医学書院の70年
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1995年11月のWindows95の発売以降,インターネットは広く一般にも利用されるようになり,一部の先進的な企業ではウェブサイト(ホームページ)を開設するようになった。とはいえ,当時のインターネットへの接続は,通常の電話回線を利用したダイヤルアップが主流であり,通信速度は遅く,利用料は高価であった。そのため世界のインターネット人口は数千万人規模にとどまり,現在より2桁も少なかった。 Windows95発売のひと月ほど前の1995年10月,ソニー株式会社から,「近々So-netというプロバイダーを開始し,医療者向けサイトを設けるが,そこに医学書院のウェブサイトを開設しないか」との提案があった。当時,同業他社でウェブサイトを持つ会社はなく,社内には「出版社には不要」との意見も多かった。しかし,今後におけるPR活動と電子出版への展開を考えた場合,インターネットは必須のアイテムとの予感があり,社のサイトを開設することを決定した。 その時,すでに1996年の1月末であったが,デビューの場所を同年4月に行われる日本内科学会総会と定め,わずか2か月半の間に収録内容の収集から編集,データの作成までを行い,内科学会総会が開催される前日,無事に開設を果たした。総会当日,会場内のSo-netが設けたブースには,インターネットに興味をもつ先生方が押しかけ,社のサイトにも注目が集まった。インターネット時代の幕開けに間に合うデビューであった。 URLはhttp://www.so-net.or.jp/medipro/igakというもので,So-netが設けた「Medipro」(現,m3.com)の一角との位置づけであった。トップには「医学書院は専門出版社として最新の情報を研究者へ伝えることを使命としています」と社の姿勢を示す言葉が掲げられ,メニューには「医学界新聞」「出版情報」「Face 2 Face IGAKU-SHOIN」「治療薬マニュアル」「会社案内」などが並んでいた。開設後,半年ほどで月間1万ページビューという,当時としてはアクセス数の多さを誇る人気サイトとなった。 その後,当初の「予感」どおりインターネットは急激な拡張期を迎え,社のウェブサイトにも独立した位置づけが必要となった。そこで開設から1年4か月後の1997年8月には,自社のドメインhttp://www.igaku-shoin.co.jpを取得し,「Medipro」から独立して現在に至っている。左ページ上:トップ画面─最初にネット上に登場した記念すべき社の顔。人を配したのは医学が人をテーマとする学問であるため。Opposite page above: The original start-up screen of the Igaku-Shoin Website.左ページ下:社長の挨拶。英語の画面も用意されていた。Opposite page below: The message from the President on the Igaku-Shoin Website. An English page was also available. 159

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