レジデントBOOKカタログ 2025
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た手の中で持針器を回して運針を行うことができる.軸角度補正(外旋)把持角度補正(30°/60°)メスとカウンタートラクション手の二機能② 上部と下部の使い方 メスで皮膚を切る際には原則,術者の左手の母指と中指でトラクションとカウンタートラクションをかけて,皮膚に適度な緊張をもたせて切開を行う.メスは縦で皮膚の緊張は横というイメージである.示指と中指の選択に関しては,小さな切開では示指,大きな切開では中指のほうが対向性が良く,より強い緊張を広い範囲で効かせることができる.例外的に切開部が術者に向かって面で下側のときは環指が対向性に優れる.また比較的距離の短い切開では図6のように左手の母指と中指のトラクションのほか,左の環指,右手の小指や手の下部を使って縦横十文字に皮膚に緊張をかけて切開を行うと安定する. 筆者は皮膚を含めて血管など大事な部位をメスで切開をするときには,助手によるカウンタートラクションを好まない.なぜなら不意に助手がカウンタートラクションの強さを変えるとバランスが崩れて切開が曲がるからである.ルール・ 皮膚切開は原則として左手の母指と中指でトラクションをかける.・ 助手のカウンタートラクションは不意に方向が変わることある.コツ・勘所・ 皮膚切開では左母指と中指で横方向,左小指と右小指で縦方向の十字のトラクションをかけることができる.・ 皮膚に限らず大事な場面でのメス切開では,助手のカウンタートラクションはなるべく行わない.図6 皮膚切開時のカウンタートラクション A :左手の母指と中指でトラクションとカウンタートラクションをかけて,皮膚に緊張を与える. B : 小さな創の切開時のカウンタートラクションのかけ方.左手の母指と中指のトラクションのほか,左小指と右小指でのト58 手を台の上に載せて使うときは,上下2つに分けて考えるとよい.母指から中指までの橈側3指とその手根骨までを含めて手の上部,同じく環指と小指と手根骨までを含めて尺側2指を手の下部とすると,手の上部は主に動的な作業を行い,下部はそれを支える役目を担う(図14).この際,環指と小指はさまざまな角度で屈曲または伸展させて指先を台に当てて,手の上部を支える脚や銃座の役割をさせることができる(図15~17).有鈎骨三角骨中手骨豆状骨基節骨母指球小指球AB右左右左ABAB 図14 手の上部と下部手を上部(橈側3指)と下部(尺側2指と手の下部)に分ける.ポイントは上部による道具の把持と操作,下部による手の支持と固定である.A:手の上部(赤矢印)を下部(白矢印)が支えると橈側3指の動きが安定する.B:手の下部は環指と小指,中手骨,手根骨,小母指球などで構成される.A: 右手で持針器を把持する際に,環指と小指を屈曲させて床面に当てて手を固定させる.B: 右手で持針器を把持する際に,小指か環指を立てて手を安定させる.C: 左手で鑷子を持つ際に,尺側2指と手の下部を床面に付けて手を安定させる.D: 左手で鑷子を持つ際に,環指と小指を拡げて床面に当てて手を安定させる.図15  持針器や鑷子を把持する際の尺側2指の使い方12動画⑰動画⑱ラクションもかけている.第4章●縫うground 1zenith 2ground 2zenith 1図34 パームグリップにおける針の把持法の変換PGやマチューでは持針器を手の中で回すことができるのが利点.これにより針を持針器の上にも下にもセットできる.ま図35 パームグリップならではの運針法(Z3)Z1の運針をPGで行う際に,母指をリングの下に置き手首を回外させて運針を開始する.手の中で持針器を反時計回りに回転させながら運針を行うが,途中で母指をリングの上側に移動させる.ほぼ360°の運針が可能となる.図36 針を広角化したZ3運針の応用A:大動脈後壁の縫合,B:左房後壁の縫合111理論を知り実践に生かす基本手技の「ルール」「コツ・勘所」「上達法」イラストや写真がふんだんに掲載されているから、術前のイメージトレーニング・術後の復習に大活躍です。整形外科/泌尿器科/眼科/耳鼻咽喉科・頭頸部外科に特化したタイトルもご紹介します。  |  60 ●B5 ●220頁 ●定価6,600円 (本体6,000円+税10%)[ISBN 978―4―260―04285―7] sample外科手術の基本手技「切る」「縫う」「結ぶ」そして「止める」の原理とテクニックを一から解説。「なぜそうするのか」「どうすればスムーズに行えるのか」を理論的に説き起こす。手術器具の特性、術中の一つひとつの動きの意味を明らかにし上達の勘所を教示。著者が実演・レクチャーする動画(86本)が記載内容の理解を促す。初心者はもとより経験を重ねた外科医も目から鱗が落ちる知見が満載。 目次や立ち読みはこちら>>切る・縫う・結ぶ・止める外科基本手技+応用スキル[Web動画付]著 小坂 眞一外科系の本

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