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リウマチ病診療ビジュアルテキスト 第2版

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一般内科医に必要な関節の見方、問診、身体所見の取り方をはじめ、プライマリケアにおけるリウマチ性疾患診療のコツを、著者所蔵の世界的にも貴重なカラー図譜を多数掲載しながら解説したビジュアルテキスト、待望の改訂版。血管炎、感染性関節炎をはじめ大幅に疾患を追加し、新規の図譜も多数掲載。ビジュアライズに極められた貴重な単著。
上野 征夫
発行 2008年03月判型:B5頁:416
ISBN 978-4-260-00445-9
定価 10,450円 (本体9,500円+税)
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第2版序
上野征夫

 米国のリウマチ学は,1920年代から30年代にかけて米国東部において勃興し,欧州でリウマチ学を学んだ人などが加わり広められる.1970年代では,それは西海岸において花開いているようであった.
 筆者は1976年UCLAリウマチ科の研修プログラムに入ったが,そのオリエンテーションの日,英国人で当時のプログラムディレクターであったRodney Bluestone先生は,ブリティシュアクセントそのままの迫力あるウェルカムスピーチの中で,「諸君らはこれからの1年で,ありとあらゆる症例をみることになる」と言われた.リウマチ科のフェロー研修は2か年で,1年目が臨床のみ,2年目には半分研究体験が入るというものであった.実際最初の1年間で,ムコ多糖症など先天性代謝異常疾患以外,ほとんどすべてのリウマチ性疾患を経験したのではないかと思っている.
 本書はそこで教わったことを枠組みとして,それに最近の知見を加えたものである.ただしライム病,抗リン脂質抗体症候群ら一部の章,あるいは項目は,当時そのような疾患,あるいは疾患概念は知られていず,あるいは存在せず,これらは自身で学習し,執筆している.またアミロイドーシスは経験しておらず,書きづらいので章には含めていない.
 重要なリハビリテーションのセクションは,師事したリウマチ・リハビリテーションの大権威Robert Swezey先生の背後にある大きなものを感じるとき,この章を執筆する勇気はない.Swezey先生自身の手になる書に譲りたい.
 しかし大方として,先の初版に続いてこの改訂版において,学習したリウマチ学の体系を全体整わせることができたと思っている.
 米国のリウマチ外来─米国ではarthritis clinicと呼んでいた─では,関節リウマチや結合組織病(疾患)以外,肩痛や腰痛患者を普通に診ている.あるとき外来でHarold Paulus先生に「Rheumatologistと整形外科医との違いは何か,整形外科医は手術をするということと外傷の例を診ることか」と尋ねたことがある.先生は「そうだ」と答えられ「それと単関節症状も,しばしば彼らのフィールドである」と答えられた.
 本書では,“膠原病”という用語は除いている.研修に入って1年も経たない頃であったと思う.ある日われわれ研修生は外来の廊下で立ったままであったが,アテンディングと呼ばれる指導医から「これからはcollagen diseaseという用語は使わない.代わってconnective tissue disease,あるいはcollagen-vascular diseaseと呼ぶように」と指示された.その理由は,強皮症以外,collagen diseaseにコラーゲンの異常はみられない,というシンプルな説明であった.しかしこれは,全米的に統一されたものであったようで,その頃を境として,以降,米国のリウマチ学や内科の成書からは,collagen diseaseという名称は消えている.また国際的にもそのようである.本書では,30年前に指導されたことに従い,タイトルも初版の『内科医のためのリウマチ・膠原病診療ビジュアルテキスト』から,『リウマチ病診療ビジュアルテキスト』に変更している.
 本書がリウマチ学の手引き書として,諸先生方,研修医,医学生の方々に有用なものであれば幸いである.
 初版に続いて今回も,編集に医学書院の大橋尚彦さん,制作に医学書院出版サービスの重 嘉仁さんに大変お世話になりました.深甚の感謝を申し上げます.
 貴重なスライドを提供して下さった同僚諸氏にこの場をお借りして御礼を申し上げます.
 天から降るがごとく教えて頂いた当時のUCLAプログラム,リウマチ科主任Carl Pearson先生,そしてEugene Barnett,Robert Swezey,James Peter,Harold Paulus,Rodney Bluestone,Leonard Goldberg,Joshua Levy,David Yu,Robert Ashman,Philip Clements,Daniel Furst,Michael Liebling,Pen Fan,James Louie,Kenneth Niese,Richard Weisebartの各先生方,その他大勢のスタッフ,臨床教授の先生方に深い感謝を捧げます. 2007年10月

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I リウマチ病の分類
II リウマチ病へのアプローチの仕方
III リウマチ病の治療薬剤
IV 局所疼痛診断と治療
V 関節リウマチと血清反応陰性脊椎関節症
VI 全身性エリテマトーデスとその他の結合組織疾患
VII 血管炎
VIII 変形性関節症(骨関節症)
IX 結晶誘発性関節症
X 骨粗鬆症
XI 感染性関節炎
XIIその他のリウマチ病
XIII 随伴性のリウマチ
索引

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病歴と身体診察をベースとしたリウマチ病診察の書が改訂
書評者: 松村 理司 (洛和会音羽病院院長)
 今,至福の時を迎えている。週末のほぼ丸2日間を,上野征夫先生の単独著『リウマチ病診療ビジュアルテキスト(第2版)』の味読に割けているからだ。著者御本人から直々にいただいて数か月にもなるのだが,書評のための通読のまとまった時間を捻出できなかったのには,生来の怠惰以外の理由もある。昨今の病院長にとっての二大課題,勤務医の安定雇用と医療事故対策に評者も思い切りとらわれているからである。言い訳はともかく,好調な売れ行きと聞くのは,誠に慶賀にたえない。

 第2版の改正点の第1は,「あれ,結節性多発動脈炎は? 顕微鏡的多発血管炎は?…」といった初版時の問いに対する回答である。つまり,血管炎の章の増設である。その他の大幅な追加項目として,血清反応陰性脊椎関節症,感染性関節炎,随伴性のリウマチなどがある。おかげで2倍近い厚さになっている。第2は,日進月歩の医学に見合った増補であり,リウマチ病の生物学的製剤などが挙げられる。第3は小さいことかもしれないが,膠原病という用語が一切除かれたことである。理由は,「強皮症以外,collagen diseaseにコラーゲンの異常は見られない」という米国での30年前の指摘に基づくとの由。なお,文部科学省からの「医学教育モデル・コア・カリキュラム―教育内容ガイドライン」(平成19年度改訂版)の索引には,リウマチ病はなく,膠原病や膠原病類縁疾患はある。第4に,顔写真に目隠しが入ったことである。第5の違いは,出来栄えには関係ないが,手書きではなく,ワープロが使われたことである。

 初版から一貫した特徴の第1は,図や絵やカラー写真の豊富さである。紙の質も実に高く,定価も許容範囲である。特徴の第2は,簡潔明瞭で,歯切れがよい記述が継続されていることである。第3には,「リウマチ病の診断は,“病歴と身体診察”に90%以上頼っている」という著者の信念が,心地よい通奏低音になっていることである。診断推論の基本に“病歴と身体診察”を置く評者のような一般医には,練達の専門医の確信は実に心強い。

 洛和会音羽病院では,何年にもわたり,東京在住の上野先生に月2回教育指導に来ていただいている。月に一度開かれる「京都GIMカンファレンス」の熱心な参加者でもある。招聘“大リーガー医”のこよなき話し相手になってもらってもいる。

 日本人初の米国リウマチ専門医である上野先生は,留学から帰国後の30年間のほとんどずっと「フリーランスのコンサルタントリウマチ医」を貫かれている。医局講座制と完全に縁がなかったわけではないが,特定の医療機関における雑務や昇進とは無縁であった。「天から降るがごとく」教えを受けられた米国留学と帰国後の生涯現役の生き方が,本書を生み出す原動力となっている。「立ち去り型サボタージュ」に病む昨今の日本の病院勤務のあり様に,突き付けるものは重い。
難解なリウマチ疾患に悩む多くの医師への福音
書評者: 古田 栄一 (ハワイ大臨床准教授・内科学)
 『リウマチ病診療ビジュアルテキスト』が6年ぶりに改訂された。著者である上野征夫氏は,日本人として初めてアメリカで本場のリウマチ臨床トレーニングを受け,米国リウマチ専門医まで取得した医師である。私は著者から個人的にもご指導いただいているが,著者ほど臨床の「リウマチ」を知り尽くしたリウマチ医はいないと思っている。

 アメリカではリウマチ医は全身を診ることのできる真の内科医であるといわれる。本書はこの言葉通り広範囲にわたるリウマチ疾患が,著書がアメリカならびに日本で長年にわたって経験した莫大な数の症例の写真や図とともに,一冊に凝縮されたものである。一人の手によってここまでのテキストが書かれたことは驚異である。いや,一人の手によって書かれたからこそ,著者の一貫したリウマチ病へのアプローチが読者に印象強く訴えるのであろう。そういった意味で,リウマチのテキストで,私はこれほど網羅され整理された“頭に残る”テキストを,英語でも日本語でも,この『リウマチ病診療ビジュアルテキスト』をおいて他に知らない。

 著者の臨床医・リウマチ医としての姿勢,そして本書の姿勢は,「リウマチ病の診断は,“病歴と身体診療(history & physical)”に90%以上頼っている。血液検査やX線撮影は,あくまで自分の診断を確認するためだけのものでしかない。血液検査結果よりも,しばしば診察によって得られた所見が優先する。臨床検査結果をみるときに,このような視点を失わないようにする」(11頁)という一文に表れている。この言葉は,臨床医すべてに当てはまる態度であるが,残念ながら実践している医師は稀有であろう。しかし,この『リウマチ病診療ビジュアルテキスト』を読んだ後には,この大切な臨床医の姿勢を実践しようと思わせてくれるような本である。

 今回の改訂では,ページ数も初版の240ページから,402ページへと大幅に増え,図もカラフルになり,写真も大幅に増えた。血清反応陰性脊椎関節症,血管炎,感染性関節炎などが初版より充実した。また,「リウマチ病の治療薬」では,この10年生物学的製剤の開発,臨床応用が日進月歩であるリウマチの分野において,今回の改訂版ではTNF阻害薬を中心に生物学的製剤の項が追加されている。

 本書は,学生や研修医,一般臨床医(内科医,皮膚科医,整形外科医,眼科医といった各科専門医)のみならず,リウマチの専門医も含めたいろいろなレベルの医師に薦められる本である。

 学生や研修医は,リウマチ疾患アトラスとして,豊富な写真や図を見ていくだけでも勉強になるし,“頭に残る”だろう。また,各論では各疾患の詳述の前に「疾患のポイント」があるが,これは疾患の概要・キーポイントを知るのに非常に役立つ。一般臨床医は参考書として使用できるし,リウマチ専門医は本書を読破することによって改めて知識の整理ができるであろう。私事であるが,私は2000年に米国リウマチ専門医試験を受け,2007年にも更新試験を受けた。その際,本書の初版を読むことが知識の整理に非常に役立った。アメリカの代表的テキスト“Primer on the Rheumatic Disease”も使用したが,明らかにこの「ビジュアルテキスト」に軍配を上げたい。

 本書は,難解なリウマチ疾患にどう手をつけてよいかわからない多くの医師への福音である。今後,英語版も出されて世界中の医師にとってのリウマチテキストとなることが期待される。

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