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プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト

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定評あるプロメテウス解剖学のイラストを使用し、臨床医学に必須の解剖学的知識を凝縮した1冊。各章末に画像の基礎知識と復習問題の項も設けられている。Thieme Illustrated ReviewsシリーズのAnatomy : An Essential Textbook 第2版を翻訳したものである。
シリーズ プロメテウス解剖学
原著 Anne M. Gilroy
監訳 中野 隆
発行 2019年04月判型:A4変頁:610
ISBN 978-4-260-03687-0
定価 9,350円 (本体8,500円+税)
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原書第2版の序(Anne M. Gilroy)/監訳者の序(中野 隆)

原書第2版の序

 初版の刊行から4年,私は本書に対する学生からの熱狂的な支持に安堵するとともに,励まされもした.初版において私たちは,全身の系統的な解説と部位ごとの解説を組み合わせた,前例のないユニークな構成を提示した.さらに,多様な解剖学の学習プログラムで学ぶ学生のために,このような解説を,要点をまとめた表,臨床医学の視点,Thieme社の素晴らしいイラストと統合し,初版を制作した.
 私の第2版への挑戦は,初版と同様に,謙虚な心構えで臨むと同時に,エキサイティングでもあった.私は,学生からのフィードバックに喜んで応えた.いくつかの章では,画像や臨床への応用を追加することによって,その内容をさらに充実させた.より内容を明確にするために,解説の修正や加筆,要約した表の追加を行ったところもある.私はまた,臨床的な画像の追加,最新の概念や臨床医学的視点の導入によって,初版よりもさらに革新的な解剖学書に仕上げたいと考えた.初版においては,編集チームの細心の努力にも関わらず誤りと脱落があったため,それらに対処することも重要な課題であった.第2版が解剖学教育者の必須と考える正確かつ最新の書になることは,私の唯一の望みである.医学生の立場から見れば,第2版の構成および表現は,近年の学習形態に適した親しみやすいものであろう.このような革新的な力作である第2版が,解剖学の複雑かつ膨大な学習量と向き合う医学生にとって,有用なガイドになることを願っている.
 この新しいテキストは,多くの追加はあるが,初版の構成を踏襲している.第I部では,解剖学の基本概念と系統について解説している.第II部以降は,部位ごとに概要の解説から始まり,器官と機能解剖に焦点を当てた章が続く.読者は,第I部において,特に血管系と神経系に関して詳細な説明が加えられたことに気づくであろう.本書の後半部分においては,多くの解剖学カリキュラムに合わせて,いくつかの細かい再編成を行った(例えば咽頭は,頸部の章から頭部の章に移動した).全体を通じて,25の表が追加されて合計で120となり,図版も650となった.
 第2版において最も注目すべき変更点の1つは,臨床医学的視点の導入である.今回,175のコラム(「臨床医学の視点」,「発生学の観点」)の多くは,新たに病的あるいは正常の画像や図と組み合わせた.
 第2版における最大の変更点は,放射線画像が新たに加わったことである.私たちは,診断から治療に至る医療の全ての局面において,放射線医学が重要な役割を果たしていることを認識している.画像から得られる情報を有効に活用できない医師は,今日の臨床現場においては深刻な不利益を被る.
 教育者として臨床画像を教えることができる解剖学者は,数少ないかもしれない.しかし,正常構造の画像に関する教育は,解剖学者の責務である.そのため,第2版においては,適切な箇所にX線写真を追加した.また,「臨床画像の基礎」という新しいセクションを設けた.このセクションでは,それぞれに特有な解剖学的構造を示す部位において,どのような画像診断が有用であるかを考察し,重要な構造および周辺構造との位置関係を示す画像を例示している.これらは,放射線画像の検査と解釈において,有用な情報になる.
 1年間にわたって,多くの人が熱心にこの原稿に手を加えてくれた.私は,Thieme社のチーム全体の援助と経験,とくにこのプロジェクトにおいて重要な役割を果たした企画編集者Julie Montalbanoに対して,心からの感謝の意を表したい.彼女の粘り強くチームをまとめる能力によって,私は幾度か救われる思いであった.また,彼女が私の新しいアイデアに率直に反応してくれたこと,彼女の励ましに勇気づけられたことに感謝したい.改訂版における膨大な追加,削除,修正のリストを解釈し,文章に表してくれたTorsten Scheihagen編集長にも感謝したい.最後に,制作責任者のBarbara Chernowと彼女の優秀なチームに感謝したい.今回の改訂が相当な量になることは私も認識しており,彼らの細心の注意を払う勤勉さと粘り強さに敬意を表したい.
 放射線科医であり医学教育者でもある私の同僚Dr. Joseph Makrisは,新しく設けた「臨床画像の基礎」の大部分を担当した.彼と一緒に第2版を制作できたことは,私にとって喜びであると同時に誇りでもあり,今後も彼とともに取り組んでいきたい.
 私は,初版と同様,Atlas of Anatomy の最新版(第3版:Gilroy AM, MacPherson B, 2016)(日本語版:プロメテウス解剖学 コア アトラス 第3版,2019)から多くの図を引用した.コア アトラスの共著者Dr. Brian MacPhersonには,特に感謝したい.「第VIII部 頭頸部」において追加した解説と画像の多くは,コア アトラスに著されている彼の優れた努力による.Thieme社のプロメテウス解剖学全3巻は,コア アトラスと同様に,本書にとって不可欠な情報源であった.私は,著者のMichael Schünke, Erik Schulte, Udo SchumacherおよびイラストレーターのMarkus Voll, Karl Weskerに深く感謝している.私は,教育者および著作者として,彼らの革新的な視点と優れた才能によって勇気づけられ,彼らから大きな影響を受けた.最後に,改訂に際してフィードバックを提供してくれた同僚や学生の皆さんに感謝したい.この改訂版が,本書を手にした人の期待に応え,そして期待を超えるものであることが,私のささやかな希望である.

 Anne M. Gilroy
 Worcester, Massachusetts


監訳者の序

 「医学が進歩しても解剖学の重要性は変わらない」―医学教育者が良く口にする言葉である.卒後にどの診療科に進むにせよ,医学の根幹をなす解剖学の重要性は言うまでもない.一方で解剖学は,医学を学ぶ者が最初に遭遇する‘難関’であろう.解剖学書を開けば見たこともない漢字が並び,講義では聴き慣れない専門用語が飛び交い,それらの暗記に陥りやすい.しかし,「知識は実際に使わなければ身に付かない」と言われる.例えば,数学の学習過程において,公式は覚える.その公式を用いて応用問題を解く.同様に,‘公式’に相当する解剖学の知識を使って,‘応用問題’である臨床医学,すなわち画像診断や病態,症候の理解に結び付ける思考過程が重要である.とくに医学の進歩に伴って学ぶべき情報量が爆発的に増大しているにも関わらず,臨床実習を充実させるために講義時間は削減される今日,解剖学教育においても応用力や問題解決能力の必要性は益々高まっている.すなわち解剖学教育は,医学の進歩に伴って改革しなければならない.
 本書『プロメテウス解剖学 エッセンシャルテキスト』は,エッセンシャルの名の通り臨床医学の理解に必須の解剖学的知識に的を絞り,かつ,解剖学の範疇に留まることなく旧来の-ology(学問)の枠を越えて,人体の構造を統合的に解き明かしている.ドイツのイラストレーターの芸術的なセンスとコンピューター技術の粋を結集した図譜は,気品すら感じさせる秀作であり,読者を‘精緻な人体の世界’へと誘う.特筆に値するのは,「臨床画像の基礎」においてX線,CT,MRI,超音波の画像が呈示され,解剖図譜との対比ができることである.また,解剖学の知識を臨床医学の理解に応用する具体例として,「臨床医学の視点」というコラムが随所に設けられている.先天性疾患の病態の理解にも有用な,人体発生学の知識を含めたコラム「発生学の観点」も設けられている.換言すれば,本書は美麗なアトラスと精選されたテキストを絶妙のバランスで組み合わせた,新時代の解剖学書である.さらに章末の「復習問題」は,USMLE(United States Medical Licensing Examination:米国の医師免許試験)に準拠したものであり,解剖学のグローバル・スタンダードを示している.臨床医学を学ぶ高学年次生も,ぜひ本書を手元に置いていただきたい.
 本書の発刊にあたっては,私が全体の表現法の統一を中心に,監訳を担当した.翻訳は,実力と実績を兼ね備えた著名な先生方にお願いした.用語については,日本解剖学会編『解剖学用語 改訂13版』に準拠したが,必要に応じて臨床用語も併記している.
 「学無止境」―学問には終止も境界も無い.これは,私の座右の銘であると同時に,医学教育者としての基本方針でもある.本書『プロメテウス解剖学 エッセンシャルテキスト』は,まさしく「学無止境」の精神にかなった解剖学書である.医学生だけではなく,看護,理学療法,作業療法,臨床検査,東洋医学などコメディカル領域を含めた多くの学生に広く活用していただきたい.

 2019年2月
 愛知医科大学医学部解剖学講座教授 中野 隆

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第I部 解剖学的な系統と用語についての序論
 1 解剖学的な系統と用語についての序論
  臨床画像の基礎についての序論
  序論:復習問題

第II部 背部
 2 背部
  脊柱の臨床画像の基礎
  背部:復習問題

第III部 胸部
 3 胸部
 4 胸壁
 5 縦隔
 6 肺腔
  胸部の臨床画像の基礎
  胸部:復習問題

第IV部 腹部
 7 腹部と鼡径部
 8 腹膜腔および腹部の脈管と神経
 9 腹部内臓
  腹部の臨床画像の基礎
  腹部:復習問題

第V部 骨盤部と会陰
 10 骨盤部と会陰
 11 骨盤内臓
 12 会陰
  骨盤部と会陰の臨床画像の基礎
  骨盤部と会陰:復習問題

第VI部 上肢
 13 上肢
 14 上肢の機能解剖
  上肢の臨床画像の基礎
  上肢:復習問題

第VII部 下肢
 15 下肢
 16 下肢の機能解剖
  下肢の臨床画像の基礎
  下肢:復習問題

第VIII部 頭頸部
 17 頭部と頸部
 18 髄膜,脳,脳神経
 19 頭部
 20 眼と耳
 21 頸部
  頭頸部の臨床画像の基礎
  頭頸部:復習問題

和文索引
英文索引

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学生だけでなく臨床医にも大いに貢献する新しい解剖学書
書評者: 光嶋 勲 (広島大病院国際リンパ浮腫治療センター特任教授/東大名誉教授)
 評者は全身の失われた体表組織の再建を専門としており,最近はリンパ系機能の外科的再建術をはじめ多くの再建術を世界に発信してきた。このような再建外科に必須の手技と知識は,超微小外科手技,つまり手術用顕微鏡下の0.3mm~1mmまでの超微小血管・リンパ管や微小神経線維の吻合術と全身の微細血管・リンパ管・神経などの分布や変異に関する微小解剖知識である。新しい術式の開発にはまだ未知の領域の解剖知識が必須であり,過去40年間常に解剖学所見を眺め,かつ臨床解剖学会を通じて解剖学者と頻繁に交流し続けている。そういった経過で,これまでいくつかの解剖学研究会で,本書の監訳者である中野隆先生から多くを学ばせていただいた。その臨床解剖学的知識のレベルの高さや学生に対する熱血指導など,中野先生は多くの臨床家からも解剖学者として常々尊敬され続けておられる。

 中野先生は今回労作である『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』を刊行された。評者はこれまで多くの内外の解剖学書を開き,多くを学んできたが,久々に素晴らしい解剖学書が完成した。本書は名前の通り臨床医学の理解に必須の解剖学的知識に的を絞り,かつ解剖学の範疇にとどまることなく人体の構造を統合的に解き明かしている。ドイツのイラストレータの芸術的なセンスとコンピュータ技術の最先端技術を結集した図譜は,本物以上の緻密さと気品を感じさせる秀作であり,われわれを精緻で芸術的な人体解剖の世界へと誘ってくれる。

 本書において特に感心したところは,原書第2版から臨床医学的視点の導入が入っていることである。つまり,各章末の「臨床画像の基礎」においてX線,CT,MRI,超音波の画像が示されていることである。また「臨床医学の視点」としてコラムが随所に設けられている。さらに人体発生学の知識を含めたコラム「発生学の観点」も設けられている。章末の復習問題は臨床に直結した症例問題であり,臨床のいずれの分野においても極めて重要な問題である。問題の中にはかなりレベルが高いものもあるが,これを理解することで本邦の学生の臨床的な知識がかなり上がるであろう。これらの問題に挑戦することで,臨床医にとっても解剖学のグローバルスタンダードにとどまらず,臨床的に極めて重要な知識を学ぶことができる。監訳者注として中野先生の独自の注釈が入っているところも先生の臨床への見識の高さに感心するところである。本書の記載を精読すると学生のみでなく臨床医家に対しても本書を学ばせたいという中野隆教授の医学教育者として熱い熱意が感じられてくる。本書が多くの医学を志す学生のみならず臨床医家にも大きな貢献をなすであろうことを確信している。

 国際超微小外科講習会招聘講演(中国大連)帰路にて。2019年5月5日。
革命的に進化した解剖学教育の書
書評者: 祖父江 元 (学校法人愛知医科大学理事長)
 解剖学は医学生が医学に接する最初の関門であり,医学に対する期待を実感する場でもあります。しかし,同時に膨大な専門用語に最初に接する場でもあり,暗記に陥りやすい場でもあります。場合によると無味乾燥に陥ってしまう“難関”でもあります。私自身の経験でも骨の突起の一つひとつをスケッチしてラテン語を付すという延々と続く作業にうんざりしてしまったことがあります。このたび発刊された『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』は,まさにこの解剖学の難関を突破する書であると思います。

 監訳者の中野隆先生は,おそらく解剖学の教育にかけては,わが国の第一人者であると思います。

 毎年,解剖実習に来た医学生に,肉眼解剖の重要な発見やポイントを指摘し,それを学生自ら研究して,日本解剖学会などで学生自身が発表し,さらに論文にするという教育を,もう10年以上も続けて来られています。学生参加型の研究を実習に取り入れられてきた,わが国のパイオニアであり,これに参加した学生も大変啓発されていることを感じています。

 また中野先生は,解剖学は応用できてこそ価値があるということを常に言われています。臨床の現場に進んで誰もが経験しますが,解剖学が本当の価値を発揮するのは,さまざまな神経症状を示す患者さんを前にして病巣診断を迫られたときであり,腫瘍の切除の範囲やアプローチを考える時であり,機能再建の術式を考える時であり,麻痺のある患者さんのリハビリテーションの方法を考える時です。中野先生は一貫してこのような臨床現場での解剖学の重要性にこだわっておられます。

 今回の『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』は,この考え方をまさに具体化している解剖書であると思います。さらに,中野先生を中心に,特に解剖学の教育を熱心に進めておられるわが国のエキスパートが結集して,本書の訳出に当たっている点も本書のこの点の価値を高めていると思います。

 本書をあらためて見てみますと,この臨床医学の視点と教育への熱意が全体にみなぎっていることがわかります。まずその組み立てが,序論の後,背部,胸部,腹部などそれぞれの部位ごとに血管・神経・筋肉・骨・臓器の記述に始まり,次にそれぞれの相互関係・神経支配・機能的関係,さらにはその関係を示す的確な図が取り入れられており,加えて,放射線画像が挿入されています。また,175項目にも及ぶコラム「臨床医学の視点」が加えられていて,全体を読み進めれば,形態のみならず機能や臨床のヒントを含めた全体像が自然にイメージできるように組み立てられています。また,美しい解剖図がふんだんに使われていて,これらの理解を進める上で素晴らしいものになっています。さらに,各項の末尾に復習問題とその解説が付けられていて,理解度の自己診断ができる形になっています。

 まさに解剖学の教育の書であり,われわれが学生時代に使用した解剖学の教科書とは比べものにならないもので,まったく革命的に進化したものになっていると感じます。

 私は,この『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』を医学生だけでなく,医学・医療にかかわる全ての人にぜひ活用していただきたいと思い推薦します。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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