日常診療ありそうでなかった「カルテ記載のランドマーク的書籍」書評者: 志水 太郎 本書は、医学部を卒業して研修医となり、医師として初めて取り組む大事な仕事の一つ、カルテやその他の重要書類の書き方を示した本である。研修医がつまずきやすい箇所に関して、わかりやすい言い回しと例文を交えながら、順を追って丁寧に解説されており、著者の佐藤健太先生の指導医としてのお人柄、現場でのお仕事ぶりが透けて見えるようだ。 内容は、「基本の型」「応用の型」「おまけの型」の3部構成となっている。 「基本の型」の第1章「カルテ記載の心構え」では、繰り返し練習して「基本の型」を身につける重要性に話は始まり、「ダメなカルテ」と「良いカルテ」の実例を用いながら、「良いカルテ」を書く上での大切なポイントが「全体像が一発でつかめる一文を入れる」などのコツとともに説明されている。「良いカルテ」を書くことによって実際にどのように自分が成長していけるのかの道筋も示されており、カルテの書き方を習得することのゴールが見えるため、研修医のモチベーションも上がりそうである。2章からは、SOAPの各項目の解説に入る。例えば、Sの時制は過去形でOは現在形にすること、各欄に何をどのような順番で書けばよいのか、「方針(A)と計画(P)は別物」など、実際にカルテを書いていくと研修医がぶつかる壁を踏まえて解説されている。 「応用の型」の部では、入院診療(入院初日・入院翌日以降・退院前後)外来診療(初診外来・継続外来)、訪問診療、救急外来、集中治療のカルテの書き方に分かれている。それぞれのセッティングに応じた書き方や重点の置き方が記されている実践編であり、本書を一冊持っていればいつでも、より良いカルテの書き方のアドバイスを受けることができそうである。 さらに「おまけの型」の部では、著者が普段使っているという「病棟患者管理シート」や、すべての研修医が書かなければならない「診療情報提供書」の書き方についてもヒントを得ることができる。 カルテを書くことは医師の基本業務であり、だからこそ、その方法をしっかり学べば、医師間だけではなく、その他の医療従事者との仕事やコミュニケーションも円滑になる。俯瞰的かつ網羅的であり、ありそうでなかった「カルテ記載のランドマーク的な書籍」になると言っても過言ではない。かく言う私も研修医に勧めている、お勧めの一冊である。 (了) | 25book review
元のページ ../index.html#27