看護のためのポジティブ心理学_立読
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Positive Emotionポジティブ感情37■ポジティブ感情が生じる場面と特徴一方,ポジティブ感情のほうは,おいしいパンケーキを口に入れたときのように,典型的には,そのままの状態が続いてほしいときに生じる。新しく行動を起こすわけではなく,今が続いてほしいという状態である。急いで行動を起こすわけではないのでインパクトもそれほど強くなくてもよい。その一方,日常生活の中でどんな感情を感じているのかを継続してモニターする方法でデータを集めてみると,私たちは,実際の経験としては,ネガティブな感情よりもポジティブな感情をより多く経験しているようである。フレドリクソンによれば,安定した状態では,ポジティブ対ネガティブの割合は,おおむね3対1程度になることが多いようである。もっとも,これには状況や個人差も少なくないだろう。平素から機嫌のよい人のほうがポジティブな感情を経験しやすいだろうが,だれでも,今よりもポジティブな感情を経験するように努めることはできるだろう(Fredrickson, 2009/2010)。しかし,いまは,ポジティブな感情の働きを考えていきたい。私たちが普段思っている以上に,ポジティブ感情を感じる経験をしていることを心にとめておく価値があるのは,ポジティブ感情には重要な働きがあるからである。2ポジティブ感情と心身の健康■ポジティブ感情の「青信号」機能ポジティブ感情に関して研究が多く蓄積されてきたのは,思考や認知への影響である。典型的には,ポジティブ感情を誘発した条件で,一定の認知や思考課題を課して,その成績を対照条件と比較するという研究である。まとめると,単にポジティブな感情がもたらされるだけでは,思い込みやステレオタイプ思考が強くなり,思考課題に対して単純な経験的戦略が活用されるが,適切な条件下では,広い範囲から柔軟に選択でき,思考の

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