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理学療法 臨床実習とケーススタディ 第3版

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「臨床実習編」では、クリニカルクラークシップや実習前OSCEのポイントを、詳しく解説。リスク管理やストレスマネジメント、ハラスメント対策など、学生にとって切実な項目を充実させる。「ケーススタディ編」では取り上げる疾患を精選し、右端に(1)実習ポイント、(2)記録ポイント、(3)情報源を記載。細切れになりがちな実習において、全体の流れを把握できるようにする。実習メモやレジュメ作成に役立つWeb付録付き。

*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 鶴見 隆正 / 辻下 守弘
発行 2020年12月判型:B5頁:304
ISBN 978-4-260-04268-0
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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第3版 序

 本書第2版が出版されてから約10年が経過し,このたび第3版を出版する運びとなった.第3版では,2020年度入学者から実施された「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」の改正に基づいて,全面的に構成と内容を見直した.ただし,編集方針は第2版と同じく,臨床実習を控えた学生に主眼をおきつつ,教員や臨床実習指導者にも役立つ教科書というスタンスを踏襲した.執筆者諸氏には少なからずご無理を強いることになったが,編集者が意図したとおりの本が完成したと自負している.
 さて,今回の指定規則改正の目的は,「高齢化の進展に伴う医療需要の増大や,地域包括ケアシステムの構築など,理学療法士,作業療法士を取り巻く環境の変化への対応や,臨床実習の拡充などによる質の高い理学療法士,作業療法士を育成する」ことにあるとされている.特に,「臨床実習の拡充」という点では,単位数が現行の18単位から20単位へと2単位増え,臨床実習前後の評価を必修化することで,臨床実習の質向上が図られている.さらに,臨床実習指導者の要件が見直され,従来の臨床経験3年以上から5年以上と厳格化されるとともに,厚生労働省が指定した臨床実習指導者講習会などを修了することが義務付けられた.これらは養成校や臨床実習指導者にとって厳しい改正ではあるが,一方で国が2025年に完成を目指す地域包括ケアシステムにおいて,理学療法士の需要とその質の向上が不可欠であることを認めたともいえる.
 2019年末に中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,日本においても2020年1月から感染拡大が進行し,4月には緊急事態宣言が発令され,日々の生活が一変した.コロナ禍は,養成校での教育環境にも大きな影響を与えた.特に臨床実習では,医療現場の学生受け入れが困難となり,厚生労働省の通達により学内実習が代替実習として認められることとなり,その対応に大きな混乱が生じた.このように2020年は,養成校の教員にとっても受難の年となったが,養成校教育の全般を見直す良い機会になったことも確かである.本書では,新型コロナウイルス感染症に関する事項を急遽追加し,学内実習の実際に関する内容も記載した.短期間でご協力いただいた執筆者には,この場を借りてお礼申し上げる.
 第3版では,臨床実習で経験するケースにおいて,事前学習の内容や臨床実習指導者から学ぶべきポイントなどをコンパクトに整理した.これからはクリニカルクラークシップ(診療参加型実習)を前提とした教科書として,学生が実習先へ携帯することになるだろう.また,臨床経験豊富な執筆者により書かれたケーススタディは,学内実習やOSCE(客観的臨床能力試験)におけるペーパーペイシェント教材としての活用も想定している.多様な使い方をしていただくことで,コロナ禍における養成校での学びを補えることを期待している.
 最後に,臨床実習は,古典的な徒弟制度に基づいた厳しい職業訓練の時代が終わり,臨床現場における理学療法士の資質を涵養し,理学療法の本質的な学びを提供する教育の場へと変容した.本書が,その本来の学びを達成する道標となれば,編集者と執筆者にとって甚大なる喜びである.

 2020年10月
 鶴見隆正
 辻下守弘

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臨床実習編
  序章 ある病院における実習生の1日/ある臨床実習指導者の1日
 1 臨床実習とは何か?
  A これからの臨床実習とは
  B 臨床実習の到達目標と学生評価のポイント
 2 臨床実習で何をするのか?
  A OSCEのチェックポイント
  B クリニカルクラークシップによる学生指導
  C 臨床実習における情報の収集とまとめ方
  D withコロナ社会での学内実習の方法
 3 臨床実習に向けて何を準備するのか?
  A 学生としての態度とマナー
  B 実習中のストレスにどう向き合うのか?
  C チーム医療と多職種連携
  D 倫理的対応
 4 臨床実習におけるリスク管理
  A 感染症対策
  B 使用頻度の高い薬剤
  C 患者の急変や事故への対応
  D 総合補償制度Will
  E 個人情報保護

ケーススタディ編
 5 神経障害のケーススタディ
  1 脳血管障害(亜急性期)
  2 脳血管障害(回復期リハ病棟)
  3 脳血管障害(地域包括ケア病棟)
  4 脊髄損傷
  5 パーキンソン病
  6 脊髄小脳変性症
  7 頸髄症(不全麻痺)
  8 脳性麻痺
  9 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
 6 骨関節障害のケーススタディ
  1 大腿骨頸部骨折
  2 変形性股関節症
  3 人工股関節全置換術後
  4 関節リウマチ(全身性)
  5 人工膝関節全置換術後
  6 ロコモティブシンドロームに対する理学療法
  7 下腿切断(糖尿病)
  8 前十字靱帯再建術・半月板縫合術
  9 腱板損傷(腱板修復術後)
  10 肩関節周囲炎:外来での評価を中心に
  11 腰痛症(非特異性)
  12 腰椎椎間板ヘルニア
  13 下肢骨折
  14 末梢神経障害(腓骨神経麻痺)
 7 内部障害のケーススタディ
  1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  2 心不全
  3 2型糖尿病
 8 地域におけるケーススタディ
  1 訪問リハビリテーション(脳血管障害)
  2 通所リハビリテーション
  3 介護老人保健施設
  4 フレイル・サルコペニアに対する予防理学療法

索引

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客観的で妥当性のある実習指導をめざす理学療法士の羅針盤となる一冊
書評者:長谷川 真人(東大病院リハビリテーション部理学療法士)

 理学療法士としての活動はさまざまな分野にわたるが,臨床実習の指導も重要な活動の1つであろう。2020年度の新規入学者から適用された「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(以下,指定規則)の改正により,新たな臨床実習体制への転換が,臨床指導者,養成校の教員,そして学生にも求められている。

 当院においても,今後の臨床実習体制を検討している最中だが,本書は豊富なイラストや図表を駆使したわかりやすい内容となっており,これから臨床実習に臨む学生や教員のみならず,実習を提供する側の臨床家・実習指導者にとっても,まさに羅針盤となる非常に有用なものである。

 本書の最も優れた点として,指定規則の改正により推奨されている診療参加型実習や,OSCE(Objective Structured Clinical Examination)を含む実習評価の具体的な方法が,Q & Aなどを通じて明確に説明されている点が挙げられる。コロナ禍で,臨床実習指導者講習会を十分に受講できない中,本書は新しい形の臨床実習への標準マニュアル的な役割を果たしてくれる。また,Withコロナ社会下での効果的な実習方法について,さまざまな取り組みや工夫が紹介されており,教育関係者だけでなく臨床現場の指導者が,実習生のリアルな状況を理解し,実際の実習指導に生かすことができる内容となっている。臨床実習に向けて準備すべき項目も適切に紹介されており,新たな臨床実習への基本的な概念を理解しつつ,社会人への第一歩として相応しい,充実した経験を積むためにも有用である。

 特筆すべき内容として,さまざまな神経障害・骨関節障害・内部障害への急性期,亜急性期,回復期,慢性期,地域(予防的段階を含む)における豊富なケーススタディが紹介されている。実習前の学生には,ぜひとも精読をお薦めするとともに,客観的で妥当性のある,より優れた実習指導をめざす臨床現場の理学療法士にも目を通していただきたい。理学療法にかかわる全ての人々にとって,必須の書といえよう。

 臨床実習とは,認知領域・情意領域・精神領域をバランス良く育み,医療・福祉分野における理学療法士の役割を知り,そのやりがいについて経験すべき場である。もう20年以上も前の話になるが,自分が学生時代に本書に出合っていれば,自身が受けた臨床実習だけでなく,今まで提供してきた臨床実習が,もっと充実した内容になっていたかもしれないと少し後悔しつつ,今後の臨床実習に役立てようと,気持ちを奮い起こすきっかけにもなる優れた一冊である。


新しい臨床実習の“What”と“Why”に答える一冊
書評者:日髙 正巳(兵庫医療大教授・理学療法学)

 理学療法教育における臨床実習は,臨床現場において臨床体験を通して学生が学びを深めていくために極めて重要なカリキュラムです。2020年4月に入学した学生から,改正された「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」が適用となり,臨床実習の在り方が変わろうとしています。これからの臨床実習は,実習生が患者を担当する担当型臨床実習ではなく,診療が展開されている場面に実習生が参加するクリニカルクラークシップ(診療参加型臨床実習)が中心となってきます。

 このことを受け本書は,クリニカルクラークシップによる臨床実習を前提として書かれています。また,2020年度の新型コロナウイルス感染症拡大によって余儀なくされた,学内での代替え実習についても踏み込んだ記載があります。「学内実習で代替え可能なものは何か?」を考える参考になると同時に,臨床現場でなければ得られないものへの気付きも得られる内容となっています。

 臨床実習に関する書籍としては,臨床実習指導者が指導の手引きとして参考にするもの,逆に臨床実習生が臨床実習を乗り切るために,苦労する実習レポートの書き方などに焦点を当てたものを多く見かけます。しかし,本書を手にとって読んでみると,そのようなハウツー本ではなく,クリニカルクラークシップとは何か,その中でどのように学ぶ必要があるのかについて,実習生自身が臨床実習に臨むに際して理解しておくべきことが端的にまとめてあります。ぜひ,実習生の皆さんにも読んでいただきたい一冊です。

 本書の後半には「ケーススタディ」が掲載されています。初版から同様の構成をしていましたが,第3版となり趣が変わっています。クリニカルクラークシップでの臨床実習では,症例レポートを書くために対象者を担当するのではなく,臨床実習指導者とともに対象者とかかわり,診療活動に参加することがポイントとなります。

 では,実習生が診療に参加するために必要なことは何でしょうか? 基本的な知識や技術はもちろんですが,それ以上に大切なことは,目の前の対象者について臨床チームと情報を共有することです。ケーススタディのページのサイドには,実習で学ぶポイント,記録ポイント,情報源は何かが示されています。これらのポイントを手がかりとし,臨床実習指導者に質問することで対象者に対する理解を深め,臨床実習をより有益なものにしていけることでしょう。また,臨床実習終了後の振り返りにおいて,このようなケーススタディが書けるように,かかわる一例一例の情報を整理しながら臨むことが,臨床実習をさらに価値あるものとするでしょう。

 本書は,臨床実習指導者にとっては臨床実習指導の指南書であり,実習生にとっては臨床実習で学びを得るための手引きです。多くの方が参考にされ,有益な臨床実習が展開されることを願ってやみません。

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