しれないし、「拘束によって衝動のコントロールが上手になった」と言うのかもしれないし、「薬剤調整がうまくいった」と言うのかもしれない。何もやらかさないのを見て「最近調子いいね」と言われるたび、世界とのあいだにあるガラスは厚くなる。今も私の内部にあるのはあの時の記憶である。生きるための手段は抑え込まれている。周りの人に何かを伝えることにも無力さを感じる。ふいに明日死ぬのかもしれないし、このまま年を重ねるのかもしれない。どちらにしろ、やっぱり私は何かが欠けている。この第1章は、身体拘束を経験した1ヶ月後に執筆し、『精神看護』2021年11月号に掲載したものが基になっている。『精神看護』掲載時は、タイトル「私は身体拘束を生き延びたのか?」、著者名「匿名(女性・看護大学在学中)」であった。書籍化にあたり加筆修正した。なお、次の第2章以降は、新しく執筆を開始した時点から過去を振り返る形で執筆している。 24
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