内科レジデントの鉄則

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当直医として緊急入院で呼ばれ、病棟では患者さんの受け持ち医として、迅速かつ的確に対応を求められる研修医。知識は結構一人前のはずのあなたでも、日々疑問と不安だらけではないでしょうか? 本書は聖路加国際病院の“臨床に初めて携わる研修医を教育するための内科コアカンファレンス”をもとに、あなたより少し経験を重ねた先輩が教えてくれる臨床現場での鉄則を解説。
聖路加国際病院内科チーフレジデント
発行 2006年10月判型:B5頁:244
ISBN 978-4-260-00241-7
定価 3,960円 (本体3,600円+税)
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I. 当直で病棟から呼ばれたら
 -まずはバイタルサインを確認しよう-
 1. 発熱
 2. 血圧低下
 3. 酸素飽和度(SatO2)低下
 4. 意識障害
 5. 頻脈
 6. 胸痛
 7. 腹痛
 8. 高血糖・低血糖
 9. その他(転倒,点滴抜去,点滴漏れ)
II. 内科緊急入院で呼ばれたら
 -落とし穴がいっぱい。本当にその疾患でいいの?
  見逃しちゃいけないことは?-
 1. 気管支喘息
 2. 肺炎
 3. 腸炎
 4. 急性肝炎
 5. 急性膵炎
 6. 肝性脳症
 7. 脳梗塞
 8. 腎機能障害
 9. 低ナトリウム血症
 10. 高カリウム血症
 11. 担癌患者
 12. 高齢者
III. 病棟で困ったら
 -毎日が疑問だらけ,どうすればいいの?-
 1. 輸液
 2. 栄養
 3. 痛み
 4. 嘔気嘔吐
 5. 不眠
 6. 便秘
 7. 動脈血ガス
あとがき
索引

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卒前知識とリンクした実用的で読みやすい鉄則書
書評者: 竹村 洋典 (三重大助教授・総合診療部)
 研修医向けの書籍に常に目を通す私も,この本を読んだ時に,思わず「ワォー」と言ってしまった。

 研修医向けの書籍の大切なことの第一は,プラクティカルであることである。どんな施設の研修医たちも心の中は不安がいっぱいある。苦しむ患者を前に知らないことがたくさんある。大学で知識は得たはずだが,頭が回らない。手も動かない。しかし一方で,医師になる以上,必要最低限のことは経験したいとも思う。少なくとも誰でもが出会うであろうコモンな問題・疾患の対処方法は知っておきたい。よい指導者がそばにいてくれたらばその対処方法に困ることはなくなるかもしれないが,いつもというわけにはいかない。そんな時に「ああ,あってくれて本当によかった!」と思えるのが,コモンな問題・疾患に対して具体的にその対処方法を教えてくれる本である。『内科レジデントの鉄則』はまさしくそのような本である。薬品名など大胆に選んでくれていることに,熟考の後と自信が垣間見られて拍手を送りたくなる。

 研修医向けの書籍の大切なことの第二は,卒前に学んだ知識との関連を述べていることである。プラクティカルなマニュアル本は少なからず出版されている。しかし,研修医も月日が経つとそれらに物足りなさを感じるかもしれない。さらにマニュアル本に不安さえ感じるようになる。「このマニュアル本に人の命を預けていいのか……」誠実な研修医諸君の考えとして当然である。そんな時に,マニュアル本の内容を病態生理学的に解釈しなおして,なぜそうなのか,その理由を述べてくれる書籍を求め始める。『内科レジデントの鉄則』はまさしく,このような本でもある。その意味においては聖路加国際病院レジデントによる『内科レジデントマニュアル』を越えている,と実感した。

 そして,研修医向けの書籍の大切なことの第三は,読みやすいこと。忙しい研修医は,疲れた自分の頭脳を,難解な文章の解釈に使わせたくない。メリハリのある読みやすい文章と構成は,必須といえる。本書の各「プラクティスの教訓」そしてその「鉄則」は,読者の理解をたやすくする見出しとなっている。説明についても,図,フローチャート,重要項目の箇条書き等を頻用して記憶を助けてくれる。至れり尽くせりである。時に出てくる「もっと知りたい」は,私にとっても興味深い内容であった。

 日本の研修医向けの書籍は,研修医の心をつかめない高所から,あるいは異次元からの指導であったり,また若すぎて心もとない内容であったりした。本書は,聖路加国際病院チーフレジデントの努力と自信,それに裏打ちされた誇りが根底に脈々と流れていて,読むものを惹きつける。安心して使用できる久しぶりの良書といえよう。

内科研修のポイントとその重要性がわかる良書
書評者: 市村 公一 (昭和大・精神医学〔「臨床研修の現在―全国25病院 医師研修の実際」(2004年,医学書院)の筆者〕)
 卒後研修必修化を翌年に控えた2003年,全国の臨床研修病院を回って研修の実態を調査したが,最初に訪問した聖路加国際病院の印象は非常に鮮烈だった。昼食時のセミナーだけでなく,朝夕の回診でも上級医から研修医に次々と質問が飛び,研修医がポンポン答える。研修医も疑問に思ったことは遠慮なくどんどん質問する。大学病院あたりなら「こんなこと聞いたら叱られるんじゃないだろうか」と躊躇する研修医が普通ではないかと思うが,ここでは知らないことを知らないままにやり過ごすのが最大の罪といわんばかりの雰囲気なのだ。上級医も「後で自分で本を読んでおけ」とは言わない。その場で教える。

 全国の25の病院を回って,誰が入っても本人の努力の如何に関わらず一定のレベルの実力をつけさせる研修が,特定の医師の努力によるのでなく,病院のシステムとして出来上がっているのは,ごくわずかな病院しかないと感じたのだが,その最大の秘訣がこうした「耳学問」の徹底にある。それを裏付けるかのように,意外にも聖路加国際病院では研修医控え室にごくわずかな本しかなかった。「『ワシントンマニュアル』は指導医の頭の中に全部入っている。研修医は自分で読まなくても指導医に聞けばいい」とは沖縄県立中部病院の元院長で群星沖縄プロジェクトリーダーの宮城征四郎先生の名言だが,繰り返し耳学問で教わり,かつ多くの症例を通じて教わったことを実地に経験を重ねることが,落ちこぼれを作らない研修医の最も肝心な点だと痛感した。

 このたび出版されたこの『内科レジデントの鉄則』は,「当直で病棟から呼ばれたら」「内科緊急入院で呼ばれたら」そして「病棟で困ったら」と研修医が直面する3つの状況ごとに発熱や血圧低下,肺炎や脳梗塞,そして輸液や不眠時の対応といった症状・病態にどう対応するかがまとめられている。各項目ごとに忘れてはならないポイントが鉄則として示され,具体的に症例を挙げてQ&Aによってその鉄則がなぜ重要なのか,実際にどう考えるのかが示されている。このQ&Aこそ,まさに聖路加国際病院の日常の姿であり,臨床研修の要諦だと思う。

 聖路加国際病院の,そしてこの本の強みは,卒後3-4年目のレジデントが自分たちが1-2年目に躓いたポイントを思い出しながら研修医に質問を投げかけられる点にある。その結果この本は,研修医にとってはまず最初にマスターすべき内科研修医のポイント集であり,同時に研修指導にとっては指導のポイントとそのやり方を学ぶ最適なテキストとなっている。

 優れた研修病院への第一歩は,指導医が毎朝毎夕研修医の顔を見るたびにこの本の鉄則を質問として投げかけるところから始まるだろう。

その声を聞きながら(内科レジデントの鉄則を読む)
書評者: 岩田 健太郎 (亀田総合病院総合診療・感染症科部長)
 五感が,記憶を呼び覚ますことがある。試験勉強時に聴きまくった音楽を耳にすると当時の苦痛がじわりとよみがえる。可愛かったあの子と同じ香水の匂いに遭遇すると,ほろ苦い思い出が(かなりビターな思い出が)蘇る。

 『内科レジデントの鉄則』を開いた私を刺激したのは視覚ではない。聴覚であった。少なくとも私は,そう感じた。上級医の鋭いあの声(まあ,たいていは怒鳴り声)がよみがえる。「出血性ショックはバイタルサインだ(CBCではない)」「Wheeze=喘息ではない」「頻脈だからといって,やみくもにrate controlをしてはいけない」「心筋梗塞の診断を,トロポニンに頼ってはいけない」「アンモニア=肝性脳症ではない」「麻痺があるからといって脳梗塞とは限らない」……。

 雲より高いところに鎮座する偉い指導医のくどくどした説教やレクチャーよりも,頭よりも体,ひたすら走り回る研修医には,年の近い先輩の,こういう箴言こそがなによりありがたい。

 経験(そのいくばくかは,おそらく苦い失敗譚)の積み重ねから生まれた数々の箴言。歴史の長い教育病院には必ずこういう言葉たちが蓄積される。本書を読むと,初期研究医のあの喧噪の日々がよみがえる。

 3年目のチーフレジデントが初期研修医教育のために作ったこのテキストは,自らの経験と伝統から受け継がれたアフォリズムに満ちている。これだけは知っておいてほしいという強い願いや愛情が込められている。さすがは聖路加のチーフだけあってよく勉強もしている。「なぜFENaがよいのか」の項などは,とても参考になった。

 研修医が研修医を教える。屋根瓦方式のもっとも美しい部分を氷結させたのが本書である。その点において,数多い「研修医マニュアル」のエピゴーネンからは決別している。本書を読んだ初期研修医は,新たな先輩医師を得た思いで熟読するとよい。本書を読んだシニアレジデントは,「おれもがんばらにゃ」と魂を鼓舞されるといい。そして指導医は,郷愁に浸りながら読むもよし,黄昏れるにはまだ早いと自らにむち打つのも,またよいであろう。

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