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新訂 うまい英語で医学論文を書くコツ
世界の一流誌に採択されるノウハウ

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英語論文を執筆しようと思ったら、まず本書でcomfortable Englishをマスターするべし。一流英文誌に論文を採択されたかったら、まず本書で世界で通用する論文構成を学ぶべし。新章「学術論文のうまい書き方」を加え“あの”名著がさらにパワーアップして復活。
植村 研一
発行 2019年10月判型:A5頁:224
ISBN 978-4-260-03936-9
定価 3,520円 (本体3,200円+税)

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推薦の序(伊達 勲)/推薦の序(安藤 千春)/新訂にあたって(植村 研一)

推薦の序

 このたび植村研一先生による「新訂 うまい英語で医学論文を書くコツ」が出版されることになった.グローバル化の時代にあって,英語でプレゼンテーションをし,英語で論文を執筆することは,医師や医療関係者にとって必要不可欠である.しかしながら一流の英文雑誌に日本人が論文を投稿し,査読者や編集者と討論し,採択にこぎ着けるまでの道のりは長い.植村先生は28年前(1991年),この著書の初版を世の中に発表した際に「comfortable English」の重要性を説かれた.日本人の書いた多くの英文を例にあげ,その一文一文を60~80%に縮小することが可能であることを見事に示された.この考え方はまさに目から鱗,であり,初版が大好評で多くの読者が購入したのも当然である.私は植村先生と同じ脳神経外科医であるが,多くの脳神経外科医が,絶版となった初版の中古(古本)をネット上などで探していたのを知っている.英語論文を執筆しようとするものにとって,この新訂は待ちに待ったものといえる.
 今回の新訂(いわば第2版)ではcomfortable Englishの考え方や例文の提示については,初版と同様の考え方が貫かれているが,新しく,一流英文雑誌に採択されるための表題の付け方,考察の書き方のコツが第1章「学術論文のうまい書き方」に詳しく述べられている.最も重要な点は,indicative title (表示的表題)ではなくinformative title(内容的表題)を論文名にすること,である.一流英文雑誌では大量の投稿があるため,編集委員長は表題を見ただけで多くの論文をゴミ箱に捨ててしまう,とのお話は刺激的である.日本語の雑誌に「○○の研究」という表題(つまり表示的表題)の論文が非常に多いことを考えると,なるほどと納得してしまう.
 植村先生は医学界における同時通訳の第一人者でもある.第2章の「うまい英語での表現法」には,同時通訳の経験から生み出された先生独自のcomfortable Englishの極意が沢山ちりばめられている.同時通訳ほどコンパクトにそしてクリアに2種の言語を結びつけなければならない作業はない.そのような大変な作業を何十年も経験されてきた植村先生だからこその極意は非常に説得力がある.
 植村先生は日本脳神経外科学会の補佐組織として1980年代に脳神経外科同時通訳団を結成された.また医学教育の中で英語教育に特化した活動を行う,日本医学英語教育学会を1998年に設立された.これらの活動の中で,適切な医学英語の表現法や,どうやれば一流英文雑誌に論文を掲載することができるかなどについて,いつも重要な指導をしてくださっている.今回発刊された新訂版はそれらの集大成であり,多くの読者が教えに従って,「うまい」表題をつけ,comfortable Englishをマスターし,一流英文雑誌への論文掲載に成功することを祈っている.

 2019年7月
 岡山大学大学院脳神経外科教授
 日本医学英語教育学会理事長
 日本脳神経外科同時通訳団団長
 伊達 勲


推薦の序

 2020年から,日本では小学校1年からの英語教育が必修化されます.つまり,2034年頃の医学部2年生は,小学校,中学,高校,そして医学部低学年までの14年間,英語教育を受けてきたことになります.それだけ長期間にわたり英語教育漬けになっても,英語での研究論文は一朝一夕では決して書けません.ましてや海外の一流学術雑誌に論文が採択される可能性は,一部の例外を除き,日本国内だけで英語教育を受けてきた人にはほとんど不可能に近いでしょう.では医学部を卒業後,医師となれば英語論文が書けるのか? との問いに対しても上記同様の残念な答えが返ってきます.
 多くの場合,教授からの指示により英語論文を書かされる羽目に陥ります.そして必死になって関係する海外の論文を読み漁り,日本語でまず論文を完成させてから英訳することになります.もしも精神的な余裕があれば,気になる英語表現を自分の文体に取り込むことも可能かもしれませんが.本来英語運用能力が潜在的にある医学部学生時代から地道に努力すれば必ず英語論文は書けるようになるはずです.
 そのための強力な助けになるのが,本書『新訂 うまい英語で医学論文を書くコツ』です.中学生時代の英語学習で関係代名詞に苦労した割に,自分が書く日本語自体が関係代名詞だらけの文体になってしまう.同様に受動態に苦労した割に,自分が書く日本語自体が受動態だらけの文体になってしまう.それを英語に翻訳しようとするから支離滅裂な英文になってしまうのです.本書は,タイトル通りにうまい英語で医学論文を書く「コツ」を丁寧にそして詳細に教えてくれます.英語論文の書き方,表現法,添削例の総合的解析,および原文と訂正文の対比が「コツ」を教えてくれるのです.特に添削例と訂正文の対比の個所を読むのは時間を要します.ですから一読してすぐにうまい英語が書けるようには決してなりません.じっくりと「なぜ?」と前後関係や文体の変更箇所を理解しながら読むべき本です.“comfortable English”とはなるほどこういうことなのか,と納得しながら時間をかけて読むべき書です.「言語心理学」や「短縮率」という表現の意図を理解できれば「コツ」を会得できます.必ず….
 著者である植村研一先生は,世界有数の脳神経外科医であり,臨床教育の分野でも長年にわたって情熱を捧げてこられた先生であり,世界に通用する医師を育ててこられました.その過程において日本医学英語教育学会を設立され,学会の名誉理事長となられた今でも,後進の指導には親身な対応をされています.
 末尾となりましたが,恩師の著書に推薦の序を書く機会はこの上ない名誉なことと感じております.

 2019年7月
 獨協医科大学医学部特任教授
 安藤 千春


新訂にあたって

 自分の医学研究の成果を世界中の医学者に認知してもらうには,世界,殊に米英国の一流誌に論文を英語で掲載してもらうのが最も効果的である.残念ながら日本の小・中・高の学校教育や医学部教育では,人に読まれる効果的な日本語での作文,論文の書き方すら十分には教育されていない.また医学部大学院でも大学院生や若い医学研究者に研究の仕方は指導しても,世界の一流誌の採択基準の観点からの日本語での論文の書き方の教育はほとんどなされていない.そのような状況の中で,若手研究者が日本語で書いた論文を,自力で逐語的に英訳して,米英人にうまい英語に添削してもらっても,世界の一流誌では即座に拒否されるのは当然である.
 問題は英語のうまさではなく,論文の構成structure(style)で拒否されていることを知らなければならない.日本の学術誌では,研究成果の内容が優れていれば,論文の構成のいかんにかかわらず採用されるが,世界の一流誌では,構成が効果的でなければ,内容を読まずに,したがってせっかくの研究成果も編集委員会で評価される前に,編集長の独断で採用が拒否されるという厳しい判定がなされていることを知る必要がある.
 医学論文の書き方については,既に多くの本が出版されているが,世界の一流誌が求めている構成のポイントをわかりやすく解説したものは少ない.しかも多くの日本の医学者が愛用している構成が,世界の一流誌では拒否される構成であることも留意する必要がある.
 私は1991年に医学書院から『うまい英語で医学論文を書くコツ─A guide to comfortable English』を出版し,たいへん多くの医学者にご購読いただいたが,これを書いたときには,日本の医学者は日本語では適切な論文を書けるという前提でそれをいかにうまい英語に翻訳するかを論じた.しかし,その後,多くの学会発表を聴いたり,日本語の医学雑誌『脳波と筋電図』の編集委員になって日本語の医学論文を読んで,「日本人医学者の中には日本語でもうまい論文が書けない人が多い」のに驚いた.「序文」に書くべきことが「考察」に書かれていたり,「考察」が「総説」になっていたり,図と表がダブっていたり,表示すればすむデータが延々と「結果」に記述されていたり,要するに科学論文の構成法が全く理解されていない.そこで,E. J. Huthの “How to Write and Publish Papers in the Medical Sciences” を監訳した『うまい医学論文の準備と作成』を1994年に医学書院から出版した.
 その後,日本の医学者の愛用している構成が,国際的立場では受け入れられないものであることに気付き,今回,構成の視点に重きをおいた大改訂を行うことにした.
 推薦の序をくださった伊達勲先生と安藤千春先生には,深く御礼申し上げます.また,安藤先生には,本文中の英語を専門家のお立場から校閲もしていただきました.本書の出版にご尽力いただいた医学書院の山﨑恵美さん,川口純子さんにも心より感謝申し上げます.
 最後に本書を熟読された若手研究者の論文が,世界の一流誌に数多く採用されるようになることを期待してやまない.

 2019年7月
 植村 研一

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I 学術論文のうまい書き方
 1.日本語の論文をいかにうまい英語に訳しても採用されない
 2.論文採用基準の日米差
  1 日本の医学会誌は学会の買い取り
  2 英文誌は世界中に販売される商業誌で査読前の編集長による拒絶がある
 3.米英国の一流出版社の立場
  1 雑誌の販売部数を増やしたい
  2 製作費(総頁数)を減らしたい
  3 内容の優れた論文を多数載せたい
  4 各論文の頁数をできるだけ減らしたい
  5 広い分野の読者に読ませたい
 4.原著論文を採択されるようにうまく書くコツ
  1 原著論文の構成
  2 うまい表題の作り方─indicative titleとinformative title
  3 うまい抄録の書き方
  4 うまい序文の書き方
  5 うまい対象・方法の書き方
  6 うまい結果の書き方
  7 うまい考察の書き方
 5.採択されるように症例報告を書くコツ
  1 採択される症例報告とは?
  2 症例報告のうまい書き方

II うまい英語での表現法
 1.文法的和文英訳をしてはならない
 2.うまい英語に意訳するコツ
  1 comfortable English(うまい英語)とは何か
  2 comfortable Englishへの意訳の手順
  3 paragraphと段落の違い
  4 英文の階層的構成
  5 subjectは「主語」ではない
  6 米英人は能動態を好む
  7 simple and clear statementに徹する
  8 動詞のうまい使い方
  9 不要語の削除
  10 略語の使用上の留意点
  11 「思う」=“think”だけではない
  12 否定文の日英差
  13 be動詞をできるだけ避ける
  14 ofをできるだけ避ける
  15 冠詞の使い方
  16 時制tenseの使い方
  17 maleとfemaleの使い方
  18 limbとextremityの使い分け
  19 caseとpatientの使い分け
  20 英文での数字の使い方
  21 年齢の表現
  22 数量の表現での留意点(byとtoの違い)
  23 標準偏差と標準誤差の区別
  24 byとwithの使い分け
  25 語・句はどのような順序で並べたらよいか

III comfortable English 100本ノック─添削例の総合的解析

IV さらに,comfortable English 100本ノック─原文と訂正文の対比

付録1 対談 うまい英語で地球が狭くなる─アクセプトされる英語医学論文を書くために
付録2 よくみられる語,句の使用上の誤り
付録3 略語一覧

索引

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採択基準の日米差も解説 英語論文執筆のバイブル
書評者: 近藤 克則 (千葉大教授・予防医学センター社会予防医学研究部門/国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター老年学評価研究部長)
 海外の研究成果に学ぶ時代なら英語論文は読めれば良かった。が,医学研究において,日本が最先端の一角を占める分野が珍しくなくなった。つまり,英語での論文発表が求められる時代になった。その時代に不可欠なノウハウを,長年に渡る英語論文の執筆・添削指導をしてきた経験から引き出し,多くの添削事例とともにまとめたのが同名書の初版であった。1991年の出版以来,30年近く読み継がれてきた名著の新訂版が本書である。

 著者の植村研一先生は,中学時代に英語弁論大会に出場して以来,千葉大医学部卒業後は横須賀米国海軍病院でのインターンを経て,7年半にわたって米英に留学されるなど,英語をたくさん使ってきた経験を持つ。さらに帰国後も日本脳神経外科学会の英文機関誌に投稿される論文の英文添削にかかわり,日本医学英語教育学会や日本脳神経外科同時通訳団まで創設してしまった方である。

 本書は,次の4部と付録からなる。「I 学術論文のうまい書き方」では,「1.日本語の論文をいかにうまい英語に訳しても採用されない」理由を,論文採択基準の日米差などから説明し,採択されるようにうまく書くコツを紹介している。例えば,日本では「くも膜下出血後の脳血管攣縮についての研究」など研究課題をそのまま表題にした表示的タイトルが8割を占める。しかし,これでは診断,治療,予後,発生機序のうち何の研究なのか,臨床研究か動物実験か,どんな価値がある成果なのかわからない。採択率数%の一流雑誌では,タイトルだけで9割の投稿論文がゴミ箱行きとなるので,こんなタイトルでは採択されない。「イヌでのくも膜下出血後の脳血管攣縮発生におけるProtein Kinase C関与の直接証明」のように内容や意義までわかる(informative)タイトルでなければならない。

 「II うまい英語での表現法」では,英語と日本語とでは言語系が異なるので逐語訳では不適切であるとして,「うまい英語」を“comfortable English”などと意訳するコツが25節にわたって紹介されている。評者の印象に残ったものを挙げれば,うまく意訳すると逐語訳に比べて単語数が減るので短縮率が指標となる,意訳の手順,paragraphと段落の違い,subjectは「主語」ではない,be動詞はできるだけ避ける,などである。

 本書の圧巻は「III comfortable English 100本ノック――添削例の総合的解析」だろう。100の問題文をcomfortable Englishに直して,その全てに解説がついている。「IV さらに,comfortable English 100本ノック――原文と訂正文の対比」では,解説は省かれるが原文(問題文)と訂正文,そして短縮率が示されている。6割から8割の短縮率が珍しくないから驚きである。「付録」には,週刊医学界新聞に掲載されたRobbins名誉教授との「対談 うまい英語で地球が狭くなる――アクセプトされる英語医学論文を書くために」,「よくみられる語,句の使用上の誤り」も収載されている。

 本書を読んで,日本と英語圏での論文採択基準や考え方の違い,意訳のコツを学び,200もの添削事例を通じて多くの気付きを得て,comfortable Englishで論文を書けば,論文採択率はアップするに違いない。
研究者の英語論文執筆力を高める格好のテキスト
書評者: 鈴木 康之 (岐阜大教授・医学教育開発研究センター)
 私が初めて本格的な英語論文を書いたのは1986年でした。当時,論文執筆に関するテキストはほとんど無く,他の論文の表現や構成を参考にしながら,四苦八苦して継ぎはぎの英作文をしていた記憶しかありません。本書で植村研一先生が強調しておられる“comfortable English”にはほど遠いものでした。当時,本書があったら私の苦労の何割かは軽減し,ワンランク上の雑誌に掲載できていたことでしょう。近年,論文執筆に関するテキストは随分多くなりましたが,本書は次の3点でとても魅力的です。

 (1)医学研究者・医学英語教育者・雑誌編集者・同時通訳者としての長年の経験に基づいて,“どのような論文が一流誌に採択されるか?”を熟知した植村先生が,まるで直接語りかけてくださるように,歯切れ良くポイントを示しています。植村先生のお話を一度でも聞いたことのある方は,特に実感されるでしょう。植村先生の頭に蓄積されてきた智慧とノウハウを学びとってほしいと思います。

 (2)全編を通じて“comfortable English”と“短縮率”がキーワードとなっています。日本人特有の婉曲・冗長な表現を戒め,言葉をいかにそぎ落とすかを多くの実例で示し,演習によって実践力が高まる工夫がされています。英語論文の読者・査読者の多くはnative speakerであり,comfortableな英語を心がけることが重要です。“うまい英語”とは決して美文ではなく,読者の頭に素直に入っていく“simple and clear statement”なのだと理解しました。“うまい英語”のコツがわずか50ページの中に凝縮されているとは驚きです。

 (3)コンパクトな構成で,忙しい医師・研究者でも手軽に読むことができます。読みやすく(comfortable Japanese !),明快(simple and clear !)に書かれていますので,一度全編を通読することがお薦めです。これから英語論文にチャレンジしようとしている若手はもちろんのこと,論文の質をワンランク高めたい中堅,論文執筆を指導する立場のベテランにとっても格好の参考書です。一度でも英語論文を書いた方なら,読んでいてうなずかされることばかりです。査読者の視点を知ることで,どんな論文を書けば良いかを知ることができます。

 近年,わが国からの医学英語論文数は頭打ち,分野によっては減少し,世界第2位の座から第6位へ転落しています。研究力自体の強化はもちろん最重要ですが,せっかくの研究成果を効果的・効率的に発信するためには,研究者の英語論文執筆力を高めることが重要です。そのために本書は格好のテキストと言えるでしょう。

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