標準保健師講座2024年版パンフレット
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c クロスオーバー法は対象者が少ない場合などに,同一の対象者を時期をずらして介入群と対照群の両方に割り付けし,それぞれの結果を評価する研究方法である(図3―12)。クロスオーバー法も二重盲検法で行うのが基本である。同一の対象者が複数の介入(介入群のときに新薬の服用,対照群のときに従来の薬の服用,など)を受ける必要があるクロス510をy1+y2 と比較をz1+z2 と比較p1+p2p2q1+q2y1+y2z1×p1+z2×p2y1×q1+y2×q2z1×p1+z2×p2q1無作為割付キャリーオーバー期紹介基礎理論だけでなく近年の研究事例も国家試験を意識した豊富な演習問題Standard textbook標準保健師講座別巻39185p1p2y1y2p1+p2y1+y2q2p1+p2q1+q2q2z1+z2y1×q1+y2×q2p1z1+z2p2y1+y2p1+p2q1q2z1z2q1+q2z1+z2疾病あり疾病なし55353555表ⅳ 肥満なし疾病あり疾病なし脂質異常症あり脂質異常症なし25503章 疫学的研究方法38付録:演習問題184D.研究方法(研究デザイン)付録:演習問題無作為化対照試験(無作為割付試験;RCT)図3―11 一重盲検法と二重盲検法の違いクロスオーバー(cross-over)研究(自己コントロール)A群無作為割付B群A群は介入群→対照群の順に,B群は対照群→介入群の順に,時期をずらして実施。図3―12 クロスオーバー法問1 100人の会食で40人に食中毒症状が発生し,20人が入院し,2人が死亡した。致命率はいくらか。  a.40%   b.20%   c.10%   d.5%   e.2%問2 変形性膝関節症の疾病頻度を表現するのに適切な指標はどれか。  a.罹患率   b.有病率   c.死亡率   d.致命率   e.発症率問3 ある集団において,ある疾病の喫煙者の罹患率は20.0(人口10万対),非喫煙者の罹患率は8.0であった。喫煙者と非喫煙者を合わせたこの集団の全体の罹患率は10.0であった。この疾病に対する喫煙の寄与危険,寄与危険割合,人口寄与危険割合はそれぞれいくらか  a.0.2   b.0.3   c.0.6   d.2.0   e.12.0問4 ある集団において,アスベスト使用工場従業員のある疾病の罹患率は100.0(人口10万対),従業員以外の住民の罹患率は10.0であった。アスベスト使用工場従業員の数は,この集団全体の人口の10%であった。この疾病に対するアスベストの寄与危険,寄与危険割合,人口寄与危険割合はそれぞれいくらか。  a.0.47   b.0.82   c.0.90   d.9.0   e.90.0問5 ある町(対象集団)の年齢階級別人口と死亡数を表ⅰに示す。基準集団と比較して,死亡率の年齢調整を行いたい。直接法および間接法による年齢調整の計算式はそれぞれどれか。表ⅰ ある町の年齢階級別人口と死亡数項目基準集団の年齢階級別人口基準集団の年齢階級別死亡数対象集団の年齢階級別人口対象集団の年齢階級別死亡数20~64歳65歳以上合計a.q1b.p1c. が1.0より大きいか,小さいかを判定d. が1.0より大きいか,小さいかを判定e.q1+q2 が1.0より大きいか,小さいかを判定介入群2群の比較(新薬群)アウトカムどちらの群?どちらの群?アウトカム対照群(プラセボ群)一重盲検二重盲検介入群対照群研究終了対照群介入群研究終了3オーバー法では介入により完治する疾患を研究対象にできないことや,研究期間が比較的長くなるため対象者のドロップアウトがおきやすくなること,前時点における介入の効果が継続してしまうキャリーオーバー効果などへの対処が必要となる。RCTに比べ,地域介入研究が適している場合RCTに比べ,地域介入研究が適している場合RCTに比べ,地域介入研究が適している場合①有病率が高く,地域介入研究のほうがRCTよりも効果的に高危険度①有病率が高く,地域介入研究のほうがRCTよりも効果的に高危険度①有病率が高く,地域介入研究のほうがRCTよりも効果的に高危険度群に影響を与えることができるとき。群に影響を与えることができるとき。群に影響を与えることができるとき。②職場における禁煙や公共の場所での禁煙の条例化は,個々人に禁煙を②職場における禁煙や公共の場所での禁煙の条例化は,個々人に禁煙を②職場における禁煙や公共の場所での禁煙の条例化は,個々人に禁煙をすすめるよりも効果的である。すすめるよりも効果的である。すすめるよりも効果的である。③生活様式に関する要因では,地域介入研究のほうが効果的なことが多③生活様式に関する要因では,地域介入研究のほうが効果的なことが多③生活様式に関する要因では,地域介入研究のほうが効果的なことが多い。い。い。 医学的治療,看護介入,公衆衛生学的介入を行うときのエビデンス(根拠)は疫学研究に求められるが,用いられた研究方法によってその評価は異なる。エビデンスに基づく医療(EBM)については,多くの本や論文があるので,ここでは一般的なエビデンスの評価とその問題点について紹介する。 一般的に,エビデンスは表3―3に示すようにレベルづけて評価されるが,系統的レビューやメタ分析も質のレベル差が大きい。メタ分析の地域介入研究(community trial, community intervention)d 地域介入研究は,地域住民などの集団を対象とし,疾病予防の効果を評価する研究である。RCTと異なり,地域を介入地域,対照地域に無作為に分けることはむずかしい場合が多い。付録問題₁疾病頻度についての問題クロスオーバー法研究方法によるエビデンスのレベル研究方法によるエビデンスのレベル問題2疫学研究方法論地域介入研究の例キャリーオーバー効果(car-ryover effect)治療を受け,その治療を中止しても,効果が一定期間持続することをいう。キャリーオーバー期間は評価の対象としない。■マスメディアによる脳卒中啓発活動の効果■■マスメディアによる脳卒中啓発活動の効果マスメディアによる脳卒中啓発活動の効果 一般市民の脳卒中初発症状の理解を向上させることを目的に,介入地 一般市民の脳卒中初発症状の理解を向上させることを目的に,介入地 一般市民の脳卒中初発症状の理解を向上させることを目的に,介入地域(岡山市)に対して,マスメディアによる1年間の脳卒中啓発活動を実域(岡山市)に対して,マスメディアによる1年間の脳卒中啓発活動を実域(岡山市)に対して,マスメディアによる1年間の脳卒中啓発活動を実施した地域介入研究である(対照地域〔呉市〕に対して啓発活動は実施せ施した地域介入研究である(対照地域〔呉市〕に対して啓発活動は実施せ施した地域介入研究である(対照地域〔呉市〕に対して啓発活動は実施せず)。効果を評価するため,啓発活動の前後に無作為抽出した一般市民に対して脳卒中初発症状に関する調査が実施された。この研究から,マスメディアによる脳卒中啓発活動が,一般市民,とくに女性の脳卒中初発症状の理解を向上させることが示された。(Miyamatsu N. et al.: Eff ects of public education by television on knowledge of early stroke symptoms among a Japanese population aged 40 to 74 years: a controlled study. Stroke, 43(2): 545─549, 2012による)問6 次のような疫学研究方法はどれか。選択項目欄から適切な番号を選びなさい(同じ番号を2度以上選んでもよい)。1)喫煙者1万人と非喫煙者2万人を追跡し,それぞれの群の肺がん罹患率を比べた。2)肺がん患者100人と人間ドックで異常のなかった者200人の3年前の喫煙状況をたずねて比較した。3)10年前の住民健診の結果が残っており喫煙状況がわかっている。喫煙の有無別に現在までの死亡者の割合を比較した。4)県内39市町村の市町村別喫煙率と市町村別年齢調整肺がん死亡率を散布図にあらわした。5)HIV感染予防のために,くじびきでパンフレットを配る人と性病治療を無料で行う人に分け,その3年後のHIV抗体陽性率を比較した。6)1歳6か月児健診で齲歯がなかった人の生活習慣と3歳児健診時の齲歯の有無との関係を分析した。7)シートベルトを義務化することにより交通死亡事故が減ったかどうか,警察統計の年次推移をみた。8)薬の副作用を訴えた患者100人と同じ薬を服用して副作用を訴えていない患者500人の服薬状況や基礎疾患の状況などを診療録から抜き出して比較した。1.記述疫学  2.コホート研究  3.症例対照研究  4.生態学的研究  5.横断研究6.メタアナリシス  7.サーベイランス  8.介入研究  9.臨床判断分析  10.対照群のない前後比較法問7 心筋梗塞の発症者90人と比較対照として健康者90人の3年前の健康診査の結果から脂質異常症の有無を判定した結果が表ⅱである。さらに,表ⅱを肥満の有無別に2つの表に分解したものが,表ⅲと表ⅳである。心筋梗塞と脂質異常症および肥満との関係表ⅱ 脂質異常症の有無脂質異常症あり脂質異常症なし表ⅲ 肥満あり疾病あり疾病なし脂質異常症あり脂質異常症なし5025105問7─1 表ⅱにおいて,脂質異常症の疾病発生におけるリスク値はいくらか。  a.0.4   b.0.6   c.1.6   d.2.5問7─2 表ⅱの結果を肥満の有無別に集計すると表ⅲ,表ⅳのようになった。この場合,肥満の有無は脂質異常症と疾病発生の関係にどのような影響を及ぼしているか。  a.交絡因子   b.選択バイアス   c.情報バイアス   d.交互作用  a.交絡因子   b.選択バイアス   c.情報バイアス   d.交互作用  a.交絡因子   b.選択バイアス   c.情報バイアス   d.交互作用盲検法 RCTにおいて,被験者自身が介入群と対照群のどちらに所属しているかを識別できないようにすることを,一重盲検法(single-blind, single-masking)という。これに加えて,医師や看護師など介入効果の評価者も,被験者が介入群か対照群かを識別できないようにすることを二重盲検法(double-blind, double masking)という(図3―11)。Sample Pages13演習問題演習問題

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