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プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 第3版

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圧倒的に美麗なイラストと豊かな解説で絶大な支持を得ているプロメテウス解剖学アトラスの最新版。内臓に特化したこの巻は、生理学、病態生理を学ぶ上で必須の解剖学的知識が有機的な構成でまとめられている。改版を重ねて、練り上げられた構成は、学習者の視点に立ち、複雑な内容の理解を容易にしている。改めてプロメテウスシリーズがなぜ医学生・医療系学生に必携なのかがはっきりと理解できる改訂版。
*「プロメテウス/PROMETHEUS/プロメテウス解剖学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ プロメテウス解剖学
監訳 坂井 建雄 / 大谷 修
発行 2020年02月判型:A4変頁:498
ISBN 978-4-260-03927-7
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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第3版 訳者序原書第4版 序―プロメテウスで新たな学習環境を

第3版 訳者序

 本書は『プロメテウス解剖学アトラス』第3版(原書では第4版)の第2巻にあたる.原書の初版は,ドイツ語原書として2004年から2006年にかけて全3巻として出版され,圧倒的な実在感と清潔感を合わせ持つ解剖図によって,世界中に大きな衝撃を与えた.日本語版は2007年から2009年にかけて出版され,わが国の読者にも広く迎えられた.

 すぐれた解剖図は解剖学書の生命線であり,まさに解剖図の革新が新しい解剖学書を作り出してきたといえる.近代解剖学の出発点と目されるヴェサリウスの『ファブリカ』は,精緻で芸術的な木版画により生命を与えられ,17世紀から18世紀にかけての銅版画による精細な表現は,ビドローやアルビヌスによる傑出した解剖図譜を生み出してきた.19世紀の木口木版画によりもたらされた解剖図と本文を一体化した編集は,解剖学書に新たな生命を吹き込み,20世紀の写真製版の技術は,解剖図の新たな表現に無限ともいえる可能性を生み出してきた.『プロメテウス解剖学アトラス』の解剖図は,人間の手で描かれたものでありながら,人工のわざとらしさを感じさせない.まさに人智を尽くして自然を再現した21世紀という時代が生み出した解剖図の最高傑作である.

 原書の第4版は2014年から2015年にかけて出版された.第2版では第2巻と第3巻の間で大幅な内容の組み替えが行われ,頸部の解剖が第2巻から第3巻に移された.また冒頭に「器官系の構造と発生の概観」が加えられ,末尾に「臓器の脈管・神経のまとめ」のほかに「臓器の要約」を追加するなど,内容の充実が図られた.今回の第4版では,内容を洗練させるとともに,血液について3項目,傍神経節について1項目を追加するなど,さらなる内容の充実が図られている.これらの改訂により,医学生に必要な事項を読者にわかりやすい形で提供するという『プロメテウス解剖学アトラス』のコンセプトはさらに強化された.見開き構成のなかで視認性に優れた解剖図と文字情報を伝えるテキストをバランスよく有機的に配置すること,系統解剖学や臨床解剖学といった伝統的な枠組みに依拠せずに学習内容の重要度に応じて内容を選択したことなど,初版で実現された解剖学学習書の新しいスタイルを,よりよく生かすための改訂がなされている.

 本書「胸部/腹部・骨盤部」の翻訳にあたっては,初版ではドイツ語版のほかに英語版を参照することができた.これは翻訳を効率的に行うにあたって有利な事情であった.ドイツ語版と英語版の食い違いも少なからずあり,ドイツ系の解剖学と英語系の解剖学が異なる伝統を有することも,改めて知らされることとなった.前回の第2版からは英語版が刊行されていないために,もっぱらドイツ語版に依拠している.翻訳にあたっては,前版と共通する頁についての変更の有無の点検ならびに増頁部分の仮の翻訳を編集部が担当して原稿を作成し,それをもとに各訳者が最終的な原稿に仕上げるという段取りで,最終的な調整を監訳者が行った.訳語については,原則として日本解剖学会監修『解剖学用語 改訂第13版』に準じるとともに,旧版との整合性を可能な限り重視した.日本語訳にあたっては瑕疵のないように最善の努力をしたつもりであるが,至らぬところは監訳者の責である.

 訳者を代表して 坂井建雄,大谷 修
 2019年12月1日


原書第4版 序―プロメテウスで新たな学習環境を

 学術書も第4版となれば新たな序文は不要ではないか.それともエリッヒ・ケストナーの言葉どおり「序文のない書物はない」と考えるべきだろうか.本書で扱う肉眼解剖学は,一般的に「不変の」分野であるといわれている.にもかかわらず,数年しかたっていないいま,大きく改訂する必要があるだろうか.

 確かに肉眼解剖学そのものは大きく変遷することはない.しかし,その教授法は確実に変わり続けている.現在の解剖学の教科書は,モデルとなる医学の教育課程にも,また従来のカリキュラムにも,うまく適応しなければならない.基礎となる解剖学の知識を確かに教えながら,解剖学に関連する日進月歩の臨床的に重要な側面も教えなければならない.これがまさにプロメテウスの目指すところである.

 医学および歯学の学生諸君が習得しなければならない情報量は,昔もいまも解剖学が最も多い.そのため不幸にも,解剖学は「詰め込み学」と誤解されている.これはまったくの間違いで,解剖学こそ精巧な授業法によって体系的な基礎を構築して学を確実に理解し,解剖学的な知識を臨床においても「役立て続ける」必要がある.そして,まさにこの解剖学固有の学習環境を作り上げることが,プロメテウスのもう1つの目標である.

 忘れてはならないのは,解剖学書,特に学習アトラスは,長年にわたって手元にあって信頼される手引書であり続け,いつでも参照し読み直されるものでなければならない.これはまさに肉眼解剖学に当てはまることで,そうそうに「古くなる」ことはないのである.解剖学書こそ,「手に入れたら生涯もの」と的確にいえるのである.そしてこれがまさにプロメテウスの第3の目標である.

 ここに掲げた3つの目標,すなわち変貌する学習方法への適応,解剖学固有の学習環境の創造,ならびに医療従事者がそのキャリアにわたり使用できる「不朽の」教科書を作成すること,これに向かって,著者,イラストレーター,そして出版社は,初版の刊行以来10年以上もの間,新たな挑戦を続けてきた.

 プロメテウスについて具体的にいうと,新版で誤記を修正するだけではなく,改訂の意義はもっと広い.例えば学習項目に「間違いがない」場合でも,教授法を改善できないか常に検討したり,各章の内容をもっとうまく関連付けたり,新たな学習項目を導入したり,全体の理解をより深めるためにすでにある内容を基礎から改訂したりしている.本書は前版のすべての内容を書き直したものではない.しかし全体を検討し直した.例えば「胸部/腹部・骨盤部」の場合,「血液」について3項目を,傍神経節について1項目を新たに加えた.

 すでに第4版となる「胸部/腹部・骨盤部」は,まったく新しい1冊の書籍と考えることもできる.そしてこれが改めて独自の序文を記す所以であり,最後にはなったが,この場を借りて質問,要望,称賛そして批判をくださった多数の読者の皆さんに心から感謝したいと思う.

 最後に,もう一度エリッヒ・ケストナーの言葉を引用する.実はケストナーの「序文のない書物はない」には続きがあり,「書物がなければ序文はない」と述べたのである.この言葉に従って,この序文を記した.新たな版,新たなプロメテウスである.

 よい学習をされることを心から願う.

 Michael Schünke, Erik Schulte, Udo Schumacher, Markus Voll, Karl Wesker
 Kiel, Mainz, Hamburg, München, Berlin にて 2015年8月

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器官系の構造と発生の概観
 1 体腔の器官系と発生
 2 循環器系
 3 血液
 4 リンパ系
 5 呼吸器系
 6 消化器系
 7 泌尿器系
 8 生殖器系
 9 内分泌系
 10 自律神経系

胸部
 1 概観と横隔膜
 2 血管,リンパ管と神経の概観
 3 循環器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 4 呼吸器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 5 食道と胸腺とそれらの血管,リンパ管と神経
 6 局所解剖

腹部・骨盤部
 1 腹腔および骨盤腔の構造の概観
 2 血管,リンパ管と神経の概観
 3 消化器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 4 泌尿器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 5 生殖器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 6 局所解剖

臓器の脈管・神経のまとめ

臓器の要約

付録
文献
索引

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美しいこと,真実の表現
書評者: 樋田 一徳 (川崎医大主任教授・解剖学/金沢大客員教授・眼科学/阪大特任教授(客員教授)・超高圧電子顕微鏡センター)
 今世紀に入って間もなく,ドイツで美しい解剖学書が世に現れた。

 “PROMETEUS LernAtlas der Anatomie”。それから3年,早くも邦訳が出版される。書店に足繁く通う学生から早速,“ギリシャ時代から解剖学があったのですか?”と,驚きと共に問われたのを覚えている。“解剖学は医学の基本,医学の祖はヒポクラテス”と教えられている。新刊書に目ざとい若者をひきつけたのも宜なるかな,書名のインパクトは大きかったのだろう。本書命名の意図と意気込みを感じる。全3巻の大著は原著・邦訳ともに各巻それぞれ版を重ね,ここに原著第4版第2巻 ~Innere Organe~の邦訳,『プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 第3版』が出版された。

 大判であるが,厚みとのバランスは携行しやすく,このサイズと重さが実習台の傍らで安定性を与えて読みやすいことは,実習経験者の誰もが認めよう。本を開くと,しっかりとした紙質に印刷された図と説明文が適度にレイアウトされ,学識の体系化に美しさも感じる。最近では立体的情報に時間を加えた動画が臨床で主流になっているが,書物である限り平面であることはやむを得ない。加えて本書の扱う胸部・腹部・骨盤部は人体の容積の多くを占め,図も説明文も表現が難しい。しかし本書は,CT・MRI・PET・超音波などの画像診断に相当する単なる断面図のみならず,その断面から深く描画上で解剖し,立体感を美しく表現している。それにより,実質臓器や管腔臓器の内と外,臓器を覆う胸膜や腹膜,それらによって形成された胸腔・腹腔・骨盤腔や臓器の相互位置関係など,学生が特に理解に時間をかける部位,臨床現場や国家試験・共用試験で問われる重要な部位を丁寧に見事に図説している。医学生の意見を取り入れ執筆された原書の背景もここに現れている。

 本書は,日本解剖学会で教育と研究に長く指導的立場にあり高名な解剖学者,坂井建雄特任教授と大谷修名誉教授の監訳により,10名の現役解剖学者が翻訳を担っている。したがって邦訳の正確さはもちろん,わかりやすく美しい日本語表現で統一されていることも,原著者の意をくんだ訳者らの学生への愛情を感じ,人体解剖への読者の理解をさらに深めている。

 改元2年目の今年,新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっている。病態把握には画像所見が不可欠で,無症状でも胸部CTは異常所見を認めることがあり,8割に両側陰影,半数以上は肺野末梢まで分布するという。本書のp.138(胸部断面図),p.162(CT画像),pp.154-5(組織構造),pp.158-9(力学機能)を併せて読めば,急速に肺野末梢まで侵襲する臨床病理像の医学的意味を深く理解でき,患者さんを救う確かな基盤となろう。

 美は真実を物語る。“真実の表現”は“美しいこと”に尽きることを本書によってあらためて実感した。プロメテウスはわれわれに知恵を授け,人体構造と生命の深い理解を求めている。基礎が臨床に直結する医学のあるべき姿を示された原著者と監訳者・訳者各位に,心から敬意と感謝を表したい。
進化しつづけるプロメテウス
書評者: 池上 浩司 (広島大教授・解剖学及び発生生物学)
 『プロメテウス解剖学アトラス』の『胸部/腹部・骨盤部』は初版が2008年,第2版が2015年の発行であり,初刊行から12年,第2版から5年の歳月を経ての改訂である。『解剖学総論/運動器系』『頭頸部/神経解剖』がそれぞれ2017年,2019年に第3版に改訂され,残るはこの1冊のみと待ちに待った待望の改訂版である。他の巻と合わせて3巻で1500ページ,他の解剖学アトラスの2倍以上と,圧倒的情報量を誇る邦訳プロメテウスの第3版(原書第4版)がここにようやく完成した。

 本書の特徴の第一は初版から続く圧倒的美しさのイラストであろう。人体はある種の芸術作品であると感じることが多いが,本書の図はそれをさらに強く感じさせてくれる。爽やかさすら感じさせるイラストは,勉強というよりも写真集を眺めるように学ぶことを可能にしてくれる。他のアトラスの2倍を超えるページ数故に可能となる,詳細な,それでいて簡潔な説明の数々はもはや「アトラスを超えた読み物」とも言えよう。とりわけ心電図の解剖生理学的解説,疾患例のみならず診察や治療術の例示,各種読影法などの臨床医学的内容は,解剖学を学ぶ低学年学生にとっては学びの目的を明確にし,臨床を学ぶ高学年学生や研修医にとっては臨床で遭遇するさまざまな問題の本質的理解の助けになるはずである。

 これらに加えて本書では発生学の記載も豊富であり,その充実ぶりは特に完成した構造だけでは理解しづらい心臓のねじれ,消化管の配置や腹膜腔の複雑さ,女性と男性で異なる骨盤腔内外の構造などをその形成過程と併せて学べる「四次元アトラス」である。また初版から続いている本書の独自性の一つとして,腹部と骨盤部を分けずに一連の領域として扱っている点が非常に興味深い。これは解剖を行ったことがある者なら誰しもわかるであろうが,腹腔と骨盤腔には構造的な境界は存在せず,そこに収まる臓器は一続きであるように,非常に「make sense!」な分け方と言える。プロメテウスの著者らの哲学を感じる。

 さて第3版ならではの改訂について少し触れてみたい。冒頭の概観と発生学の章に血液の項が新たに加わった。これにより学習者が循環器系から呼吸器系までをシームレスに学べるようになった点は大きい。各臓器に目を向けると,骨盤底周囲のイラストが大幅に刷新されている。骨盤部の理解は学生にとって最も難しく,刷新および追加されたイラスト群はその難しい骨盤部の層構造を非常にわかりやすく見せてくれている。腹部においては腹大動脈から出る無対の三動脈の枝に関する大きなイラストが追加され,それぞれの血管のつながり(吻合)が一目でわかるようになった点が非常に大きい。

 細かい点について書評を書いてきたが,まとめると以下の一言に集約されるだろう。プロメテウスはさらに進化した! 初学者のみならず臨床現場で働く医師も,ぜひこの芸術的解剖書を手元に置き,空き時間などに眺めて人体の構造を脳裏に焼き付けていただきたい。

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