中枢神経系1 低血糖を疑うサインを知らない2 ビタミン B 1 投与を忘れる3 低血糖の原因を検索・解決しない4 適切な経過観察をしない5 本人・家族・かかりつけ医に情報提供を行わないキーワード|低血糖,糖尿病,ビタミン B 1,インスリンボール遮断薬内服など,患者背景によっては自律悪手 1 典型的な低血糖の病歴は,動悸や倦怠神経症状が出ずに突然意識障害や麻痺症状などの神経症状をきたすことがあり,典型例とは異なることがあることを念頭に置い感,冷や汗,悪心,四肢の震えなどの自律て診療しましょう.神経症状に続いて意識障害,片麻痺,痙攣などの神経症状をきたします.目撃者や本人から糖尿病の持病や上記のような病歴を聴取することができれば低血糖の想起は容易ですが,意識障害で倒れているところを悪手 2 細胞内でクエン酸回路を回すためにブドウ糖とともに補酵素であるビタミン B 1 が発見されて救急搬送された場合などではそのような病歴が取れないため,低血糖を念必須です.低血糖で運ばれてくる患者は高齢者が多く,背景に低栄養状態や利尿薬内服,透析などビタミン B 1 が不足しがちな状況にあります 3).Wernicke 脳症は決して珍しい疾患ではなく一般人口で 2%,慢性アルコール中毒では 12.5%ともいわれて頭に置いて診療を開始することが重要です 1).意識障害だけでなく片麻痺,痙攣,構音障害などの神経症状や冷や汗をかいている患者をみた際には糖尿病の有無や病歴にかかわらず,まず血糖測定を行う癖をつけましょう.おり,慢性アルコール中毒患者に限りません.アナフィラキシーを起こすことは稀であるため積極的にビタミン B 1 投与を行い 低血糖が長時間になると意識の回復に関して予後不良(16.0 時間 vs. 9.0 時間:p<0.001)となるため,早期発見・介入が必要です 2).片麻痺や構音障害など脳卒中を疑ましょう.Wernicke 脳症の可能性が高い場合は 500 mg,ブドウ糖投与を必要とする患者には予防的に 100 mg のビタミンB 1 を投与しましょう.うときには必ず低血糖を除外してから頭部CT・MRI を行うようにしましょう. 1 型糖尿病や高齢,低血糖症の既往,β1 TIA は軽症と判断する2 神経症状が残存しているのに TIA と診断する3 頭部 CT で異常がないことを理由に TIA と診断する4 ABCD 2 Score のみでリスクを判断する5 抗血小板薬を処方して安心するキーワード|一過性脳虚血発作(TIA),脳梗塞,急性脳血管症候群(ACVS),ABCD 2 Score態として「急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)」と 総 称 さ れ る よ う に悪手 1 一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)は,その名の通り症状が一なって久しく,初期対応の重要性は広く認識されています.これと同様に,TIA も脳過性であることが特徴ですが,症状がすぐに消失するからといって「軽症」と判断して梗塞に至る前段階の病態と捉えるべきであり,「急 性 脳 血 管 症 候 群(acute cerebro-vascular syndrome:ACVS)」という概念よいのでしょうか. 脳梗塞を心筋梗塞に例えるならば,TIAが提唱されています. TIA は症状が消えたからといって“治っは不安定狭心症に相当します.確かに,脳た”わけではありません.むしろ脳梗塞発症の警告サインであり,最も重要な治療介入のタイミングと考えるべきです.TIA を梗塞と比べると時間的猶予がある場合もありますが,早期に適切な介入を行わなけれ軽視せず,連続する脳血管イベントの一部として,迅速かつ的確な対応が求められます.ば,致命的な転帰をたどる可能性があります. TIA 発症後,未治療の場合の 3 カ月以内の脳梗塞発症リスクは約 10~20%と報告されています 1).さらに,TIA 後に発症する脳梗塞の約 42%は,TIA 発症から 24 時悪手 2 症状が改善傾向にあるからといって,安易に TIA と判断すべきではありません.間以内に生じることが知られており,可及的速やかな治療介入が求められます.神経症状が残存している場合には,急性期脳梗塞として組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)の適応があるかどうかを迅 適切な介入を行えば,脳梗塞発症のリスクを大きく下げることが可能です.わずかなサインを「大きなチャンス」と捉え,迅速速に評価する必要があります.tPA は原則として発症後 4.5 時間以内が投与の適応とな対応を心がけましょう. 心筋梗塞と不安定狭心症は,連続した病 ABCD 2 Score のみでリスクを判断する 頭部 CT で異常がないことを理由に TIA と診断するなるため,わずかであっても麻痺などの神経症状が残存している場合には,“Time is Brain”を念頭に,可及的速やかな対応表 1 TIA の鑑別疾患・脳梗塞,頭蓋内出血・てんかん発作後の Todd 麻痺・失神・前失神・一過性全健忘・血糖異常・片頭痛・薬剤,その他が求められます. 例えば,上肢麻痺の訴えがあり,来院時に は 動 か せ る よ う に な っ て い て 診 察 上Barré 徴候が陰性であった場合や,めまいによって歩行困難だった患者が,受診時にはなんとか伝い歩きできるようになっていた場合でも,少し負荷をかけた診察によっもの」という tissue-based definition となりました.頭部 CT は出血の除外に有用でて異常をみつけることがあります. 上 肢 の 運 動 障 害 に 対 し て は forearm rolling test や finger rolling test を 活 用すが,脳梗塞の有無を評価するには感度が不十分です.可能であれば頭部 MRI および MRA を撮影し,急性期脳梗塞の有無をし,歩行に関しては日常生活レベルの歩行が可能かどうかを確認しましょう 2~4).わ評価すべきでしょう.特に,MRI の普及率が高い本邦においては,MRI を積極的ずかでも左右差や協調運動障害などの異常に活用することが望ましいでしょう.を認める場合には,急性期脳梗塞の可能性を念頭に速やかに画像検査へと移行することを推奨します.もちろん,脳梗塞に代わ悪手 4る明らかな代替診断が得られる場合には, TIA 患者のなかでも,脳梗塞を発症しやすいハイリスク症例を見極めることは重要この限りではありません. ちなみに,一過性の神経脱落症状を起こす他の疾患も鑑別する必要があります.表1 が代表的ですので,脳梗塞以外にも意識しておきましょう 5).です.代表的なリスク評価指標として,ABCD 2 Score が広く用いられています(表2) 7).さらに詳細なリスク評価には,以下のスコアも存在します.・ ABCD 3 Score:ABCD 2 Score に「7 日以内の TIA の既往」を加えたもの(表 3) 8)・ ABCD 3-I Score:ABCD 3 Score に加えて,「同側頸動脈の 50%以上の狭窄」と「MRI-DWI での高信号所見(梗塞の存在)」の 2 項目を追加したスコア(表 3) MRI を撮影すると,診察時には神経症状が完全に消失していても,DWI で高信悪手 3 症状が改善しており,頭部 CT でも異常が認められないからといって,安易に TIAと診断すべきではありません.ここで,あら た め て TIA の 定 義 を 確 認 し て お き ましょう.TIA は「局所または網膜の虚血に号 を 認 め る ケ ー ス が あ り ま す. こ れ は「transient symptoms with infarction起因する神経機能障害の一過性エピソードであり,急性梗塞の所見がないもの.神経機能障害のエピソードは,長くとも 24 時(TSI)」と呼ばれ,TIA とは区別して扱うべき病態です(表 4). 以 前 は 症 状 が 24 時 間 以 内 に 消 失 す れば,画像上梗塞巣があっても TIA と診断されていました(time-based definition).一過性脳虚血発作 11間以内に消失すること」と定義されています 6).以前は「24 時間以内に臨床症状が消失する」という time-based definition で168 内分泌系したが,現在では「急性梗塞の所見がないしかし現在は「急性梗塞の画像所見がない12 中枢神経系悪手 低血糖を疑うサインを知らない ビタミン B 1 投与を 忘れる悪手 TIA は軽症と判断する 神経症状が残存しているのに TIA と診断する低血糖血糖補正だけで終わりじゃない!● B5 ● 392 頁 ● 定価 6,270 円 (本体 5,700 円 + 税 10%)[ISBN 978―4―260―06175―9] 一過性脳虚血発作アンダートリアージを防ぎ,適切な一手を!sample救急外来で遭遇する 85 疾患の診療における好手と悪手を徹底解説! | 救急・集中治療の本68 編集 坂本 壮雑誌『medicina』で好評を博した増刊号「救急診療 好手と悪手」が待望の書籍化。救急外来で遭遇するさまざまな疾患の診療について、陥りがちなミスを「悪手」として提示し、適切な対応を「好手」として解説。書籍化にあたっては各項目を全面アップデートしたほか、産婦人科、小児科の章を追加し、救急外来でおさえておくべき主要な疾患を網羅した。 目次や立ち読みはこちら >>内科救急 好手と悪手
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