レジデントBOOKカタログ 2025
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2 胸部CT 胸部単純X線で指摘できない少量の胸水も確認でき3 超音波 限局した胸水の確認に有効である。胸壁と肺の間に低がん性胸膜炎・腹膜炎・髄膜炎・心膜炎010123010120123~4●咳嗽,呼吸困難,胸部圧迫感,胸背部痛,発熱●少量の胸水貯留や慢性的な胸水貯留では,症状を伴わないことが がん性胸膜炎は,がん細胞を含む胸水の存在(悪性胸水)もしくは胸膜播種病変を伴う病態と定義される。悪性腫瘍の10~50%に出現し,肺がん(37.5%),乳がん(16.8%),悪性リンパ腫(11.5%)の順に多い。卵巣がん,胃がん,原発不明がんなどでもみられる。胸水貯留には胸膜浸潤に伴う微小血管の透過性亢進(産生増加)や,胸水の排出経路であるリンパ管の閉塞(吸収減少)がかかわっていると考えられている。症状ある予後 胸水貯留時の原病の予後予測として,次頁の表のLENT scoreが用いられる。LDH,ECOG PS,NLR,がん種により低・中・高リスクに分けられる。MSTは低リスクで10カ月,中リスクで4.3カ月,高リスクで1.4カ月とされる。診断1身体所見 呼吸音減弱・消失,胸膜摩擦音,声音振盪減弱。2画像診断1 胸部単純X線 正面像で200 mL以上,側面像で50 mL以上の胸水があれば肋骨横隔膜角の鈍化が認められる。側臥位像では胸水が移動するため無気肺と鑑別できる。る。胸壁と肺の間に低吸収域を認める。がん性胸膜炎20がん性胸膜炎・がん性腹膜炎・がん性髄膜炎・がん性心膜炎2がん薬物療法の基本概念がん薬物療法とは 細胞障害性抗がん薬,分子標的薬,ホルモン薬,免疫チェックポイント阻害薬などを用いて,がん細胞の浸潤・増殖・転移を抑制する治療の総称である。近年,新薬開発の進歩は目覚ましく,従来の細胞障害性抗がん薬はもちろん,免疫チェックポイント阻害薬や,ドライバー遺伝子をターゲットとしたprecision therapyなども治療選択肢に加わっている。治療選択肢が増える一方で,多彩な副作用管理が必要となり,がん薬物療法を専門とする腫瘍内科医の重要性は年々増している。薬剤の種類と作用機序の概略(12~13頁図,563頁付録①参照)1細胞障害性抗がん薬(cytotoxic drug) いわゆる抗がん薬であるが,正式名称は“抗悪性腫瘍薬”である。ランダムスクリーニング後に細胞毒を有する薬剤として発見・創薬され,そのあとに標的分子や作用機序が判明したものが多い。1)アルキル化薬 DNA塩基に対しアルキル基を結合させることでDNA複製を阻害し,抗腫瘍作用を発揮する。2)白金(プラチナ)製剤 白金錯体がDNA鎖内あるいはDNA鎖間で架橋形成によりDNA合成を阻害し,抗腫瘍作用を発揮する。3)代謝拮抗薬 核酸合成過程における必須物質と類似構造をもち,核酸合成の拮抗阻害により抗腫瘍作用を発揮する。4)トポイソメラーゼ阻害薬 トポイソメラーゼはDNAを切断・再結合する酵素である。Ⅰ型(トポⅠ)はDNA 2本鎖の一方だけを切断し,Ⅱ型(トポⅡ)は2本とも切断し切断・再結合の反応を阻害する。カンプトテシンに代表されるトポⅠ阻害薬と,トポⅡ阻害薬であるエトポシド(ETP)がある。5)微小管阻害薬 有糸分裂時のチュブリンに結合し,細胞分裂阻害により抗腫瘍作◆LENT score<1,500>1,500E (ECOG PS)<9>9T (Tumor type:がん種)エコー領域を認める。3胸腔穿刺 確定診断のためには胸水中の悪性細胞の証明が必要となる。エコーで安全に穿刺できる場所を確認し,胸水貯留部位から穿刺する。胸水の細胞診やタンパク・LDHの測定を行うとともに,感染などの鑑別のために細胞数や細菌培養(結核も含む)も必要である。胸水中腫瘍マーカーは,基準値も明らかではなく,確定診断に用いることは不適切である。1回目の穿刺による細胞診の陽性率は60%程度であり,さらに1回追加することにより27%の陽性率上乗せがあると報告されているが,それ以上の穿刺での陽性率向上はわずかであり,胸膜生検を考慮する。◆滲出性胸水の診断(Lightの基準)4胸膜生検 胸腔鏡ガイド下での胸膜生検はほぼ100%で診断が可能である。胸腔穿刺に比べて侵襲が大きいが,未診断で組織検体が必要な場合2043210がん性胸膜炎   433変数スコアL〔胸水中のLDH(IU/L)〕N(NLR:末梢血好中球リンパ球比)中皮腫,血液腫瘍乳がん,婦人科がん,腎細胞がん肺がん,その他のがん種0~1点:低リスク,2~4点:中リスク,5~7点:高リスク(Thorax 2014;69:1098 PMID 25100651より改変)ⅰ)胸水LDH>血清LDH正常上限値の2/3ⅱ)LDHの胸水/血清比>0.6ⅲ) タンパク質の胸水/血清比>0.5 のいずれかを満たすもの。医療者の診療の一助となり、がん患者の診療へ還元されることを切に願って。シリーズレジデントの日々の臨床に、実用性の高い定番マニュアル。スクラブのポケットにすっぽり入るコンパクトなサイズ感ですが、その情報量はあなどるなかれ。診療時の心強い味方です。  | 2 編集 国立がん研究センター内科レジデント国立がん研究センター中央病院・東病院のレジデントが中心となり、最新のエビデンスに基づき、3年毎に改訂しているマニュアルの第9版。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、抗体薬物複合体の導入により、近年各がん種の治療が大幅に変わってきているが、まずは腫瘍内科の知識の幹となる情報を学んでいただきたい。基本的な知識を学ぶための土台として大いに活用いただきたい。 目次や立ち読みはこちら>> ●B6変 ●664頁 ● 定価4,950円 (本体4,500円+税10%)[ISBN 978―4―260―04976―4] sampleがん診療レジデントマニュアル 第9版レジデントマニュアル

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