医学書院の70年
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1963.03.16同年発行のYokochi(横地千仭)2nd editionには,同書の初版ドイツ語版で訳者を務めたErlangen大学のJ.W. Rohen教授が共著者として加わり,欧米のカリキュラムに合わせた大幅な改訂が行われた。 Igaku-Shoin Medical Publishers, Inc. New York(ISNY)は自社流通を目指して1977年10月に設立された。ISNYのインプリントで最初に刊行されたのはKaufmanによる世界最初のNMR(MRI)の本である。日本語訳も社から発行され,ドイツ語,イタリア語にも翻訳された。1982年発行のShinya(新谷弘実)はISNYインプリントの第二弾である。大腸内視鏡検査・治療で膨大な実績を持つ著者による実践書で,全米の臨床医から好評を博した。1983年発行のRohen/YokochiはISNY最大のヒット企画であるが,別項を立てたので,参照されたい。ISNYの活動を通して社のブランドが認知されるに伴い,米国人著者からも企画の話が舞い込むようになった。Austin 3rd editionはその一例で,それまで米国のCC omas社から出版されて好評を得ていた脊髄損傷に関する定本であった。また,すでに定評のあった領域(解剖,病理,消化器)では, KossやLewinら,定本となる出版物も発行し,さらに新規分野でも幅広く出版活動を展開した。神経症に対する森田療法で第11回国際出版文化賞大賞〔外務大臣賞〕(1988年)を受賞したFujita (藤田千尋)のような例外はあったものの,1985年以降の出版物は概ねISNYの企画で占められた。 しかし, ISNYの経営を支えるような大型企画が続かず,採算面では苦戦を強いられた。1997年1月31日,苦渋の決断ではあったが同業のWaverly社に在庫,出版権,売掛金などを譲渡し,ISNYの活動を停止した。その後もKudo(工藤進英),Takahashi(高橋正宜)3rd editionのように東京企画の英文版が数点発行されたが,それもWaverly社に販売を委託した。累計で英文出版物の発行点数は,東京企画が177点,ISNY企画が189点となっている。英語での情報発信,医学書院の国際化という点においては一時代を画した重要な活動であった。70 years of igaku-shoin074

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