内科系診断力を高めるための強力なツール書評者: 林 寛之 | 35book review 内科のテキストよりも分厚い(?かもしれない)内科バイブルが改訂された。上田剛士先生の日々の研鑽の珠玉のたまものと言える。これだけ分厚いと枕にも使えそうだが、それは正しい使い方ではない。ぜひとも読んでそしゃく、または調べ物の参考にして欲しい。これだけの情報をまとめ上げるのはさぞ大変だっただろう。働き方改革なんてなんのその、莫大な時間を費やしてわれわれ臨床家のためにまとめてくれて感謝しかない。本書作成時間は、全て「勤務」ではなく、「研鑽」であろうから、プライベートの時間をつぶしたのは疑いもなく、上田先生のご家庭を心配するのは私だけではないだろう(笑)。 この書籍は、内科医としての診断力を高めるための強力なツールであり、医学生から一般医師まで幅広い層に参考になる。本書はとにかく内科の重要なポイントを網羅的にまとめあげた素晴らしい本であるだけでなく、色使いがとてもきれいで見やすい。見てくれは絶対大事だもの。ポイントになるところは黄色い色が付いているので、そこだけ見ておいてもいいかも……(手抜きもできる素晴らしさ!)。 箇条書きというのは、医療現場ですぐに情報が欲しい実地医家にとっては、拾い読みしやすく時短にもなってとてもありがたい構成になっている。日々の疑問に答えてくれる内容を扱っているので、皆さんも手に取って、外来や病棟ですぐ手に届くところに置いておくことを強くお勧めする。枕元に置いておくと、枕にしてしまうかもしれずお勧めしない。 さらに内科とうたっていながら、なんともズルく(?)、整形外科やマイナー科、産婦人科まで記載があるのは特筆すべき点だ。実際に患者さんはいろんな問題を抱えてやってくるのであって、内科だけ診て「うちじゃない」なんて門前払いをしているようでは優秀な臨床家とは言えない。内科だけを診るのではなく、(病気を抱えた)「人」を診るという姿勢の表れである。さすがの総合診療医である上田先生のもとに多くの専攻医が集まるのもうなずける。 医学生も一般的な教科書で知識を固めた後に、実臨床では本当はどんなポイントに注目したほうがいいのかがわかるので、どうぞ読んでもらいたい。内科実習ローテーションでまとめを作るにはとても便利だ。初期研修医はEPOCで症例をまとめるときに本書から抜粋すれば、ChatGPTを使うよりはるかに立派な提出資料が出来上がる。専攻医は学会発表や勉強会でプレゼンテーション資料を作るときに参考にすると、これまた時短よろしく良いものができるだろう。実地医家はもちろん知識のアップデートに本書を使おう。 医学知識はアウトプットしてこそ血や肉になる。皆さんも本書を読むだけでなく、上田先生に続いて文献をきっちり調べてまとめあげ、自分なりのアウトプットにつなげていけば、臨床力の高い医者になるのは間違いない。 (了)
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