医学書院の70年
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2003年当時,医学書院の事務所は,旧本社ビル・第2ビル・コスモス本郷ビルの3か所に分かれていたため,業務上の連絡や社員間のコミュニケーション,書類の受け渡しなど不便であった。また,築30年以上を経過した旧本社ビルの災害への安全性も懸念されていた。これらの問題解決のためさまざまな方法を検討したが,「本郷台の医学書院」というブランドイメージと社員の通勤の利便性を考慮して,本郷地区の土地に新ビルを建築することが最善の方法であるとの結論に達した。2003年6月ごろに,本郷1丁目に条件をほぼ充足する物件が見つかり,2004年1 月に購入契約を締結した。 契約直後から入居テナントとの退去交渉に当たり,全テナントの退去後,2005年6月にビルの解体工事を開始。途中で土地内に埋蔵物が発見されたため,東京都条例に基づく埋蔵文化財発掘調査が約1か月半にわたって実施され,多数の埋蔵物(主に,江戸~明治時代の陶磁器・瓦・金属製品・ガラス製品など)を出土した。これらの埋蔵物は文化財保護法の規定によりすべて東京都に帰属している。 新ビルの設計に当たっては委託した建築事務所との間で綿密な検討を重ね,外観・基礎・構造・設備などについて詳細設計案を決定,基本コンセプトを以下の4点とした。▶ 外観デザインは,医学専門出版社のイメージと本郷台という歴史ある土地に相応な重厚さを表現する。▶ 安心して働くことができるよう,地震力を減衰させ,建物内の家具什器の転倒を防いで人の安全を確保する免震構造(震度7の地震でも建物の構造体は損傷を受けない)とする。また,防災性能にも配慮し,主要構造部は鉄筋コンクリート,外装・内装とも不燃材を多く使用,3か所に避難階段を設け,避難用バルコニーを設置する。▶ 機能的で働きやすいオフィス空間を実現するためワンスパン空間のオフィスとする。パンチングパネル天井により均一な吹き出しの空調とし,また,天井には十分な照度分布をもつ照明を配置する。▶ 福利厚生スペースとして,最上階の9階にレクリエーションホールと社員ラウンジおよび屋外テラスを設け,屋上緑化の植栽を設置する。 以上を設計の柱に掲げ,2005年11月に着工,2007年3月30日に竣工・引き渡しを受けた。同年4月25日には工事関係者による竣工式を行い,また,同業他社や取引先などを招待して内覧会を実施した。その後4月下旬~5月上旬にかけてのゴールデンウイーク中に引っ越し作業を完了し,連休明けの5月7日から通常業務を開始した。春日通りから見た社屋New company premises asseen from Kasuga street.183

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