看護のためのポジティブ心理学_立読
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第2章 看護実践に活かす概念38幅が広がることがわかってきた。これは,ポジティブ感情の「青信号」機能とされる(Shiota, Yee, O’Neil, Danvers, 2017)。ポジティブ感情は,状況が順調であることを示し,その状態が維持される行動につながることが多い一方,ネガティブ感情のように何かに対応する必要がないので,そこでもたらされる思考や認知の自由度は大きい。■ポジティブ感情は対人的な適応を高めるポジティブ感情は笑顔として表出され,他者からも認識される。このことで,ポジティブ感情にある人では,良好な対人関係を築きやすい。ネガティブ感情も個人内のコーピングなどを介して適応を高めるが,ポジティブ感情が適応を高める効果をもつのは,対人的なプロセスによると考えられている。対人的な関係が築かれていれば,何か問題がある状況では,困っている人を援助したり,また,自分が援助されることを引き起こしたりする。また,問題がない状況でも,一緒に協力して何かをするとか,他者がうまくいっていることをともに喜ぶことになる。卒業アルバムにある個人写真の笑顔評価と,30年後の生活満足感や結婚の満足感との関係をみると,有意な正の相関があるという知見が報告されている。また,ポジティブさが寿命にも大きな影響をもっているという研究も報告されている(Hertenstein, 2014)。これらの結果の一部は,ポジティブな感情によって個人の抵抗力が高くなることや,ネガティブな状態から回復しやすいという,個人内プロセスを介した影響による可能性もある。一方,対人的プロセスを介した影響も大きいだろう。ポジティブな感情をもち,友人も多い人は,よい仕事に就き,よい家庭を築き,収入も多くなる。このような良好な条件は,健康な生活習慣や家庭生活につながり,長期的には寿命にも大きな影響を与えていくと考えられるのである。

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