項を除く各項目は,図または写真を含んだ1頁または見開きの2頁で構成されている。解剖の項のみ,十分な解説をするために1―4頁の紙面を割いている。

 各々の項目は理解しやすいように図(シェーマ),X線像・内視鏡像および組織像によって構成されており,写真もおしなべて非常に質が高い。その中で特にX線像が優れている。いかにも「胃と腸」というすばらしい後ろ盾があるX線像であると改めて納得させられるものである。

 特に画像所見においては,一般的な用語集には載っていないが,われわれが身近な言葉として日常的に使っている用語の紹介もなされている。特に,たこいぼ状隆起の項の中で本物のタコの吸盤の写真が掲載され内視鏡像と比較されているなど,多少のユーモアもありおもしろく読ませていただいた。単に用語の基本的な解説に努めるだけでなく,そのルーツにあたるもの,および日常の会話から派生して日常的に使われている言葉についても解説を行なおうという姿勢が読者に対してやさしいと思われる。

◆日本の消化器病医同士の日常会話が理解できる

 本書は,初心者から熟練の方まで,使い道は色々あると思われる。初心者には,学会および研究会での講演や討論において発せられる理解できない語句を,他者に聞くことなく,この本からその語句の意味を知ることができる。また熟練者にとっては,様々な語句のルーツの確認などを行なえるなどきわめて便利な本である。

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