敗血症の有無細菌感染症の重症度は96.32.230.2274.91.5100.273.585.51.850.2364.91.580.263.145.01.680.2335.21.790.2312▶▶Ⅲ25ⅤⅣ 著 本田 孝行910.7628735200103.208.927.285.027.832.740.19713.43770156001103.309.229.489.127.931.335.1714.01.1729.0589.28.3811.7718826000213.299.028.285.727.431.941.9813.41.1128.2469.88.8616.54107657000203.419.330.088.027.331.034.1612.41.0327.3603.910.2415.8468264000203.8010.433.287.427.431.336.6414.41.2028.8739.87.2520.4948357000013.7810.632.686.228.032.544.8514.11.1828.1706.98.0318.72108315000103.9611.234.486.928.332.644.8314.01.1728.4863.54.9221.82 目視による白血球分画において左方移動があると,骨髄における好中球産生亢進を意味する。産生亢進は同時に消費亢進を表すので,多くの好中球が必要な病態,すなわち細菌感染症の存在を示唆する。 左方移動は,骨髄にストックされていた分葉核球を血中に供給するだけでは,細菌感染症に必要な好中球数を補えないため,未熟な好中球を供給している状態を示している。したがって,骨髄のストックが少なくなったことを意味し,骨髄はこれに反応して好中球産生量を増大させている。A 左方移動の定義 左方移動とは,血液塗抹標本の目視による白血球分画で,桿状核球の割合が15%以上になることである6,10)。① 軽度の左方移動:桿状核球が15%以上で分葉核球の半分より少ない。② 中等度の左方移動:桿状核球が分葉核球より少ないが,分葉核球の半分より多い。③ 高度左方移動:桿状核球が分葉核球より多い。B 好中球の体内分布と動態 表Ⅲ-1❶ 好中球の分布 好中球の分布は 表Ⅲ-1 のとおりである。❷ 骨髄での好中球産生 骨髄では,骨髄芽球,前骨髄球,骨髄球,後骨髄球,桿状核球を経て成熟した分葉核球となるまでに通常7~10日間を要する。❸ 血中の好中球動態 骨髄から血中に移動した好中球(桿状核球と分葉核球)は,数時間で消化管,肺などの組織に出るので,血管内滞在時間は数時間である。したがって,好中球は1日に4~5回総代わりする11)。C 細菌感染後の左方移動のメカニズム 図Ⅲ-1❶ 感染直後 流血中(循環プール)の好中球が細菌感染巣に移行し,細菌を貪食する。このとき,細菌量が多ければ好中球は減少する。骨髄が反応する前であるので,好中球産生亢進がなく左方移動は生じない。3 その他の凝固・線溶検査 13項目の解釈 D-dimerが上昇しており,凝固・線溶亢進の可能性があるが,2病日のピーク値が10.2 μg/mLであり,それほど高値でないため断定できない。フィブリノゲンの低下はなかったが,PTおよびAPTTの延長,AT,TAT,PICおよびヘパプラスチンテストは,凝固因子の消費を示しており,軽度の血管内炎症を示唆していると考えてよい。 1 栄養状態はどうか albumin, total cholesterol, cholinesterase 1病日,アルブミンおよび尿酸からは,栄養状態は悪くない。総コレステロールおよびコリンエステラーゼは検査されていないので,それらでの評価はできない。 栄養状態の悪くない男児が発熱した。 2 全身状態の経過はどうか albumin, platelet アルブミンからは,-14病日,-7病日,1病日にかけて状態は改善してきている。原疾患があれば改善しており,回復傾向にある男児が発熱した。 1~2病日にかけて,アルブミンが低下している。ヘモグロビンおよびUNの大きな変動がなく,体内の水分量に大きな変化はないので,アルブミンの消費亢進が考えられる。CRP上昇も合わせると,急性炎症が疑われる。3病日から急速に回復している。 血小板は,基準範囲内であるが-7病日に比較して1病日19:00まで減少し,その後3病日まで20万/μL前後であり,7病日には確実に増加している。血小板の動きからは,1~3病日まで病態は悪化もしくは変化なしで,その後回復していると推察される。 3 細菌感染症はあるのか left shift 白血球は1病日19:00に著しく減少しているが,2病日には増加し,白血球分画では左方移動を認めない。左方移動がないので,細菌感染症はないと判断したい。ただ,1病日に一過性に好中球が消費される病態が生じたが,骨髄に貯蔵されている好中球で対応できたため,左方移動まで至らなかったとも解釈できる。したがって,白血球数からは,細菌感染症を完全に否定できない。 CRPは2病日にピーク値8.01 mg/dLを呈するが,著しく高値でなく,左方移動を伴っていないので細菌感染症を強く示唆する所見ではない。 細菌感染症があるかの判断は難しい。 4 細菌感染症の重症度は left shift, CRP, white blood cell 2病日には,桿状核球が9%で左方移動はない。ただ,桿状核球が増加している可能性はあるので,骨髄において好中球の産生が亢進しているかもしれない。しかし,細菌感染症があっても,少数の好中球で対処できるので,軽症と考えたい。 5 敗血症の有無 platelet, fibrinogen 細菌感染症があれば,血小板減少から敗血症が疑われる。しかし,フィブリノゲン117症例10 20代女性,腰痛がひどく歩けなくなったため入院した生化学TPAlbUNCre細菌UA感T-Cho染症HDL-CはLDL-CあるTGのASTかALTγGTT-BilALPLDCKAMYChENaKClCa補正CaMgGluCRPHbA1c1病日5.82.0130.265.517010基準範囲6.12.370.246.5-8.0 g/dL4.0-5.0 g/dL8-21 mg/dL0.45-0.80 mg/dL2.7-5.8 mg/dL128-219 mg/dL*>40 mg/dL*<139 mg/dL*<150 mg/dL*11-28 U/L7-23 U/L9-27 U/L0.30-1.40 mg/dL115-330 U/L120-230 U/L30-165 U/L44-127 U/L195-466 U/L136-145 mmol/L3.4-4.5 mmol/L100-108 mmol/L8.7-10.3 mg/dL8.7-9.9 mg/dL2.5-4.6 mg/dL75-110 mg/dL1436.81<0.10 mg/dL1.8100.251.760.25155131161601615382217410.3157826264161871324.0927.28.91.836842.2412.51病日20.01231790593022450.3544531434124648780.2940327066212835670.2734521879221814530.2733332754251611500.3429526532282110430.282532301843513248490.394742784213447355441354.0931353.7971373.4971343.3967.19.11393.01041373.21001364.0951393.7978.39.91413.810335.7725127.3522324.6010221.517915.7011112.281888.131729.224.3-5.8%血算白血球 好中球(Band)32 好中球(Seg)5110600 好塩基球 異型リンパ球0014.2012.1ヘモグロビンヘマトクリット36.186.0MCV28.8MCH33.5MCHC44.91病日13.41.1126.2基準範囲3.04-8.72×103/μL0-15%28-68%17-57%0-10%0-10%0-2%0%0%0%3.73-4.95×106/μL10.7-15.3 g/dL33.6-45.1%80.4-101.0 fL25.5-34.6 pg30.8-35.4%13.7-37.8×104/μL109.27078127000123.018.426.387.427.931.940.910 単球 好酸球 リンパ球3.8910.933.987.128.032.244.32赤血球 骨髄球 後骨髄球59凝固・線溶血小板基準範囲13.7正常対照±10%1.1479.2461.56.5PTPT-INRAPTTフィブリノゲン891.5D-dimer0.85-1.1523.0-38.0 sec180-350 mg/dL≦1.0 μg/mL2.8Band:桿状核好中球,Seg:分葉核好中球*:病態基準範囲1 左方移動 left shift どのような指標か 左方移動のメカニズム 検査値の推移と組み合わせから、「病態を読み解く力」を身につける44 | 内科系の本 ●B5 ●352頁 ● 定価4,950円 (本体4,500円+税10%)[ISBN 978―4―260―02476―1] sample検査値の推移と組み合わせから、「病態を読み解く力」を身につける本。「RCPC」の手法では、病歴や身体所見の情報なしで、検査所見のみから病態を推論する。本書はこれに時間軸と複数検査値の組み合わせを加え、患者の病態を13の基本項目に分け、全39症例の検査値の推移から病態の変化を読み解いていく。「患者の体に何が起こっているのか?」を推論する力を磨きたいすべての医師、臨床検査技師に。 目次や立ち読みはこちら>>検査値を読むトレーニングルーチン検査でここまでわかる
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