レジデントBOOKカタログ 2025
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●主幹動脈に50%以上の狭窄を認め,その結●このように同じ「突然」という言葉でも医療●突然発症(sudden onset)の代表的な機序/病因は「血管障害」で,具体的には血管が「詰●例えば犬の散歩で歩いている最中に右足に急●上記の経路いずれかが障害されると筋力低下●医療従事者にとっての「突然発症(sudden 625 監修塩尻俊明執筆杉田陽一郎医学書院△日は大丈夫だったけれど〇月△+1日から調子が悪い」という状況を「突然」と表現し(1)ポイント1:突然発症と急性発症を区別する●「突然発症(sudden onset)」と「急性発症(acute ます.つまり患者さんは前日まで大丈夫であり翌日から体調が悪くなったことを突然と表onset)」は両者を明確に区別する必要があり現することが多いです.ます.「突然発症」は発症が何時何分何秒と特定できることを意味し,「急性発症」は日単位での発症特定が可能だけれど時間までは従事者と患者さんの意味する内容には違いがあります(図2-2).このため「それは突然のことでしたか?」という問診は有用ではなく,特定できない状況を意味します.●「患者さんは急性経過で…」というプレゼンいくら形容詞の表現を詰めても求める答えはテーションで,よくよく病歴を確認すると実得られません.は突然発症であったということがしばしばあります.突然発症と急性発症では考える病態が異なるため,この点は曖昧にせずこだわっ●「患者さんが突然といったから突然発症」とはなりません.患者さんの使用した言葉をそのままカルテに記載することは病歴聴取ではて病歴聴取をしたいところです.なくディクテーションです.具体的なエピソードを聴取して,そこから医学的な意味を解釈まる(梗塞)・破れる(出血)・裂ける(解離)」する一連の作業が病歴聴取です(図2-3).ことを意味します(図2-1).(3)ポイント3:発症時の状況を尋ねる(2)ポイント2:同じ「突然」という表現でも患者さんと医療従事者が意味する内容が違う●ではどのようにすれば「突然発症(sudden onset)」の病歴が捉えられるか?というと,「症状が出たときに何をされていましたか?」と問診するのがよいと思います.onset)」はある時間,何時何分何秒と特定できる状況を意味しますが,患者さんは「〇月医療者何時何分何秒が特定できる詰まる破れる裂ける図2-1 突然発症は「血管障害」を示唆する〔塩尻俊明(監),杉田陽一郎(著):研修医のための内科診療ことはじめ.羊土社,2022より〕図2-2 突然発症(sudden onset)とは何か?〔塩尻俊明(監),杉田陽一郎(著):研修医のための内科診療ことはじめ.羊土社,2022より〕病態生理と神経解剖からアプローチする21 急性期脳梗塞,TIA211図21-4 ラクナ梗塞●臨床的には症状が進行性かつ治療抵抗性である点が特徴で,日常臨床でもよく遭遇します.●責任血管は外側線条体動脈や橋傍正中動脈が最多です(図21-6).②アテローム血栓性脳梗塞(図21-7)果①血流が低下する血行力学的な機序,また図21-5 ラクナ梗塞ではない例病変部位は穿通枝領域ではないためラクナ梗塞ではない外側線条体動脈橋傍正中動脈図21-6 BAD(branchatheromatousdisease)の責任血管〔文献9)を参考に作成〕1)病歴1.解剖2.病巣同定の基礎知識日常診療で普遍的に役立つ神経診察の方法,症候学,コモンな疾患が1)突然発症181 運動・感覚障害総論を呈します.●運動機能を司る神経を「運動ニューロン」と表現します.●大脳の中心前回(運動野)から筋肉へ刺激を●実際に筋力低下を呈した患者を前にして私た伝えるまで2本の運動ニューロンが関与してちが知りたいことは「どこが責任病巣なのおり,それぞれ「上位運動ニューロン」,「下か?」という点です.位運動ニューロン」と表現します.上位運動ニューロンは該当髄節の灰白質で下位運動●それを知るためのヒントとなる6つのポイント・知識を以下で解説していきます.まとめニューロンの前角細胞へ乗り換えます(図5-1).た図5-2も参照ください.上位運動ニューロン:大脳皮質(中心前回)→放線冠→内包後脚→大脳脚(中脳)→橋縦●病巣を特定するというと「まず神経診察」と束(橋)→錐体交叉(延髄)→側索(脊髄白質)いうイメージがあるかもしれませんが,その下位運動ニューロン:前角(脊髄灰白質)→前に病歴聴取が重要です.「筋力低下→MMT」神経根→神経叢→末梢神経という思考回路が非常に多いですが,まずそもそも病歴からどの部位の障害が疑われる●下位運動ニューロンはその後,神経筋接合部か?というアプローチを行います.患者さんを介して筋肉へ電気刺激を伝え,その結果筋肉が収縮します.に力が入りづらくなり受診した高齢男性の患者を考えてみましょう.昨日まで元気で今日から具合が悪い大脳(中心前回)放線冠大脳(中心前回)上位運動ニューロン放線冠内包後脚中脳(大脳脚)橋(橋縦束)視床内包後脚被殻淡蒼球下位運動ニューロン延髄(錐体交叉)脊髄(白質)前角(灰白質)末梢神経大脳脚図5-1 解剖日常診療で普遍的に役立つ神経診察を学ぶ。レジデントのための神経診療病態生理と神経解剖からアプローチする |  内科系の本56 監修 塩尻 俊明執筆 杉田 陽一郎神経領域は「難しい」「分かりにくい」と敬遠されがちだが、体系的に理解できると面白いと感じることができる。本書は初心者向けに、領域横断的に内容をまとめ、オリジナルのシェーマを多用し概念を整理して提供することで、研修医、若手医師の学習に有用な一冊となっている。日常診療で普遍的に役立つ神経診察の方法、症候学、コモンな疾患を扱っており、非専門医であればここまで把握しておきたいという線引きを明示した。 目次や立ち読みはこちら>>●B5 ●392頁 ●定価5,720円 (本体5,200円+税10%)[ISBN 978―4―260―05246―7] sample病歴の基本運動障害(筋力低下)豊富なイラストでよく分かる体系的に理解できると,神経診察はこんなに面白いレジデントのための神経診療

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