三谷 雄己(みたに・ゆうき)氏広島大学・救急集中治療医学/救急科専門医 2018年広島大学医学部卒。マツダ病院での臨床研修を経て現職。救急科・集中治療科・整形外科のトリプルボーダーを目指して日々修行中。信念である「知行合一」を実践すべく、臨床で学んだ内容をアウトプットすることを心がけている。著書に『みんなの救命救急科』(中外医学社)。医学書院でおすすめの書籍は『救急外来, ここだけの話』➡p.67。X(旧・Twitter): @houseloveryuki ● blog: https://dancing-doctor.com/ | 1717|column\ /寄稿三谷雄己先生に聞きましたもう迷わない! 医学書の選び方と学び方 初期研修が始まると、多忙なスケジュールに追われるからこそ、臨床に必要な知識を効率よく学びたいと思いますよね。そうしたときに欠かせないのが、自分のレベルや目的に合った医学書の選び方です。熱意に任せてむやみに難易度の高い本に手を伸ばすと、挫折につながりやすいというのは、恐らくこれまでの勉強で経験したこともあるでしょう。 まずは「守破離」という考え方を取り入れてみましょう。「守」の段階では、書影や中身を試し読みして読みやすいと感じる、入門書と呼ばれる書籍を選び、情報をそのまま吸収する意識を大切にします。次の「破」では、少し専門的な本を数冊読み比べ、独自の臨床スタイルを探りましょう。さらに「離」では、成書と呼ばれるようなより上級レベルの書籍を参考に自分なりの判断基準を固め、オリジナルの診療のプロセスを確立します。 次におすすめしたいのは、ジャンルを限定して複数の本を一気に読む「ジャンル読み」です。たとえば輸液管理を深めたいなら、評判の書籍を3〜4冊まとめて入手し、同時期に読み進めると良いでしょう。複数の本に共通して登場する内容は、いま優先して学ぶべき事項である可能性が高いと言えます。また、複数の本を横断して読むことで、前述した自分に最適な難易度の書籍を選定することも可能です。 読む際には、能動的に書籍に向き合うアクティブリーディングを意識してください。ただ文章を目で追うのではなく、「この内容を明日の診療にどう活かせるか」を考えながら読み進めるのがコツです。わからない単語はその都度調べてメモし、自分なりの要約を作ってみると理解が深まります。そうした能動的な姿勢を続ければ、読み方自体が洗練されていくでしょう。 医学書の中には、通読に向いているシリーズもあれば、辞書のように必要な項目だけを拾い読みするのが適したものもあります。最初から最後まですべてを読む必要はありません。大事なのは、自分に合った方法で書籍の情報を最大限に活かすことです。医学書への投資は、臨床研修を乗り越えた先のキャリアにもつながるのではないでしょうか。 初期研修中は多忙さを実感する場面も多いでしょうが、目的に合う本を見つければ、学習効率は高まります。まずは手に取りやすい一冊から始め、必要に応じてステップアップしてみてください。気づいたら、あなたの思考や臨床スタイルを支える“必読書”が自然と集まっているはずです。
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