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事例で読み解く周産期メンタルヘルスケアの理論
産後うつ病発症メカニズムの理解のために

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妊娠中および産後うつ病の発生率は10%内外といわれる。妊産褥婦を支える社会機能が弱まっている中で、医療関係職による発見やサポート機能が期待されている。本書では、うつ病発症のメカニズムを、1つの事例に沿ってさまざまな角度からみていくことで、周産期メンタルヘルスケアへの理解を深め、実践への手掛りを身につけることができる。産後うつ状態になった母親を見逃さないための必読書。
編集 北村 俊則
発行 2007年12月判型:A5頁:232
ISBN 978-4-260-00606-4
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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まえがき
北村俊則

 こころの健康や不適応はある一時点で捉えるものではない.うつ病をはじめ多くの心理的不適応はその直前に「ストレス要因」が認められる.しかし,そうした「ストレス要因」は晴天の霹靂(へきれき)のように降って来るものではない.継時的に見れば必然性がある.こころの不適応はその個人のライフステージのある時点で必然的に起きたものなのである.さらに,人のこころの問題はその個人内部で完結するものでもない.世代から世代に受け継がれてゆく部分がある.パーソナリティ,養育態度,対処行動,心理症状の発現など,どのような心理・行動上の事柄を見ても,世代間の伝播が認められる.人のこころの問題は,いわばライフサイクルを作り,そのサイクルが時代を経て次の世代に受け継がれてゆく.当然,ライフサイクルは宿命ではなく,本人,周囲の人々,社会全体の努力で望ましい方法に変容することが可能である.

 周産期は長い人生のほんの一瞬の時期ではある.しかし,人のライフステージにおいて大切な意味をもつ段階である.さらに,世代間のライフサイクル再生産にとっても多大な影響力をもつ時点である.妊娠し分娩を迎える女性のこれまで隠されてきた生活史の重要事項が噴出することもある.この時点の親の様子,親子関係,養育環境が以降の子どもの心身の発達に影響することも報告されている.したがって,周産期の医療に従事する者は,単に女性たちに対し1年弱の期間のケアをするだけにとどまらない.その女性の過去の積み残し課題を解決し,その女性とその子の将来の健やかな生活とこころの健康の方向性をつけるという重大な役割をもっているのである.

 本書は,産後うつ病の心理社会的発症メカニズムを,ライフステージとライフサイクルという隠れたキーワードをもとに編集した.読者各位はおそらくすでに周産期ケアについて長い経験をおもちであろう.そうした読者は自身の臨床経験を本書の内容から理論として整理していただきたい.これから周産期ケアの仕事を始める読者は,本書から産後うつ病発症の複雑さを理解し,現場で遭遇する諸問題に立ち向かっていただきたい.発症の機転を理解することは援助方針決定の基礎になる.

 なお,周産期メンタルヘルスについては,すでに『心理的問題をもつ妊産褥婦のケア―助産師による実践事例集』(中野仁雄監修,新道幸恵・北村俊則編集.医学書院)を刊行した.ここでは,周産期に見られるさまざまな心理的不適応を多くの事例で提示し,診断の枠組みと看護の基礎について紹介した.本書はしたがってこの続編といえる.そうなると,どうしても心理的援助技法についての解説が,第三の書籍として必要になろう.これについては,しばらくの準備をして執筆したいと考えている.

 本書が,よりよい周産期看護に資するのであれば編者の喜びである.

 2007年11月

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まえがき
序章 周産期メンタルヘルスケアにおける事例と理論
第1章 DSM-IVの理解と周産期うつ病の疫学
第2章 うつ病の症状構成
第3章 ライフイベンツ
第4章 ソーシャルサポート
第5章 コーピング
第6章 認知パターン
第7章 パーソナリティ
第8章 被養育体験
第9章 児童虐待
第10章 希死念慮と自殺
終章 今後の課題
さくいん

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