看護のためのポジティブ心理学_立読
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第2章 看護実践に活かす概念46田,2017)。その振付は,車いすのお年寄りでも無理なくかつ楽しく行えるよう工夫されていて,みんなで体を動かすことが,ウェルビーイングとポジティブ感情の上昇につながっていると考えられる。現在,介護施設だけではなく,集合住宅の集会室でも地域住民を対象に行っているが,どこも笑い声に満ち溢れている。今後,コミュニティのイベントなどを通して,このようなポジティブ感情へ働きかけ,楽しいと感じ,かつ健康に有効であると思われる活動を行っていくことで,地域住民のポジティブ感情が上昇すれば,それによってその地域の健康寿命の増進も期待できる。3ケアを提供する人自身への活用■自身のポジティブ感情を高めることがよいケアにつながるポジティブ感情は前述(p.38, 40)のように利他性と関連がある。よって,患者のために何かをすることで,看護師のポジティブ感情は高まる。また,自身のポジティブ感情が高まれば,より他人にも目を向けて思いやりをもつことができるため(p.112),患者のための行動に限らず自身のポジティブ感情を高めることで,よいケアを提供することができるようになる。■ポジティブ感情を高める方法とセルフケアポジティブ感情を高める方法として,フレドリクソン(2010)は表2─1に挙げた方法などを提案している。筆者がこれらの方法を参考に,新人看護師の研修をしたところ,新人看護師のポジティブ感情が有意に上昇した(秋山,菅原,大森,岸野,筒井他,2018)。このことから,これらの方法は看護職などケアを提供する人のセルフケアにも有効であることがわかる。毎日忙しい中で,表に挙げた方法の実践は難しいと思われるかもしれないが,自分の「好きなこと」「楽しいこと」さらには,「よかったこと」「ありがたかったこと」を立ち止まって振り返る時間を,5分でもよいからつくって紙に書いておくとよい。「こんなこと無理なんじゃないか」「笑われ

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