1| 私は身体拘束を生き延びたのか?重苦しい梅雨の真っ只中だった。私は精神科に強制入院(医療保護入院)となり、入院期間の三週間目一杯、身体拘束を受けて過ごした。シャバに出てきた後、幾人かの友達に笑いながら話した。「精神科で拘束受けたんだけど。やばかったぁ」。ヘラヘラするしかなかった。なぜなら、あの時の圧倒的な絶望感や怒りや悲しみや孤独は、こうしてあらゆるネガティブな単語を並べてみてももどかしくなるほど言葉にできないものであり、言葉にできないのだから人に伝えようなんて考えにも無理があるからだ。「拘束ってただ動けないだけでしょ、それくらい大丈夫でしょ」という甘い感覚を無邪気に内に秘めている人の多さを、私は知っている。それはまず、入院期間中接する医療者のうちに目の当たりにできた。言葉を尽くしても伝わらないことを知りながら、今こうしてキーボードを叩いているのは、正直に言えば復讐心、柔らかく言えば悔しさからである。私を拘束した人たちは、今日も患者たちを拘束しながら、退勤時間になれば職場を出て家に帰り、一家団欒を楽しむのかもしれない。彼ら彼女らにとっ12
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