看護のためのポジティブ心理学_立読
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Positive Emotionポジティブ感情393ポジティブ感情の拡張─形成理論先に紹介したことを整理してモデルにまとめたのが,フレドリクソンによる「ポジティブ感情の拡張─形成理論」である(Fredrickson, 2001)。これは,ポジティブ感情が,思考や行動レパートリーの拡張というプロセスを引き起こし,それが,個人資源の持続的な形成を経て,さらに1段階上位にある,よりポジティブな感情をもたらしやすい状況を作り出していくという,らせん的な展開を模式化したものである(図2─1)。■第1段階:ポジティブ感情の経験過程を追って説明すると,第1段階はポジティブ感情の経験である。フレドリクソンの実験を見ると,ポジティブ感情の種類として,満足感やユーモアなどさまざまな種類を用いており,これらを一括してポジティブ感情としている*1。人間のらせん的変化と成長個人資源の継続的「形成」(build)思考─行動レパートリーの一時的「拡張」(broaden)ポジティブ感情の経験図2─1 ポジティブ感情の拡張─形成理論島井哲志(編).(2006).ポジティブ心理学─21世紀の心理学の可能性(88).京都:ナカニシヤ出版.*1:私たちが,これらのポジティブ感情を異なったものとして区別できることは,おそらくは,個々のポジティブ感情ごとに少しずつ異なった特徴があることを意味していると思われる。これを一括して「ポジティブ感情」とまとめることは,違いがないと言っているのではなく,ポジティブ感情に共通の特徴を取り上げていると考えるとよいだろう。

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