現場の匂いが感じられる具体的な記述と図表を掲載誌上演習で保健事業の企画・立案のプロセスを学習標準保健師講座229D.演習:保健事業の立案プロセスを学ぶ13※サンプルページは制作中のものです。実際の書籍と異なる場合があります。Sample Pagesどのような取り組みにおいても,その目的を明確にしておくことが重要である。多くの関係者と一緒に取り組む場合,取り組みの目的が共有できていなければ,スムーズな連携は期待できない。A市が取り組もうとしているメタボ対策のめざすものを具体的に記述してみよう。メタボ該当者や予備群になるのを未然に防ぐことを目的とする。A市が実施する特定健診の対象者は,40〜74歳の国民健康保険(以下,「国保」)の加入者であり,この人たちは全市民の約1/6でしかなく,さらに特定健診の受診者は全市民の6.3%でしかない。そこで,健康増進課として取り組むメタボ対策の対象は,加入している医療保険の種別や年齢,特定健診の受診の有無を問わず,すべての市民とした ■+。特定健診・特定保健指導は,メタボ該当者やその予備群となった人の生活習慣を改善することにより,正常化を図る「二次予防」のアプローチである。事例紹介でも明記したように,A市の担当者は特定健診・保健指導だけではメタボの有病率を下げることが困難であると考え,市民がメタボになるのを未然に防ぐ「一次予防」を目的とした。どのような健康政策を立案する場合でも,ターゲットを明確にすることは不可欠なプロセスである。とくに,投入できる予算やマンパワーが限られるなかで,最大限の効果を出すためには,ターゲットをしぼり込むことは重要である。A市のメタボ対策において,ターゲットになる対象集団の選定のた特定健診・保健指導と保険者2008(平成20)年の医療制度改革によって導入された「特定健診・保健指導」は,保険者の責務として実施されている。このため,自治体によるメタボ対策は自治体が運営する国保加入者に限って実施されることが多い。国保担当課であれば,当然のことであるが,健康増進課が対象とするのはすべての住民である。疾患によって保健活動の対象が変わることについては,熟慮が必要であろう。演 習 2 対策のターゲットとする集団を選定しよう演 習 1 対策の目的を確認しよう解答例 メタボ対策の目的加入している医療保険の種別や特定健診受診の有無を問わず,市民が解説 より具体的にメタボ対策の目的を確認するメタボ対策の目的といえば,メタボの住民を減らすことであり,議論は不要と思われる。しかし,そこに落とし穴がある。事業を企画する際に,より具体的にその目的を確認することが重要である。まず,「住民」とは誰なのかを明らかにする。次に,「減らす」とは,メタボになるのを未然に防ぐ(一次予防)のか,メタボの人の生活習慣を改善して正常化を図る(二次予防)のか,を明確にする必要がある。
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