■注射剤から経口剤へのスイッチ療法(CEX)---IISS2S11---88RSSSRRⅠRSS MSSA(1)症例1正解 ②CEXまたは ⑤ST合剤推奨されます.今回の設問は内服への移行ですので,内服の第一世代セファロスポリン系抗菌薬であるCEXへの変更が検討されます.β ラ解説 健常者における皮膚軟部組織感染症の症例です.皮膚軟部組織感染症の場合には壊死性筋膜炎あるいは皮下膿瘍の有無を適切に判断クタム系抗菌薬以外では黄色ブドウ球菌に使用できる経口抗菌薬としてCLDMやMINO,ST合剤もありますが,本例では薬剤感受性結果からCLDMやMINOの使用が難しいため,ST合することが重要であり,それらを合併している場合には抗菌薬治療のほか,デブリードマンや剤のみ選択肢となります.これらの内服は特に ドレナージの必要性を検討します.しかし,本β ラクタム系抗菌薬にアレルギーがある場合に例は蜂窩織炎と診断されているためドレナージ推奨されます.の必要性はなく,適切な抗菌薬治療で十分効果が期待されます.抗菌薬一口メモ 起炎菌に関しては,創部から採取した膿検体でグラム陽性球菌(ブドウ状)を多数認め,白血第一世代経口セファロスポリン系抗菌薬で球も多くみられることから,単なる皮膚の常在菌を検出したのではなく,S. aureusを感染症の起炎菌と考えて問題なさそうです.あるCEXは,腸管からの吸収率が90%と安定しており,同世代の注射剤であるCEZとの抗菌スペクトラムが同等である では薬剤感受性結果をみてみましょう.検出されたS. aureusはMPIPCやCFXに感受性を有することから,MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)ではなくMSSA(メチシリン感受性ことから,注射用抗菌薬から経口抗菌薬への切り替え(スイッチ療法)に用いることが黄色ブドウ球菌)と考えられ,本菌による蜂窩織炎に対し使用すべき点滴抗菌薬としては β 可能です.投与量に関しても,添付文書において「重症の場合や分離菌の感受性が比較的低い症例には1回500 mgを6時間ラクタム系抗菌薬〔PCGまたはABPC(アンピシリン),またはCEZ〕が浮かんできます.ただしPCGが耐性であることからペニシリナーゼ産ごとに経口投与する」とされており,1日2 g(適宜増減により最大1日4 g)の投与量が保険適用となることから,CEZに近い生が疑われるため,最終的には第一世代セファロスポリン系抗菌薬であるCEZへの狭域化が用量での治療を行うことができます.まとめ012011いよいよ次ページから問題がはじまります.解答の際,以下の点に着目しましょう.問題ページ難易度患者背景・診断患者の状態をイメージしましょう.ときどき類似した症例も登場します.その際は患者背景や感染臓器などの違いを意識して解きましょう.★………必ず正解したい基本問題★★……一歩上をめざす応用問題★★★…超難問.解けたら専門家検査結果喀痰・皮膚膿・血液培養などの情報です.特にグラム染色像と培養結果の整合性に注目することが大切です.薬剤感受性結果主に各薬剤のMIC値(μg/mL),CLSI判定基準のS(感性)・I(中間)・R(耐性)が提示されます.S判定の薬剤のうちどれが最適かを常に考えましょう.解説ページ問題解答のカギとなる情報,また感染症診療・抗菌薬の知識で特に重要なものを太字で示しました.末尾に(複数回答可)とあるものは,「適切な薬剤が複数ある」または「複数の薬剤の併用が望ましい」ものです.抗菌薬一口メモ主に当該症例に関係する抗菌薬知識を紹介しました.一歩深い理解につながります.まとめ当該症例のエッセンスです.復習や知識の定着に活用ください.抗菌薬の略号・一般名一覧裏表紙側のカバー折り返しに,主な抗菌薬の略号と一般名を並べました.解説ページでは略号のみ示している場合がありますので,適宜こちらをご利用ください.本書籍の各種感受性基準は2018年12月時点のものを採用しています010★★★MSSA感染症に対する経口薬としては β ラクタム系抗菌薬が第一選択.ただし,アレルギーなどで使用できない場合は,感性であればCLDM,ST合剤,MINOも選択肢となる20• 患者:50歳,男性• 診断:下肢蜂窩織炎症例★★★•患者:47歳,男性既往歴:僧帽弁逸脱症.現病歴:3週間前に歯科で抜歯処置を受けた.5日前より発熱が出現.経過観察していたが解熱しないため来院した.経胸壁心臓超音波検査にて僧帽弁に疣贅を認めた.血液培養3セットを採取のうえCTRX(セフトリアキソン)+VCM(バンコマイシン)の投与を開始し入院となった.頭部MRIでは頭蓋内に膿瘍や塞栓を疑わせる所見を認めない.また,全身に膿瘍や遠隔病変を認めなかった.治療開始後は解熱傾向である.•診断:感染性心内膜炎血液培養結果薬剤感受性結果塗抹結果薬剤名MICCLSIグラムPCG(ベンジルペニシリン/ペニシリンG)0.25陽性陰性ABPC(アンピシリン/ビクシリン)球菌桿菌レンサ状CTRX(セフトリアキソン/ロセフィン)CFPM(セフェピム/マキシピーム)培養結果VCM(バンコマイシン)Streptococcus mitis0.50.50.5S.mitis(2)症例20正解①PCGと⑤GMの併用問題CTRX+VCM投与により臨床経過が改善したため,ほかの点滴薬への狭域化を検討する場合,どのような薬剤に変更したらよいか?(複数回答可)選択肢:様にABPCもGMを併用することで使用可能ABPCもGMを併用することで使用可能①PCG(ベンジルペニシリン)③CTRXのみ継続⑤GM(ゲンタマイシン)狭域化の観点からはPCG投与にリスですが,狭域化の観点からはPCG投与にリス②ABPC(アンピシリン)④VCMのみ継続クがある場合(高カリウム血症や静脈炎)に使用クがある場合(高カリウム血症や静脈炎)に使用解説S.mitisによる感染性心内膜炎の症例を検討します.また,セファロスポリン系抗菌を検討します.また,セファロスポリン系抗菌です.本例は抜歯処置が原因となり,基礎疾患薬に関しても【症例19】と同様に,グラム陰性薬に関しても【症例19】と同様に,グラム陰性として弁膜症が存在することから,感染性心内菌を広くカバーしている点より第一選択からは菌を広くカバーしている点より第一選択からは膜炎を発症した可能性が高いと考えられます.除外しました.VCMはペニシリンアレルギー除外しました.VCMはペニシリンアレルギー グラム染色ではレンサ状グラム陽性球菌が確がある場合に使用されます.がある場合に使用されます.解説は次ページ☞Ⅱ実践編049認されています.現時点では感染性心内膜炎の経験的治療としてCTRX+VCMが投与されており,Enterococcusなどの可能性も考慮して起炎菌が固定されるまでは同治療の継続でよいでしょう.培養結果からはS.mitisが検出され,現病歴とも矛盾がない結果となりました. それでは薬剤感受性結果を確認してみましょ抗菌薬一口メモ抗菌薬一口メモbam0154_Ⅱ編/三.indd 49■感染性心内膜炎でのアミノグリコシド系抗菌薬の用法アミノグリコシド系抗菌薬は,1日1回投与のほうが分割投与よりも有効性・安全性が高いとのエビデンスが構築されていま2019/07/18 18:10:21う.本例のS.mitisはペニシリン系抗菌薬に対する感受性が中間(I)であり,ペニシリン系抗菌薬“単剤”では治療が困難です.そのような場合,ペニシリン系抗菌薬にGMを併用することで,2剤によるシナジー効果を狙って治療することが可能です.シナジー効果とは,複数の抗菌薬を併用することによる相乗効果のことで,βラクタム系抗菌薬またはVCMにアミノグリコシド系抗菌薬の併用が代表的です.したがって,本例ではPCGは中間(I)となっています.感染性心内膜炎では,Streptococcus mitisなどの口腔内レンサ球菌や黄色ブドウ球菌に対して1日1回投与(1回3mg/kg),腸球菌などの栄養要求性の高いレンサ球菌では分割投与(1回1mg/kgを1日3回)が推奨されています1).すが,GMを併用して治療を行うことができるためPCGとGMの併用が正解となります.同文献1)Baddour LM, et al: Infective Endocarditis in Adults: Diagnosis, Antimicrobial Therapy, and Management of Complications. Circulation 132: 1435─1486, 2015まとめS. mitisによる感染性心内膜炎でPCG低感受性の場合はGMを併用050bam0154_Ⅱ編/三.indd 502019/07/18 18:10:21症例既往歴:なし.現病歴:3日前に右下腿を虫に刺された.2日前より同部位に発赤と腫脹を認め様子をみていたが,熱感の増強と発熱が出現したため当院を受診.虫刺部より膿汁を認め,培養を提出のうえCTRX(セフトリアキソン)を点滴投与した.現在,解熱し局所の所見も改善傾向である.皮膚膿検査結果薬剤感受性結果(膿)薬剤名MICCLSI塗抹結果グラムPCG(ベンジルペニシリン/ペニシリンGカリウム)陽性陰性MPIPC(オキサシリン)≦0.253+(ブドウ状)CEZ(セファゾリン/セファメジン)≦1球菌桿菌CFX(セフォキシチン)EM(エリスロマイシン/エリスロシン)≦2>8WBC:2+培養結果CLDM(クリンダマイシン/ダラシン)MINO(ミノサイクリン/ミノマイシン)>4Staphylococcus aureus (MSSA)CPFX(シプロフロキサシン/シプロキサン)VCM(バンコマイシン)ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリム/バクタ)≦0.50.5問題CTRX投与により臨床経過が改善し,薬剤感受性結果より経口抗菌薬に狭域化を行う場合,どのような薬剤に変更するのが適切か?(複数回答可)選択肢:①AMPC(アモキシシリン) ③EM(エリスロマイシン) ⑤ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)合剤②CEX(セファレキシン)④MINO(ミノサイクリン)解説は次ページ☞Ⅱ実践編抗菌薬、なんとなく選んでいませんか?的確な狭域化・処方変更を本書でマスター!これでわかる! | くすりの本30 編集 藤田 直久薬剤感受性検査結果の見かた、教えます! 抗菌薬を処方する際には、感染症と抗菌薬の知識はもちろんですが、薬剤感受性検査結果を読み解く力も大変重要です。ところが、今までこの部分にスポットをあてた書籍はほぼ皆無でした。本書では、約60問の精選問題に取り組んでいただくことで、実践で役立つ基礎力が身につくようにしました。さぁ、「菌トレ」しようぜ! 目次や立ち読みはこちら>>●B5 ●194頁 ●定価 3,960円 (本体3,600円+税10%)[ISBN 978―4―260―03891―1] sample抗菌薬選択トレーニング感受性検査を読み解けば処方が変わる
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