精神看護 第4版

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  • 精神看護を総合的に理解できる第3版の構成をふまえつつ、第4版では現在の精神看護の動向に対応すべく、あらたな項目を追加しました。
  • 第1章に近年ますます重要視されているメンタルヘルスの視点を盛り込み、第2章には精神保健医療福祉の分野に広く浸透しつつある新しい概念、ストレングスモデルやリカバリーモデルなどを追加しました。
  • 第5章では、今後の精神医療の主流になるであろう地域医療や地域包括ケア、精神医療においてますます重要性が高まるチーム医療・リエゾン医療などの内容を拡充しました。
  • 准看護師試験で出題頻度の高い、精神保健福祉法などの関係法規の解説、入院形態や患者処遇などの解説をさらに強化しました。
シリーズ 新看護学 15
執筆 天賀谷 隆 / 塚田 有美 / 林 直樹 / 吉川 隆博
発行 2019年01月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-03575-0
定価 2,200円 (本体2,000円+税)

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  • 序文
  • 目次

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はしがき

学習にあたって
 私たちの心は身体とともに生涯を通して発達していくが,心の発達は身体以上に経験や環境からの影響を受け,1人ひとり大きく異なっている。そのあり方は外からは見えず,自分自身ですらつかみきれないこともある。しかし,健康と不健康が連続的なものであることは身体と同様であり,心の健康問題は決して特別なことではない。
 現在,わが国においては,精神障害者が地域で生活していくための総合的なしくみづくりが進められている。2006(平成18)年には障害者自立支援法が施行され,それまで分かれていた身体障害・知的障害・精神障害の福祉施策が統合された。2013(平成25)年には,障害者自立支援法が障害者総合支援法へ改正され,また精神保健福祉法の改正もなされ,いわゆる社会的入院の状態にある人が地域で安心して生活していけるよう,さまざまな取り組みがなされている。2017(平成29)年度からは,厚生労働省により精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた支援事業もはじまり,精神障害者の地域ケアの将来像が明らかになった。
 精神看護とは,心の健康問題をかかえている人の発達と自立を支えるものである。かつては病院を中心に提供されてきたが,精神医療の場が病院から地域へと広がってきていることに伴い,看護の場が拡大し,その役割も多様化・複雑化している。看護に対する国民のニーズも高まり,専門性の高い看護教育が求められている。
 近年,医学や医療技術の進歩によって,心の疾患の原因や治療法が発見されつつある。しかしその一方で,時代や社会の変化に伴い,新たな心の健康問題も生じている。心の健康問題とその看護についての理解は,精神科に限らず,あらゆる看護の場面で必要とされているのである。

改訂の趣旨
 本書「精神看護」は,2000(平成12)年に初版が,2006(平成18)年には第2版,2014(平成26)年には第3版が刊行され,その後4年が経過した。その間に,精神看護を取り巻く環境は大きく変化している。最新の状況を反映させ,新たな看護の役割に対応するために今回の改訂にいたった。
 第1章では,心の健康,心のしくみ,心の発達と課題,心の健康と環境とのかかわりについて学ぶ。今回の改訂では,世界的なメンタルヘルスへの関心の高まり,世界・日本のメンタルヘルス施策を紹介する項目を設けた。
 第2章では,精神看護とはなにか,精神医療・精神看護の動向,患者の権利擁護,援助関係に基づく治療的かかわりといった精神看護の機能と役割について学習する。
 第3章では,多彩な精神症状や精神疾患について理解する。
 第4章では,さまざまな治療法を概説する。現代精神医療の全容を把握してほしい。
 第5章では,精神看護の実際について,症状・疾患・治療・リハビリテーション・看護の場など,さまざまな側面から総合的に学習する。行動制限と人権の確保はとくに重要であるため,何度も読み返し,十分に理解してほしい。今回の改訂では,病期ごとの患者像と入院から退院までの援助の実際が学生にもイメージできるよう,経過別の看護の実際の項目を設けた。
 第6章では,精神保健医療福祉の歴史を学ぶ。その歴史的変遷から,患者の人権をまもることの重要性を理解してほしい。また,わが国において1994(平成6)年以降,精神障害者が障害者福祉サービスの対象となってから,現在までの精神保健医療福祉制度の改革の流れも本章で概説した。
 第7章では,精神保健福祉法を中心に,発達障害者支援法,障害者総合支援法など,精神保健医療福祉に関連する法律について学習する。
 近年,精神障害者の地域生活の支援が重視されるなか,精神看護の目的は,「疾患の治癒」から「患者の回復」に移っている。回復とは,精神疾患がありながらも,その人が地域で自分らしい生活を送ることであり,また人生を取り戻すことである。患者の回復を支えることが,精神看護の役割としてより重要になってきており,今回の改訂で各章にこの視点を盛り込んだ。
 なお,編集にあたって,文中での表現の煩雑さを避けるため,特定の場合を除いて看護師・准看護師に共通する事項は「看護師」と表現し,准看護師のみをさす場合には「准看護師」として示した。また保健師・助産師・看護師・准看護師など看護の有資格者をさす場合には看護者あるいは看護職としたので,あらかじめご了解いただきたい。
 学習した知識を臨床の場に適用するのはむずかしいことであるが,臨床で困難に直面したときには,もう一度本書を開き,力を高めてほしい。本書は,そのような自己学習にも十分対応できるようにつくられている。
 今後とも本書が准看護師教育過程の学習に役だつテキストとなるように努めていきたい。読者の皆様に,ご意見・ご批判をいただければ幸いである。

 2018年11月
 著者ら

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第1章 心の健康(天賀谷隆)
 A.現代社会とメンタルヘルス
  1.メンタルヘルスへの関心の高まり
  2.世界的な取り組み
  3.日本における取り組み
 B.人間の心とはなにか
  1.心と意識
  2.心の構造
  3.適応と不適応
  4.防衛機制
  5.ストレスと危機
 C.発達と心の課題
  1.発達とは
  2.精神の発達
  3.発達の条件
  4.発達段階と発達課題
  5.各発達段階における発達の特徴と課題
 D.心の健康と環境
  1.心の健康と家族
  2.心の健康と学校
  3.心の健康と職場
  4.心の健康と地域社会
  5.心の健康と災害

第2章 精神看護の特質(天賀谷隆)
 A.精神看護とはなにか
  1.精神看護とは
  2.看護師に求められるもの
 B.精神看護の動向
  1.精神看護の対象者
  2.精神医療・看護の動向
 C.精神看護の機能と役割
  1.安心できる環境の提供
  2.観察
  3.信頼関係の構築
  4.患者の権利の擁護
  5.援助関係の構築と治療的かかわり
  6.精神的安定をはかる援助
  7.セルフケアの拡大をはかる援助
  8.患者の回復をたすける
  9.地域生活に向けた支援
  10.家族への援助

第3章 精神症状と精神障害の理解(林 直樹)
 A.おもな精神症状と状態像
  1.意識の障害
  2.知覚の障害
  3.思考の障害
  4.記憶の障害
  5.知能の障害
  6.感情(気分)の障害
  7.意欲・行動の障害
  8.自我意識・現実感覚の障害
  9.精神状態像・症状群
  10.神経心理学的症状(失語・失行・失認)
 B.精神科医療における診察と検査
  1.一般身体医学的診察と検査
  2.精神科診断に用いられる検査
  3.心理テスト
 C.おもな精神障害とその分類
  1.統合失調症,統合失調型障害,妄想性障害,その他の精神病性障害
  2.気分(感情)障害(うつ病および双極性障害〔躁うつ病〕)
  3.器質性精神障害(症状性を含む器質性精神障害)
  4.精神作用物質使用による精神および行動の障害
  5.神経症性障害,ストレス関連障害
  6.摂食障害,非器質性の睡眠障害と性機能不全
  7.パーソナリティおよび行動の障害
  8.知的障害(精神遅滞)
  9.小児期・青年期の発達障害と行動および情緒の障害
     (心理的発達の障害,小児期および青年期に発症する
     行動および情緒の障害)
  10.心身症

第4章 精神障害のおもな治療法(林 直樹)
 A.治療の場
  1.外来治療・訪問看護
  2.入院治療
  3.デイケア・ナイトケア
 B.身体療法
  1.薬物療法
  2.電気痙攣療法(ECT)
  3.光(刺激)療法
 C.精神療法
  1.精神療法の形態
  2.さまざまな種類の精神療法
  3.森田療法,内観療法
  4.芸術療法
  5.遊戯療法
  6.自律訓練法
  7.催眠療法
 D.精神科リハビリテーション
  1.精神科作業療法
  2.レクリエーション療法
  3.職業リハビリテーション

第5章 精神看護の実際(塚田有美)
 A.対象である患者の理解
  1.患者の理解とその方法
  2.アセスメントの実際
 B.精神看護における看護過程と記録
  1.精神看護における看護過程
  2.精神看護における記録
 C.患者の権利の擁護と行動制限の実際
  1.患者の権利の擁護の実際
  2.患者の行動制限の実際
 D.精神症状・問題となる行動とその看護
  1.不安
  2.興奮状態
  3.攻撃的言動・暴力
  4.幻覚・妄想
  5.抑うつ状態
  6.躁状態
  7.無為・自閉
  8.拒絶
  9.自傷
  10.痙攣発作
  11.パーソナリティ障害
  12.依存(アルコール)
  13.老年期精神障害
  14.発達障害および二次障害
 E.治療時の看護
  1.薬物療法時の看護
  2.精神療法時の看護
 F.精神科リハビリテーションと看護
  1.障害とはなにか
  2.リハビリテーションとはなにか
  3.精神科リハビリテーションの目的
  4.精神科リハビリテーション看護
 G.入院中の患者の看護
  1.精神科病棟特有の看護
  2.入院中のリスクマネジメント
  3.経過に応じた看護の実際
  4.退院調整
 H.精神医療におけるチーム医療・リエゾン精神看護
  1.精神科入院治療におけるチーム医療
  2.リエゾン精神看護
 I.地域で生活する患者の看護
  1.外来通院患者の看護
  2.通所型サービス利用者の看護
  3.入所型サービス利用者の看護
  4.相談支援
  5.精神科訪問看護
  6.包括型地域生活支援(ACT)
  7.アウトリーチ
  8.その他(セルフヘルプグループ,クラブハウス)

第6章 精神保健医療福祉の歴史(吉川隆博)
 A.世界の精神保健医療福祉の歴史
  1.古代
  2.中世・近世
  3.近代・現代
 B.わが国の精神保健医療福祉の歴史
  1.「精神衛生法」制定による私宅監置の廃止まで
  2.「精神保健法」における「社会復帰の促進」まで
  3.「地域生活中心」を目ざす精神保健医療福祉制度の改革まで

第7章 精神保健医療福祉と法律(吉川隆博)
 A.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)
  1.精神保健福祉法への歩み
  2.精神保健福祉法の概要
 B.心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び
    観察等に関する法律(心神喪失者等医療観察法)
 C.発達障害者支援法
 D.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に
    支援するための法律(障害者総合支援法)
  1.障害者総合支援法への歩み
  2.障害者総合支援法の概要
 E.障害者基本法
 F.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)
 G.障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する
    支援等に関する法律(障害者虐待防止法)
 H.そのほかの関係法規

さくいん

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