●221●200子0女0.9F.高齢者とコミュニケーション●5761長所バルーン型長所短所長所短所短所バンパー型長所短所本人の選択と本人・家族の心構える1)。 そのうえで,生活に支援が必要となったときには,地域住民や自治会,ボランティアといった,多様な担にない手による生活支援が行われ,介護が必要となったときには,介護サービスが提供される体制が必要となる。また,医療が必要となったときには,かかりつけ医や地域の病院への受診,急性期病院やリハビリテーション病院などへの入院による治療が必要となる。 治療が終わったあとは,再び高齢者が主体的に介護予防に取り組むことを基本としつつ,住み慣れた住まいで自立した生活を可能な限り維持していくことができるように,必要に応じて生活・介護・医療に対する支援を継続的に提供する体制を整えることが求められる。 このように地域包括ケアシステムの5つの構成要素は,相互に関係し連携しあいながら,途と切ぎれることなくつながっている。これら5つの構成要素の関係性は,植木鉢にたとえられる( 図8-5)。まず,地域で本人が望む生活を継続するためには,本人の選択が尊重されることが前提となり,それを可能にするための本人・家族の心構えが必要となる。これが地域包括ケアシステムの基礎となる受け皿になる。そのうえで,生活の基盤となる住まいと住まい方が植木鉢となり,介護予防・生活支援がその植木鉢の中を満たす土として,医療・看護・介護・保健・福祉などの専門的なサービスと密接に関係 表8■2 要介護者等がいる世帯構造の構成割合の年次推移(%)年次9.38.17.534.84.75.311.9302010 13.6%32.826.912.15.85.02.62.1302010ふれあう相手の減少ふれあう機会の減少家族や友人との死別や別離,生活地域での疎遠などによって,コミュニケーションをはかる相手が少なくなっている。仕事や社会からの引退に伴って,他者とのふれあいや世間話などのコミュニケーションの機会が少なくなっている。認知機能障害言語以外の必要性慢性的な認知機能障害に加え,せん妄などの一過性の障害も生じ,意思疎通が阻害されやすい。認知症の程度は個別性も高い。言葉のほかに,身ぶり・手ぶり・表情・声など,非言語的な表現からも意思を把握する方法を工夫する。体内体外■バルーン内の蒸留水を抜いて挿入・抜去するの で,交換が容易である。■目だたず動作の邪魔にならないため自己抜去が ほとんどない。■栄養剤の通過距離が短いのでカテーテル汚染が 少ない。■逆流防止機能がある。■バルーンが破裂することがあり,短期間で交換 になることがある。■指先でボタンを開閉しづらい場合がある。■カテーテルが抜けにくく,交換までの期間が長 い。■目だたず動作の邪魔にならないため自己抜去が ほとんどない。■栄養剤の通過距離が短いのでカテーテル汚染が 少ない。■逆流防止機能がある。■交換時に痛みや圧迫感を生じる。■指先でボタンを開閉しづらい場合がある。介護・リハビリテーション保健・福祉医療・看護 介護予防・生活支援介護予防・生活支援住まいと住まい方(三菱UFJリサーチ&コンサルティング:<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステム と地域マネジメント,地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に 関する研究事業 平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業,2016.) 図8■5 地域包括ケアシステムの「植木鉢」1) 介護保険法第4条第1項は,「国民は,自ら要介護状態となることを予防するため,加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに,要介護状態となった場合においても,進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより,その有する能力の維持向上に努めるものとする」と定めている。専門職間の情報伝達に対しては,これらの過程を念頭におく必要がある。 一方,高齢者看護を行う専門職間でのコミュニケーションでは,伝達する情報の的確性(選び方)・妥だ当とう性(正しさ)・即時性(新しさ)が求められる。職種ごとに専門用語が異なることが職種間のコミュニケーションを困難にしているともいわれ,とくに複数の機関の間で連携をはかるうえで障壁となっている。保健・医療・福祉の専門職が同じ言葉を用いてコミュニケーションをはかることができるように,地域における調整も必要である。 高齢者のコミュニケーションには,さまざまな特徴がある( 図3-7)。看護師には,これらの理解のもとに,ケアの対象である高齢者1人ひとりの特性に合ったコミュニケーションの工夫をはかることが必要である。 高齢者は,身体機能の低下や環境の変化などの影響によって,コミュニケーションが阻害されやすく,社会においても生活に必要な情報が十分にゆきとどかないことが多い。 また,コミュニケーションは2者以上によって成立するため,日常生活における家族や友人などとの関係性の有無によっても,その質・量は異なってくる。さらに,眼鏡・補聴器・義歯などといった,意思疎通をはかるうえで必要な用具の適切さにも配慮が求められる。 図3■7 高齢者のコミュニケーションの特徴 図4■7 胃瘻カテーテルの種類各構成要素の関係性214●第7章 高齢者が豊かに生きるために感覚器などの機能低下加齢や疾患による,失語や視力・聴力の低下がみられる。適切な眼鏡・補聴器などの使用ができていない場合も多い。 高齢者文化の把握高齢者センター・地域の寄り合い・神社などでは,高齢者独自の文化があり,そこでの活発な交流の方法を参考にできる。78●第4章 高齢者の暮らしを支える看護の実際ボタン型チューブ型腹壁胃壁胃内バルーン・ボタン型バルーン・チューブ型■バルーン内の蒸留水を抜いて挿入・抜去するの で,交換が容易である。■投与時の栄養チューブとの接続が容易である。■バルーンが破裂することがあり,短期間で交換 になることがある。■露出したチューブが邪魔になり自己抜去しやす い。■チューブ内の汚染がおきやすい。バンパー・ボタン型バンパー・チューブ型■カテーテルが抜けにくく,交換までの期間が長 い。■投与時の栄養チューブとの接続が容易である。A.在宅看護の概念●245■交換時に痛みや圧迫感を生じる。■露出したチューブが邪魔になり自己抜去しやす い。■チューブ内の汚染がおきやすい。(NPO法人PDN発行:「胃ろう手帳」より作成,一部改変)244●第8章 高齢者の在宅療養と看護医療通院・入院■急性期病院■亜急性期・ 回復期 リハビリ テーション病院日常の医療:■かかりつけ医■地域の連携病院■自宅■サービス付き高齢者向け 住宅など■地域包括支援 センター■ケアマネジャー老人クラブ,自治会,ボランティア,NPOなど介護保険法(%)40その他0.5%不詳19.6%配偶者事業者12.1%同居54.4%別居の家族など 子の配偶者7.5%その他の親族1.7%父母0.6%a.要介護者等との続柄単独世帯核家族世帯総数2001200410010015.720.2200710024.02010201310010026.127.4201610029.02019※2016年の数値は,熊本県を除いたものである。28.3100病院介護通所・入所■在宅系サービス■訪問介護,訪問看護,通所介護■小規模多機能型居宅介護■短期入所生活介護■夜間対応型訪問介護■複合型サービス(小規模多機能型居宅介護+ 訪問看護)など■介護予防サービス■施設・居住系サービス■介護老人福祉施設■介護老人保健施設■認知症対応型共同生 活介護■特定施設入居者生活 介護 など住まい認知症 の人地域包括ケアシステムは,必要なサービスをおおむね30分以内に住まいへ届けることができる日常生活圏域(中学校区の規模)を単位として想定している。介護予防・生活支援B.在宅看護の実際●249神経系の疾患健康保険法等精神および行動の障害新生物循環器系の疾患損傷,中毒およびその他の外因の影響呼吸器系の疾患筋骨格系および結合組織の疾患(%)040(厚生労働省:2016(平成28)年 介護サービス施設・事業所調査より作成)男 35.0女 65.02080b.同居のおもな介護者�男女比�4060100(%)23.8%40歳未満男2.540〜4950〜5960〜6970〜7980歳以上22.86.218.828.521.120.7%5.320.131.829.412.620406080100(%)c.同居のおもな介護者�b.の内訳�(厚生労働省:令和元(2019)年国民生活基礎調査より作成)三世代世帯その他の世帯夫婦のみの世帯18.3高齢者世帯(再掲)29.330.419.532.529.422.420.035.340.432.720.223.220.145.731.435.419.321.522.518.420.118.747.050.937.940.321.922.214.912.818.318.654.557.1(厚生労働省:令和元(2019)年国民生活基礎調査より作成)■食前の援助 次に食事の前に行う準備について,具体的な方法を述べる。①食前のリアリティオリエンテーション 現在の時間および朝食・昼食・夕食であることを説明する。認知症者の場合には,いまがいつであるか,こアルツハイマー型認知症の患者に対しては,以下の点に注意しながらケアを行う。①エピソード記憶障害への対応 「記憶障害」の項( 207ページ)で述べたように,看護師が「自己紹介」「あいさつ」「なにをしようとしているのか」を面倒がらずに伝えていくことが,患者との信頼を深めていくことにつながる。同じ対応を繰り返し行うことで,なじみの関係となっていく。②視空間認知障害に対する安全やアクティビティケアへの配慮 構成障害がある場合は,空間のゆがみや視覚に欠落などがおきる。そのため,書字や絵画,塗り絵などのアクティビティケア(活動を通じたケア)は混乱や苦痛をもたらしてしまう。本人が楽しめるようなプログラムをすすめていく。また,手すりなどのつかみそこねから転倒することもあるので,その予防に努める。③日中の生活リズムの調整 24時間を1日として暮らしている私たちは,25時間周期の体内時計を毎日リセットする必要がある。朝早めに起きて太陽を全身で浴びることや,立ったり,運動したり,休息をしたりというメリハリが,生活リズムを整えていくことにつながる。④現存能力の活用(手続き記憶や長期記憶,感情の活用) 昔話に花を咲かせたり,料理を手伝ってもらったりと,認知症があっても保たれる能力を活用していく。とくに,認知症があっても感情は豊かでユーモアは保たれているといわれるため,ユーモアのあるケアを心がける。5会話の配慮 記憶や言葉の障害により,会話につじつま合わせやとりつくろいがみられる場合は,そのことをつきつめたりしない。その場は聞き流したり,ずっと昔のこと,いまのこと,将来のことを話したりするとよい。脳血管性認知症患者のケアにあたっては,以下の点を意識して行う。①血管障害を引きおこすリスクの管理と再発作予防 抗血小板薬・脳循環代謝改善薬の服用と,動脈硬化症のリスク因子の管理をする。そして体重に見合った水分量を確保し,脱水の予防をしていく。②嚥下障害による誤嚥性肺炎の予防 肩や首の刺激,口唇や頰・軟口蓋の刺激,発音訓練,アイスマッサージ( 76ページ,図45)などを取り入れる( 図74)。認知症者が継続できる工夫も必要となる。③ADL能力の維持 廃用症候群を防ぐリハビリテーションを実施する。からだが動きやすく,気持ちもゆったりとする午後に行うとよい。 図8■4 地域包括ケアシステムの姿④転倒の予防 脳の障害による麻痺や半側空間無視のほか,下肢の浮腫な 地域包括ケアシステムの基本となる理念は,介護保険制度の理念と同様に,尊厳の保持と自立生活の支援である。 尊厳の保持とは,その人らしさを維持することを意味している。本人の自由な選択と意思決定を支援することで,高齢者がそれまでつちかってきた人間関係を保ちながら,住み慣れた地域でその人らしく暮らしつづけることを目ざすものである。 自立生活の支援は,高齢者があらゆる日常生活行為や仕事・趣味などの社会活動をみずから行い,家庭や地域において役割を果たし,生きがいをもって生活することを目ざして行うものである。そのためには,身体面だけでなく,心理面・社会面での自立も視野に入れて支援をすることが重要となる。尊厳の保持●自立生活の支援● 地域包括ケアシステムは,おもに①住まい,②介護予防,③生活支援,④介護,⑤医療の5つの要素から構成されている。これらの要素が相互に関係し,連携しながら,高齢者みずからの努力を基本としつつ,必要な支援を過不足なく一体的に提供する体制を整えることを目ざしている( 図8-4)。 具体的には,まず生活の基盤となる住まいを中心とし,高齢者1人ひとりがみずからの健康増進や介護予防についての意識をもち,元気に自立した生活を送ることができるよう,主体的に介護予防に取り組むことが基本とな 図8■8 訪問看護ステーション利用者における傷病別の割合 図8■9 要介護者等との続柄別のおもな介護者の構成割合(2019年)高齢者のコミュニケーションの特徴33脳血管性認知症の高齢者のケア認知症の疾患別のケアアルツハイマー型認知症の高齢者のケア地域包括ケアシステムの基本理念地域包括ケアシステムの構成要素写真やイラストにより、実際のケアの様子を具体的に理解できます第8章では、在宅看護、地域包括ケアシステムに関する内容を充実させました。後半部では具体的な事例と共に学習ができます
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