勧められた入院で入院開始、すなわち拘束開始のXデーから五日前。灰色の空模様にいざなわれて気分が下がっていた私は、その日深めのアームカットをして、総合病院の救急外来に運ばれた。処置を受けた後、普段の精神科の主治医と話し合い、休息を取って調子を取り戻すことやパートナーのレスパイトが必要だということになり、主治医と共に入院を決めた。主治医が探してくれた病院は、先方の都合で入院まで五日かかることになったが、結局その五日間のうちに調子は良くなっていて、いつも通りアルバイトをして過ごした。Xデー。入院時の診察で、生き延びるために行っているアームカットを、医師は衝動性の高いパーソナリティの表れとして見出した。「拘束ね。まず衝動行為を抑えないと治療できないから。いい?」厳しい口調に気圧されて、先生に怒られた小学生のように縮こまって「はい」と小さく答えるしかなかった。私の状態への一方的な分析やそれに対する治療方針の説明は、有無を言わせない早いスピードのうちに終了し、何がなんだかよくわからなかった。拘束は本人の意思によらない強制入院の場合にしか行うことができない。少しだけ説明すると、精神科の入院には、患者本人の意思による普通の入院(任意入院)と、患者本人の意思によらない入院(強制入院)がある。そして強制入院にも大きく二種類がある。医療保護入院と措置入院だ。医療保護入院の対象は、「自傷他害のおそれはないが、任意入院を行う状態にない者(精神保健福祉14
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