内科学

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一口に医師の生涯教育といっても、臨床医が習得すべき知識量は膨大である。本書は生物学的なメカニズムから治療の実際まで、基礎から臨床にわたる広範な内容を関連づけながら盛り込んだ、わが国気鋭の執筆陣による「内科学」。医学生の基本的テキストとしてのみならず、臨床の場においても常に活用できる、医学的知の集大成である。
総編集 金澤 一郎 / 北原 光夫 / 山口 徹 / 小俣 政男
発行 2006年10月判型:A4変頁:3268
ISBN 978-4-260-00002-4
定価 35,200円 (本体32,000円+税)

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  • 目次
  • 書評

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<第I巻>
I. 社会のなかの内科学
II. 内科学の進歩
III. 主要症候へのアプローチ
IV. 治療へのアプローチ
V. 感染症
VI. 循環器疾患
VII. 呼吸器疾患
VIII. 消化管疾患
IX. 肝・胆・膵疾患
索引(和文,欧文)

<第II巻>
X. 腎・尿路疾患
XI. 血液・造血器疾患
XII. 内分泌疾患
XIII. 代謝・栄養障害
XIV. 免疫・結合組織・アレルギー疾患
XV. 神経・筋疾患
XVI. 中毒性疾患
XVII. 生活・環境要因による疾患
XVIII. 内科と周辺疾患
索引(和文,欧文)

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進化する内科学 進化する教科書
書評者: 井村 裕夫 (京大名誉教授/先端医療振興財団理事長)
 「教科書も進化する」というのが,医学書院の新刊,『内科学I・II』を手に取った時の第一印象であった。図表を数多く入れて理解を助けていること,系統ごとに「理解のために」という項を設けて,基礎研究の進歩,患者へのアプローチ,症候論,疫学,検査法などをまとめていること,疾患ごとの記載でも疫学を重視し,新しい試みを導入していること,などであろう。膨大な内科学の情報を,2巻に凝縮した編集の努力も,大変なものであったと推測される。その意味で,新しい内科学教科書の1つの型を作り上げたと言えよう。

 序文にもあるように,内科学は医学の王道であると言ってもよい。病気を正確に把握し,できるだけ患者に負担をかけない,侵襲の少ない方法で治療するのが,医学の究極の目標だからである。この目標を達成するためには,基礎研究の成果を活用することが不可欠である。内科学こそは臨床医学の中でも最も生命科学に基礎を置いた分野であり,その理解なしに診療にあたることは困難である。本書ではそのような配慮が十分になされていると言える。

 とは言え,内科学は,あくまでも臨床医学の一分野であり,対象とする患者は異なる遺伝素因を持ち,異なる環境に住む社会的な存在としての人間である。医師はその片足を近代科学に,もう一方の足を人間科学に置いて活動しなければならない。本書の冒頭に「社会のなかの内科学」という章が立てられているのは,その意味で誠に適切な配慮であると言えよう。序文にも「患者との関係や社会的な問題にまで十分配慮した内容とする」と書かれている編集の意図は,これからの臨床医学の重要な2つの方向を示したものである。

 本書は,最初の計画以来12年の歳月を費やしたとされている。2段組みで約3000頁に及ぶ内容,700名近い執筆者から考えて,それは止むを得なかったことであるかも知れない。ただ1つ注文をつけるとすれば,長い時間がかかったため,新しい分野の記載がやや不十分になっている箇所があることである。例えば,生物学の中ではやはりヒトゲノムの解読の完成と,その臨床医学へのインパクトについての項目があることが望ましい。また昨今流行語にもなったメタボリック・シンドロームや,それに伴うNASHなどの疾患についても,より詳細な記載が望まれる。それらの点が改訂の時に追加されれば,より完成度の高い教科書となるであろう。

 内科学は臨床医学のあらゆる分野で必要な,基礎臨床医学とも言うべき領域である。その巨大な領域に本格的に取り組んだ密度の高い本書は,恐らくすべての臨床医学を専攻する人々にとっても十分参考になるものである。この新しい,本格的な内科学書が,幅広く活用されることを期待したい。

広範な領域をまとめて医学的知の集大成
書評者: 高久 史麿 (日本医学会長・自治医大学長)
 医学書院から最近刊行された金澤一郎,北原光夫,山口徹,小俣政男4氏の総編集による『内科学』の書評を頼まれ,お引き受けした所,早速『内科学I・II』が私の事務室に送られてきたが,まずその量が膨大なのに驚いた。執筆者の数も同様に膨大である。

 その内容を見てみると,I巻のIの「社会の中の内科学」の見出しが目にとまった。確かに医学は理系の学問の中では社会との接点が最も幅広い学問分野であり,その中で内科学が中心であることは周知の如くである。その意味で内科学書の最初の項目として,このような幅広い問題を取り上げたことは高く評価されるべきであろう。

 次のIIの「内科学の進歩」では最近の医学の進歩を,内科学を中心にまとめて紹介している。このことも本内科学書の新しい試みであると考えられる。

 次に系統ごとの疾患の項目を見てみると,本内科学書の各系統の最初に感染症を持ってきたこと,しかもその内容が従来のわが国の内科学書よりもより充実したものになっていることが注目された。近年民族間の国際的な交流が盛んになり,SARSや鳥インフルエンザ等の新たな感染症の国際的な広がりが大きな話題になっていること,医療の安全と関連して院内感染症が問題になっている事等の昨今の状況を考えると,この試みは時宜を得ているということができるであろう。また各系統の疾患の記載の最初には「理解のために」という項目が必ず設けられ,各系統の疾患の総論的な事項が紹介されている。内科学という広範な領域を一冊の本でカバーしようとするならば,このような系統ごとの総論的な記載は当然なされるべきである。

 私はこの書評を書くに当たり,総編集の方々による本書の序文を読ませていただき,皆様方のこの内科学書に対する意気込みと同時に,完成までのご苦労を十分に汲み取ることができた。

 本書の完成に貢献された諸氏のご尽力に敬意を表する次第である。

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